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1998年マレーシアの熱帯雨林を切り開いて作られた養豚所で高温を出し痙攣をおこし死に至る人が出ました。政府は日本脳炎と思い蚊の駆除を行いました。最初の患者が出てから2ケ月後、別の養豚所で大量の豚が泡を吹き痙攣を起こして死んでいき、引き続いて人の患者が発生しました。最初の村の場合と同じでした。

政府は日本脳炎ではないと判断しマラヤ大学医学部で原因を探りました。医学部のチュア博士は患者の脳の運動神経を冒す謎のウイルスを発見しましたが、患者の発生は東南アジア最大の養豚所に広がり沈静化する気配はありません。

博士はアトランタのアメリカ疾病対策センター(CDC)に対策を依頼しました。このウイルスは非常に感染力の強い攻撃的なタイプのウイルスで、最も危険度の高いウイルスという意味のニパウイルスと名づけられました。

政府は患者の発生した地域のブタをすべて処分する為、2000人の兵士が1ケ月に渡って100万頭のブタを処分しました。
このウイルスにより半年で患者は265人、死者は105人にのぼりました。

では、その発生源は何なんでしょうか。これらの養豚所は密林を切り開いて作られたもので、近くにはフルーツバットというコウモリの一種が住む岩山があり、その餌である果実が在ったところなのです。つまり、このコウモリを自然宿主としたニパウイルスが近づき過ぎたブタやヒトに感染したものと思われます。

これより6年前オーストラリアでも、コウモリを自然宿主としたヘンドウウイルスが出現し馬やヒトに感染しています。

 

このように森林を破壊し奥地に進出したり、未開の地に入り込めば、未知なるエマージングウイルスの脅威にさらされる事となるのです。 エイズしかり、 エボラ出血熱しかり、いま問題となっている新型肺炎「SARD」もそうではないでしょうか。また、オゾン層の破壊は通過した紫外線によりウイルスの突然変異を加速させ、新たなるエマージングウイルスを発生させるでしょう。

 

2003/04/27
2003/10/10