001 眼の下に茅渟の海展べ初日待つ        萍洋

002 元旦の港内広く鴎浮く

003 福笹を手に舷梯を降りて来し

004 一二艘つれだち出づる若布刈舟

005 船底にまろび寝てゐる老遍路

006 渦潮に揉まれ揉まれし若布干す

007 檣灯も離るる島の灯も朧

008 出港の汽笛の歪む東風の船

009 泊船の灯を砕き搏つ春の涛

010 春涛の搏つ船の灯の砕けけり

011 転舵して渦潮忽ち遠くなる

012 錨泊の船のかたまる春灯

013 海ばかり見てゐて春を惜しみけり

014 渦潮の奈落の底を覗き見る

015 沖の船水尾くつきりと朝ざくら

016 投錨の船向き向きに油南風

017 船着いて店忙しく避暑の島

018 燈台に一閃光に卯波起つ

019 炎帝の鳴門の潮の平らなる

020 波除をときおり越ゆる卯波起つ

021 烏賊釣火沖にほつほつ点りそめ

022 旅客船着いて埠頭の避暑地めく

023 帆を揚げてヨット忽ち辷り出す

024 船出でてもとの暗さの梅雨波止場

025 凪わたるどの釣舟も日覆ひして

026 終便に暫し憩へる月の航

027 沖に泊つ船も祭の灯を飾り

028 月代の渦潮に乗る漁舟かな

029 大年の月あぐ海の凪わたり

030 船出し埠頭に残る冬日かな

031 沖待ちの船に点せる夜長の灯

032 乾ドック巨船呑み込み冬に入る

033 冬濤を波止に押しつけ着岸す

034 海鳴りは挽歌とも邑冬ざるる

035 海苔ひびを噛みつつ潮の満ちて来し

036 海鼠突く時の舷傾げけり

037 冬ざれの埠頭の荷役すぐ終り

038 風花の埠頭へ船客吐き出され

039 入渠せる船に明るき師走の灯

040 波うねりぶつかりそうな浮寝鳥





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