2003.6.15

薄いテレビ


またまた散財をしてしまった。

えーいっ!!

と、思い切って買ったものの、

買ったその次の瞬間から後悔は始まった。


なんで、こんな高価な物、買ってしまったのだろう?


液晶テレビ   79800円

消費税を合わせると、83790円である。


あーーーー  バカ バカ バカ!



事の始まりは「ビデオ」である。

私は朝が早い(明るくなると目が覚める)ため、とーぜん夜寝るのも早い
のであるが、

遅くなると、次の日が辛いので、
10時以降のテレビは見ないことにしている。

したがって、
見たい番組はビデオに撮って見るようになった。
特に今、気に入っている番組は、
水曜10時の8チャンネル。
「水10」である。
(なんと言っても好きなのは、「ドンドコ」の「山口さん」)


何を隠そう、私はこういう「お笑いコント番組」が大好きなのである。

そのほか、「じっくり見たい番組」・「どうぶつ番組」・それから
「物まね王座決定戦」などをビデオに撮って見る。

だらだらと、どうでもいいテレビ番組が流れているのは
なんだか性に合わない。

そして、見始めたら、他に何もできずに見入ってしまって、
コマーシャルまでトイレに行けなくなる。この性格。

なんだか、テレビに主導権を握られているようで
いやになってしまう。


そんなわけで自分で主導権を握れる「ビデオ生活」が
身に付いてしまった今日この頃。


そのビデオが、先日壊れてしまった。


うちにあるのは「テレビ」と「ビデオ」が一体化した
「テレビデオ」である。

最初は、初めだけ、人の喋っている声がウォンウォン
言っていたのだが、
そのうち、ずっと、ウォンウォン しゃべるようになって、
不快なことこの上ない。

もう 我慢できない。

修理に出さなければ・・・・


けれど、前に壊れて修理に出したとき、
2週間もかかったことを思い出し、

2週間もビデオが使えない事を想像すると
それもまた我慢できない。と思う。


うちにはそのテレビデオの他に、もう一台テレビがあるので、
テレビを見るのには不自由しないのであるが、

やはり、ビデオが使えないのはねえ


それから、

「まだか、まだか、」
と、思いながら、

極めて事務的な、電気屋さんのペースに合わせて、
待たなければならないのも なんだか我慢できない。

(私ってこんなにわがままだったのかしら?)


そうだ!この際、ビデオデッキを一台買ってしまおう!

今あるテレビにビデオを繋げたら、
すべては解決するではないか、
そうすれば壊れるたびに、電気屋さんのペースに
かき回されることもないのだ。

明日は水曜日だ。
早くしないと間に合わない

そんな火曜日の夕方。
いつもの○○ムセンで、9800円のビデオを買って帰った。

店員の人は、13800円の三菱のビデオを強く勧めたが、
「狭い部屋なんだから小さいのでいいし、
メインに使う訳じゃないので、Gコードも付いてなくて構わない。」
と、言い切ってシャープのそれに決めた。


ビデオを手に入れ、いそいそと帰ってきて、
とりあえず沙羅の散歩だけはすませ、
晩ご飯もそこそこに、ビデオデッキをパッキンから取り出す。

リモコン。電池。端子コード。アンテナコード。
取扱説明書。

全部取り出して、二階に持って上がり、
二階に置いてあったテレビの端子を捜す。


あれっ?


????


差すとこ ないじゃん。



なんで?


二階のテレビには、イヤホンを差す穴が
ひとつ付いているだけであった。


買ってきたビデオを見るには
「赤。黄。白」の端子を差し込まないと見れないのだ。


でも、

たしか、昔。


このテレビでビデオを見ていたはず。


なんで?



一体どうやって見ていたのだろう?


うーむ。


20年くらい前の事を思い出そうとするが、
思い出せないものである。


しかたない。


このビデオ

明日返品してこよう。

私のテレビとは合わないみたいだ。


そういう結論にたどり着き、
一旦出したビデオデッキをもとのパッキンに納め、
その日は寝ることにする。



そして次の日、

水曜日だ。

幸い仕事は休みだったので、
3時頃、○○ムセンに行ってみた。

昨日の店員さんがいた。


「あの・・・昨日買って帰ったビデオ、
うちのテレビに合わないんですけど・・・」

「端子差すとこ ないんです。」


「なんとかビデオを見れる方法ないですかねえ・・・」

と、しつこく食い下がる私に、
店員さんは、

「残念ですが、無理ですねえ・・・
新しいテレビを買ってもらうしかないです。」


と言う。


ええっ? テレビ?


