(side大石)
「ばっかじゃないの?」
不二の冷めた言葉が俺に刺さる。
だけど俺は何も言いえないまま、ただ黙っていた。
「まぁまぁ不二。落ちついて、大石にだってちゃんと理由があるんだよ。
俺達は遠くから見ていたからよくわからなかったけど・・なっ大石」
「タカさんは大石を甘やかせすぎだよ。理由なんて遠くからでも察しはつくじゃないか」
「不二・・だからそれは・・」
「そうだな。あの様子だと話に行ったはいいが、竹本に言いくるめられたうえに、大石自身が墓穴を掘って二人を帰した。という感じだと思うが・・・」
「い・・乾まで・・言いすぎだって。まだ大石の話をちゃんと聞いてないのに・・・」
タカさんが俺を庇う様に、俺の横でフォローしてくれている。
だけど・・・
俺は顔を上げた。
「いいんだタカさん。2人のいう事は間違っていない。俺が英二達を上手く説得出来なかったのも2人を帰したのも本当だから・・・」
「大石・・・」
タカさんが俺の肩に手を置く。俺は自嘲気味に微笑んだ。
「大石。僕は言ったよね。強引にでも一緒にいるのが君の役目じゃないかって・・覚えてる?」
開眼した不二が鋭く俺を見る。
俺は小さく頷いた。
「覚えてるよ」
今日のお昼に屋上で話した事・・そんなにすぐに忘れる訳が無い。
だけど・・だからと言ってその言葉通り実行するのは容易じゃなくて・・
今の俺は強引に英二の傍に居られるような立場じゃないんだ。
さっきだって俺のせいで・・・頭の痛みが再発して・・・それに・・
それに何よりも感じたんだ。
英二が俺に戸惑っている事。
俺の言葉に・・俺の行動に・・英二はまるで赤の他人に接する様な態度だった。
俺はあの場で部外者だったんだ。
それなのに俺が傍にいるだなんて・・・そんなことをしてもきっと英二が困るだけだ。
記憶だって、取り戻せない・・・
「不二・・今は俺じゃ駄目なんだ・・・」
英二が今必要としているのは竹本で・・俺じゃない・・・
「何を言ってるの大石?君じゃなければ、他に誰がいるっていうんだい?」
「そうだよ大石。英二には大石しかいないじゃないか。そんなに弱気になっちゃ駄目だよ」
「不二・・タカさん・・・そう言ってもらえるのは嬉しいけど・・・
今回ばかりは俺じゃ役に立たないよ。さっきの英二の態度でそれがわかった」
「態度って・・・君はそんな事で英二を手放すの?」
「手放すなんて、そんな言い方するなよ!
不二はあの場にいなかったからわからないだろうけど・・
英二が今必要としているのは竹本なんだ。
俺がいても足を引っ張るだけで英二の助けにはならない」
不二が英二を心配して、俺に助言してくれているなんて事は百も承知だ。
だけど今回ばかりは・・・俺もどうしていいかわからない。
傍にいたくても傍にいられない。
今は竹本に託すしか・・・
「まぁ落ちつけ大石。お前の言い分もわかるが、今回の事は誰の目から見ても答えは同じだぞ。
菊丸にはお前が必要。どんなに辛くても傍を離れるべきじゃない」
「だから・・乾・・」
わかっているなら察してくれ・・・
乾の方を見てそう言おうとした時、俺の背後で声がした。
「いつまでそんなコートの片隅で話をしてるんスか先輩達?」
「えち・・ぜん・・・」
その後ろには桃城と海堂も立っている。
「早く戻ってもらわないと、無能な2年の先輩方が困ってるみたいなんスけど」
「おっおい無能なんて言うなよ!」
「そうだぞ!無能な2年は桃城だけだ」
「なっなに〜〜!」
「やんのか?コラァ?」
「こっこら!やめろ2人とも!」
いつもの睨み合いが始まって俺は気付いた。
俺の所為でみんなの練習が止まっていた事に、良く見れば1年も2年も遠巻きに俺達を見ている。
「俺が悪かった。すぐにコートに戻って指示を出すから、お前達もコートにもどってくれ」
手塚に部を任されているというのに俺は・・・英二の事で頭がいっぱいでみんなの事まで目が届いてなかった。こんな事じゃ部長代理なんて失格だ。
