ラスト・ファイター

高野一巳



11 会議

ホープジアースの本部では、首長の緊急会議が開かれていた。 ホープジアースの組織は、リーダー、サブリーダーの下に作戦部、情報部、戦闘部、 武器管理部、生活管理部があった。生活管理部の中にはさらに医療部や食糧部などがある。 これらの長が集められ、ヒカルのもたらした情報を検討していた。
「すると、ヒカルのせいでこの本部の場所が奴らに知られてしまったということなのですな。 帰ってきてくれたのはうれしかったが、困ったことをしてくれたものだ」 戦闘部長が言った。それにトノヤマが答えた。
「まだ、そうと決まったわけではない。しかし、ヒカルのその推測はおそらく当たっているだろう。 いや、当たっているものとして、動いた方がよかろう。今夜中に引っ越す準備をしてくれ」
「とんでもないことをしてくれたものだな。やつらしくないな」 生活管理部長が悪態をついた。
「これらの情報を知らせてくれるためにはしかたのないことだったのだろう」
「でも、あまりにも大きなリスクじゃないか。この本部は我々の最後の砦なのに」
「そのとおりだ。しかし、それに見合うだけの情報をもたらしてくれたんだ。 我々には幸いもう1つの秘密基地がある。それを考慮した上で、ヒカルはこの手を打ったのだ。 そして、この状況を逆に利用しようというのが、彼の提案だ。 この作戦はいわば、捨て身のものだ。

知ってのとおり、我々の武器も食糧も確保が難しくなってきている。心の病になるものも増えて きている。戦闘人員自体がすでに足りない状態だ。

ヒカルの情報によれば、奴らは我々を攻撃する態勢はすでに整えているらしい。後は位置の 確定を待つばかりのようだ。今回知れてなかったにせよ。知られるのは時間の問題だったろう。 我々にはもう後がないんだ。今がぎりぎりかも知れない。

ヒカルは有力な情報をもたらしてくれた。それに奴らは今グリゴンとかいうものとの戦闘を 控えてそちらに主力を注いでいるらしい。 今が我々が動く絶好のチャンスだと私は判断したのだが、諸君はどう思うね」
「確かにこの作戦は勝算がありそうに思います。ですが、基地1つ占拠したくらいでは 焼石に水のような気がしますが。他の基地からの攻撃が始まるだろうし、奴らの母艦がある 限り、我々にはどうしようもないのではありませんか」
「では、このまま、朽ち果てるのをじっと待つというのかな。 母艦を攻撃する策もヒカルは提案している。全く可能性がないわけではない。 基地を1つ占拠すれば、我々の自信や士気が高まるだろうし、新しい道が開けるかもしれない。

よし、ではこうしよう。すでに人手が足りないが、この作戦に反対のものは抜けてもらっても いい。とがめはしない。勝っても負けてもこれが我々にとって最後の戦いになるだろう」
「最後の、ですか。そうですね。我々はどの道、逃げ場がない。ならば、我々のありったけの 力をぶっつけやりましょう。わしはリーダーに従う」 戦闘部長が言った。
「確かに最後の花道を飾るにはふさわしい作戦かもしれませんね。私もやりましょう。 戦闘部が動くなら、私らも動かないわけにはいきませんからね」 武器管理部長が言った。
「私たちも全面的にバックアップします」生活管理部長が言った。
「我らは元より、リーダーに従います」情報部長が言う。
「この作戦に賭けてみましょう」作戦部長が言った。

全員一致が得られた。
「リーダー、ラストファイターですよね。」
「そうだ、ヒカルに負けないように、わしたちも最後まで戦士として戦い抜こうではないか。 そして、必ず勝とうではないか」
「おう。」トノムラは久々に彼らの目の中に熱いものを見た。 ひさしぶりに彼は武者震いした。


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