未来を生きる子ども・家庭・学び その24





風の子学園事件
 夏は死者を思う季節でもあるとか・・・ 4年前の今年と同じように暑い夏の日、 「教育」という名の下に、灼熱のコンテナに閉じこめられて熱死させられた二人の中学生がいました。 風の子学園事件*です。それにしても「学校」にかかわる場面で命を奪われてしまう子どもの何と多いことか。 子どもたちには殺されなければならない理由など一切なかった。 ただ若さというエネルギーに満ち、明日を生きることを約束されていたはずだったのに。

 7月29日の夜、風の子学園事件でなくなったN君(姫路市内の中学校に在籍していた)の追悼集会が、 N君のかつての友人グループを交えて行われました。 N君が亡くなったのは14才の時。集まった友人達は今18才。一人一人がまぶしいほどの若さに輝いていました。

 姫路での裁判で市教委・学校側は、N君らのグループに対して 「問題行動をとる生徒達であり、指導の限りを尽くしたが効果があがらなかった」という。 (だから学校から追い出した)では学校側の言う「指導」とは子どもたちにとって一体どういうものだったのか、 集会に参加していた子どもたちに尋ねました。ある少年はこう語ってくれました。 「指導になんて、なってなかった。いつも一方的で、こちらの事をわかってくれようとしない。 教師が7人ずらっと並んでいるところで、一人が僕の首に手をかけて『殺したろか』と言われたことがある。 もっと相手のことを考えて欲しかった。そして好きになって欲しかった。」

 子どもを管理し、「指導」する対象としてしか見ない教師の立場からは、 本当の子どもの姿が見えないのではないでしょうか。

  「子どもは愛される事だけを欲している」―A.S.ニイルの言葉です。

HSNニュース No.24(‘95.8.14発行)より、加筆訂正



※風の子学園事件;‘91年7月、瀬戸内海に浮かぶ小島で起きた。
 「登校拒否などの子どもを矯正するため」の施設内で、
 たばこを吸った14才の少年と16才の少女が、罰として手錠でつながれ、
 鉄道貨物用のコンテナに監禁された。ほとんど飲食物を与えられずに放置され、死亡した。
 少年は、喫煙したり髪を染めたりしていたため、当時「非行ゼロ運動」の研究校に指定されていた
 姫路市内の中学校から、学校や教育委員会の紹介もあり、風の子学園に入った。
 少女は、集団でいじめを受けてから三原市内の学校に行かなくなった。



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