HIV(ヒト免疫不全ウイルス)

 

1983年フランス、パスツール研究所のリュック・モンタニエによって発見される。HIV−1型は中央アフリカ、HIV2型は西アフリカが起源といわれており、サルを宿主として、侵入した人間に感染した。HIVは感染した細胞に(ヘルパーT細胞)に潜伏し、その遺伝子に入り込む。時期がくると活動を始め、HIVを生産する。本来、外敵から身を守るためのヘルパーT細胞がHIVを大量に生産し、死滅する。その結果、免疫力が低下し、いろいろな日和見感染症にかかってしまう。
エイズの治療法がむつかしいのは、突然変異をおこしやすく(遺伝情報をになう分子としてのRNAの突然変異はDNAの約100万倍の頻度)、お互いの遺伝子を交換するためである。京都大学の速水正憲らによれば、2種類のHIVを混ぜて培養すると、わずか3日後には、両者の遺伝子を併せ持った新しいタイプのHIVが誕生するという。また、三種類のHIVに多重感染している患者からは三種類のHIVの遺伝子が組み込まれた、第4のウイルスが検出された。

 

エイズウイルス増殖メカニズム

  ウイルスのスパイクが細胞の表面のレセプターにくっつく
 ウイルスのRNAと逆転写酵素を細胞内に注入する
 ウイルスのRNAが逆転写酵素を使ってDNAに変化する
 ウイルスのDNAがヒトのDNAに入り込む
 ウイルスDNAの指令でウイルスの部品が合成される
 ウイルスの部品が集合して新たなウイルスが作られ
 細胞外に出て新たな細胞に取りつく

 

治療法とワクチン

逆転写酵素阻害剤(核酸系、非核酸系)
  
ウイルスRNAが逆転写酵素を使ってDNAに変身するのを阻害する。
 プロテアージ阻害剤
  ウイルスが部品となるタンパク質をつくる過程を阻害する。
これらの薬剤を併用しウイルスの耐性化を防ぎ、活性化しないよう終世飲み続ける。つまり、ウイルスとの共存共生に入る。

ワクチンが開発されれば貧しい国にとっては朗報となろうが、エイズウイルスの進化の早さを考えれば、従来型のワクチンでは期待できず、キラーT細胞を活性化する形のワクチンに期待がかかる。

 

激増する感染者数

UNAIDS(国連エイズ計画)の報告によると、2002年末現在で世界のエイズウイルスの感染者数は4200万人、同年中のエイズによる死者は300万人にも達している。感染者数の大部分は南部アフリカに集中し、約3000万人、貧困と飢餓にあえぎ、満足な治療や投薬も受けられないでいる。今後はアジア地域で急拡大すると見られている。
日本のエイズウイルス新規感染者報告数は2001年は621人、2002年は614人、若者を中心に広がりつつある。

 

 

資料 あなたの遺伝子は汚染されている(中原英臣・佐川峻)