所は近江の国、奥伊吹の曲谷初めて野生のツキノワグマと至近距離で出会ってしまった。私は昨年、一昨年と二度も訪れている五色の滝に今年も行って来た。曲谷にそって山道が作られており、額に汗しなが五色の滝を目指した。しかしここは熊がよく出没すると看板があるくらいなので腰にクマよけの鈴をしっかりと付けて登った。


二十二話山鳴らし

第二十七話 クマに初めて遭遇

暑さ逃れの滝見であるが今日は訪れる人も全くなく静かな滝の姿であった。帰路は尾根筋を抜けて林道に出れば、舗装された歩きやすい下り坂である。もうすぐに林道に出られると思ったその時、右横の三つ又に枝分かれしたブナの樹の上に真っ黒いものが動いた。

熊との距離は水平に15mぐらいの至近距離である。熊はあわてて木から降りたようだ。アッと小さく叫んだが、私の足は小刻みに震えており歩は止まり進まない。歩かなければ当然、熊よけ鈴は静かでならないのである。私は慌てて手にしていたカメラを離し、腰の鈴を掴み激しく振った。幸い熊さんは尾根に駆けあがらず、駆け下ったようである。その時撮影した写真がこれで、手ぶれどころではなく体プレのようである。その時の数秒間はゾクゾクと寒むーい時間でした。このようにして私は一生に一度の絶好のシャッターチャンスを逃したのであった。

あまごと岩魚と翌檜
あすなろつぶやき