HirashimaTsutomu Works


音楽教育Partner
 
戎 博志  

授業力Up 講座

 講座61 授業での「活動」には必ず「評価」を  
 講座62 6年生鑑賞「木星」授業紹介
 講座63  ユニバーサルデザイン授業@
◆コミュニケーション
 講座64  ユニバーサルデザイン授業A
◆地域と生きる活動を
 講座65  ユニバーサルデザイン授業B
◆何もないところからは何も生まれない
講座66  ユニバーサルデザイン授業C
◆「指導案」についての提言T
講座67  ユニバーサルデザイン授業D
◆「指導案」についての提言U
講座68  ユニバーサルデザイン授業E
◆「指導案」についての提言V
講座69  ユニバーサルデザイン授業F
◆「指導案」についての提言W
講座70  ユニバーサルデザイン授業G
◆「指導案」についての提言X
 講座71 「授業」から学ぼう
 講座72  「リコーダー楽曲」教材研究のPOINT
 講座73  「授業」の山場
 講座74  「パートナーソング」教材の扱い
 講座75  「リコーダー」の構え方
 講座76  「鍵盤ハーモニカ」について
 講座77  「歌詞」と「リズム」
 講座78  「板書計画」もきっちりと!
講座79  ごっこPLAYにも「ねらい」を
 講座80  「研究演奏」
 講座81  「ひびく」ということ
講座82  歌は「かしこい」?!
講座83  鍵盤ハーモニカと指の動き
講座84  「あいまいさも一つの正確さ」
講座85  「何のために」と「何となく」
講座86  「イメージ」on Parade
講座87  「イメージ」on Parade?
講座88 教材の学習目標と系統性
講座89  友だちから学ぶ
講座90   大阪府音楽教育研究大会 記念講演
「授業デザインの提案」?
〜つながる楽しさ 広げよう〜
講座91   大阪府音楽教育研究大会 記念講演
「授業デザインの提案」?
〜授業の楽しさ・「わかる」〜
講座92   大阪府音楽教育研究大会 記念講演
「授業デザインの提案」?
〜授業の楽しさ・「できる」〜
講座93   大阪府音楽教育研究大会 記念講演
「授業デザインの提案」?
〜授業の楽しさ・「共有する」〜
講座94   大阪府音楽教育研究大会 記念講演
「授業デザインの提案」?
〜授業の楽しさ・「表現する」〜
講座95 子どもの感想から学ぶこと
講座96  「音楽物語」の面白さ
講座97  教科書後半教材の扱いについて
講座98  音楽づくり@「何を学ばせるのか」
講座99  音楽づくりA「全学年を俯瞰して」
講座100  音楽づくりB「『音階』について」
 授業力 UP 講座


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講座61
授業での「活動」には必ず「評価」を

2年生授業での本時の「ねらい」は「わらべうたを
たのしくうたったり、聞きあったりしよう」です。

kagome
(個人を特定できないよう画像処理をしています)

指導案での最終目標は2つのグループに分かれて
「輪唱」や「パートナーソング」をさせることになって
いるのです。
そのために、授業前半では「ほたるこい」や「かごめ
かごめ」、「まりととのさま」を斉唱で歌わせていました。
子どもたちは、先生の指示通りに一生懸命している
のですが、「いいじゃない」「よくなりましたね」とひと声
かけるものの、子どもたちにとって一体何がいいのか、
どうよくなったのかがわかっていません。
グループがそれぞれ輪になって歌う場面があったの
ですが、子ども達同士感想を発表する場面もありま
せんでした。
授業での活動は、子ども達同士で思いや感想を共有
しあい、またきちんと評価を出し合うことが欠かせま
せん。
授業で指導者が「何を教えたのか」ということよりも
子どもたちが「何を学んだのか」という視点でもって
授業を振り返るようにしたいものですね。


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講座6
6年生鑑賞「木星」授業紹介


6年生「鑑賞」の授業実践から学び合うことにしましょう。

この学校では3年にわたり、ユニバーサルデザイン(UD)
の視点に立った授業実践をおこなっているそうです。


題材名「いろいろな音のひびきを味わおう」。

前時までの3時間では「ラバーズコンチェルト」を学習し、
重なり合う響きの違いを楽しんだあとの授業でした。

当日の授業についてコメントをはさみながら紹介しましょう。
(?は、私自身のコメントです)


本時の目標「曲想の移り変わりを感じ取ろう」

(導入)「学習のめあてを知る」

指導者は、最初に手作りの「木星」を提示すると、
子ども達から歓声と共に「木星!」と返ってきた。

?この時点で、「つかみ」…すなわち子ども達の興味・
関心を惹きつけることができたようです。UDの観点から
まず、子どもたち全員を授業に参加させることが重要な
カギになります。指導案に、子どもの興味を引くための
初発の発問(本時での課題について)を書き加えること
をお勧めします。



