2004-07-24 Saturday
災害見舞金
 
 久しぶりに驚いた。感心した。どこのどなたか知らないが、豪雨被災者の見舞金として2億円の当たりくじを福井県知事宛に郵送寄付した人がいる。福井県によれば、宝くじは7月23日に災害対策本部長の県知事に送られ、県は当選番号を確認した上で銀行に預金したらしい。
 
 匿名の便箋には、「被害を受けられた方々に少しでも援助になればと思い、幸運に恵まれた宝くじ当選券を同封します」と記されていたという。福井県にはその篤志家の寄付以外に23日現在、748件5678万円の見舞金が寄せられているとか。5678ですか、つづき番号です。
 
 野次馬根性丸出しであれこれ詮索したがるのは人の世の常、私も現場にいれば、知己の協力を得てあれこれ推理するところかもしれないが、それも叶わぬ今とあっては閑人のてなぐさみ、閑な日の冗語(むだばなし)よろしく書き記そう。
 
 おそらくこの篤志家の年代は60代以上と思われる。この方はお金には困ってはいないが裕福でもない。資産家は金に細かく、金離れがわるいからだ。彼らは見返りのないものに金を出すことはない。見返りのないものに惜しみなく大金を供出するのは資産家でない証しである。
 
 この方は福井県か、近辺の北陸出身であると思われる。封筒の消印はあまりあてにはならないだろう。車ほかの移動機関を利用すれば、現住所から離れた場所から投函できるし、こういう篤志家はあえてそういう方法で投函するだろう。投函とはいってもなにしろ巨額、おそらく書留で郵送されたはずである。書留なら住所氏名を記さねばならないが、むろんそれらは架空、手がかりは郵便局の窓口でそれを受け取った局員である。
 
 しかし、中身が何か分かっていたならともかく、普通はその人の容姿など憶えていない。篤志家は行きつけの郵便局ではなく遠方の郵便局を選んだ。書留の内容に関する言及は一切せず、何食わぬ顔で局員と接したと思われる。だが、何か手がかりになるものを残していなかったろうか。紺と白のチェック模様のニットキャップを深めにかぶっていたとか、渋い草色のハンカチで汗をふいていたとか。
 
 もうよしにしよう、こんなとりとめない推理、宝くじと同じで当たったためしはないのだから。

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