家賃保証業者が「滞納」リストづくり
賃貸住宅の入居者から保証料をとって連帯保証業を行う家賃債務保証業者13社が加入する全国賃貸保証業協会は、家賃滞納者のデータをまとめ(データベース化)、コンピューターで活用しすいようにしています。この“ブラックリスト”の活用は、低所得者の住まいをうばい、「ハウジングプア(住まいの貧困)」をさらに深刻化させます。
この家賃滞納者のデータには電話番号や免許証などの個人特定番号や滞納額が網羅され、5年間はその情報が残る仕組みになっています。
低収入のレッテルはられ入居差別されるおそれ
ブラックリストに載せられると、データを共有する業者らから過去の滞納を理由に保証を拒否される恐れがあります。家賃を払いたくても払えない低所得者が民間の賃貸住宅から排除されるということです。シングルマザーや障害者、非正規労働者などが低収入のレッテルを張られ、特定の層がまとめて入居差別される事態につながりかねません。
アメリカでは、物件明け渡しの裁判歴や逮捕歴などの情報をデータ化し、家主の求めに応じて提供する業務が、実際に問題になっているといいます。データ情報をもとに社会的弱者とされる人たちが入居差別されたのです。
すでに影響が
日本でも影響はすでに出ています。「追い出し屋」被害110番で相談活動を行う東京都借地借家人組合の佐藤富美雄会長は、「『データベースに載ったら、二度と部屋を借りられないぞ』と脅し、家賃取り立ての材料に使われた事例も把握している」と言います。
家賃保証業とは本来、自分で連帯保証人を立てられない人が、業者に保証料を支払うことで入居しやすくなるというものでした。ところが、自分で保証人を立てられる人にも保証会社をつけないと入居できないという契約が増加。強引に退去を迫る「追い出し屋」行為が社会問題になっています。
今国会で審議されている「追い出し屋規制法案」は、家賃保証会社への登録制度や悪質な取り立て行為への規制が盛り込まれています。しかし、一方でデータベース化を容認するなどの問題点もあります。日本弁護士連合会もデータベースの禁止を含む抜本的見直しを求める会長声明を出しました。
佐藤会長は、こう指摘します。「住まいは人権です。それを金もうけの手段にして利益を上げようとするようなことはやめさせなければなりません」