子供の頃から窓が好きでした。そこからどんな人、どんな顔が飛び出してくるのかワクワクしたものです。
明るい顔もあれば暗い顔もありました、お母さんに叱られたのか、半ベソをかいた顔もありました。
窓からみえる顔はそれぞれに個性豊かで、つい見てしまうのです。
憂鬱そうな横顔をみた時、自分のことのように気になったこともありました。
ある日、小学校の近くに引っ越してきた一家があり、登校時に塀のない平屋のその家の窓をふと見ると、
同い年くらいの男の子が顔を出して、ニコニコ笑っていました。
始業時間も近いのに、この子はまだ登校の準備もしていない、この子は病気なのだ、
病気だからただ笑っているだけなのだ、笑うのがこの子の唯一の感情表現なのかもしれない。
その時ひどく胸が痛くなったのですが、その痛みはいまなお心にのこっています。
男の子の母親はいつも陽気で、足の悪いその子をともなって散歩していました。
母親が明るくふるまっているから、小学生だった私も癒され、救われました。
写真は、紅葉したツタが窓に「遊ぼうよ」とさそっているかのようです。
彼女の立場であったなら、私はこの窓のように扉を閉ざしていたかもしれません。
彼女が世間に対して心を閉ざさなかった象徴が開け放たれた窓だった、いまでもそう思っています。
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