2003.4.25

最新型掃除機

先日、20年近く使っていた掃除機がついに壊れた。


何度もスイッチがきかなくなったりし、自分で分解して、適当に修理して使ってきた。

ここのところ、スイッチを入れて暫く待たないと動いてくれなかったのだが、
ついにウンともスンとも言わなくなってしまった。

長年愛用したその赤い掃除機は、テントウムシのデザインをしていて、
ちゃんと七星のシールもあり、かわいい目もついていた。

けっこうお気に入りの掃除機で、沙羅も初めてこの掃除機を私が出してきたときには、
友達だと思って、大喜びでシッポを振って挨拶したものだ。
でも

沙羅が、あんまり掃除の邪魔をするので、ほっぺたをギュイーンと
吸い付かせたら、それきり近寄ってこなくなった。

(犬はこうやって、どんどん自分にとって不快なものを学習していくのだ。)



うちには掃除機が二台ある。


「一階用」と「二階用」である。
アパートの「平面暮らし」から二階建ての一軒家に引っ越したとき、

「階段がある生活というのはなんとしんどいことか・・・」
と何度思ったことだろう。


今まではCDだって、どこにいても聞けたのに、
二階建てになると、二台必要になってくるのだ。




二階を掃除する時にいちいち下まで掃除機を取りに行くのが
面倒で、とうとう掃除機を二台買ってしまった。


そして一台壊れてしまったら、「残りの一台で我慢する」
というわけにはいかなくなる。

人間はなかなか一度覚えた便利さを手放すことはできないものなのだ。


そこで早速次の日、仕事帰りに電気屋さんに掃除機を物色に行く。


まあや

なんと


いろんな掃除機があるものだ。


昔ながらのクラシックな物もあり、

まるでロボットのような最新型の掃除機もあり・・・
しかも値段もピンからキリまである。


う〜む


掃除機なんて7000円位のもんでいい。


と、思っていた私は、

4980円の掃除機の前でしばし佇む。


すると、店員さんが声を掛けてきた。

「掃除機ですか?」


「は・はい」


そりゃ掃除機を見ているのに、「冷蔵庫ですか?」とは、
聞かないわな、普通は・・・


「4980円の掃除機」を今にも購入しようとしている私に向かって、
店員さんは

「これからは、なんといってもサイクロンですよ。」
と、言ってきた。




サイクロン????


「サイクロンって、なんですか?」


なんでも聞かないと気が済まない向学心満々の私である。


店員さんの説明によると、サイクロンというのは、
吸った空気がゴミの中を通らずに出る仕組みになっていて、
排気がきれいなのだそうだ。

それに、「紙パック」も要らないらしい。


だけど、


サイクロンは一番安いものでも27800円の値札が付いている。


掃除機に27800円はないでしょう?


「高いですねえ¥¥¥¥」


と渋る私に、

「それでも これからずっと紙パックを買い続けることを思ったら、
絶対悪い買い物ではないですよ。
ここはひとつ、騙されたと思ってサイクロンにしといてください。」

「値段も勉強させてもらいますから」



「えっ? いくらにしてくれるの?」



「25000円でいかがですか?」



「えっ? こっちのやつやったら4980円やで。」


「お客様、そんな化石みたいな掃除機と比べられたら困ります。
こちらにされたら、ほんとにお掃除が楽になりますよー」




う〜ん



私はそのロボットみたいな掃除機を持ち上げてみた。

「ねっ?軽いでしょ?」

と店員さんはすかさず言うが、


「えっ  重く感じるんですけどお・・・」

と、思ったままを口にする。


そこで、悩むことしばし・・・



「せやけど、・・・高いなあ・・・・・」
 
独り言のようにつぶやく私に、

「わかりました。これが残りの一台なので、特別に19800円
にしときますわ。」

と店員さん。


「えっ??」


「27800円」が「19800円」になるか?
すごいっ!!



