6月12日  また超満員の列車でアンコーナへ。ユーロ開幕は船内で 今日の一枚を見る

 朝、自然に目が覚める。少しまどろんで、旧ユーゴ入りの前に言ってはいけないことを軽く確認しておく。例えば、クロアチア人にセルビア人のサッカー選手の話をしない(デーヨ:サビチェビッチと、ページャ:ミヤトビッチはモンテネグロ出身)とかウスタシャ(ナチス・ドイツの指揮下で政権を担ったクロアチア民族主義ファシスト集団で、クロアチア人に対する蔑称として用いられる)という言葉を言ってしまわないようにとか。非常に複雑な問題を持つ国に入国する者として、頭でっかちは危険だが少しでも知識を入れておかなければ失礼になると思う。
 ぼくは「悪者見参」という旧ユーゴのサッカーの本(かなりセルビア寄りの内容だが)を読んでいてその「ウスタシャ」という言葉を覚えたのだが、身に染み付いた言葉で無い以上、てんぱった状態でポロっと口から出てしまいそうで、念入りにチェックしておいた。

 チェックはその「悪者見参」を読むことでしていたのだが、読み始めるとのグイグイめり込んでしまい時間ギリギリになってしまった。
 発車時刻と同時くらいにホームに辿り付いたが、そのホームは人の山。停車している列車も既に満員状態でかなりげんなりしてしまう。大きな荷物を持ったままホームにいる人が多く、ひょっとして列車が遅れてるのかなと思い、やっとのことで駅員にチケットを見せると「ネクス、ネクス」と次の列車を待てを言われる。列車の車体に掲示してあるプレートを見てアドリア海側に向かう列車ではないことを確認し、ようやく落ち着く。

 そして約45分遅れてぼくが乗る列車がやってきた。ホームに溢れんばかりの人が一斉に車両に乗り込み席の確保に躍起になっている間、ハナから争う気の無いぼくは最後に乗り込み、小さい体を利用して中の方に進んでいき、とりあえず姿勢が確保できるスペースにもぐりこむ。バックパックがでかいので少々難儀したが、どうにか耐えれそうな位置。
 目の前には峰富士子がプリントしてあるTシャツを着たイタリア美人、右は窓、そして左にはロマーヌ・ボーランジェ似のイタリア美人。とっても緊張するが、彼女達はもちろん白人なので、そのでかい体を利用してぼくのスペースを徐々に侵食し始める。ちょっと足を譲るとすぐに別の足が入ってくる。かなり狭苦しい状態での移動となるが、ぼくは本を読むことで気を紛らわす。

 そして予定より1.5時間遅れでアンコーナ到着。既に13時をまわっている。
 それにしても、かなり無理な体勢が長かったので腰が痛くなってしまった。

 インフォメーションで港の場所を聞き、教えられたバスに乗る。が、チケットは前もって買っておくらしくドライバーに現金を拒否された。そのままどうしようと思っていると、港だと教えてくれたので降りる。当然料金を請求されるかと思ってさっき出した現金を持っていたがバスはそのまは走り去る。またもや無賃乗車完了。
 うだうだしていても仕方ないのでクロアチアへ渡る船のチケットを買いに動く。そして今日の夜9時発のスプリット行きがあるようなので窓口へ行くとその会社の窓口は閉まっている。隣の会社の窓口で聞くと15時頃に開くらしいのでそれまで街の観光に出ることにする。

ボロネーゼ  まずは腹ごしらえと、荷物を預る時に聞いた安くてお薦めのリストランテに向かう。受付の女性はちょっと話に乗ってくれて、最後に「サムラーイ」と言ってくれました。平民の出でもちいと嬉しいぞ。
 写真(左)はそのお薦めリストランテで食べたスパゲティ・ボロネーゼです。めちゃめちゃ美味かった。ミラクルなアルデンテで、これこそがイタリアのパスタだと言う感じ。コーラをドリンクとして注文したので計7.2Eと計算するとそこそこの値段になったがそれでもここのパスタは美味しかった。やっぱり地元の人が行く店は違うね。
 ちなみに2時半までシエスタのようだったのでアイスを食ったり、船中用に水とスナック菓子を買ったりして街歩きを楽しんだ。

PACE  写真(右)はイタリアでよく見かけた[PACE]と書かれた虹色のフラッグです。ぼくは色鉛筆でもクレヨンでもカラフルな色がある程度規則正しく並んでいると気になってついつい目が行ってしまう性質を持っているので、とても気になっていた。
 運悪くこのフラッグは何なのか知る機会が無かったのだが、もじご存知の方がいらっしゃったら是非教えてください。ぼくが想像するに平和万歳的なことを意思表示しているのかなと思ったりしています。

 一旦チケットを買いに港に戻って再び街中に出る。駅で見つけたかなりデフォルメされた簡易地図しかもってないので迷わないように慎重に散策。落ち着いた良い街だなという感じを受ける。
 観光名所に高台の砦のような建物があるので登ろうと試みるが、途中で断念。なんとなく興味がわかなかったでのそのまま街中を歩き、そしてシャッターボタンを何回か押す。

 乗船が可能だと教えられた時間に港に行ってみるが、まだまだ準備中だということで乗船はできなかった。まあそれでどの船に乗るのかはっきりわかったのでよしとしよう。
 乗船しようと動いているときに船員に声をかけられた。よくある中国人か? いや違う日本人だ。 おー日本人か(ニコニコ)という会話を経て、船員が名古屋と横浜に行ったことがあると嬉しそうに話してくれた。日本人のことをベリーグーな人たちだと言ってくれてそれはそれでよかったのだが、思わずストイコビッチの話をしそうになってしまった。危ない危ない。クロアチア人だとは限らないが、もし言ってたら快適な船内では無くなったかもしれない。

アドリア海の夕暮れ  ようやく乗船が許可されて次々にお客が乗り込んでゆく。小さな手荷物以外の物は車庫の脇に置いてゆけという指示。担いでいるバックパックまで対象になるようで、もし盗難にでもあったらどうするんだと思いながら言われたとおりにする。もちろん充電器とかデジカメ関係とかは別の手提げかばんに移して持ち歩くことにする。

 自分の席を確保してから一度船を下りて写真(左)のアドリア海の夕陽を撮影。港のカウンターバーでハンバーガーを買って食べる。
 初老の男と子供の女の子が散歩に来ていて微笑ましかったので、眺めているとあっというまに小一時間たってしまい船に戻る。

 チケットは席アリで43E(税金込みか込みじゃ無いか忘れちゃった)。この席以下の席無しというのもあるのだが、実際乗ってみると席はかなり空いているので席の分余計に払いすぎたかなと思った。多分もっといい席、例えば寝台部屋とかにもこっそり入っている連中は多いのかもしれない。

 軽く船内を散策してるとやっと出航の時刻。さらばイタリア、ユーロが暴落したらまた来たい。
 とりあえずウロウロするのに飽きてきてウトウトし始める。ところが近くに座った家族の男連中がみんなイビキブラザーでかなりうるさい。そのうちブラザーからファミリーへ成長し大合唱となってしまい、とても寝ることができなくなった。
 まあそれほど眠たくないので小さな明かりで本を読んでると何人かがテレビの方に集まりだした。そうです、欧州選手権EURO2004の開幕です。写りの悪いスペイン対ロシアの試合をビールを飲みながら観る。バーの青年には、ぼくが船に置いてあるクロアチアビールを3種類とも飲むのを見て、テストしてるの?と聞かれた。まあそのようなもんだ。
 そしてその酒の力を借りて明日のために眠りにつく。イビキファミリーはサッカー観戦連中からもかなり不評だった。

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