高野一巳
4 どんないいことあるかな
オサムの毎日は何も変わりませんでした。相変わらずの生活、相変わらずの仕事、相変わらずの安月給でした。 すると、八百屋での地味な品出しの仕事には変わりがなかったのですが、何だか元気が出て張り切ってやる気になるのでした。 オサムは大切に商品を扱うようになると、きれいに見えるように並べたくなりました。お客様になった気持ちでよく見えるようにしたり、取りやすく置く工夫などもしました。きれいになると気持ちいいし、野菜もうれしそうだし、お客様にも喜ばれました。そうすると、また楽しくなるのでした。 商品のことも興味をもっていろいろ勉強するようになりました。いろいろわかるようになると、それがまた面白いのです。 やがて、オサムの担当している売り場の売れ行きが伸び始めました。 また、お客様に尋ねられてもいつもにこやかに親切にしかも丁寧に的確に受け答えするのが評判になってきました。 店長も以前はいやいや仏頂面して働き、乱暴に商品を扱ったリ、お客様に無愛想な対応をしていたものですから、いつもオサムにきつく怒鳴り、無理な仕事も押し付けてやろうと思ったのでしたが、今のオサムの働きぶりを見れば、大切に扱わざるをえなくなってきました。 オサムは以前ほど毎日の仕事がつらくなくなり、むしろ楽しく面白くなってきました。 仕事の量や質は変わっているようには思いませんが、なぜか以前より楽に感じるようにもなりました。 こうして馴染みのお客様が増え、お店の売上に貢献したおかげで、給料も以前より多くもらえるようになってきました。 やっぱり、幸運を呼ぶブレスレットだったんだ。オサムは心からそう信じるのでした。 |