2002.9.15

近所のおじさん
                    
byきよ


私の近所に「変わり者」と言われているおじさんがいる。
おじさんのところには「ジョン」という柴系の雑種犬がいる。


どうして「変わり者」と言われているのか、わかるようでわからない
人はみんな自然体で生きようと思ったら
「変わり者」になってしまうのではないだろうか


人にあまり気を遣う事をせず、人にも気を遣わせない。

そんな人はいつでも「常識知らずの変わり者」になってしまう。

それはわざと人に気を遣わないのではなくて、
遣うのが下手なのである。

要するに「人付き合いが苦手」というのだろうか


だけど、

「付き合いにくい」というのではない


こういう人から見れば、「気を遣ってくれる人」の方が「付き合いにくい」

なぜならば

「気を遣う人」は、おいそれと「本音を言わない」

「いいですよ。」「かまわないですよ。」
と、口では言っているが、本心ではちっともよく思ってないことがままあるのだ。



「自然体の人間」は、とても素直なので、
その「いいですよ。」をそのまま鵜呑みにしてしまう。

そしてほっておくと、いつの間にか自分に
「非常識な人」のレッテルを貼られてしまうのだ。



「いいですよ。」を鵜呑みにしている人は
本心から「いいですよ。」を口にできる人なのに・・・・

いつもソンをしてしまうのだ。



私はそのおじさんの事がよくわかる。

なぜなら

私も

そういう類の人間だからだ。




おじさんの飼っていたラブが死んだとき、
私はたまたまそこを通りかかって、

そしておじさんと一緒に泣いた。


「ラブがいちばんかわいかったのに・・・」

「ラブが死んでしまった以上、沙羅ちゃんだけが、おっちゃんの楽しみや。」

と、おじさんは言った。

「ジョンがいるやん。」
と私はなぐさめた。



ラブは家の中で飼われていて、ジョンはガレージに住んでいる。

ジョンはところかまわずマーキングするので、
家の中へは上げてもらえない

それ以来、いつもおじさんはジョンと一緒にガレージの前にいる。



沙羅が通ると嬉しそうにかまってくれる。



ただ


困ることが一つあるのだ。



それは
おじさんが沙羅に缶詰を開けてくれること。



沙羅には今まで缶詰をやらないできた。


缶詰は歯垢が付きやすいからで、
それからちゃんと自分で選んだ「自然食」のフードを
与えてやりたいからだ


沙羅は生まれつき皮膚があまり強くなく、アレルギー体質だと
獣医さんに言われた


そのため、なるべく添加物のないフードをやるようにしてきた。



缶詰がそんなに身体に悪いのかどうかは
わからないけれど、
おじさんは毎晩、沙羅に缶詰を一缶開けてくれる。

沙羅はそれをまるで狂ったように食べる。

それがおじさんには嬉しいようだ。



苦笑いしながら帰宅する日が続いた。



そしてこの夏



原因はよくわからないが、
沙羅のお腹に赤いぶつぶつができた

獣医さんに行ってもなかなか治らない




知らず知らずに
おじさんの家の前を避けるようになってしまった




おじさんが嫌いなわけではない


近所の人たちのように
おじさんを「変わり者」と呼んで挨拶もしない・・・

そんな人の仲間入りだけはしたくない




けれど・・・






何日かおじさんに会わない日が続いて
久しぶりにおじさんの家の前を通ったら、

おじさんはすごく喜んで、

沙羅に缶詰を



2缶も開けてくれた。



ああ


おじさん

ごめんなさい



沙羅のぶつぶつ

まだ治らない



どうやって伝えればいいのだろう


沙羅だけが楽しみだと言っていたおじさんに




私は、人付き合いが下手くそで、
口べたな人間だ


こんな時は、口の上手な人をうらやましく思う。



私には勇気がない。


おじさん


本当に

ごめんなさい