第11話  −パソコンおばちゃん−



足摺岬の38番金剛福寺から39番延光寺へは、五つのルートがあります。最短で56キロ、最長が76キロで20キロの差があります。わたしは、土佐清水市・竜串(タツクシ)・叶崎(カナエザキ)・大月町・宿毛という最も距離の長い道を歩きました。竜串から叶崎にかけての海岸沿いの道を歩きかったからです。
 途中、竜串で一泊しました。時間のことだけならまだ先までいけたのですが、少しゆっくりしてみようという気分でした。そんなわけで竜串の宿には早めに到着、水族館に立ち寄り魚見物をしました。近くには見残しという景勝地もあり、このあたりは学生時代に訪れて以来、とても気に入っているところです。
 翌日の叶崎も、足摺岬に優るとも劣らぬ素晴らしい景勝の地です。海に突き出た岬の先端には小さな灯台があり、眼下四、五十メートルのところでは太平洋の波が磯に打ち寄せて白く砕けているのです。こんな素晴らしい場所に立ち寄ることが出来たというだけで、この日は大満足でした。

前置きが長くなってすみません。本題に入ります。
 この日の午後、国道321号を大月町に入ってまもなく、表にイカを干している店があったので休憩を兼ねて立ち寄りました。ここが、パソコンおばちゃんのいる山田鮮魚店でした。おばちゃんは多分五十歳前後でしょう。娘さんと思われるおなかの大きい女性と二人で店を切り盛りしています。
店の奥にパソコンを見つけたわたし、「パソコンがあるね、誰が使うの?」
→「わたしがやりゆうがよ。半年前にパソコンを買って、ホームページを作り、オークションやりゆう。おまんもやりゆうが?」イカ干し
「少しね、まだ新米やけど」
→「ちょっと教えて欲しいことがあるがや」
てなことから、一時間ばかり足止めを食う羽目になったのです。
まずは彼女のWebサイトを見て下さい。店で扱う商品を、彼女がデジカメで撮ってWEBページに載せているのです。よかったら注文してやって下さい。イカの一日干し(高知弁で「ヒートイボシ」と発音する)なかなか美味ですよ。他にも干物や旬の魚を扱っています。
(おばちゃん、PRしとくからね、写真はお店の頁から借りちょくよ)

★山田鮮魚店URL;http://www.gallery.ne.jp/~otsukisc/yamada/

高知の片田舎で、魚屋のおばちゃんが長靴にエプロン姿でキーボードを叩いているところを想像して下さい。感心しますよ。それもわずか半年でここまでやるかと。結局は彼女の意欲なんですね。最初は商工会議所で教えてもらったそうですが、あとはわからないことがあると、店にくる若い人(?)を捕まえては教えを請うているそうです。「人みな我が師」、「訊くは一時の恥、訊かぬは一生の恥」でしょうか。
彼女のご主人は今、マグロ漁船を漁場まで運ぶ船に乗っているそうです。目的の海域に着いたら、高知で待機している漁師が飛行機で現地に向かい、ご主人はお役ごめんで、入れ替わりに飛行機で帰ってくるそうです。マグロ漁もこんなシステムで行われているんですね。

歩く旅をしていると、本当にいろいろな人に出会います。今回はこれまで。

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