7MHz SSB/CW 受信機 新SR-7 の製作
2013/9/10
Last update : 2017/5/31
新SR-7 の概要
アイテック電子研究所の 7MHz SSB/CW 受信機キット「新SR-7」を製作しました(2013年8月完成)。
「新SR-7」は恐らく15年以上(製作当時)のロングセラーキットで、同社から直接購入できたのに加え、一時、キャリブレーションでも取り扱われていました。
受信周波数は 7.0〜7.1MHz です。チューニング用バリコンには従来ポリバリコンが使われていましたが、製作当時、価格据え置きでエアバリコン仕様になっていました。
新SR-7
(チューニングの左上のトグルスイッチは、改造によるもので、CW用オーディオフィルタ ON/OFF)
(チューニングの右の外部スピーカジャックも、改造によるもの)
「新SR-7」はスーパーヘテロダイン方式で、「軽やかな受信フィーリングのサブ受信機」、高感度、単3乾電池2本で動作することなどが特徴で、多くの方が製作されていると思われます。
製作当時、「新SR-7」をバージョンアップした「SR-70」もありましたが、「新SR-7」を以前から作りたかったので、こちらを選びました。「軽やかな受信フィーリングのサブ受信機」とはどんな音がするのか楽しみです。なお、「SR-70」は、7.0〜7.2MHz
まで受信でき、大型メータやバーニアダイアルも採用されている AM/SSB 受信機で、「新SR-7」と異なり基板ユニット組み立て調整済みキットです。
新SR-7 リアパネル
(アンテナ接続用の RCA ジャックは金メッキ品に交換)
(親切にも予備穴があり、そこに電源ジャックを設置した)
「新SR-7」では、設計者である千葉OMが、局発(VFO)を安定化させるこだわりの設計をしており、温度補償コンデンサや金属皮膜抵抗の使用だけでなく、空芯コイルが使われています(写真参照)。特殊鋼板製の頑丈なケースにもVFO安定化のこだわりが感じられます。加えて最近はエアバリコン仕様なので、使ってみたところ、たしかに周波数は非常に安定しています。詳しく測定したわけではありませんが、電源投入直後の1分ほどは別として、数分間聞いていてもせいぜい
10Hz 位 しか変動しないようなので、へたな VXO(可変水晶発振)より安定しているかも知れません。
「SR-70」にもこのこだわりは継承されており、巨大な空芯コイルが使われているようです。
新SR-7 基板
(手前左の空芯コイルがポイント:局発の周波数が非常に安定している)
セラミックフィルタは「軽やかな受信フィーリング」にするため、帯域が広いものが使われていますが、2個直列に接続されており、帯域外の減衰を十分に確保しているようです。
製作概要(改造点)
「軽やかな受信フィーリングのサブ受信機」として使うため、大幅な改造は行わず、説明書通りに作った場合と同じ音も出ることを基本方針としました。
新SR-7 内部
(右上に追加した外部スピーカ端子用のトランスが見える)
(左端に追加したオーディオフィルタが見える)
改造点は以下の通りです(主な点のみ記載)。
CW用オーディオフィルタについて
CWを本格的に受信するために、諸OMにより、455kHz のセラミック発振子を使った FBな「世羅多フィルタ」が公開されています(下記リンク参照。JA9TTT 加藤OMが考案された。JR7HAN 花野OM の記事が詳しい)。私もこれに興味を持ち、実施しようかとも考えましたが、私の場合、オリジナルの音で「サブ受信機」になることも必要条件であるため、フィルタのON/OFFが必要となります。「世羅多フィルタ」とオリジナルのフィルタは中心周波数が異なるようなので、ON/OFFできる「世羅多フィルタ」を作るとなると、BFO の周波数も切り替える必要があり(レベルも?)、改造範囲が大きくなるため、まずは簡単な、ON/OFF できるオーディオフィルタを追加することにしました。
CW用オーディオフィルタ(左)と設置状況(右)
写真のようにπ形2段のローパスフィルタで、AFボリウムの直後に入れることにしました。大阪の千石電商で 300mH のコイルが入手できたので、入出力インピーダンス
