2002.1.24

お巻き事件
 

「お巻き」いわゆる「巻きずし」は私の好物のひとつに挙げられる。
どうして好きなのかはよくわからない。
「好き」には理由がないことが
ほとんどなのではないだろうか。

どっちか言うと甘めが好みだが、
あんまり甘くてもいけないし、あんまりあっさりしていてもいけない。

適度に甘みがあり、何よりご飯の一粒一粒が
独立していること。

べちゃ!と、ご飯の粒同士がくっついてしまっている
すし飯はいただけない。

そして、具には
「かんぴょう」と「キュウリ」と「卵焼き」と「しいたけ」。
紅ショウガなど入っていると更に素敵だ。

某スーパーの「お巻き」が私の口に合う(お値段も)
とわかってから、週に一度はそこで「お巻き」を買って帰る。

もちろん沙羅も「お巻き」は大好きだ。
(別にお巻きでなくても なんでも好きなんだろうけど)


その日も私は某スーパーに寄り、
「お巻き」を買った。
夕方だったので298円がなんと250円になっていた。
ラッキーー!


「お巻き」だけでは栄養のバランスが・・・
と思ったのでサラダも一緒に買う。
家には朝の残りのお味噌汁があったので、
今夜はそれにしよう。とウキウキと家路につく。
一日の仕事の疲れも吹き飛ぶ瞬間だ。



帰って鍋のお味噌汁をあっため、
サラダを出して食卓に並べる。

この頃は帰りがいつも8時頃なので、
晩ご飯はこういう・・・時間のかからない物
いわゆる「手抜き」が主流だ。
(田舎へ帰るたびに母が言う「ちゃんと食べてるか?」
という言葉もわからなくはないが、
野菜はちゃんと取っとるとよ かあちゃん!
            ・・どこの生まれや!)


小皿(テショウと言うのが通だ)にお醤油を少し注ぐ。

そのままでもおいしいが、やはりすし飯には
少量の醤油があった方がおいしい。

熱いお茶も用意して、

「いただきまーす!」
と手を合わせる。


その時


ゆーきやこんこっ!
あられやこんこっ!


という歌が・・・・



「灯油売り」である
一週間に一回、家の前まで灯油を入れに来てくれる
便利な灯油屋さん。

「灯油買わなくちゃ!」

これを逃すと、また一週間待たなくてはいけない。
寒いのが苦手な私としては、なんとしても
「灯油がなくなる不安」からは身を守りたい。

とりあえず、「お巻き」は流しの上へ移動。
沙羅がよだれを垂らして見ている。

テーブルよりは流しの方が安全だと思ったのだ。


そして


灯油は無事に確保することが出来、


玄関を入った瞬間に
バサッ!という音がして、
沙羅があわてて階段を駆け上っていくのが見えた。


えっ???!!!


はっ!!!


そして私は一瞬にして悟った。



アイツ〜っ!!!


すぐに二階へ駆け上り、

驚いている沙羅の周りを見る。


お巻きは?


私のお巻きは?



その辺には見あたらなかった。



沙羅を見ると、

何やら必死で口をつぐんでいる。


どうやら、お巻きをまるまる一本 口に入れているらしい。


私は怒り、
無理矢理に沙羅の口をこじ開けて手を突っ込んだ。


あっ

お巻きがあった。


つかんで取り出す。


出てきたお巻きは「4切れ」だった。


なんと

おそるべし


残りの


うーん


何切れあったのかはわからないが、
お巻きの3分の2以上は
沙羅に一瞬にして飲み込まれたことになる。


くっそー


私はそのよだれだらけの「4切れのお巻き」を
どうしても沙羅に食べさす気にはなれず、
ゴミ箱のふたを開けてえいやっ!と放り込んだ。



その後



テショウに残されたお醤油を見つめ
私が途方に暮れたのは
言うまでもないだろう。



ご飯がないよーー!!


    


そして、
その夜のメニューは

「サラダ」と「お味噌汁と」

次の日のために買った

「パン」

に、なったのであった。


私が泣く泣くそれを食べていると、
沙羅がきて、よだれをタラリタラリと流し続けたが、
もちろんもらえるわけは


ないのじゃ!