不信任案否決の立役者・鳩山氏が菅氏をペテン師呼ばわりしている。いまごろわかったのかといいたいところであるが、正確を期するならペテン師というより病人である。病名は脳回路脱落。自分が何をいって何をやっているのかほとんどわかっていない。人だれしも一時的脳回路脱落はあるとして、常時脱落はめずらしい。

 

　こういう状態を続けると脳は古い回路だけを使うようになり、新しい、あるいは別の思考を避け、そのまま気づかずにいると疑念や敵愾心ばかり強くなって、脳は新しい回路をつくらなくなってしまう。もはや脳は危険信号を送らず、菅直人の脳は脱落状態である。

 

　菅氏をかついでいる仙谷、岡田、枝野などは、せっかく手に入れた政権を党分裂によって自民党に奪われたくない。彼らの最大関心事は被災地でもないし日本の行く末でもない、脱小沢路線を堅持し民主党を与党にとどまらせることである。だから不信任案は否決された。

このまま菅氏をかつぎ続けるとは思えないが、それは自公と世論の状況次第。物忘れは菅氏の個性であり一般日本人も同じ、そのうち忘れてくれるだろうとタカをくくっているようにも思える。

 

　ふたことめには被災者のためとか復興という言葉を繰り返すが、被災者救済も復興も当然、どの党が政権の座にあっても救済と復興に着手する。問題はスピード。脳回路脱落の菅ではあまりに遅い。

意味不明の発言を頻発し、首相の座にいすわればいすわるほどはかどらないという状況をいつまで続けるのか。反小沢で一定の役割を果たした仙谷、岡田、枝野らの菅かつぎもこの辺りが引き時。

 

　この二ヶ月半をみても官邸の指揮系統は混乱し、迅速に効率よく動いたのは自衛隊、消防、一部のボランティアだけで、彼らは官邸の指示を待たず自発的に動いたからスピードに乗った。自民党政権は政官業の癒着はけしからんと世論に訴えて政権を得た民主党政府であるが、現在、政・官・業はバラバラ、菅も政府もほとんど孤立し復興計画の目鼻さえついていないではないか。

 

　土壇場であらわれたのがハトのピエロ。互いの温度差を計算せず、阿吽の呼吸で解決できると誤解したのはやはりお坊ちゃま。ハトの思いつきは菅にとって渡りに船、まんまと功を奏した。なにがどうあれ昨日の投票で信任されたのだからと開き直るのが厚顔無恥の菅流。

エクスキューズはお手のもの、一国の指導者として聞くに堪えない言い訳を臆面もなくやってのける。大震災への対応にしても、いきあたりばったりの指導力を示すことによって無能よばわりされるのを避けたかったのだが、政治主導そのものが有名無実、おまけに、やることなすことムダばかり、かえって無能をさらけだしたというのが事の顛末である。

 

　きょうになってペテン師まがい、不信任案に賛成しとけばよかったのピエロ発言は後の祭り。ことしいっぱい、あわよくば来年まで続投に向けてやる気満々の菅、２０１１年の流行語大賞はペテン師ということになりかねない。

自己救済に全精力をそそいでも、日本救済はそっちのけ。さっさと遍路にでれば、四国の路傍で真言が聞こえてきて、脳回路脱落が部分的に治ることもあるだろうに。

 

　ピエロやペテン師が跋扈すればメディアは小躍りし、ペンにもいっそう力がはいるだろうけれど、ペテンを不快に思う人間も少なくないはず。何もいわない、何もしない、蔭で批判するだけという人はどこにでもいて、戦う勇気もなく、尽力もしないのに、戦況分析してわかった気でいる。当事者は真実を語らないことが多い。語るとしても一部である。

 

　目立たないはずの棄権を目立たせたのは小沢一郎。ハトの抜け駆けを知るのが遅かったとしても、大将格が結果的に小早川秀秋まがいの行動をとったのはある意味お粗末で評にかからない。

仙谷、岡田などは機あらば小沢グループの切り崩し、分散を狙っている。小沢チルドレンが四分五裂して、党内の他会派（または他グループ）に属すことが是ということだ。

 

　それにしても菅のぶざまで見苦しいこと語る値打ちもない。小ずるい男といった印象を多くの人々に与えてしまった菅は、マニフェストや政治主導という言葉の信頼性を大きく失墜させた。

国内に政治空白をつくらないために、外交・防衛面の空白をつくらないために、そして不況の波間に漂う日本経済へ悪影響をもたらさないために、総じて無用な混乱を避けるために、事態収拾の道筋をつけることを自ら明らかにして一刻も早く辞任すべきである。