2003.1.3

「ギター」



ギターが弾けたらいいなあ・・・


テレビなどで、ギターを何気なく弾いて歌っている人を見るたびに
あこがれていた。


でも 私には遠い存在だった。

中学生の時、兄が持っていた「フォーク・ギター」

少し触ってはみたけれど、指がすぐに痛くなるし、
私の小さい手には、本に書いてあるようにすべての弦を
押さえるのはとうてい無理だと思われた。


今から思えば、その時に私のギターへの思いは
封印されてしまっていたのであろう。


ところがなんでまた?

と、思われるかもしれない。



ある日
大好きな通販のカタログを見ていたとき、
クリスマス・プレゼント特集として
「フォークギター」が掲載されていたのだ。

値段は9800円
とお手頃だった。


とってもかわいい白いギターを女の子が抱えている写真。



私にも弾けるかもしれない



再び私のギターへの思いは再燃する。



私は通販が大好きだけれど、
すぐに欲しい物は通販では買わない。

すぐに欲しい物は、やっぱり
今すぐにでも手に入れたいのだ。



さっそく近くの楽器屋さんへ行く。



あるわ あるわ


さまざまなギターが陳列されていた。



ひとつひとつ眺めていると、
お店のおじさんが
「ギターですか?」 と声を掛けてきた。



何かを始めるときは、やはり直接お店に出かけるに限る。

知らないことを質問して、
教えてもらえるからだ。


「こんな小さい手でも弾けますかねえ?」

「普通はこう、ジャーン!って弾くもんなんですか?」

「指で弾くんですか?」

「親指ですか?」

「指が痛くならない弦もあるんですか?」

「小さいやつがいいんですけど・・・」



おじさんは、とても親切に私の質問に答えてくれた。


そして、

その中から、ひとつのギターが私の目にとまる。

なんて事はない、普通の木目のギターだ。
(ほんとはもっとおしゃれなやつを捜していたのだけど)

そのギターは、確かに他のギターと比べて小振りで、
右手で抱えたときに私の身体にすっぽりと収まった。


「これにします。」



おじさんは、私が選んだギターを掃除して
弦を張り替えてくれてた。

カポタストと、ピックと、電子音のチューナー
と、肩掛けベルト?をおまけしてくれた。
もちろんギターケースも・・・

「ギター教室を一回だけ無料で受けられますよ。」
とおじさんに勧められたが、なんだか恥ずかしくて・・・
代わりに「入門ビデオ」を買うことにした。



ケースに入ったギターを手にすると、
なんだか自分が突然ミュージシャンになったような気がした。

少し気恥ずかしい。




帰ってきてさっそく音を出す。


「最初は大変ですよ。」
おじさんは言ったけれど、


その通りだった。


「Am」とか「C」とか「G」は押さえられたが、

問題は「F」であった。

小指と薬指と中指で、それぞれの弦を一本ずつ押さえ、
その上、人差し指で全部の弦を押さえるのだ。

この 指の腹で何本かの弦をまとめて押さえることを
専門用語では「セーハ」と言うらしい。

なんとか指の形はとってはみるが、
右手で弦をはじいてみると、「ぽん」「ぽん」と、
なんとも情けない音がする。

仕方がないので、「F」が出てくると、
セーハをしなくてもすむ「F7」でごまかして弾くことにした。



それでも
ギターを弾くのは楽しかった。


家にあった「ヒット曲集」を出してきて、
ギターを弾きながら懐かしい歌を歌う。

昔、流行った曲。

かぐや姫 

イルカ

吉田拓郎

中村雅俊


「およげタイ焼きくん」

キャンディーズの「微笑みがえし」

山口百恵に桜田淳子



ああ



私は時を忘れ、

毎日ギターを弾いた。




ギターを弾くと、1時間2時間は
あっという間に経ってしまう。


痛かった指先も だんだんと皮が厚くなってきて、
それほど痛くなくなってきた。

最初は無理だと思われた「セーハ」も
いつのまにか押さえられるようになっていた。


でも

あまりにも長時間、右手の人差し指を
ギュッと曲げたままでいるせいか、

朝起きたら、人差し指が痛くて曲がらなくなってきた。


歳だなあ・・・?



それでも

その指をマッサージしながら、
毎日、毎日ギターを弾き続ける。


子供の時からピアノをやっていた私だが、
ピアノは持ち運びが容易ではない。

その点、ギターはどこにだって持っていけるし、
傍らに置いておいて、気の向いたときに手にして
気軽に楽しめる。

兄の子供に
「なんで沙羅は家の中で飼ってるの?」と聞かれたとき、

「外で飼ってたら、外に行かないと沙羅に会えないけど、
家の中で飼ってたら、いつでも沙羅に会えるやろ?」
と答えた私だが、
ギターもそれに似ている。


ギターって、なんて素晴らしいんだろう


      



ギターを始めてから、約2ヶ月。

「C調」と「G調」は、なんとか覚えたので、
難しい調も勝手に自分で書き換えて弾く。



 
お正月には、田舎へ帰る時もギターを背中に背負って帰った。




兄の次男も悦に入っている