第十七話 魚釣りをするサギ

ササゴイ(笹五位)の疑似餌漁

 近、渓流でルァーフイッシングを楽しむ釣り人が増えてきている。 その理由の一つは、餌釣り師がどうしても手が出せない、堰堤や大淵を攻めることが出来るからと思われる。 もう一つの理由としてひたすら歩いて奥を目指す源流釣りよりも、車で簡単に直接フィールドに入れる所謂『本流』と言われている中流、下流域が昨今の若者の人気を集めている。この流域は川幅が広いので当然ルァーフイッシングが本領を発揮する。又、常に一発大物の可能性を秘めているからでもある。 

 さて、前置きが長くなったがルァーフイッシングをするのは何も人間様だけではないのである。 数年前にNHKテレビで放映されたサギのルァーフイッシングを見たのである。 それはたしか熊本の水前寺公園とその周辺にすむササゴイという種類のかしこい? サギが小枝をくわえて水辺に行き、それを投げ落とすと同時に身を低くかがめ、小枝を餌と間違えた魚が寄って来るのを待ち、近づいて来ると身を投げ出してそれを咥えるのである。 しかしそんなに簡単に魚が寄ってくるものではないので、そのサギは繰り返し繰り返し小枝を水面に投げ入れてはくわえる動作をしていた。 

 自宅の裏手は農業用ため池があるが以前は今の倍の大きさの池であった。現在は半分程埋め立てられ、運動公園になっているもののそれでも結構な広さがありへらぶな釣り人やバス釣り人で四季を問わず適当に賑わっている。又、水鳥も多く訪れてくれる。 カイツブリ、ハシビロガモ、ホシハジロ、キンクロハジロ、カワウ、ユリカモメ、コサギ、ダイサギ、アオサギ等が冬場の常連客である。 自宅の窓より自然の水鳥をほんの目の前で観察出来る環境なのである。

 とある日、何時ものように自宅二階の窓より池を眺めていたところ、直ぐ裏手の水際に蒼灰色のサギが来ているのが見えた。いつものアオサギだろうと思っていたが何となくそれより小さいサギである。 うむ・・・何て云うサギだろう? と思いよく観察してみたところ面白い行動をしているのに気づいた。それは上記のNHKテレビで放映されたサギのルァーフイッシングそのものであったのである! 

小枝をくわえて深さ10cm程の浅瀬にたたずみ、それを投げ落とすと同時に身を低くかがめ、小枝を餌と間違えた魚が寄って来るのを待ち、小魚が寄って来ないと4〜5秒後に再び小枝をくわえなおし足元に投げるのである。なかなか小魚がよってこないのだろう、そのサギは繰り返し繰り返し小枝を水面に投げ入れてはくわえる動作を繰り返していた。 これはまたと無いシャッターチャンスと思い、慌ててカメラを取りに行こうとした瞬間、バタバタと大きな羽音がしてそのサギが空に舞い上がってしまったのである。 非常に残念であった。

飛び立った原因は直ぐに判明した。 それは左手の水辺の葦の間からバス釣りの若者がルァー竿を片手に持ち歩いて出て来たのであった。 私は思わず心の中で叫んだ 間抜け! 頓馬!馬鹿者!・・どうしてくれるんだ!・・・・・・ 

その後常に注意をして池を観察しているが、再びササゴイと思われるこのサギが池に訪れてこない。 したがって写真が無いのは残念です。
追記 :このぺージを作成した翌朝、何時もの様に水鳥を脅かさないようにそろりと雨戸を開けるとなんと目の前にササゴイらしいサギが来ていた。約一年振りの再会と喜んだ。しかしながら後でよく写真を見ると、頭の後ろに白い飾り羽があるようなのでどうもゴイサギらしい。ササゴイは日本には夏鳥として飛来するとあるのでおかしいとは思ったものであるが・・・
しかしながらめったに姿を見せないサギが現れたのは運命のいたずらを感じている。
アオサギは毎日のように来てくれる。 かもは常に100〜300羽は居るようだ。
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あすなろつぶやき

ササゴイ(笹五位)の名前の由来

普通、サギの名前は○○サギと命名されているがこのサギはそうではなく、ゴイサギに良く似ているのでゴイと命名されていると思われる。 このゴイは漢字では五位と表される。これは、醍醐天皇がゴイサギ゙を見つけ、捕えるように家来に命じたところ、家来が近づいても逃げようとせずおとなしくつかまり、天皇は、命令にさからわず神妙であると、このトリに五位の位を与えたと平家物語の中に記述されている。 又、ササゴイの笹は羽根をたたんだ側面が丁度笹を束ねたような色合いをしていることより付けられたものと思われる。 すなわち、ゴイサギに似た、笹のような羽根を持った鳥と言う意味より命名されたものと思われる。

第十八話 夜明け前、
 渓にこだます不思議な音

2011.8-9月撮影