2011-09-05 Monday
与党の苦しみ
 
 余計なことだけ指示し、肝心なことは何もしなかった菅政権は退陣した。出鼻をくじくようでなんだが、新政権に期待することは何もない。できないことをできるように見せかけてきた民主党政権の長すぎることにため息がもれるだけだ。小学校の学級委員がよく分からないことをてんでんばらばらに言い張るような、軽率でまとまりのない政権政党は戦後稀有である。
 
 先日の毎日新聞ネット版ときょうの毎日新聞夕刊に辻元清美議員の弁が掲載されている。菅直人という人は「気が回らず、理念や考え方を重視するあまりそこでつながっていればいいんだ、みたいなところがあり、やりたい仕事だけでなく、やりたくないことでも妥協しつつ利害関係を調整すべきで、(市民運動のように)同じ志を持った仲間とならやっていけても、立場の違う人たちとどう付き合うか、そこを訓練しておかないと、リーダーになった途端に立ち往生してしまう、云々。」 掲載記事の見出しは『異見束ねる力 未成熟』
市民運動家出身ということで懇ろの辻元&菅なので上記記事の辻元発言は当を得ていると考えてもいいだろう。同時にこの発言は市民運動出身の政治家の限界を如実に明示している。彼らに日本の統治をゆだねると日本丸は漂流し、どうかすると沈没するということだ。
 
 きょうのMSN産経ニュースネット版には大手町サンケイプラザで9月5日に開かれた小泉純一郎氏の講演が紹介されているので列挙する。
 
 【民主党政権について、「今後は財政難で政権与党が苦しい時代が続く。与党になれば苦しいことをようやく民主党議員が分かってくれて政権交代はよかった。」
民主党がマニフェストに掲げた高速道路無料化について、「一切税金を投入しない制度で民営化した(小泉政権当時)のに、民主党は無料化してしまった。どうやって道路公団の借金を返すのか。自動車を使わない人にも税金で負担させる制度だ。」と批判、「民主党は政権を取れば16兆円の財源なんて簡単に出せると言った。見直さないでやってもらいたい。」と強調。
 
 民主党内に根強い日米中「正三角形」論に対しては、「中国は経済的にもっとも重要な国だが、安全が確保されていないかぎり、いかなる政策も進められない。あれだけの戦争をして領土を全部返した米国と、沖縄・尖閣諸島を自分の領土だと主張している中国と同じ関係でいいという議論は私はとらない。」と語り、日米同盟堅持の重要性を説いた。
さらに、脱原発依存を進め、再生可能エネルギー拡大により国内の技術革新を後押しすべきだとし、「民主党も自民党も原発依存度を下げていこうというのが多数派であり、脱原発で解散しようという首相がどこかにいたが、争点にならない。」と指摘した。(小泉氏が報道陣の前で講演するのは昨年7月以来)】
 
 
 必要なのは、実現不可能な約束をしない政権であり、覚悟と責任感に裏打ちされ、統治の何たるやを骨身で分かり、国民の多くから信頼され、官僚や諸外国から一目置かれるリーダーである、小泉純一郎氏のような。
無恥傲岸な官僚でもこれはと思う政治家が出現すれば一目置かざるを得ないだろう。役者に格の違いがあるように政治家にもあるだろう。鳩・菅などと小泉氏や安倍晋三氏との格の違いは歴然としている。
 
 綱領もない、基本政策について内閣と党の合意もない、あるのは議員の個人的見解の一人歩きや迷走、次の総選挙で落選するのではないかという強迫観念と、外交・防衛・拉致問題に対する取り組みのお粗末さ、危機意識の低さ。
一議員の立場で毎年靖国参拝していた人が総理になった途端、「いやぁ、いろいろあるからね」とお茶を濁すくらいならハナから総理になるべきではないし、外交で媚びる総理はお呼びじゃない。
 
 そしてまた、Time is Money、スピードが求められるご時世だ、イソップの出る幕はない。脂ぎったスローなドジョウ、学生気分の抜けないちびっこギャング、他大臣はだれがやってもいいようなものとして、財務、外務、法務、防衛、国家公安の各大臣は適材が必要、しかしこのていたらく、エクスキューズが政治家の仕事とでも思っている泥、何をしていいか分からずウロウロする新米。彼らに小泉氏の指摘する与党の苦しみといった意識があるかどうか怪しいものである。

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