英二の事は気になるけど今は仕方ない・・・
「不二、タカさん、乾、戻ろう」
俺は3人の方へ顔を向け、コートへと歩き出そうとした。
が、それを越前が阻んだ。
「あんたが戻るのはこっちじゃないっスよ」
「え・・越前?」
「後ろの3人が戻ってくれればいいっスから」
「なっ・・どういう事だ?俺は部長代理で・・」
「それなら尚更、英二先輩の事頼みます!」
「もっ・・もも・・?」
桃城が越前の横に並ぶように前に出た。
いつになく真面目な顔で頭を下げる。
「俺の時も2人にはすごく力になってもらったみたいで・・感謝しています・・
だからっていうのもアレなんっスけど・・・」
海堂がバンダナを触りながら、桃城と同じ様に越前の横に並んだ。
「英二先輩のとこへ行って下さい」
俺は、俺を見上げる越前と頭を下げる桃と海堂を交互に見た。
「お前達・・・」
まさか後輩にまでこんな事をいわれるなんて・・・
「これでわかっただろ大石。みんな思う事は同じだ。俺のデータは嘘をつかない」
乾が俺の肩に手をかけ前に出る。
「行こうか海堂。みんなへの指示は俺が出す」
「はい」
海堂は頭をあげ俺に小さく会釈すると、乾の後ろについて歩き出した。
「大石。後の事は俺達に任せておいて大丈夫だから」
タカさんも同じように俺の肩に手をかけ前にでる。
「じゃあ桃。俺達は向こうのコートへ入ろうか」
桃が顔を上げた。
「パワー勝負っスね。俺、絶対負けませんよ。」
そして桃も俺に会釈すると、タカさんと空いているコートへと歩き出した。
不二が静かに俺の横に立った。
「大石。君の役目は英二の傍にいる事。
どんな状況になってもそれを1番に望んでいるのは英二なんだ。
それを忘れちゃいけない」
「不二・・」
「さぁ越前。僕達もタカさんのコートに混ぜてもらおうか?」
「俺は向こうのコートで不二先輩と試合の方がいいっスけどね」
「それは駄目でしょ。普段は禁止されているんだから。
僕と試合をしたければ、次のランキング戦で当たる事を祈る事だね」
「ちぇっ・・仕方ないっスね。そん時は容赦しないっスから」
「フフ楽しみだな」
不二と越前がコートへと歩き出す。
俺はそれを呆然と見ていた。
みんな・・・・
「あっそうだ・・・」
そんな俺へ何かを思い出したように、越前が振り向き戻って来る。
「さっき部室で英二先輩抱きしめられてましたよ」
「え・・?」
「俺が部室に入って行ったら、離れてましたけど」
「な・・んだって?本当か?見間違いじゃないのか?」
「俺、動体視力そこそこいいんっスよね」
「そ・・んな・・・」
「急いだ方がいいんじゃないっスか?あの人危ないっスよ。今頃英二先輩がどうなってるか・・・・」
「え・・英二・・・・」
俺は越前の言葉に弾かれる様に部室へと走り出した。
竹本が英二を・・・
部室に飛び込んだ俺は2人がいない事を確認すると、大急ぎで着替えをして取るものも取り敢えずまた走りだした。
英二の家へと全速力で走る。
くそっ・・・あれからどれぐらい時間が経っただろう?
きっと英二達はもう家についているよな?
竹本は英二の部屋に上がっているだろうか?
それとも・・もう2人は別れて・・・
いや・・英二の性格を考えれば、家まで送ってもらってそのまま返すとは考えにくい。
きっと部屋へ竹本を通してるはず・・そうなれば密室に2人・・・また竹本が・・・
竹本が・・・・・ん・・あっいや・・・
越前の言う事が正しければ、英二が竹本を部屋に上げるなんて事あるだろうか?
部室で竹本に抱きしめられたのなら、驚いて拒絶してもおかしくないよな。
冷静に考えれば2人は男同士なんだ。抱き合うなんて通常では考えられない。
そんな事が起これば戸惑って・・そもそも竹本と2人で帰るなんて事をしないだろう。
英二が抱きしめられていた。
その言葉に逆上して飛び出して来たけど、よく考えれば色々矛盾があるような気がする。
まさか越前の奴・・・俺を担いだのか?