(展開)「曲全体の曲想の変化を感じながら聴く」@

曲想が変化したところで挙手をしましょうと指示。
鑑賞用CDをかけ、指導者が☆を貼っていく。

jupiter1

(楽曲の流れにしたがい、子どもたちの挙手の様子から
指導者が☆を貼っていく)


有名な部分(A場面)では子どもたちの反応も大きく、
指導者は☆に代えて、「木星」を貼った。

jupiter2

(聴き終わった状態の黒板掲示)

おおよその挙手の数にあわせて指導者が☆を貼り、
「みんなの気持ちが一つになったのがわかったから
『木星』を貼りました!」と鑑賞後、さらりと伝えると、
子どもたちは笑顔でうなずいている。

?いわゆる「教師主導型」の授業展開なのですが、
子どもたちも同感…という様子なのは、指導者と
子どもたちのコミュニケーションがうまく取れている
からだというのがよくわかります。
教育の原点は、お互いのコミュニケーションですね。

曲の変化が分かりにくい子どもが居る場合には、
隣り同士、ここだと思うところで「ハイタッチ」をする
という活動を取り入れてもいいですね。
一人だけが手を挙げたとき、「どうして?」とたずねる
ことで、それぞれの思いを伝え合うことができるから
です。


こうして、指導者が意図した3つの部分に楽曲を分け
大まかな特徴をたずねると、@B場面「はずんだ」、
A場面「なめらか」という感想でまとまった。

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(1,3の場面「はずんだ」、2の場面「なめらか」と
子どもの発表に合わせて黒板に書き込んでいく)


?このところで、「どんなところを聴きとって、そう感じた
のかな?」という発問がほしいところでした。
音楽的感受というのは、「音や音楽を特徴づけている
要素を聴きとり、聴きとった要素の働きが生み出す
曲想を感じ取る」ということなのです。
さらに付け加えれば、その感じたことを言葉で伝え合う
ことで、共有できるのです。


「曲全体の曲想の変化を感じながら聴く」A

次に、もう一度「木星」全曲を聴きながら、配った付箋
に個人で感じたことを記入させ、机上に貼らせました。

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(場面に分けて付箋を貼っていく)

聴き終えた後、グループになり、全員の付箋を
模造紙に貼る。同じような感想はまとめる。

jupiter11

?ここでも、付箋を貼り合わせるだけの活動に止まり
ましたが、共通する付箋を前に、音楽のどんなところ
から、そう感じたのかを話し合ってほしかったところ
です。


次に、付箋の中で曲想と思う言葉にをつけるよう
指示。
子どもたちが◯を付けた言葉の中には、
「ハモっている」「きれい」「ひびいている」「感動する」
など、子ども自身が迷うものが入っていた。
また、中には…


jupiter5

といったものが含まれていた。
(「はもっている」は曲想と考えを付けていた)

指導者は、どの言葉が曲想を表す言葉なのか
よりわかるようにとの配慮から「一覧表」を提示。

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?この表は、各自個人で聴くときの「ヒントカード」
として何人かの子どもの机上にそっと置かれた
ことで、より自分の感じに合う言葉を見つけやすく
する助けになったと感じましたが、はたして、この
場面で必要であったかどうか疑問の残るところ
です。
6年生の鑑賞として、「音楽を形作っている要素、
すなわち「共通事項」を聴きとる活動、またそれら
の要素の働きが生み出す曲想を感じ取ることは
「一覧表」がなくても、これまでの体験から各自が
自分の言葉で考えられるのでは…と思いました。

指導案には、本時の流れだけではなく、全学年の
「鑑賞題材系統図」というのを学校独自にまとめ
た資料も添えられていたことからも、子ども達は、
6年生までに系統的に鑑賞活動をおこなってきた
ことがうかがえました。

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(全学年の鑑賞題材系統図)


班ごとに曲想の移り変わりについて発表する。

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(各班の感想発表を通して全員で共有する)


「振り返りカード」に感じたことを書こう。

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(「振り返りカード」から)


?授業全体では、まず6時間目の授業で、それも
自分たちの教室、そこに小さなCDプレーヤー…
(黒板の下に小さく写っています)

このような必ずしもいいと思えない環境の中で、
子どもたちは7分以上の楽曲を集中して2度聴いた
のです。
推測ですが、プレーヤーと対角線上の子どもに
とっては、非常に聴き取りにくかったのでは、と
心配したのですが。

また、最後の「振り返りカード」には、授業でポイントを
絞らなかった楽曲の構成についても書いている子ども
がいましたし、この授業での活動に興味を抱いた
子どもも多くいたことがわかります。

授業では「木星」の成り立ちには一切触れなかった
のですが、それが曲想をとらえさせるのに、余分な
感情を抱かないで済んだと考えます。

新任2年目の指導者の爽やかな対応が、心に残る
授業でした。


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講座6
ユニバーサルデザイン授業@

〜2015(平成27)年6月19日(金)兵庫県小学校音楽
教育研究大会「但馬大会」での公開授業〜

【講座70】まで当日の「総括指導助言」を交え話します。


「授業は、子ども一人ひとりに成立する」…言い換えれば
支援を必要とするしないに関わらず、誰もが同じように
活動し、学び楽しめる授業の工夫をしなければなりま
せん。そこで「ユニバーサル(UD)授業を!」…いえいえ
そう肩を張らなくてもいいんです。
みんなが、楽しく参加でき活動できる授業を工夫する
ことが「UD授業」につながるのです。

