第13話  −ミステリー−



次の石手寺では、荷物に気をつけたほうが良いですよ。あそこは人が多いので、お遍路さんの荷物を狙う置引きがいるんです。荷物を置くなら納経所の前にしなさい。この前の連休には刑事が四人、遍路に変装して置引きを七人捕まえたそうですよ。

ぼくは機械のメンテをする会社をやってたんですが、文筆でやっていける目途がついて、今は会社の方は止めてしまいました。最初の原稿料が入ったときは、ぼくもうれしかったが、女房が喜んでくれましてね。収入は全て女房が管理してるんで、ぼくは鵜飼の鵜みたいなもんですわ。

ノートパソコンを持ち歩いて、原稿を書いています。こうして境内で書くこともあります。お遍路さんを主題にしたミステリーを書いてるんです。既に二冊が出版されて近々三作目が出るんです。「懺悔の道しるべ」と「如来の足音」です。正円寺という名前で書いてますから、よかったら読んで下さい。

50番繁多寺で話しかけてきたその人は、痩せ型で背が高く、温厚な感じの人でした。話し好きで、石手寺までの道中、ほとんど1人でしゃべっていました。

遍路を終えて、上の二冊をインターネットや書店で探したけれど、どうしても見つかりません。本の題名と作者の名前があれば見つけるのはわけないと思っていたのですが・・・。不思議な事です。キツネにつままれたような気がしています。こちらの方が余程ミステリーっぽいですね。
ミステリーは嫌いでないし、遍路で出会ったというのも縁ですから、何とか探して読んでみたいと思います。ご存知の方があれば連絡して下さい。


前頁へ 次頁へ
トップへ 遍路目次へ