俺が英二の傍を離れようとしたから・・それを元に戻す為に・・・?
だからあんな事を・・?
あぁ・・だんだんわからなくなってきた。
俺はこのまま英二の家まで行っていいのだろうか?
急に湧き起ってきた疑問は徐々に広がり、俺の走る足を少し緩めた。
そうだ・・携帯・・携帯をかけてみよう。
英二が出ていつもと変わらない様子なら、越前の言う事は故意ではなく何かハプニングがあってそれを助けた上でのでき事かも知れない。
それなら俺もここまで逆上して、英二の家まで押し掛けるなんて事は・・・
携帯をポケットから出して、走りながら履歴を開いた。
携帯の発信も着信も英二の名前で埋め尽くされている。
それが昨日の日付で止まっている事に、今の俺の立場を思い知らされるような気がしたが
俺は迷わずボタンを押した。
コールが続く・・・1・・2・・3・・・英二出てくれ・・
しかし俺の想いは届かず、そのまま留守番電話の案内が流れた。
くそっ・・出ない・・・何故だ?
何故出ない英二?
お前の身に何か起こっているのか?
竹本・・まさか本当に英二を・・・?
わからない。わからないが・・・やはりこのまま足を止める事は出来ない。
俺はまた走る足を速めた。
英二・・・
走り続けた俺はようやく英二の家の前についた。
ここまで来る間に竹本らしき人間とはすれ違ってはいない。
という事は・・・まだ家にいる。という事なのか?
息を整えて二階を見上げる。
ここまで来る間に、色々考えた。
越前の話。竹本の行動。
どこに真実があるのか?今英二はどんな状態なのか?
迷っている暇なんてないと思う。
万が一本当に竹本が英二を・・
そんな事になれば、俺は自分を一生許せない。
あれだけ不二に釘をさされ、みんなに背中を押して貰った俺のいるべき場所。
英二の隣を一瞬でも離れようとした事を、絶対に許せないだろう。
だが・・・頭の片隅にこびりついた思い。
俺の行動は、本当に英二の為になるのか?
英二のあの時の戸惑いの顔。
ここまで1度も足を止めずに来たのは、どうしても不安を拭いきれなかったからだけど、
俺のこの行動がまた英二を不安にさせるんじゃないか?
そう思うと迷う暇はないと思う俺の指が、インターフォンを押すのを一瞬だけ躊躇った。
その時だった。
「あれ?大石?」
英二の家のドアが開いて中から2番目のお兄さんが出て来た。
「あっ・・」
「なんだ。英二に会いに来てくれたのか?」
「あっその・・あの・・」
会いに来たのは、会いに来たのだけれど突然の事に上手く言葉が出てこない。
インターフォンを押そうとしたままの恰好で、俺は動揺を隠せないでいた。
「俺、今から出かけるけど英二は部屋にいるから、勝手に上がってくれよ」
英二のお兄さんがドアを大きく開ける。
「ほら。そんなとこで立ってないで早くしろよ」
「あっは・・はい」
俺は言われるまま、お兄さんの横を通り玄関の中に入った。
「じゃあ。あとはよろしくな」
お兄さんはそれだけ言って玄関を閉める。
俺は閉まったドアを見てハッとした。
これって・・不味いんじゃないか?
言われるままに入ってしまったけど、これじゃ英二は俺が来たという事を知らずに会う事になる。
記憶を無くす前ならいざ知らず、今の俺がそんな事をしたら・・
いや・・それより竹本は?竹本は帰ったのか?
お兄さんは竹本の名前を出さなかったけど、今英二は1人なのか?
