ラスト・ファイター

高野一巳



2 地球侵略

奴らの侵略はあざやかだった。 奴らは早くから、地球に目をつけ、ずっと監視し、観察し、研究、調査を重ねて、 人間のことを知りつくし、入念に着々と準備をしていた。

たびたび目撃されたUFOのいくつかは彼らだったのだ。 月の裏側に基地を作り、ずっと観察しながら、機会を狙っていた。 やがて、大胆にも海底に基地を作ったこともあったらしい。知らない間に人類の中に深く入り込み、 そのうち、密かに多くの人間をコントロールして、スパイさせたり、協力させることも あったのだという。

奴らが襲ってきた時、すでに事前に手を回されて、人類の反撃を完全に封じられていたのだった。 軍事基地が驚くような正確さで、全世界で同時に攻撃されて、ほとんど一瞬のうちに 壊滅させられてしまったのである。人類は一瞬で丸腰となった。 人類は為すすべもなく、各国の首脳はあっけなく、奴らの支配下に下ってしまった。 丸腰にされて、武器を突き付けられては、どうしようもなかったとはいえ、 裏取引があったのかもしれない。事実、協力的だった人間には破格の待遇が処せられた。

奴らは自らをギャリオスと名乗った。地球人にはそう聞こえた。 その日から、我々人類は、奴らの奴隷と化してしまった。 そればかりか、奴らの食糧にもされた。つまり家畜でもあったのだ。

あちこちでレジスタンスが組織されて、激しい反撃が始まった。 無力な政府に愛想をつかせた人々が立ちあがったのだった。 そのグループのひとつをヒカルの父がリーダーとして率いていた。 しかし、武器の調達もままならず、装備も満足に揃えられない。 その上、科学力、技術力の差は格段に違っていたので、 レジスタンスたちは苦戦を強いられた。 次々に壊滅させられていった。

ヒカルの父はむやみに攻撃せずに、あらゆる手を使って、 奴らのことを徹底的に研究した。 他のグループとも連絡を取り合い、情報交換もした。 連携して、動くこともあった。 弱点を見つけては、ゲリラのように神出鬼没にピンポイントで 攻めるので、奴らも父の率いるグループ、「ホープジアース」には手を焼いた。 奴らは、ホープジアースを目の敵として、つけ狙った。

そして、ある時、裏をかかれて、ふいに襲われた。 父は母子を守るために必死に戦った。 母はヒカルを守るために、重症を負いながらも、必死に逃げた。 父と母は幼いヒカルを守りぬきながら、死んでいったのだった。

グループで父の片腕で親友だったトノムラ ユウイチは、ヒカルにその話を よく語ってきかせた。いかに父母とも勇敢であり、ヒカルをどんなに愛していたか。そして、彼の手で、ヒカルは最強の戦士として育てられた。 そして、やがて彼の名もまた、父に並んで、ギャリオスに知れ渡るようになったのである


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