ラスト・ファイター

高野一巳



4 学習

学習室に監禁状態だった。そこから、外に出ることは許されなかった。 部屋には、捕まったときに身につけていた武器以外のものが置かれていた。 思ってもみなかったことだが、これはラッキーだとヒカルは思った。 大事なお守りがそこにあったのだ。

彼らは非常に進んだ高速学習のシステムを持っていた。 実は、ヒカルはこれと同等のポータブルなものを使った経験がある。 父が戦利品として、手にいれたものを改良したものだった。 そのおかげで、ヒカルは多くの知識を短期間に学んでいった。 徹底的な訓練のおかげで、彼は驚異的な記憶力を持っていた。 見たものを瞬間的に写真のように記憶でき、後で正確に思い出すことができる。 身体能力ばかりか精神能力や無意識を活用する力も徹底的に鍛え続けてきたのである。 ヒカルは、実はギャリオンの言葉を翻訳機を通さなくても、ある程度理解することが できた。その高速学習機のおかげである。 他にも、ギャリオンの機械の使い方をいくつか習得していた。だから、今与えられた学習システムは実は馴染みのあるものだった。

「敵に勝つには、自分と敵を知りつくせ」と父がよく言っていたのを思い出した。 幼いころから、父はひとりでも生き抜けるように、戦士として育てたのだった。 だから、ギャリオンについて、学べることはどんどん学び、研究していた。 今回、このことがおおいに役立った。

ヒカルはギャリオンの言いなりにはなりたくはなかった。 しかし、今は言われるとおりに動くよりしかたがなさそうだ。 その中から道を探っていこう。ヒカルは考えた。

奴らはかなりさまざまなシーンを想定して、それに対処する方法を練り上げていた。 そのため、非常に多くのことを短期間に習得する必要があった。 その過程で、さまざまな新しい情報に接する機会を得た。

ギャリオンは、人間を劣った人種として見くびっているようなところが多分にあった。 それに今の人間にはもはや、何の力もない。恐れるに足りないものだという思いが あったのだろう。今さら何ができるか。というわけである。 ヒカルがとても従順なことに気を許したという面もあったにちがいない。 また、彼が奴らの文字を理解することを知らないこともあったのだろう。 奴らは非常に無防備で甘かったのだ。

ヒカルはその隙をつき、自分の知識をフルに活かした。 その結果、とても重要な情報を手にいれることができた。 この情報を何とか、仲間に伝えたいと思った。 なかなかその方法が見つからなかったが思わぬ形で機会を得た。


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