と、一瞬感激した私だが、
最初から7000円位のやつと、思ってきたのだ。

店員さんの目の前で、財布を開けて見せ、
「16000円しか、持ってへんもん。」

と言うと、


「大丈夫ですよ。お取り置きしておきます。」
と言うではないか。

なんや、「しょうがないですね16000円にしときまっさ。」と言うかと
思たのに・・・無理かあ・・・


しかし、これほどまでに店員さんが勧めるのならば・・・
という思いも働き、「いっちょ最新式にしてみっか」と
気持ちは動き始める。



それに店員さんの話では、この先この「紙パック不要」の掃除機が
主流になってくるのだという。

そうなれば、何年先になるのかはわからないけれど、
紙パックの入手が困難になるということも考えられないことはない。


昔、ビデオデッキが出始めたとき、「VHS」の他に、「ベータ」というのがあり、
そして、いつの間にかVHSが主流になり、「ベータ」は隅へ隅へと追いやられ、
今や「ベータ」など、知らない人さえいるほどなのだ。
どっちにしようか迷って、ベータ式のビデオデッキを買ってしまった人は、
さぞや悔しい思いをしたことだろう。
ご心中をお察しいたします。



やはり、時代はサイクロンか・・・

しかしですよ。

昔の掃除機にはもともと「紙パック」なんて無かったじゃん。


昔の掃除機は炊飯器のような形をしていて、
おひつのふたを開けると、灰色の布のついたふたがもう一つある。
その布はだぶだぶとまるで「ふん伸びたブルーマ」のような形をしていて、
そして、グリグリまわすハンドルのような物がついている。

ブルーマのふたをはずす前に、まずそのハンドルを
グリグリと回してブルーマの裏側についた埃を落とすのだ。
カチカチカチカチ・・・


パッカリ ふたを取ると、モワモワと綿埃と一緒にゴミが現れる。
これをゴミ箱の上でひっくり返してゴミを捨てるのだが、
そのモワモワは、あたりに広がり、掃除機のゴミを捨てたあと、
また掃除機を掛けなくてはならなくなる。


この「モワモワ」を何とかするために発明されたのが
「紙パック」なのだろう。

そして
いつしか掃除機は「紙パック」が主流になり、「紙パック」無くしては
掃除も出来ない世の中になっていた。


それなのになんだ。

ここにきて、また「紙パック」を無しにするとは・・・

ほんとに、勝手な奴らだ。


経済を豊かにするためには、物が売れないといけないし、
今までとおんなじ物を作っていたのではダメということか・・・

最新・最新・・・ 

一体どこまで科学は進歩するのか


そう言えば、アトムの誕生日がこの間来たけれど、
ジェット噴射の付いた「空を飛べる靴」ができる時代も
そう遠くはないのかもしれない。

いやいや、私はそんな時代がやってきても
沙羅と一緒に、折々の季節を楽しみながらのんびりと歩くのだ。
(もっともその頃には私も沙羅も生きてないわな)




ずいぶん話が飛んでしまった。



最新式の掃除機を買うかどうか・・・
殆ど80%くらい「買う」方に気持ちが傾いてきた私だ。


ふと、家のテントウ虫を思い出した。
壊れてしまったテントウムシ・・・


テントムシ〜  こわれた〜

(あっ それはゼンマイ仕掛けの「カブトムシ」だった)


この前ゴエモンが死んで、
亡骸を保健所の人に引き取ってもらった事を思い出しながら、
(私の中ではゴエモンも掃除機も同じ位置なのか???)


「壊れた掃除機引き取ってもらえますか?」

と、店員さんに聞いてみた。

すると、店員さんは

「ええ いいですよ!」
と、快い返事をしてくれる。


これで、決まりだ。


「じゃあ 一旦家に帰って、
お金とテントウ虫、いや掃除機を持ってきます。」





こんな風にして、最新型の掃除機がうちにやってきた。

そのロボットのような風貌は、どうしてもうちのインテリアとは合わない。

かといっていちいち掃除機を押入にしまうのも 押入から出すのも面倒だ。


ナチュラルなカゴに入れておくというのはどうだろう?


でも、掃除機が入るだけのカゴなど無い。

それにロボット掃除機はカゴに入るのをあきらかに嫌がっている。



仕方がない


とりあえず、掃除機と同じ淡いピンクの深型ランドリーバスケットを
買ってきて、そこに納め、洗面所に置くことにした。

うむ

なんとか収まった。



その後、

サイクロンは、スバラシイ働きをしてくれることがわかった。
吸い込み口がタテに、ヨコに、ナナメにと、こまめに向きを変えて、
テントウ虫にはできなかった技も楽々とこなしてくれる。


ゴミ捨てもずいぶんと楽になった。


外してぽんっ!!

で済んでしまう。


最近めっきりあったかくなって、沙羅の抜け毛もピークを迎えているので、
ほんとにこれは助かってしまう。


サイクロン掃除機

万々歳!!



       



勧めてくれた店員さんにもお礼を言わなければいけない。
(だけど思わぬ出費が痛かったのでやっぱり言わない)