2004-08-24 Tuesday
天敵オーストラリア
 
 こういう言い方が誤解を招くことを千も承知でいうが、長嶋ジャパン・打撃陣は松坂を見殺しにした。松坂の立ち上がりは上々で、オーストラリアの各バッターを小気味よく三振に打ち取りつづけた。オーストラリアはチャンスらしいチャンスのないまま6回の攻撃をむかえた。この回、ワンアウトを取った松坂は連続して四球を出し、ランナー1、2塁とした。
 
 次の打者を内野ゴロに打ち取ったが、ぼてぼてのゴロだったため併殺にならず、ツーアウト・ランナー1,3塁となる。そのあと出たタイムリー・ヒットが決勝点になるとだれが予想しただろう。オーストラリアは神の与え給うたわずか1度のチャンスを生かして勝利したのである。
 
 日本にもチャンスはあった。3回裏、先頭バッターの和田(西武)が2塁打をはなち、藤本がバントで送って、ワンアウト3塁とした。だが、福留が三振、宮本もファースト・ゴロに倒れ先制のチャンスを逸した。7回裏にもツーアウト1、3塁のチャンスはあったが、急遽リリーフに立ったウィリアムス(阪神所属)に藤本は押さえられた。
 
 オーストラリアとの準決勝では日本の各バッターの不振がモロに出た。予選リーグでのめざましい活躍はどこに行ったのだろう。昨夜は遅くまで町に繰り出して気炎を上げていたのだろうか、よもやそれはあるまい。ウィリアムスがいかに好投手とはいえ、彼がマウンドに上がるまで日本のほうがチャンスは多かったのに、一度も生かせず惨敗した。完封のおまけまで付けて。
 
 勝利の女神は複数のチャンスを生かせなかった日本にそっぽを向いたのである。6回あたりから流れはオーストラリアに向いていた。なんとか流れを呼びたかった日本であるが、救援投手ウィリアムスに流れを断たれてしまった。
公式戦でバントなどしたことのない谷や小笠原にバンドさせてうまくいくわけがない。それをやらせた中畑ヘッドコーチの指揮能力の欠如は、選手もあきれる天下逸品ものである。
 
 鱈(たら)は北海道の話、レバは焼肉屋の話であるが、長嶋監督が脳梗塞で倒れていなかったら、長嶋監督が陣頭指揮していれば、こんな惨めな事態を迎えることはなかったろう。長嶋監督がそばにいたら、選手の不完全燃焼は回避できたかもしれない。
長嶋さんは選手を乗せるのがうまい。「福留君、中村君も小笠原君もバットをコンパクトに振ろう、挑戦者の気持でね。きょうは風も強いから流されないように」とかいって、選手の重圧や迷いなど笑って吹き飛ばしてくれたはずである。長嶋監督のことばなら選手も受け容れる。
 
 これで、日本は予選リーグをふくめてオーストラリアに連敗。オーストラリアの作戦勝ち‥昨日のカナダ戦を放って、準決勝・日本戦に照準を合わせ主力投手、打者を温存した‥とも思うが、そうだとしても日本の打撃陣はあまりにふがいなく、よもやの不覚をとった、挑戦者の心を忘れて。
そういえば、女子ソフトボールもオーストラリアに連敗(予選、決勝リーグともに)した。野球と合わせれば0勝4敗である。してみれば、日本にとって豪州は天敵であるのであろうか。
 
 4年後、舞台は北京にうつる。長嶋ジャパンは星野ジャパンとなる公算が大で、そうなれば一球団に二人などという制限を設けず、金メダル獲得可能の布陣づくりに邁進してもらいたい。各国が日本柔道を徹底的に研究してもなお彼らの多くが優勝したように、野球もさらに強くなって金メダルを持って帰るよう切望する。

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