乙女会議2





3年6組の気まぐれで開かれた会議


別名 乙女会議


今回の議題は『彼氏への不満』

議長の英二から和やかに始まった彼氏の愚痴は・・・次の人物へとバトンを託されようとしていた。



「という訳でさ。大石の将来は慈善事業家でまとまったし。次、誰かない?」



菊丸が3人の顔を見回す。

ニコニコとハバネロを食べ続ける不二

あくまで目を合わせない海堂

その横でジュースを飲んでいたスーパールーキーが、おもむろに紙コップを机に置くと手を上げた。



「俺いいっスか?」



議題:彼氏への不満

ケース2.桃城



「おっ!おチビいいねっ〜流石攻めるね〜!」

「ういっス」



手を叩いて喜ぶ菊丸に、少しだけ頭を下げた越前が肩肘をついてその上に頬をのせた。



「桃先輩への不満といえば・・・

あの人ちょっと見境いなしみたいなところあるじゃないっスか・・」



少し間をおいて、小さく溜息をつく越前。

「あー・・」と同意しかけて、言葉を濁す菊丸。

その横では不二が楽しそうに「そーだね」と頷いている。


海堂は不二の相槌にようやく顔をあげ、隣のルーキーの顔を見た。


桃城武

青学2年・レギュラー

青学の曲者

表向きの彼は明るくひょうきんで誰からも慕われる存在だが

越前と付き合う前は、実は色々あった。

というよりもありすぎた。

手当たり次第女子に告白・・・桃城ご乱心事件

と、密か名づけられたその行為はまだ部員達の間でも記憶に新しい。


ただこの中には2人、それだけでは無い少し越前に後ろめたい部分を持っている部員がいた。


菊丸と海堂だ。


菊丸は越前がいない時期だったとはいえ、桃城に告白されている。

もちろんその時すでに大石に夢中だった菊丸はその告白を断った。

ただその行為は、菊丸に告白をするという意識を植え付け行動を起こさせたのだ。

その結果大石と付き合うようになり、今に至る。

言わば菊丸にとって、桃の見境の無さ?は自分に勇気をくれた行為で

隠れキューピッドなのだ。

その後、ご乱心事件もあったので褒め称える事は出来ないが、責める事も出来ない立場だった。

菊丸はおそるおそる越前に聞いた。



「まさか・・・・また誰かに告ったの?」

「いやそうじゃなくて・・・・・」



紙コップの渕を指でなぞりながら、珍しく言葉を選んでいるような後輩に


まさか・・・俺の事じゃねぇだろうな?


海堂はごくりと唾を飲み込んだ。

何故なら海堂も以前、桃城に告白されている。

それは乾と柳の事で悩んでいる時期で、自分が一番落ち込んでいる時だった。

突然のライバルからの告白

戸惑いもあったが、それがきっかけで海堂はいつもの自分を取り戻せた。

その結果、乾とめでたく付き合う事になったのだ。

言わば海堂にとっても、桃の見境の無さ?は、自分に勇気をくれた行為。

隠れキューピッド

たが海堂は、菊丸と違いその事実を素直には認めたくないという気持ちもあった。

だから心の中では常に否定していたのだ。

アイツは関係ねぇ・・・


ただその後、いつもと変わらなく接していた桃城がご乱心事件を起こしたり・・・

知らない間に越前と付き合っていたり・・・

密かに自分が関係しているんじゃないか?と、悩んだ時期もあったのだ。

海堂はおそるおそる聞いた。



「あいつ・・・お前に何かしたのか・・・?」



越前は海堂の方へと目線を向けた。

海堂はその大きな眼差しに、目線を外せない。

小さな間に海堂の動悸はピークに達した。



「違うっス・・・その逆っスよ・・・」



ぎゃ・・・逆?ってことは・・・まさか・・・

越前以外の頭にはてなマークが浮かぶと、越前は小さく溜息をついた。



「何もしてこないんっスよね」

「は?」



海堂が固まると、菊丸が「おー」とよくわからない感嘆の声をあげ、不二は「なるほど・・・」

と微笑みながら頷いている。

そしてそんな微笑を崩さないまま、不二は続けた。



「AとかBとかCとかしたいんだ」



Aとか・・B・・・?


海堂は一瞬で固まった。

一体この人は何を言っているんだ?

そんな綺麗な顔で・・・そんな笑顔で・・・?

えっ・・越前に・・・越前に・・・越前はまだ1年だよな?



「ふふふ・・・・不二先輩っ!」



この間1.5秒・・速いのか遅いのか・・・

話の流れにようやく追いついた海堂は不二にツッコンだ。

椅子から立ち上がり、前のめりに不二に詰め寄る。



「あんた後輩に何て事、言ってるんスか!?」



興奮するあまり、自分がその言葉の意味に気づいている事には気付いていない。

そんな海堂に菊丸が笑いを堪えながら話しかけた。



「まぁまぁ海堂落ち着いて、話は最後まで聞こうな」

「でも英二先輩・・」



ジトッと恨めしそうな目を向ける海堂

菊丸は心の中で呟いた。

面白いなぁ〜薫ちゃん・・・自分は知ってるって肯定してるようなもんなのに・・・

やっぱ乾に教わったのかな?