1500Ω、設計周波数 800Hz とし、両端の C=0.12μF、真ん中の 2C=0.27μF としました。何dB減衰というような厳密な話は別として、およそ
1200Hz 位まで聞こえます。
IF(中間周波数)のフィルタである「世羅多フィルタ」には足元にも及ばないと思いますが、フィルタがあるのと無いのとでは大違いで、ON にすると
CW が大幅に聞きやすくなるのは事実です。欲を言えば、例えば 300Hz の信号など、低域はそのまま通り抜けるので、低域もカットして、全体的にもう少しナローな方がFBと思われます。
外部スピーカジャックについて
「新SR-7」は、AFアンプに NJM2073 が使われており、BTL接続のため、単3乾電池2本(3V)で大きな出力が得られますが、スピーカ行きの2本の線はどちらもグランドに接続することができません。一方、イヤホン、ヘッドホンが使いたいニーズもあり、製作された方は、イヤホン、ヘッドホン行きのラインをケースから絶縁するなどの工夫をされているようです。ケースから絶縁されるタイプのモノラルジャックなども売られていますが、スピーカとの切り替え機構は無いようです。このような、ケースから絶縁する方法ではイヤホン、ヘッドホン位なら問題ありませんが、例えばパソコンへのインタフェースに接続しようとすると問題が生じることが考えられます。
そこで、AFアンプの出力に1:1のトランスを入れる方法を考えました。8Ω:8Ωのトランスの市販品は見たことが無いので、作ることにしました。
AF トランスの試作品(左)、採用品(中)、設置状況(右)
キャリブレーションの CalKit に「AFコイルを巻こう」という製品があります(製作当時)。これには、2E2B という比透磁率が非常に大きいトロイダルコアが使われており、AF用コイル以外にも様々の用途が紹介されています。今回は、このトロイダルコアに1次側、2次側共に45ターン巻いてトランスにすることにしました。0.29mmφの UEW を使った試作品が左の写真で、メーカー製トランシーバとヘッドホンの間に入れて実験したところ、低音も出ているし、耳で聞いた感じでは歪んでいる様子もないのでFBでした。ただし、1次側と2次側との間の抵抗値をテスタで測ると 2〜3kΩで、絶縁が低下していました。このコアは導電性らしいのですが、どこかでウレタン被覆の絶縁が悪くなっているようです。「AFコイルを巻こう」の説明書には、コアにあらかじめポリエチレンフィルムを巻くのがよい、と書いてありました。コアにフィルムを巻く代わりに、線の方を、UEW ではなく、極細のビニル線に変更することにしました(採用した線の絶縁体は、正確にはビニルでなく難燃架橋ポリエチレンで、線のサイズは AWG32)。白色と青色で巻いたのが写真中央です。左右に振り分けてきれいに巻けませんでしたが、周波数が低いので問題ないと思います。1次側と2次側との間の抵抗値は∞になりました。
「新SR-7」へのコイルの設置は、両面テープで済ませました。コアとケースなどが接触するとNGです。外部スピーカジャックは、普通のモノラルジャックで、プラグが挿入されていないときは、アンプはスピーカに接続されます。低音も出ているし(少なくとも 200Hz は OK)、耳で聞いた感じでは歪んでいる様子もないので採用にしました。もう少し巻数は少なくても機能すると思われます。
使用感など
オーディオフィルタ OFF なら「軽やかな受信フィーリングのサブ受信機」になるし、ON なら CW が聞きやすいので FB です。アンテナに CP-6 を接続するとガンガン聞こえるし、付属のワイヤーアンテナでも強い局が聞こえます。電源が乾電池で、簡易なアンテナでも聞こえるので、持ち歩くことができます。
SR-7関連リンク
JR7HAN のホームページ・・・SR-7のページ
JG1XLV web・・・7MHzハムバンド専用SSB/CW受信機 新SR-7
製作にあたり、参考にさせていただきました。ありがとうございました。
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