タイム イズ タイム!ー新年度の始めにあたってー
『加美仏教』第116号(1993/05/01)より
新緑の候、皆様にはいよいよご清祥のこととお慶び申しあげます。今年
一年間、私が仏教会の理事を務めさせていただくことになりました。どうか
よろしくお願いいたします。
日頃は、当仏教会に深いご理解と温かいご支援を賜り誠にありがとうご
ざいます。
本年度もこの「加美仏教」第116号の発行をかわきりに、「加美っ子仏
教」の発行、参拝旅行、夏・秋の托鉢、仏教徒の集い、夏・秋の仏教講演
会、中学生の夏期講座、秋・春の英霊塔参拝、歳末見舞い、長寿者お祝
い、善意の日預託、愛の持ち寄り等々の恒例の事業を計画しております。
このような諸活動が毎年滞りなく実施できますのも皆様方からお寄せいた
だきました尊い托鉢のご浄財のおかげと、会員一同、ひとえに感謝申しあ
げる次第でございます。
さて、最近考えさせられたことのひとつ。
この間、あるパンフレットに、「タイム イズ タイム!」と書いてあるのを
目にしました。 フォークソング歌手の高石ともやさんが、公演をしながら
アイルランドを旅行した時のことです。当地の友人に「タイム イズ マネー」
(時は金なり)ということばはアイルランドにはないと言われて、とてもびっく
りされたそうです。
アイルランドでは、「タイム イズ タイム」(時は時だ)と言い、その意味
は、「時間は神から与えられた大切なもので、お金などには換えられないも
のだ」ということだそうです。
私は、この何気ない記事を読んでハッとさせられました。これまで、私は
ずいぶん忙しい生活をしてきたなあということです。今もまったく忙しいこと
には変わりませんが、むしろそれを美徳のように考えてきた嫌いがありまし
た。
考えてみたら、このごろ新聞もろくに読んでいません。テレビはまったく見
ていないし、書物もこれといって読んでいません。こんなことでいいはずが
ありません。
「忙しい」というのは、「心を亡くす」、すなわち、「あれこれと気が散って落
ち着かない状態」だそうです。
「時は金なり」というのは、「時というものは金のように貴重なものだから、
浪費してはならない」ということですが、その結果として、私たちは、「休む
間もなく、考える間もなく、働き、勉強する」生活を送るようになってしまって
いたのではないだろうかと思うのです。
「時間を大切にする」という意味では、「タイム イズ マネー」というより
も、「タイム イズ タイム」と考える方が、より人間らしい、地に着いた生活
が送れるのではないでしょうか
日々の忙しさの中で、思索することの大切さをあらためて考えさせられた
次第です。
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