生活習慣病 ~健康でいられるために~
当院では最新のNBIシステムや腹部エコー装置を使用して、患者さまに安心して検査・治療ができるよう取り組んでおりますが、もちろん、がんや炎症、潰瘍などの病気にならず常に健康でいられることに越したことはありません。
正しい生活習慣をとることは、人の健康を維持もしくは取り戻すための一番の近道です。
ここでは、皆様が病気を発病、再発する可能性を少しでも抑えられるように、生活習慣に対する取り組み方をご紹介します。
偏った食生活やタバコ、運動不足、ストレスなどの生活習慣が、糖尿病・高血圧・脂質異常症(高脂血症)・肥満等の病気や症状を引き起こし、これらの総称を生活習慣病といいます。
主に以下の病気や症状になります。
糖尿病
血液中の糖分が極端に高くなる病気です。
ブドウ糖を細胞内に吸収してくれる、すい臓からのインスリンの分泌量が減り、血糖値が上昇します。空腹時の血糖値(ブドウ糖の量)が126mg/dL以上が糖尿病と定義されています。このままだと血管がボロボロになり、動脈硬化を起こしたり、目、内臓、神経などに障害が発生するおそれがあります。実際、末梢神経に栄養が行き渡らなくなり、痛覚が鈍くなるため、ケガをしても気がつかずに放置し、気づけば取り返しのつかないレベルにまでケガが進行し、最悪壊死した手足を切断せざるをえなくなることも実際にあります。
体質もありますが、カロリーを多く摂取し続けたり、運動不足、肥満等が原因とされています。有酸素運動によってインスリンの分泌が整うようになります。
高血圧症
血管の中(動脈)の圧力が異常に高くなる状態です。
まず、頭痛や耳鳴り、吐き気、手足のしびれ、肩こりなどの症状が起こります。さらに合併症を起こしやすく、高血圧によって脳血管が破れ、脳出血やクモ膜下出血、そして死亡率の高い大動脈解離を起こしてしまいます。また、動脈硬化によって脳梗塞も引き起こします。そうでなくとも、高血圧が長い間続くと心肥大が起こり、最終的には心不全を引き起こします。
ウォーキングや水泳などの有酸素運動を継続して行うことによって、血圧が下がってきます。また、塩分・アルコール・脂質を取り過ぎないことも大切です。血圧が高い人の食塩は、1日6g未満が適正とされています。
脂質異常症
血液中の脂質が異常に多くなる(もしくは不足する)病気です。血液がドロドロの状態とも言えます。2007年7月に「高脂血症」から改名されました。
血液中の総コレステロール値が220mg/dL以上で脂質異常症(高コレステロール血症)と定義されています。合併症として大動脈瘤が起こるほか、心臓の動脈硬化が進行し、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞が起こります。また、胆嚢や胆管に胆石ができる場合もあります。
脂質異常症の原因の大半は食生活であり、動物性脂肪の多い食品(肉、乳製品など)やコレステロールの多い食品(卵類など)を多く食べていると発症しやすくなりますため、これらを控えめにし、緑黄色野菜を増やしてバランスをとります。また、アルコールの過剰摂取も中性脂肪を増やす要因となりますので、飲み過ぎないようにします。
また、HDL(善玉)コレステロールを増やすためには、運動をしつつ、肥満や喫煙を抑える注意が必要です。
当院では生活習慣病を防ぐため、問診や血圧測定、尿検査、血液検査などの健康診断を行っています。
また、喫煙・飲酒・食事について今後どのようにすれば良いのか、見直すべき点についてのアドバイスも行っています。
ご自身のお体の状況を知り、適切な対処・治療を行うことが大切となります。万が一生活習慣病だと診断された場合は、治療法のひとつに投薬があります。薬はずっと飲み続けないといけないのか…と思われがちですが、生活習慣の改善次第ではお薬を減量、あるいは必要がなくなることもあります。
気がつけばもう手遅れになっていた…とならないためにも、少しでも不安なところがあればぜひ受診されることをおすすめします。
