「魂を見つけることができれば、戦わずとも勝てる可能性は確かにある。だが、Dと呼ばれる少年が多くの者に狙われているとなると、やはり戦う場面が必ず出てくる。たとえ、少年を確保しても、守り通すことは難しいだろう。
どうだろう、ナムル、一度はきみの頼みを断った私だが、きみを護衛する者をひとり付けようと思うのだが」
「えっ、それは本当ですか。願ってもないことです。ありがとうございます」
ラルウは、老人とナムルのやりとりを聞いているうちに、ひとつのことをひらめいたのである。2つの問題を一度に解決できるかも知れない妙案だった。
ラルウは、ガイを呼んでくるように、近くの弟子に頼んだ。
「あの時は、私も邪悪王を倒す方法を知らなかった。だから、せっかく頼んできたのに応えることができなかった。すまなかったな。しかし、こういうことなら力になれるかも知れない」
「とんでもありません。まるで夢のようです。ありがとうございます。ありがとうございます」
ナムルは絶望しかけていたところだったので、この思わぬ展開はそれこそ天にも昇るような心地だったのである。
「まるで、もう邪悪王の魂を見つけたような喜びようだな。」
老人もラルウもそのはしゃぎようを目を細めて眺めていた。
「およびでしょうか。先生」
ガイがまるで亡霊のように入り口のところに立っていた。
「おう、ガイ、ここへ来い」
ガイは神妙にラルウの前にかしこまった。
「ガイ、ここにいるナムルを守って、邪悪王の魂を取ってきてくれないか」
ガイは何を言われているのかわからないふうにポカンとしていた。
「どういうことですか」
「このナムルを守り、邪悪王の魂を力を合わせて、見つけて欲しいのだ。」
ガイはナムルをまじまじ見た。薄汚れた奴だなというのが最初の印象だった。
「この私が、この農民を守るのですか」
「そうだ。ナムルは見てのとおり農民だ。戦い方を知らない。
しかし、ナムルは自分の大切な人たちを守るために、邪悪王と戦おうとしている。彼を助けやってくれないか。私からもお願いする」
ガイは、ラルウが頭を下げたのに驚き、あわてた。
「先生、やめてください。私は先生のどんな頼みにも応えるつもりです。でも、」
「何か不服か」
「私は兵士として育てられてきました。国王を守るために戦うことこそ、兵士の使命であると教えられました。その私が、農民に従えと言われるのですか」
「従えとは言っておらん。助けてやってくれ。手伝ってやってくれと言っておるのだ。お前の力をナムルのために役立ててほしいのだ。それが結局は、国王のため、この国を守ることにつながるのだ。国王が、邪悪王の魂を求めているのだ。お前がその国王の期待に応えるチャンスなのだ。どうだ」
「ならば、私ひとりにお任せください」
「兵士としての自信を失っているお前にできるのか」
「そ、それは」
「ガイ、私はお前の力を信じている。ナムルを助け、邪悪王の魂を手にできた時、お前はさらに大きく成長でき、今度こそ揺るがぬ本物の自信を手にすることができると、私は思う。
それを成し遂げるかどうかは、お前しだいだ。どうだ、やってみないか」
「わかりました。もったいないお言葉です。そこまでの深いお考えとは知らず、申し訳ありません。私のことをそこまでお気にかけてくださり、ありがとうございます」
「では、やってくれるか」
「はい、喜んで」
ガイはラルウの前に深々と頭を下げた。しかし、ナムルの存在は頭から閉めだしていた。