兄にもメールで相談したとき、そう言われたけれど、
20年前のテレビとはいえ、ちゃんと写っているのだ。

まだ使える物を処分してしまうなんて、
私にとっては、「犯罪」とも言える行為である。

テレビだってきっと、私んちで、
終生をまっとうしたいと思っているはず・・・

かと言って、3台目のテレビを買うなんて・・・


あんなでっかい物が3台もあるなんて・・・
それにどこに置く気?

沙羅の部屋に置くの?


私は、半分テレビを買う気になってはいたが、
思案しかねて売り場をぐるぐると練り歩いた。


なんで、電気屋さんの進歩って、
こんなにも早いのだろう?

この間も掃除機のことでカルチャーショックを
受けたところであったが、
またもや、私は憤りを覚えてしまった。


きっと、まだまだ、電気屋さんは進化を遂げるに違いない。
そして、ここに並んでいるテレビも、
いずれ使い物にならなくなるのだろうきっと。


それならば、同じようなテレビを買うよりも
もっと最新式のテレビを買った方がいいんじゃないだろうか?


そんな思いが私の頭をよぎり、
そして、
「液晶テレビコーナー」と、足を向けさせる。

そして

今までは見向きもしない売り場にやってきて、
私は目を見張ってしまった。


薄いっ!!


とにかく薄いっ!


話には聞いていたが、
液晶テレビってなんて薄いんだろう。


それに、いままで「画像がいまいち」と思っていた
液晶テレビの画像は、従来のテレビと変わりないほどに
なっていた。


う〜む。


最初に目をとめたのは「アイワ・ソニー」の13型

55800円

であった。


平日の昼間はヒマなのだろうか?

店員さんは、私の「ぐるぐる」「う〜ん」に、
辛抱強くずっとつき合ってくれた。


「薄いでしょ?軽いでしょ?
これなら、ビデオの上にでもちょこんと乗せられますよ。」



えっ?そうなんですか?

その一言で、私の気持ちは液晶テレビにぐぐっと
引きつけられてしまった。


なにしろ、
「狭い部屋」である。

テレビを買っても
ビデオを置く場所がない。

前に「テレビデオ」を買ったのもそんな理由からであった。


液晶かあ・・・


ビデオの上に置けるのかあ・・・



これにしようかなあ・・・



でもその13型と、横の15型を比べてみると、
どう見たって15型の方が、画面が見やすい。

どれどれ?


回りのテレビがみんなNHKを放送している中、
私は「アイワ・ソニーの13型」と「ソニーの15型」
のチャンネルを「ちちんぷい」という番組に合わせ、
どこが、どう違うかを検証した。


司会の男の人が文字を書いたパネルを見せると、
小さい文字が「13型」では非常に読みにくい。

うっ  これはっ


「15型」は「89800円」の値札が付いている。


店員さんに
「これやったら、なんぼにしてくれるん?」
と聞いてみた。

「そうですねえ。お客様には昨日もご購入して頂いてますし、
この商品は一週間前に入ったばっかりで、
ほんとはできないんですけど・・・1万円値引きさせてもらいますよ。」

ほんとかなあ・・・
それにしても
テレビに8万円は高いなあ・・・
でも13型の方にしてもあとで後悔するだろうし・・どうせなら・・・


店員さんは
「液晶テレビは10年くらいしてきたら
バックライトっていう後ろの電球を交換してください。
そしたら20年40年60年。
お客様のお子様の代、お孫さんの代・・・
何代にも渡ってずっと使えますよ。」
と言う。

そんなたいそうな。
思わず、

「ほんまかいな。
どうせまた20年もしたら、周辺機器と合わなくるんでしょ?

と、突っ込みを入れてしまった。

「これにします。」

と、店員さんに言った時。

店員さんは、まさか私が本当にそんな高価なものを
買うとは思っていなかったように驚いた。

「私なんか貧乏人ですから、ブラウン管のテレビしか
買えないんですけどねえ。やっぱり古いですかねえ。」


などと、言う。

なんやねん。それ


そして、その若い店員さんは
私よりもルンルンうれしそうな様子で、
テレビを持ってレジに案内してくれた。
(この人の手柄になるのだろうか?)