あぁ・・・聞きたい・・・

でも聞いたら・・・固まるんだろうな・・・でも聞きたい・・・

腑に落ちない海堂と悶々とする菊丸をよそに、ルーキーはしれっと答えた。



「そうっスね・・・まぁ人並みには・・・」

「O☆△×!!!」



海堂が言葉にならない言葉で、越前を見る。

菊丸は手を伸ばして海堂の肩を叩くと、椅子に座るように促した。

海堂は無言で椅子に座った。



「それだけ桃に大切にされているんじゃないの?」



不二はあくまで冷静に何事も無かったように、越前の質問に答える。



「そういうもんっスかね?」



越前も同じだ。

まるで横の2人のやり取りを気にしていない。



「僕はそう思うけど」



頬杖をついて優しく微笑む不二に、横から話に戻った菊丸がうんうん頷きながら付け加えた。



「俺もそう思うなぁ。大切なものほど手を出せない。そういうのって絶対あるって!

 なっ!海堂っ!」

「えっ?あっ・・・ハァ・・まぁ・・あの馬鹿が何を考えてるのかは、俺にはわからないっスけどね」



急に話をふられた海堂は、気持ちを建て直しつつまだ腑に落ちない気持ちを隠しきれないでいた。



「ふ〜〜ん・・・」



それが伝わっているのか・・伝わっていないのか、越前は横目で海堂をジッと見つめた。



「なんだよ」

「別に・・・」

「言いたいことがあんなら、はっきり言えよ!」

「海堂先輩ってさぁ・・乾先輩に大切にされてないんだ」

「ハァ?何でそうなんだよ!」

「だって乾先輩とAとかBとかCとかやってるんでしょ?」

「なっ!?」



ルーキーの不意打ちに海堂は一瞬にして顔を真っ赤にさせた。

その姿を見て、菊丸がまた感嘆の声を上げる。



「おぉ!これは一本取られたね海堂っ!」



そしてニヤニヤと笑いながら海堂を覗きこんだ。



「あんたに言われたくねぇ」



海堂は真っ赤な顔のまま菊丸を睨んだ。

そんな姿をクスクス笑いながら見ていた不二が更に付け加える。



「そうだよねぇ。うなじにキスマークつけてる人に言われたくないよねぇ」

「えっ!?」



菊丸は不二の言葉に咄嗟にうなじを手で押さえた。

身に覚えがあったからだ。

まさか・・・気付いて・・・



「髪で隠してるつもりかも知れないけど、僕の目は誤魔化せないよ」



やっぱり・・・

不二の開眼に、菊丸はうなじを押さえたまま顔を赤く染めた。



「なんだよ。そういう事は2人の時に言ってよ・・・」



口を尖らせて、小さな声で拗ねる菊丸に不二は「ごめんごめん」と菊丸の頭を撫でると

越前の方へと顔を向けた。



「そういう訳でさ。大切にするイコール手を出さないという訳じゃないけど・・・

それでも桃が越前に手を出さないのは、越前を大切に想っているからなんじゃないかな?

って僕は思うんだけど・・慎重になるっていうのかな?

ホントは越前も気付いているんじゃないの?」



越前が遠くに目を向ける。

その先にあるのは桃城のロッカーだ。



「心当たりが無い訳でもないっスけど・・・」

「そう。やはりね」



不二はそんな越前の目線の先を見透かすように、付け加えた。



「だけど、それでも・・・なんだよね。

じゃあいっその事、一度越前の方から誘ってみればどうかな?」

「俺がっスか?」

「うん」



不二の笑顔に、越前が不敵な笑顔を浮かべる。



「・・・そうっスね。それも有りかも・・」



真っ赤な顔の海堂と菊丸をおいて、ルーキーは何か答えを見つけたようだ。

大きな目で真っ直ぐ不二を見つめる。



「じゃあ俺の話は終わりにして、次は不二先輩の話聞かせて下さいよ。

 部長とはどうなんっスか?」



和やかに続く乙女会議、ルーキーの質問にさっきまでの赤い顔は何処へやら・・・

菊丸と海堂は、興味と恐怖を半分ずつ持ちながら不二を見つめた。



「僕?そうだね・・・」



うんうんと頷く、菊丸と越前。海堂も小さく頷いてる。

不二は3人の顔を見回して、クスッと笑った。









いや〜なんていうか・・・女子も集まると意外と下ネタになりませんか?


何処まで・・・的な話しますよね?

なんて思いながら・・・書いたのですが・・

私の周りだけだったらどうしよう☆

という訳で・・・いつもココを訪れて下さる方々、本当にありがとうございますvv

こんなお話ですが、楽しんで頂けていたら嬉しいです!

2009.10.9