朝食をぬいて午前中にご来院されれば予約なしで受けることができます。
詳細・ご予約については当院までお問い合わせください。

がんを初めとして、高血圧、腎臓病、肝臓病、糖尿病、脳梗塞などが発生する要因としては、大きく分けて5つあります。「喫煙」「飲酒」「食事」「身体活動」「肥満」です。これは過去の研究結果に基づき定義されたもので、国際的にも認められている内容です。
<5つの健康習慣の定義>
健康習慣 | 具体例 | |
---|---|---|
1 | 非喫煙 (過去の喫煙は含みません) | |
2 | 飲酒 (エタノール換算で150g/週 未満) | たとえば、日本酒1合はエタノールに換算して23gです。これを毎日飲む場合、エタノール換算で161g/週になります。 |
3 | 塩蔵品を控える (0.67g/日 未満) | たとえば、たらこ1/4腹(20g)を月に1回食べると、約0.67g/日になります。 |
4 | 活発な身体活動 (男:37.5メッツ・時/日以上、女:31.9メッツ・時/日以上) | たとえば、活発な身体活動をする会社員(1日に筋肉労働や激しいスポーツ:1時間以上、座っている:8時間以上、歩いたり立っている:1時間未満)の活動量はちょうど37.5メッツ・時/日になります。また、典型的な主婦の活動(筋肉労働や激しいスポーツ:なし、座っている:3時間以下、歩いたり立っている:3~8時間)は、31.4メッツ・時/日になります。 |
5 | 適正BMI (男21~27、女19~25) |
肥満指数(BMI)は、体重kg/(身長m)2 で計算します。 |
※参考及び引用 … 多目的コホート研究(JPHC Study) 「5つの健康習慣とがんのリスク」
※メッツ(METs)とは、安静状態に対する運動量の代謝(カロリー消費)倍数のこと。例えば、
安静時1.0メッツのとき散歩は2.5メッツ、つまり安静時の2.5倍のカロリー消費である。
以下よりこれらの定義の具体的な部分について解説します。
1 喫煙
喫煙は、がんの原因となる大きな要素と考えられています。
がんの死亡のなかでは最も多くを占めるのが喫煙で、男性では40%、女性では5%喫煙によるものと考えられています。
がん予防にはたばこを吸わないことが重要です。また本人だけではなく近くに居る周りの人々にも健康被害を及ぼしてしまいます。
がんになる仕組みとしては、たばこ自体に含まれる多環芳香族炭化水素化合物やニトロソアミン類をはじめとする発がん物質が数十種類含まれ、それが体内の酵素で活性化された後、DNAと結合をして、DNA複製の際に遺伝子の変異を引き起こします。こうした遺伝子の変異が、がん遺伝子やがん抑制遺伝子、DNA修復遺伝子などにいくつか蓄積することによって、細胞ががん化すると考えられています。
2 飲酒
飲酒もがんの原因の一つとされています。
アルコールそのものに発がん性があるとされ、アルコール代謝産物のアセトアルデヒドが食道がんの原因となるとも結論づけています。
アルコールを分解する酵素は2つあり、「ADH1B」と「ALDH2」と呼ばれるものです。日本人では、ADH1Bの働きが弱い人が全体の7%に及び、アルコールの分解が遅くアルコール依存症になりやすい傾向にあります。ALDH2の働きが弱い人は40%ほどにも及び、アセトアルデヒドの分解が遅く悪酔いや二日酔いを起こしやすい傾向にあります。
アルコールとアセトアルデヒドには発がん性があるため、ADH1BとALDH2の働きが弱い人ほど口腔がん、咽頭がん、食道がんなどを発症する確率が高くなります。
これらの酵素が強い人、弱い人を確かめる方法としてDNA検査がありますが、手軽にテストできるアルコールパッチテストという方法があります。
アルコールパッチテストの方法
① パッチテープ(薬剤のついてないガーゼ付きの絆創膏)に、市販の消毒用アルコールを、2~3滴しみこませます。
② それを上腕の内側などの皮膚の柔らかいところに貼ります。
