野草と野菜
(卓効のある野草と健康野菜)


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10  にんにく(疲労回復、便秘、神経痛に)
 にんにくはユリ科の多年草で、中央アジア原産といわれますが、紀元前から強精、強壮剤としてペルシャ、ギリシャ、イタリアなどで知られていました。エジプトのピラミッドも、にんにくを食べながら労働者が築いたものといわれています。中国へ伝わったのは約2000年前ということです。
〔効用〕
 にんにくは万能薬といわれます。疲労回復、便秘、神経痛、高血圧から殺菌の効果まで、その範囲は驚くほど広いのです。厚生省でも、にんにくの有効成分であるスコルジニンの薬効として、結核疾患の体力増強や新陳代謝異常回復など十四項目を公認しています。異臭の正体はアリシンいう物質で、抜群な抗菌作用が知られています。実験によれば、アリシンを含むにんにくの揮発油は、十二万倍に薄めてもチフス菌やコレラ菌に対する抗菌力を持っているといわれています。また、カゼや扁桃炎、気管支炎などの原因となる連鎖菌、ブドウ球菌、赤痢菌、結核菌にも有効です。
〈用い方〉
 にんにくの持っているスコルジニンの作用とアリシンの作用のどちらを生かすかを考えて用いれば、にんにくの異臭も、常に付随するというものではありません。というのも、スコルジニンは全く無臭で、にんにくから異臭を除いても効力は変わらないということが分かっているからです。にんにくのにおいは熱を加えると抜くことができます。
〈にんにくの加熱脱臭法〉
 ふきんを敷いた蒸し器に、ニンニクを一並べして、ふたの下にもふきんを当てて強火で2分蒸し、ふたを取って3分蒸します。生のにんにくをフライパンで、カラいりすると、脱臭効果に加えて、むきにくい薄皮も簡単に取れて一挙両得です。
〔注意〕
 カゼや結核など、アリシンの殺菌効果とスコルジニンの薬効を合わせて生かしたい場合にはにおいを抜かずに、すりおろして、オブラートかカプセルに詰めて飲むのがよいのです。生にんにくは刺激が強いので、食べ過ぎは禁物です。生なら1日1かけが適量、加熱したものでも2かけにとどめます。子供は、この半量が目安です。
〈空腹時に食べてはいけない〉
 生にんにくの強い成分が胃粘膜を刺激して、きわめて激しい胃痛を起こすことがあります。また、腸管を刺激して、便意はあるが便通がないといった症状になることもあります。生にんにくは食事と一緒に、水を飲みながらとるようにしましょう。
〈生は続けて食べない〉
 生にんにくの強い殺菌作用は腸内で各種のビタミンを作る有用菌の繁殖まで抑えてしまうので、長期間食べ続けると、ビタミンB2欠乏となって、舌炎、口角炎、皮膚炎が起こりやすくなります。生にんにくは即効性を期待する場合も、1日1かけに限ります。
〈食べ過ぎると貧血に〉
 にんにくを食べ過ぎると、血色素中の鉄が遊離し、貧血の原因をつくることにもなります。安全量は体重50sの人で2かけ程度なのです。
〈常用したい人に〉
 生を長期間服用するのはむしろ害がありますが、料理に毎日使うのもかなり面倒です。常用のためには古くからのにんにく丸をおすすめします。
 
【にんにく酒の作り方】
〈材料〉にんにく300〜400g、ホワイトリカー1.8リットル、ハチミツ200〜300g、レモン1個、青じその葉10枚
〈作り方〉にんにくを小片に分け、薄皮をむいて、つけ根を切り落としたら、水洗いして水けをふき、縦に二つ割にします。このにんにくの臭みを消すために、蒸し器で7〜10分蒸してから、ザルに広げて冷まし、水けをふきます。レモンは外皮をむいて1cm厚さの輪切りにし、青じその葉は水洗いして水けをふきとります。熱湯をかけてから、逆さにして水けを切った広口びんに、にんにく、レモン、青じその葉を入れ、ハチミツを加えてからホワイトリカーを注ぎ、密閉して冷暗所に保存します。レモンは1カ月、青じそは3カ月で取り出します。6カ月たてば熟成して飲めますが、飲みやすいのは1年後くらいのものです。
〈用い方〉1日にさかずき1〜2杯が適量です。水で割るよりは、生のままで飲むか梅酒、ウイスキーなどに混ぜて飲む方が飲みやすいでしょう。アルコールの作用で即効性が増すので、疲労回復には一番です。常用すれば、冷え性、リュウマチ、不眠症、神経痛に効果があります。
 
【にんにくのハチミツ漬けの作り方】
〈材料〉にんにく500g、ハチミツ
〈作り方〉にんにくは1かけずつ薄皮をむき、アク抜き(ヒタヒタの酢に5〜6日つけるか、10%弱の食塩水に1週間つける)をします。保存容器ににんにくを水けをきって入れ、ハチミツをかぶる程度に加えて、密閉し、冷暗所で保存します。半年以上保存すると、ハチミツは黒っぽくなりますが、にんにくはべっ甲色になって、甘みが増します。
〈用い方〉ハチミツは、にんにくと一緒に食べてもよいが、ハチミツだけ水で溶いて飲んでもおいしいものです。にんにくは1日2かけが適量です。
 
【ニンニクのオイル漬けの作り方】
〈材料〉にんにく300g、紅花油
〈作り方〉にんにくは小片に分けて皮をむき、水洗いして水けをふき、広口びんに入れます。紅花油をにんにくがかぶるほど入れ、5日目くらいから使い始めます。
〈用い方〉実は炒め物に入れて使います。油はドレッシングに用いたり、炒め物に使います。1日の適量は2かけです。できるだけ10日〜2週間で使いきるようにした方が、風味がよいし、油の酸化の心配もありません。
 
【にんにくのみそ漬けの作り方】
〈材料〉にんにく5玉、みそ250g
〈作り方〉にんにくは1かけずつ薄皮をむいて2〜3日塩水につけます。ボールにみそを半分入れ、にんにくをからめてから、一緒に保存容器に入れ、手で押さえ、残りのみそをかぶせて、半年置きます。
〈用い方〉みその香りがにんにくの異臭をうすくします。みそが甘い場合は冷蔵庫で保存するようにしましょう。
【にんにくのしょうゆ漬けの作り方】
〈材料〉にんにく500g、しょうゆ900ミリリットル
〈作り方〉にんにくは1かけずつ薄皮をむいて水洗いし、水けをきって広口びんに入れます。しょうゆを注ぎ密閉して保存しますが、つけてさましてから1週間後と1カ月後には、つけたしょうゆを鍋にあけて煮立て、さましてから、またびんに戻すようにしてください。
〈用い方〉2〜3カ月で食べごろになります。半年おけばにんにくのにおいは気にならなくなります。つけ汁は炒め物や焼き肉のタレなどに利用できます。