第十九話 不気味に光る四つの

 屋川の第二取水口があるところの階段を降り、赤い鉄橋を渡り谷に下る。渓は右岸、左岸とよれながら流れているが、反対側は小石が積まれた陸地があり徒渉は比較的簡単である。 暫くすると中央部が折れ落ちた鉄製の錆びた橋が掛かっている。 その下流部は深い淵であったが今は、埋まり1m程の深さになってしまっている。 この淵は非常に思い出深いところで、テンカラで随分良い思いをさせてもらった所である。 夕方になるとあちこちでアマゴのナイズが始まり、こんなにもアマゴ居るのかと思うぐらい激しかったものであるが最近では全く見ることがない。鉄橋をよじ登り越えるとチャラ瀬となるが直ぐに大きな淵に遭遇する。この淵の右岸真ん中に小さな陸地があるのでそこへは腰まで浸かりながら進むがそれ以上は無理である。 右岸の5〜6m垂直な崖を岩の割れ目や張り出した木の根を使ってよじ登る事となる。これは約十数年前の話である。 しかし、現在は土砂で埋まり浅くなっているので何の苦労もなく進むことが出来る。

何とか岩の割れ目を足掛かりにして2m位よじ登った、頭上を見ると灰褐色の太さ3cm位の木の根が大きく割れた岩の間に横に張り出していた。よし、これを掴んで体を引き上げようと思い右手を掛けたところ、その木の根が左横にズルーと動いた。 思わず腰が引けホールドしていた右足がすへり落ちそうになった。 おっとと・・・ あわてて左手で岩角を何とか掴み落下を免れた。 危なかったな!!!  でもあれは何んだろうと思い、 首を伸ばしてその枯れ枝が消えた大きく割れた岩の隙間覗き込んでみた。 そこに真っ暗であったが私の目と鼻の先約30cmのところに不気味に四ッの目玉らしい物が光っていた。 あわてて首を引っ込め何だろう? ??・・・と考えたが良く分からない。 2.3分後に再び怖い物見たさに反り返って距離を出来るだけ取りながら、そーと覗き込んでみた。 隙間の暗さに目が慣れてくるとやっと何がどうなっているのか様子が飲み込むことが出来た。 それは大きな灰色化したヤマカガシがガマガエルを足から飲み込んでいる最中の図であった。 岩の隙間は奥に行くほど狭くなっているので、大きなガマガエルを口に咥えたヤマカガシはそれ以上に奥に下がることが出来なく、丁度隙間にくさびを途中まで打った状態で停止しているようであった.。 ガマガエルの目は大きく見開かれており、私に助けを呼んでいるように思えたが・・・

この出来事があって以来、褐色の木の根を掴む時は根の前後充分注意をして見て、明らかに木の根であると確認出来た場合のみ掴まる事にしている。 やまかがしは大きくなるとまだら模様ガ消失して灰化する個体が多いとされているだけに間違いやすい。 ましてや、まだら模様であれば飛んで逃げることにしている。 それらはまむし又はやまかがしに違いないからである。 

茶屋川にはヤマカガシが多く生息しており、ツチノコ騒ぎが昔よりあると聞き及ぶ所である。あの大きなガマガエルを飲み込めばおそらくツチノコ状になるであろう・・・???

あまごと岩魚と翌檜
あすなろつぶやき
第二十話 あまご達の挽歌