③ 7分後にはがし、はがした直後(5秒以内)に、ガーゼが当たっていた部分の肌の色を見ます。
④ はがしてから、さらに10分後に、もう一度肌の色を見ます。
(パッチテスト考案者:独立行政法人国立病院機構 久里浜アルコール症センター 樋口 進)
※ポイントとして、アルコール摂取時や運動直後ではない安静な状況で実施し、貼ったテープの上から指で押さえたりしないようにしましょう。
剥がした直後(上記手順③の時点)に赤くなればDD型(全く飲めない)、剥がした10分後(上記手順④の時点)に赤くなればND型(アルコール分解酵素が少ない)、無反応はNN型(アルコール分解酵素が十分働いている)となります。
DD型であればお酒は飲むべきではありませんし、ND型であればやや控えめにしておき、NN型であっても飲み過ぎてはいけません。発がん性のリスクを忘れずに、適度に楽しむようにしましょう。
3 食事
塩蔵品(イカの塩辛などいわゆる塩漬け食品)などで塩分を多く取り過ぎることもがんの発症へとつながります。
食塩の多い食事では、胃がんのリスクが大幅に増加します。緑黄色野菜を多く摂取する人と比べ、胃がんリスクが2倍になることが調査で明らかになりました。
動物実験では、胃の中で食塩濃度が高まると粘膜がダメージを受け、胃炎が発生し発がん物質の影響を受けやすくなることが示されています。
こうした中で塩蔵品によるリスクを避けるためには、例えば毎日 塩辛や干物などの塩蔵品を食べている人は、徐々に回数を減らしていくなどをして、食塩摂取量を確実に落とす必要があります。
4 身体活動
運動とがんの関係についてはあまり知られていないようですが、近年の研究によって運動が効果的であるとわかってきました。例えば、運動をしている人は大腸がんになりにくい傾向にあるといいます。これは、運動をしている人が便秘になりにくいことが関係しているのではと言われています。運動が腸管の活動を活発にし、便がスムーズに肛門まで送られるためです。
また、運動をすることによって免疫力も上昇します。運動で血液中のリンパ球が増えるため、この動きががんに対する免疫力の増加ががん予防になるのではと言われています。
運動、と一言で表しても様々な動作が挙げられますが、がん予防に最も有効な運動は 有酸素運動(エアロビクス)とされています。有酸素運動とは、体内の糖質や脂肪が酸素とともに消費される運動で、例えばウォーキングやジョギング、サイクリングや水泳、エアロビクスダンスが挙げられます。
対して無酸素運動とは、酸素を消費しない方法で筋収縮のエネルギーを発生させる運動で、例えば筋肉トレーニングや短距離走などが挙げられます。
5 肥満
肥満は様々な病気をまねく要因となります。糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病に加わって、年齢と共に筋肉量や骨量が減ると、さらに腰痛や膝痛などの関節障害を引き起こす場合があります。
がんに関しては、大腸がんや肝がん、前立腺がん、乳がん、子宮がんなどのリスクを高めると言われています。
マウスの実験では、高脂肪食を30週間与えてマウスを肥満させると、全てのマウスで肝臓に細胞老化反応が見られた上、肝がんを発症するようになることが分かりました。
肥満を予防・解消するための方法として、4 身体活動で示したように、有酸素運動を行うことがまず重要となります。また、脂肪を筋肉に変えるような形で筋肉トレーニングを行うことも有効です。
しかし、運動だけでは肥満を予防・解消できるかと言えば、それは非常に難しいことです。例えば体脂肪1kg(7000kcal)を減らすには、ウォーキングを35時間も続ける必要があります。そのため、単純に運動を行うだけではなく、筋肉を付け、基礎代謝量を増やし、体脂肪を燃えやすくする工夫が必要となります。
具体的なエクササイズについては、厚生労働省の「肥満を防ぐ日常生活」に掲載されておりますので、是非ご参考になさってください。