2002.8.9 愛知川上流

 ピュウー ピュウーと鹿の警戒鳴き声が先ほどからずっと聞こえてくる。 私は渓沿いの二メートルほど高くなった伐採地を歩いている。 口笛で真似て返すと少し間をおいて直ぐに鳴き声が帰ってくる、
やがて伐採地が終わり渓に戻り又遡行を始めた途端、急斜面になった左岸の樹木の切れ目より鹿が飛び出し直ぐに樹木の茂みに吸い込まれるように消えた。  かもしかは時々見かけるが今年になって初めて鹿の姿を見た。 何と鹿やかもしかの多い谷だろうか。
この谷は昭和の始め頃はシガノ谷と呼ばれていたと聞き及ぶがシカノ谷と言ってもおかしくないと思う。 
渓の砂地にはかもしか、鹿の足跡が入り乱れてくっきりと残っており、又、黒豆を二回り程大きくした如くの糞があちこちにある。
釣り終えて荒れた林道を駐車地まで戻る途中で突然の夕立に見舞われた。 大粒の雨が雷鳴と共に降り注ぎ前が良く見えない程であった。
この雨は釣り人の足跡を渓から綺麗に消し去って、ひと時の静かな自然の姿に戻ってくれることを願いながら急ぎ足で車のある方向へ向かった。 

 八月に入ってから弟子の一人からEメールが届いた。 釣り人、キャンパー、沢登りの人がひしめき今や銀座通りと化した渓にそれも日曜日に出かけて行きそこそこの釣果を得たとの報告である。 しかもご丁寧にも釣り上げたあまごを両手に持って満身の笑みをたたえた添付写真を添えて。
例年八月の愛知川上流はどの川へ行っても釣果に恵まれたことが無いので、ここ数年はお休みしていたのであるが弟子のこの便りを見て重い腰を上げた。  当然出かけることを誰にも告げないでである。
夜明け前に入渓地に着きたがったが少し遅れて神埼橋に着いた、キャンプ地には数個のテントが張られているが人影は無いく静かな夜明け風情であった。 気温は22℃程度で今日も暑い一日が始まりそうであったが幸いにも通りすがりの林道には2〜3台程度見られただけであった。 何とか成りそうと思ったが水量は非常に少なく、釣り人にとってはつらい感じがした。 
 


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