父母の願いに逆行する厚労省部会案
保護者や保育事業者から「保育を“カネ次第”にしてはならない」などの反対の声を押し切って、厚生労働省社会保障審議会少子化対策特別部会は24日、保育の仕組みを根本から変え、「直接契約」方式を導入する制度改悪案(第一次報告)を決定しました。
マスコミは、この厚生労働省案を「希望する保育所を選べる」「保育所の数が増える」と描いていますが本当にそうなるのでしょうか?
現在は親が市町村に保育所の利用を申し込み、市町村が優先度の高い順に入所を決定しています。今回の改悪では、親が子どもを抱え、複数の保育園を駆け回って入れるところを探すことになります。保育所は、入所選考という膨大な事務負担が生じます。
新制度になって、保育所が増える保障はありません。厚労省は、都道府県が財政負担をいやがって認可をしたがらないのが問題とし、都道府県の裁量権をなくし、最低基準を満たす事業者に参入を認めるとしています。これは本末転倒の話で、保育の予算を国が増やせば済む話です。
今回の改悪案では、自治体の保育実施義務がなくなり、保育所の整備計画や基盤整備をするしか役割がなくなります。
結局、企業などの参入を促すため、園庭や調理室の必置義務、保育室の面積基準などの最低基準を緩め、「質を下げて保育所を増やす」ということになります。
ドイツでは、保育所定員を3倍化する計画をうちだし、日本の保育予算の150年分も出しています。
「安心して預けられる保育所を増やして欲しい」「希望する保育所に入れるようにしてほしい」という切実な父母の願いにこたえる道は、抜本的に国が保育予算を増やすことです。
現行制度 | 厚労省案 | |
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入所まで | 保育が必要なら、希望する保育所を選んで市町村に申し込み、必要度の高い順に市町村が入所先を決定 | 市町村は保育の必要量を算定するだけ。親は自分で条件に合う保育所を探し、契約を結ぶ |
保育料は | 保育の利用時間にかかわらず、収入に応じた額を市町村に納入。滞納しても、追い出すことはしない | 保育サービスの対価として保育所に納入。滞納すれば、契約解除となる恐れ |
待機児は | ゼロになるよう保育所を整備する責任が自治体にある | 自治体の保育実施義務がなくなるので、掌握すらされなくなる恐れ |