近ごろ嫌われている動物はクマ。人里に来て人間を襲う。山里と人里を区別できたはずのクマが人里に来るのはエサになる木の実が凶作のため激減したからだという。クマが人間を襲うのはなぜか。庭先にいるだけで何もしていないのに襲われる。
「殺さないで」とか、「かわいそう」とか、「撃退する方法を考えろ」とか言う者がいる。動物愛護関係者であれ何であれ、発言する前に何も考えないのか。かわいそうと思うなら自分が飼えばいいと反論した人がいた。その通りである。
「わたしは人間を襲わない」、あるいは、「木の実だけ狙っており、エサにありついたらすぐ帰ります」とクマの顔に書いてあるのか、それとも首にプラカードでも吊しているのか。
犬や猫のように人間と共生する動物なら問題ないけれど、人間が殺されたり、深手を負う危険があれば殺処分しなければならない。駆除などとゴキブリやネズミじゃあるまいし、クマは大型哺乳類である、殺処分と明確に記すほうがすっきりする。
そういうことを言わないで無難な発言に終始する学者や専門家は視聴者の抗議が苦手。識者は政治家とちがって批判に慣れておらず免疫力が乏しい。識者同士の議論に対して向きあう者でも視聴者の抗議を避けるのは、視聴者は真っ向から議論せず無責任だからではないか。
120年前、クマはロシアの象徴だった。英国、フランス、ドイツなどヨーロッパ列強に比肩し、19世紀のはじめ、死んでも死んでも次々と兵士が戦い、ナポレオンのロシア侵攻をはね返し、皇帝が支配する大国。
ナポレオンが敗北に追い込まれたのはロシアの極寒にさらされた兵士が寒さと飢えに苦しんだことが大きな敗因となったと思われるが、英仏の新聞はフランスが皇帝に支配される軍事大国となるのをいやがっていた。メディアの連中はそれ以来ロシアをクマに例えはじめる。
日露戦争が表向き日本の勝利となって喜んだのは日本国民だけではなかったろう、英仏独も喜び、同時に日本を警戒するようになった。
ロシアには傲慢で約束を守らない人々が多く住んでいる。物事の裏表は考えるが、おおざっぱにしか考えず、利己的で探求心が稀薄。クマの学習能力は高いといわれている。ロシア人と較べても遜色ない程度に。
ロシア外務省は2022年5月、岸田文雄氏、市早苗氏、林芳正氏など63名を無期限入国禁止の制裁措置を講じ、最近11月11日に、小泉悠氏、広瀬陽子氏など30名に同じ措置をおこなった。
それに対する広瀬陽子氏のコメント。「2023年からウクライナ政府の依頼で和平を考える国際専門家グループに入っており、ロシア少数民族の支持もしているのでまったく驚いていない。昨年、ロシア発と思われる大規模なサイバー攻撃を個人的に受けたが(中略)、自分が制裁リストに入ることはある意味納得する(後略)。」
ロシアのウクライナ侵攻がはじまった2022年1月下旬か2月上旬の報道番組の広瀬氏発言と較べると、本来の自分になってモノを言っていると思える。ロシア寄りの学者・専門家もウクライナ戦争が目覚まし時計となり、ウクライナの惨状を見るたび、クマより冷酷で大量虐殺に与するプーチンを非難するようになった。
以上はロシアのクマの話。日本のメディア、特に朝日新聞は中国が日本を批判、あるいは攻撃すると我が意を得たりと報道する。大騒ぎといってもいい。尖閣諸島問題のときもそうだった。中国を贔屓するなら朝日新聞は本社を北京に移転させればよい。
市総理が台湾問題で発言し、中国はそこにつけこむかのように攻撃をはじめたのだが、メディアが騒ぎ立てても、テレビ番組に出てくる学者・専門家以外の日本国民は平静でいる。市総理の支持率も低下しない。軍事力、経済力が日本に勝っているから威丈高になり、まちがった情報を流し、内外で喧伝する中国は三等国だ。
中国の横暴によって不利益を被る企業、経営者、従業員の味方ヅラして市総理、政府を批判するメディアは多い。
互いに歩みよらねば回復がおくれると言うが、中国がヘソを曲げているだけではないか。中国経済は以前のようにうまくいっておらず、日本はチャイニーズの不満のはけ口にされている。
中国飯店の出前をするなら、朝日ほかのメディアも学者専門家も、出前用の前掛けを着用して、堂々とやればよい。日中両国のためを思っているという顔をしてもただの小僧にしか見えないぞ。
正論を言って非難され、歴代の総理は発言に気をつけていたと発言する専門家は何が言いたいのか。気遣いは中国に対してより日本にすべきである。日本の総理、官房長官、外務省の審議官クラスでさえ弱腰になっていないのに、外野席の評者は腰くだけ。みっともないと思わないのか。
20世紀後半、日本は経済大国であるとメディアは書きまくった。東南アジアなら通用しても、当時、ヨーロッパで日本経済の話題になったとき、英国民やドイツ国民の認識は、日本は経済発展国だが大国とは異なるというものだった。
大国は交戦しても乗り切る強い軍事力を擁していなければならないが、日本の憲法はそのようになっていないと言う。国力は、経済発展しても真の国力といえないと彼らは言った。そのとき思ったのは、日本のメディアは実態を伝えていないということだった。経済大国はある意味笑い話に等しい。
それはともかく。観光地の宿、レストランにチャイニーズのツアー客の来訪が減っても、個人客はほとんど減らず、よその国からも来る。一時的に中国人観光客が少なくなっても嘆くことなかれ。クマの命令に従う中国人はそれほど多くない。ほとぼりがさめれるのを待たずやって来る。
京都は特に魅力的だし、中国人を頼みにせずともいいと思うが、観光業に携わる人はそうもいかない。日本全国にインバウンドを魅了する場所はいっぱいあり、メディアも習近平が100歳まで独裁を続けるとは思わないだろう。クマも人間も寿命には勝てない。しかし、そういう話より自衛隊の人員不足を解消し、防衛費を増額して、冬眠しないクマに対抗する力をつけねばならない。
「熊に挑むサムライ」。日露戦争当時の有名な風刺画。英国で描かれたらしいが、ビゴーの作品ではないとされる

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