高野一巳
2 ガイの嘆き
ガイは全く自信を失くしていた。彼は自分の部屋に閉じこもったままだった。人と顔を合わすのがこわかった。笑われるのがこわかった。傷つくのがこわかった。 都に虚無が広がっているのを耳にしたが、彼には興味がなかった。都の1部がすでに闇に取り込まれようとしているのを知っていたが、ガイにはどうでもよかった。 ガイは自分の将来には絶望だけが確実にあることがわかっていた。 ガイは兵士だった。人を殺すことが仕事だ。ガイは剣も気功も使う達人だった。どの試合にも負け知らずで、勝ってきた。将来を嘱望される若い兵士だったのである。 しかし、彼は誤って友を殺してしまったのだ。それ以来、彼には虫さえも殺すことができなくなってしまっていた。 彼の心の中は、永遠のように後悔が繰り返し渦巻き続けているのだった。あの時、こうであればよかった。その時こうしておくべきだった。そうすれば、そんなことにならなかったのに、そんなことばかり考えていた。 戦えなくなった兵士を見る目は冷たい。そんな世間の目が恐ろしかった。 ガイは敵を前にしたら、きっと逃げてしまうだろう。臆病者のレッテルを貼られるのは確実だ。彼はそれをとても恐れていたのである。 彼の閉じこもった部屋は暗い。闇がしだいに蝕んでいきつつあった。 |