【その他の歌舞伎用語】


えど さんざ
江戸三座
江戸時代、歌舞伎興行は官許制でした。お上に許された座元と呼ばれる三人(っつーても世襲制なんで、家と言ったほうがいいのかな)だけが劇場を常設できたんですね。その三人というのが、中村勘三郎、市村羽左衛門、森田勘弥。それぞれが建ててた劇場の名前が、中村座、市村座、森田座で、これらを指して江戸三座と呼んでいます。



おおむ
大向こう
役者の出や見得をして決まった時なんかに、どこからともなく声がかかります。「成田屋!」とか「中村屋!」とか「待ってました!」とか。こうした声をかける方々を大向こうさんと呼ぶみたいです。いわゆる通の方々ですね。「大向こうをうならせる」というのは、歌舞伎を見る目の肥えている方々をうならせるほどの名演技をすることなのでしょう。



おんながた
女形
女の役をする役者のこと。文字通り女の形を表現するとともに、生身の女にはない女らしさをも表現したりする。女形を「おやま」と呼ぶのは間違いのようだ。



かおみせ
顔見世
暦の上での一年のスタートは正月ですが、日本の社会では四月を一年のスタートとする慣習がありますね。それに似たようなものでしょうか、江戸時代の歌舞伎の一年は、十一月が新年度のスタートだったそうです。江戸三座のそれぞれが、一年を通じて戯作を書く人、演じる人を決め、「今年度はこのメンバーで行きますよ」とお客にPRする、それが顔見世と呼ばれる興行だったとか。だから、メンバーを紹介しやすい「暫」などが慣習として必ず上演されたという話です。が、そうした慣習も幕末にはすたれてしまったそうで、現在では、京都の南座で十二月に行われる興行を顔見世と称して、名前だけが残っています。



かねるやくしゃ
兼ねる役者
兼ねる役者というのは、立役も女形も両方やる役者さんのこと。それも、どちらも主役クラスの重い役を演じられる役者さんを形容して呼ぶ言葉のようです。兼ねる役者で行くかどうかは家にもよるみたいで、今は菊五郎さんとか勘九郎さんなどがそうなのかなぁ、と(ごめんなさい、詳しいこたぁ知りません)



かもん
家紋
家の紋というよりも役者のシンボルマークみたいなもの。江戸時代には、役者の紋をデザインした布地やうちわなどが若い女の子に人気があったらしい。ジャニーズ系の顔うちわと似たようなものか?



きりこうじょう
切口上
その日の興業の最後に舞台から挨拶する口上。さっきまで演技していた扮装のまま舞台に並んで座り、中央の役者が「今日はこれ切り〜っ」と言うと一同が深く頭を下げる。江戸時代は毎日の行事だったらしいが、いまではごくたまにしか見られない。




こうじょう
口上
舞台の上から役者が観客に向かって挨拶すること。襲名披露などのイベントの舞台で行われる。裃姿の役者たちが舞台にずらりと並んで平伏し、ひとりひとり顔をあげ次々に口上を述べる姿を見ると、観客である自分も特別な催しに参加してるんだなぁという感慨が沸いてきたりするから不思議。



ざがしら
座頭
言い換えれば座長ざんすね。一座の重鎮っつーこったね。詳しいこたぁ知りませんが、座頭クラスじゃないと出来ない役ってのが、いくつかあるらしいです。あ、間違っても座頭市じゃぁござんせんよぉ(笑)



しゅうめい
襲名
歌舞伎の世界は世襲制が基本。ただし血縁に限るわけではありません。芸の養子というのもいっぱいありまする。血がつながっていてもいなくても、先達の偉大なる名跡を継いで改名することを襲名といいます。また、そうした襲名を広くご贔屓筋に知らせて、これからもよろしくとお願いするイベントが襲名披露。おめでたいことなので華々しく、にぎにぎしく行われます。特に大きな名跡を継いだ時には、一年以上かけて全国津々浦々をまわる襲名披露興業が催されたりします。


じょう

「歌右衛門丈」とか「仁左衛門丈」などというように、歌舞伎通が役者さんの名前を呼ぶときにつける敬称。語源が何なのかよく知らないが、かなり昔から使われていたみたい。だけど、わっちゃぁ苦手。通じゃないから(苦笑)わっちが役者さんを呼ぶときは「さん」づけである。



ジワ
「ジワがくる」という言葉が歌舞伎のギョーカイ用語にはあります。ジワジワっと客席に感嘆のざわめきが広がることだそうです。言い得て妙な言葉。確かに、玉三郎さんなどが花道にあらわれただけで、言葉にならない言葉のようなものが客席に広がる感じがします。これがアイドルの公演だったりすると、「きゃ〜っ!」ってな嬌声になるんでしょうなぁ(笑)歌舞伎だから「ジワ」なんでしょうね。



たておやま
立女形
一座の最高位の女形のことを言う。立女形じゃないとそぐわない役とかがあるらしい、よく分からないけど。ところで、女形は「おんながた」と読んで「おやま」とは言わないのに立女形は「たておやま」と読む。なんで? 語呂が悪いから? ん〜・・・。分からないことばっかしだぁ。 



とお
通し
全幕を通して上演すること。時間がかかりすぎるせいか、通しで見られる機会はあまりない。たいていは演目の一部分を抜きだしたものを、いくつか組み合わせて上演することが多い。例えて言うなら、同じ味をずーっと食べ続けるどんぶり物じゃなくて、いろんな味わいのおかずがちょこっとずつ入っている幕の内弁当って感じかな。で、そういうのは「ミドリ」上演(より取りみどりの意味か)と呼ばれる。ビギナーさんにはいいかも。でも、どっしりと重いどんぶり物を腹いっぱい食べるのも、たまにはいいものですよん。



にらみ
見得を近場で見ると役者さんの目が寄っているのが分かる。が、もっとじっくり観察すると、片目が寄っていて片目は真っ直ぐ、というのが本当らしい。で、このカタチが「にらみ」なんだそうな。面白いのは、市川團十郎家では祝儀の席(襲名の口上など)で、この「にらみ」を特別に披露すること。江戸時代には、舞台上から「にらむ」團十郎に手を合わせた観客がいたとか。成田屋は成田不動尊のかわりだったのかも。めったに見られないから、機会があったら絶対に見てみることをおすすめする。御利益があるかもしれない?



まくあい
幕間
幕が引かれて、次の幕があくまでの間。江戸時代には「幕の内」とも呼んだらしい。いわゆる休憩時間ですね。長い幕間には、いかにも高価そうな緞帳のご紹介なんぞを見聞きしながら、お弁当を食べたりする。もちろん幕の内(笑)



みょうせき
名跡
歌舞伎役者の名前。それぞれの家によってつける名前のメニューのようなものがあり、順位や格も決められているらしい。たとえば、中村歌右衛門さんの家だと、児太郎→福助→芝翫→歌右衛門の順に格が上がる。一門の血筋の役者さんは、口にこそ出さないけれど、この名跡の階段を一歩一歩のぼっていくことを将来的に目指して日々の鍛練をしているのではないか、と思う。
→参考:歌舞伎役者の系図



やごう
屋号
「◯◯屋」という呼び名。名跡(芸名)とセットになっているようで、襲名などで名前が変わると屋号も一緒に変わることがある。→参考:屋号と役者



わかおやま
若女形
詳しくは知りませんが、単に若い女形っつーだけじゃないような気がしています。次の立女形を担うにふさわしい若い女形を指して言うのかなぁ、なんて思っており。