ご先祖様を拝みましょう!
『加美っ子仏教』第26号(1998/01/01)より
加美中学校のみなさん、あけましておめでとうございます。
よい年が迎えられましたか。今きっとあなたは、新しい年を迎え新たな気
持ちで「今年こそは、○○をしよう。」と決意新たに張り切っていることだと
思います。
「一年の計は元旦にあり」とはよく言ったものです。今の気持ちを大切に
この一年を生き抜いてください。
ところで、最近、時代の趨勢もあって。お墓を新しくする家が増えてきま
した。
私たちの命の源であり私たちに命を与えてくださったご先祖様をおまつ
りするお墓を新しくきれいにすることは、大変結構なことだと思いますし、
ご先祖様も立派な住家ができてさぞ喜んでおられることでしょう。
それに加えて、お墓を新しくして親戚をたくさん招いて法事をするために
は、それだけたくさんのお金もかかるし、そんな結構な子孫の暮らしぶりを
見て、ご先祖様もさぞ満足しておられることでしょう。
こういう意味で、お墓参りの時に、
「立派なお墓ができて本当によかったですね。」
と言いますと、次のような答えが返ってくることが以前より多くなったような
気がします。
「さあ、それがですがな。わしらは、息子らには、わしらの供養をしてくれ
るように十分に頼んどるさかいに、息子の代は何とかねんごろに供養して
くれると思いまっせ。せやけど、それから先が問題でんがな。孫やその次
の代になったらもうわからしまへん。せやから、今、わしらが生きとるうちに
墓を新しいして、わしらの入るところを作った思うてまんねん。」
私は、
「そんなことはないですよ。お孫さんも、その次もちゃんと供養してくれます
よ。」
と答えはしたものの、お墓を新しく作られたことを手放しでは喜べない気が
してきました。
皆さんは、どう思いますか。
「おじいちゃんやおばあちゃんは私のことそんなに信用しとらへんのん
か。ちゃんと供養したげんのに。」
と自信を持って怒れる人は、怒ってください。そして、ねんごろに供養してあ
げてください。
しかし、おじいちゃんやおばあちゃんの本当に言いたいことは、孫を信用
するとか信用しないというようなことなのでしょうか。ここで、怒るのもいい
ですが、ちょっと考えてほしいのです。
老い先が短いと言ったら失礼になるかも知れませんが、そのようなお年
寄りが言われることに謙虚に耳を傾けてほしいのです。
私は、法事の席へ行きますとお経をあげる前に、
「女の人も子どもさんもお孫さんも、みんな出てきて一緒に拝んでくださ
い。」
と言うことにしています。
昔と時代が変わったとはいえ、まだまだ法事などの場には、男性が出る
もので、女性は台所で食事の用意をするものだと考えている人があるよう
です。子どもに至っては、自分のご先祖様の法事であるのに、日曜日や
土曜休日をいいことに、よそへ遊びに行って家にはいないという家もある
ようです。どうか法事の時には、親戚だけでなく、ご家族そろってご先祖様
を拝んであげてほしいのです。
「うちは仏さんがないから拝まんでもええねん。」
という人はいませんか。なるほど新宅家などで、その家には亡くなった人
がない家もあるでしょう。しかし、親のない子どもはありません。必ず、あ
なたには、お父さんとお母さんがおられます。そのお父さんとお母さんに
も、またお父さんとお母さんがおられます。そのお父さんとお母さんに
も…。
このように、あなたには、はるか遠い昔から受け継がれた命、ご先祖様
からいただいた命が、連綿と受け継がれているのです。ご先祖様を拝む
ことは、あなた自身の命の源を拝むことですから、とりもなおさず、あなた
自身の命を大切にすることになります。すなわち自分を大切にすることに
なります。
もし、拝み方がわからないという人があれば、お父さんやお母さんに聞い
て教えてもらいましょう。おじいさんやおばあさんに聞くのもいいことです。
そして、拝み方を聞く時に、お父さんやお母さん、おじいさんやおばあさん
の子どものころの話を聞きましょう。
嬉しかったこと、腹が立ったこと、苦しかったこと、悲しかったこと、楽し
かったこと。それらはみんなあなたの家の財産です。そのようなものが
あったからこそ、今のあなたが命をもって生きているのです。
その際、あなたの生まれた時から現在までの話もできるだけ詳しく聞い
てください。きっと生きる勇気がわいてくると思います。一所懸命勉強しよ
うと意欲もわいてくるでしょう。
あなたのこのような態度が、やがてまた次の世代に受け継がれ、あなた
もご先祖様として、子孫から拝まれることになるでしょう。
ご先祖様を拝みましょう!
自分を大切にするために!
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