俺は菊丸家の靴を見た。
英二の家は大家族で色んな靴が出ている。
その中にはもちろん英二の靴もあった。
しかし竹本の靴は・・・って、俺竹本の靴がどんな靴なのか知らないじゃないか。
何足が出ている運動靴。どれが英二の靴かはわかっても、どれがお兄さんの靴でどれが竹本の靴なのかは判断できない。
そう思った瞬間俺は靴を脱いで階段を上がっていた。
「英二。入るぞ!」
もし竹本が中にいて英二と・・・・
色んな不安をかき消す様に大きな声をかけて勢いよくドアを開けた。
1歩踏み込んだ俺の目に、見慣れた風景が広がる。
二段ベット、並んだ勉強机・・・
その間に大五郎を抱えた英二が俺を見上げていた。
「おっ・・おおいし?」
「英二・・・大丈夫か?」
「えっ?」
「あっ・・いや・・・」
大丈夫か?は可笑しいのか・・・部屋を見る限り竹本はこの場にいないようだし・・
なにより今この場にいる俺の方がおかしいというより怪しい。
人の家に上がりこんで、勝手に部屋にまで入って来ているもんな。
「心配で様子を見に来たら、外で2番目のお兄さんに会って・・
英二は2階にいるから上がっていいって・・・」
「チイ兄が?」
「・・う・・うん」
「そっか・・まっ座れよ。ずっと立ってるのも変だろ?」
「あっ・・ああ」
俺は鞄を置くと、英二と向き合う形で座った。
英二は大五郎を抱きしめたまま、俺を見つめる。
「えっと・・それで大石は・・・・」
上目遣いに見つめる英二を俺はじっと見つめ返したまますぐに言葉を出す事が出来なかった。
英二とこうやって向き合って話すのは1日ぶりのはずなのに、もう何年もこうやって向き合ってなかったような気がする。
「・・・大石?どうしたの?」
「あっ・・悪い。つい・・じゃなくて・・・」
だからどうしても噛みしめる様に見てしまうんだ。
「さっきは・・ごめん」
「えっ?」
「無理やり腕をつかんだりして、頭の痛みはもう大丈夫か?」
「そっ・・そんなの全然平気だよ!俺の方こそ先に帰ったりして・・」
「いやっ・・それは俺が帰る様に言ったから・・」
「ううん。俺ももっと積極的になれば良かったって反省してる・・
だからさ!明日はもっと練習に参加するから心配しないで!」
「英二・・・・」
言葉が続かない。
こうやって2人で話しているのが嬉しいと思いながら、やはり英二に気を使わせていると感じる。
「無理はするなよ。もし痛みがあるのなら見学だけでもいいんだ」
「だっだから大丈夫だって!大石はいつも心配しすぎなんだよ!」
「えっ?」
英二が大きく頬っぺたを膨らませて拗ねる。
「英二・・お前・・・」
その姿がまるで記憶を無くす前の英二そのもので、俺は一瞬英二の記憶が戻ったのかと思った。
「ん?何?」
「いや・・その・・今、いつもって・・」
「ん?そんな事言ったっけ?それよりさ。大石・・俺聞きたい事があるんだ」
違うのか・・・
俺は心の中で肩を落としながら、英二に改まって顔を向けた。
「なんだ?」
「俺達試合したよね?その・・俺が一方的にお前にふっかけてさ・・あれどっちが勝ったの?」
「試合・・?」
英二と試合って・・まさかあの1年の時の・・・?