そして、その反対に私の方は?と言うと、

お金を払う時から、もう
後悔を始めていた。

いいんかいな

ほんまにいいんかいな。


と、思いながらお金を払い( もちろんカードで)、
車で待っていた沙羅の散歩をすませて
家に帰ってきた。

時間はもう6時になっていた。
またまた晩ご飯もそこそこに、パッキンを開ける。

人間って、罪悪感が伴う時は、あんまりうれしくないものなのね。



液晶テレビは、やはりとっても薄い。

いままでの大きな箱のようなテレビとはぜんぜん違っている。

私の部屋が急に近代化してしまったみたいだ。


しかし
液晶テレビの上には
15分近くも針が進んでいる壁時計がかかっている。
(正確に何分進んでいるのかは定かではない。
知らない間にどんどん進んでいくのだ。)
この壁時計が象徴しているように
私の生活は極めてアバウト&アナログなものであり、やはり
そこからしてデジタルちっくな液晶とは相反すると思われるのだが・・・
(時計の針がここまで進んでしまうと、かえって合わせられなくなるものだ。
今まで進んでいるものとして、それに合わせてきたのに、
合わせたことを忘れて仕事に遅刻してしまいそうで怖いからだ。)



みやちゃんも 途方にくれてしまったようだ。


今までテレビの上でくつろいでいたのに・・・


それでも薄い液晶テレビの上に乗ろうとして
飛びついてしまったみやちゃんを見たときには、
なんだかとってもかわいそうな事を
してしまったなあと、哀れになってしまうのであった。
(みやちゃんは、夜中にもトライしたらしく、
次の朝起きるとテレビの画面が上を向いていたのである)


そんなわけで
大枚をはたいて買った液晶テレビであるが、
ただ「薄い」という以外には、今のところ何もなく、

9800円のビデオの方が、

「へええっ  今時のビデオってすごい。
コマーシャルもカットできるんだあ。」

「へええっ  すごいっ このリモコン
20年前のテレビの失くしたリモコンの
代わりもできるんだあ。」

などと、感動している今日この頃である。


ちなみに

壊れたテレビデオは、今修理に出しているところ。

できあがりを焦ることもなく、いつでもいいって、感じだわあ


      



8万円もする液晶テレビにお金を払う瞬間から、

私は
罪悪感と後悔の伴う
「ほんまに いいんかいな」
と漠然とした思いにずっと捕らわれてきた。

その思いがどこからやってくるのか、
その時はわからなかったのだが、
落ち着いて考えてみると、
まず、

お金がない。貯金しなくては・・と、
日頃自分に言い聞かせているにも関わらず、
自分の欲望を抑えきれずお金を使ってしまったこと。

それから、

私の生活にテレビがどれだけの重要度を占めているのか?
テレビに、お金を使うことがそんなに価値のあるものなのか?
ということ。

液晶テレビを手に入れて、8万の価値のある「幸せ感」
が、得られるだろうか?ということ


そして、
「液晶テレビ」はまだまだ「発展途上」の段階にあり、
もう少し待ったら、もっと安価で性能の良いものが
出てくる可能性がある。ということ。


しかし、

「後悔している」
とは言っても 

もし仮にこのテレビを8万円で買ってあげる
という人が現れても売りたいとは思わない。

この後悔が本物になるかどうかはもう少し
先にならないとわからないからだ。


願わくば、

ソニーさんに
これ以上最新式を作らないで頂きたい。
と、言いたいが・・・ 無理でしょね

ところで、

最新式の電化製品を買った人は、
みんなこんな思いを抱いているのだろうか。


それとも
みんなはそれほど罪悪感も感じずに、
次々と最新式を買い換えていくのだろうか?



なんだか、世の中、間違っては・・・いないかい?


最後に

私は三菱の「ミニカトッポ」という車に乗っているが、
そろそろ走行距離も9万キロを超えるので、
車屋さんや友達に「そろそろ買い換えを」と
たびたび勧められる。

しかし、私はトッポがとっても気に入っていて、
手放したくないのである。
おんなじトッポの新車があれば考えてもいいのだけれど・・・

勧めてくれたお店の人に
「今、乗りたいと思う車がないんですよねえ。」
と、言っては不思議がられてしまうのである。

私が乗りたいと思う車を作ってくれないかなあ・・・

でも
ひょっとして

私の好みがおかしいの?

ああ

そういえば・・・


子供の頃

お兄ちゃんとミニカーで遊んでいた頃、


お兄ちゃんが「スポーツカー」ばかり欲しがる
のに対して、

私は牛を積めるトラック(かわいい牛も付いてるのよ)とか、
日通のトラックとか持ってたなあ・・・




懐かしいことを思い出した。