あおとぞうしはなのにしきえ
青砥稿花紅彩画
【別 名】
しらなみごにんおとこ べんてんむすめめおのしらなみ おとにきくべんてんこぞう
白浪五人男、 弁天娘女男白浪、 音菊弁天小僧 など
【見どころ】
そりゃあ、もう、「浜松屋」の場での弁天の見顕しでしょう。
がらり、と変わる面白さ。女が、男に、がらりと変わる。
いよっ、待ってましたぁ!
「もう化けちゃいられねぇ」と片肌ぬげば桜の彫り物、
くずれた島田に赤い長襦袢のままであぐらを組む、その姿は、まさに歌舞伎の華。
そうして、「知らざぁ言って聞かせやしょう」の名せりふ。
こればっかしは、いつ見てもゾクゾクします。ホントーに名場面!!!
「稲瀬川勢揃い」の場も、五人男のツラネがあって見ものです。
でも、こっちは様式の美かなぁ。
ひたすら華やか〜、美し〜と思えばよろしい(って、ヲイ)。
あとは、機会があったら通しで観ることもおすすめ。
大詰めでは、がんどう返しという大仕掛けに目を見張ることうけあいです。
【あらすじ】
「新清水初瀬寺」〜「神輿ケ嶽」〜「谷底」
弁天小僧菊之助は札付きのワル、で、美少年(いいねぇ!)
お姫さまを騙して自殺に追いやってもケロリとしてる、ふてぇヤツ。
名の聞こえた大泥棒、日本駄右衛門に出会い、
ダチの南郷力丸(これまたワル)ともども盗賊団の配下になる。
ワル浪人忠信利平とその主筋にあたる赤星十三郎も仲間になって、
白浪五人男の結成とあいなる(ってのが前段。通し上演だと見られる)。
「浜松屋」
とある日のこと、振袖姿の武家娘(実は女装した!弁天小僧)が
供の者(実は南郷力丸)をつれて浜松屋を訪れる。
万引きをしたと見せかけて、ゆすりをはたらくふたりだったが、
店の奥から出てきた立派そうな侍に正体を見破られてしまった(おっとぉ!)
こうなったら仕方がない、と開き直って本性を顕す弁天と南郷。
ぬかりなく傷の治療代をせしめると、案外と簡単に帰っていくのだった。
「蔵前」
窮地を助けてもらったと侍に感謝する浜松屋の主人。
だが、侍の実の姿は日本駄右衛門。すべては周到に仕組まれた罠であった。
夜更けてから舞い戻ってきた弁天、南郷とともに
「有り金残らずもらいたい」(あらま!)と浜松屋をおどすのだが・・・。
しかし、なんという不思議な縁。
浜松屋の息子が実は日本駄右衛門の実子であり、
弁天小僧こそが浜松屋の実子であったことが判明する(なんじゃ、そりゃ?)
さすがの彼らも人の子、人の親、何も盗らずに去っていく。
「稲瀬川勢揃い」
稲瀬川の岸辺(?)に勢揃いした五人男を捕手たちが取り囲む。
五人男は悪びれもせず、ひとりひとり名乗りをあげ、立ち向かっていく。
そして、大詰めの極楽寺の場面へ・・・(やんや、やんや!)
【うんちく】
河竹黙阿弥作。文久2年(1862年)初演。
黙阿弥は白浪物と言われる狂言を多く書いたそうだが、
これは中でもピカイチでしょう。
当時19歳で弁天小僧を演じた五代目菊五郎の出世作で、音羽屋ゆかりの狂言。