ってそうだよな。英二の中では今はまだ1年なんだ・・・
「うん。思い出しそうで・・思い出せなくて・・ずっと引っかかってたんだ・・・」
「そうか・・あの試合は俺が勝ったよ」
「大石が!?」
「ああ」
「そっか・・・」
懐かしい話だ。あの試合がなければ俺達のダブルスはきっとなかった。
「英二。俺達はあの試合をきっかけにダブルスを組むようになったんだよ」
「あの試合で・・?」
「ああ。あの後、丘の上のコンテナで会って俺達は・・」
「丘の・・上・・・? イタタタタタ・・・・・」
「えっ英二!?」
丘の上のコンテナ・・その名を出した途端、英二の表情が変わって痛みを訴えた。
「大丈夫か!!?」
英二は頭を押さえながら、近寄った俺を制止する。
「だ・・大丈夫。思い出しそうになると、こうなるみたい。すぐ痛みは引くから待って・・」
「英二・・・」
俺は英二の様子を窺う様に待った。
英二は痛みをやり過ごす様に目を瞑って、暫くして俺に顔を向けた。
「痛み・・もう引いたから」
「本当か?」
「うん。本当。だから心配しないで」
英二が俺に笑顔を向ける。それが無理をして作っているものだということぐらい俺にもすぐにわかった。
「英二。今日はもうこの話はやめよう。
無理に思い出さなくても記憶は徐々に思い出せばいいから・・」
俺のしている事は、英二に負担ばかりかけてしまう。
こんな事が続けば・・・
「なっ何だよ!大石はそれでいいの?」
「英二・・・?」
「俺達はダブルスなんだろ?俺がちゃんと思い出さなきゃ大石も困るんじゃないの?」
「それは・・・」
そうだけど・・でも、それはダブルスのペアだからという訳だけじゃない。
俺が本当に思い出してもらいたい事は、英二が俺の一番大切な人だという事
だけど・・
「俺、思い出したいんだよ大石。早くみんなを思い出して・・大石の事もちゃんと思い出して・・」
「わかったよ英二。だけど焦ってまた痛みが出たら、竹本に何を言われるかわからないぞ?」
「た・・竹本・・」
「だから英二明日は・・・」
俺が話を続けようとしたら、英二は大五郎に顔を埋めた。
「どうした?」
「何で竹本の名前をだすんだよ?」
「何でってそれは・・・・」
『英二先輩抱きしめられてましたよ』
あっ・・・忘れていた。
あんなに必死で走って来た理由
英二が1人で部屋にいたから・・いつもと同じ様に向かい合って話が出来たから・・・
何処か安心して肝心な事を俺は・・・
「竹本と何かあったのか?」
「えっ?」
英二が固まった。
まさか・・・越前が言ってた事は・・・竹本の故意なのか・・・それって・・じゃあ・・
「さっき部室で越前がお前達を見たと言ってたんだが・・・」
「なななな何にもないよ!別に何にもない!俺達何もしてないからっ!」
「何もしてないって・・お前・・・」
それはあったと認めているんじゃないか・・・?
「あっそうだ!俺大石にジュースもだしてないや。ちょっと待ってて入れてくるから!」
動揺した英二が急に立ち上がる。
「あっ!英二急に立ち上がったら」
「わっ!」
慌てた英二が大五郎につまずいてバランスを崩した。
俺は咄嗟に立ちあがって、英二を抱きしめるような形で受け止めた。
「危ないじゃないか!急に立ち上がったら」
「ご・・ごめん」
英二は俺の胸に蹲る様に顔を埋めている。
「いや・・別に怒ってる訳じゃなくて・・次からは気をつけて・・・」
「・・う・・ん」
英二の背中に回した腕が熱い。
ずっとこのまま放さずに、腕の中に仕舞い込んでおきたい衝動にかられる。
だけど・・そういう訳にはいかないよな。
俺は英二の背中からそっと手を離すと、両肩に手を置いて英二をゆっくりと押した。
離れた英二が俺を見上げる。
「大石・・」
「・・・英二・・」
至近距離で見る英二の目が、潤んで揺れている。
少しだけ開いた口が、俺を誘っているようで・・・
俺は目を瞑って、無意識に英二を引き寄せて顔を近づけてしまった。
「おっ・・大石?」
英二の戸惑った声が耳に届く。
えっ・・
「わっ!!」
目を開けると、もうあと2cmで英二に届くという距離。
俺は急いで顔を横に向けると、英二の肩を押して手を離した。
「ごごごごごごめん!!いっ今のはあの・・・」
「おっ俺さ・・ジュースとっ・・取ってくるから!大石少し待っててよね!」
英二は俺の横をすり抜けると、部屋のドアを開けた。
俺はその背中に急いで声をかけた。
「あっう・うん!わかった!」
パタンと音をたてて閉まるドア。
俺はそれを見つめて、頭を抱えてしゃがみ込んだ。
俺は・・・・何をやってるんだ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!
今回もお誕生日novelと呼ぶには、大石が空回りして終わるって感じでしたが・・・
(そもそも続きものだしね☆)ってかなり去年の今日とデジャブを感じるのですが
そこは大目に見て頂けると嬉しいです☆
兎に角・・・言いたい事は1つなのです!
大石お誕生日おめでと〜〜〜〜〜vvvvv
2012.4.30