◆「コミュニケーション」
先生と子ども、それに子どもと子ども…どちらも
積極的な「熱いコミュニケーション」が大切です。
「♪歌を歌えば、今日からみんな友達だ!」なんて
本当にそうなるのなら、日々、生活指導の先生達が
苦労しませんよね。
「つながり」を感じる活動を通してこそ、自分がこの
教室に居てもいいんだ…という安心感があってこそ
コミュニケーションがうまれるのですから。

どの子どもたちも、まず先生にコミュニケーションを
求めています。
甘えてくる子どもや、わざとからかうようなことを
言ってきたり、中には友だちと摩擦を起こす子ども
もいるかもしれません。コミュニケーションの
取り方が上手な子ばかりではありません。取り方が
わからない子どもの方が多いかもしれません。
それでも、みんなつながりを求めているのです。

いつも講習会の最初に参加者の方々と歌うのが、
「あしたははれる」(作詞・作曲/坂田修)です。
実は、最近、ある学校の2年生から要請があり、
音楽の授業に出かけました。
最初に、この歌を歌いながら「♪ひとりぼっちじゃ
ないよ 手をつなごうよ」のところで握手を求める
ように手を出すと、驚いたような顔をしながらも、
そおっと手を出してくれました。
そういえば、先生が握手を求めることって、あまり
ないようですね。
こうして、順々に「よろしく」の握手をしました。
待っている子は、ニコニコしながら自分の順番を
手をふきながら待ってくれています。

また、「♪好きだから きみが好きだから…」の
ところでは、握手ができなかった子どもたちの
一人ひとりにアイコンタクトを送ったり、頬を指で
つついたり…。

歌い終わると、子どもたちは「この先生と今から
どんな楽しいことが始まるんだろう!」とワクワク。

こうなると、後の授業はスムーズに進んでいくのです。
まずは、子ども全員を授業に参加させること!
それも、興味を抱かせるような「ねらい」をさりげなく
掲げながら。

良好な師弟関係を築くことで、子ども同士のコミュニ
ケーションが芽生え、育ちやすくなります。
もちろん、それだけでは十分ではありません。
活動の過程で、グループ活動を行ったり、隣り同士で
教え合う場面を積極的に取り入れたいものですね。

日本コロンビア☆年齢別☆どうよう「もりのくまさん」
 など、たくさん発売されています。


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講座6
ユニバーサルデザイン授業A

〜2015(平成27)年6月19日(金)兵庫県小学校音楽
教育研究大会「但馬大会」での公開授業〜


◆地域と生きる活動を
初めて但馬地区を訪れたときの感想は、「山しかない
なぁ」だったのを覚えています。
当時から、「天空の城/竹田城」は訪れる観光客が
増えつつありましたが…。

しかし、何度も通ううちに最初は見えなかった素晴ら
しいものが見えてきました。
それは、この地区にも、子ども達の学ぶ手本となる
「先人」がおられ、また各地に伝わる「伝統行事」を
大切に受け継いでいることです。
子どもたちの生活環境の中で、いつも目に触れ、
肌で感じることのできるものがたくさんありました。
また、子どもたちは行事に参加し、行事の一役を
担い、自らが伝統芸能の継承者になっているのです。
先生や友達とのコミュニケーション以外にも、地域の
方々とのコミュニケーションが大切に育まれていま
した。

例えば、当日の研究演奏で披露した「歌物語」です。
作者の森はなさんは、まさにこの地、それも演奏を
披露した小学校が母校であり、また教師になってから
赴任した学校でもあるのです。
市民の方々にとって、とても身近な存在であるのを
感じました。

jirozou
(朝来市和田山図書館前の「じろはったん」像)

jirozou2
(朝来市和田山ジュピターホール内での掲示)

また、但馬地区内では、四季折々の行事等にも
子ども達が積極的に参加し、「三番叟」「盆踊り」
などを受け継いでいるのです。

研究演奏では、これらの地区で大切にされている
ものの一端を披露していただきました。

一度、ご自分の地域をゆっくり散策されて、地元の
方々と交流を深めていくと「何もないなぁ!」という
思いが安易だったことに気付かされるかもしれま
せんよ。


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講座6
ユニバーサルデザイン授業B

〜2015(平成27)年6月19日(金)兵庫県小学校音楽
教育研究大会「但馬大会」での公開授業〜


◆何もないところからは何も生まれない!
普段、深く物事を考えないで、日々の授業に明け
暮れているだけでは、何も生まれません。
何も生まれないということは、何も感じないことに
つながるのです。
もちろん、豊かなコミュニケーションも生まれません。
今回、但馬地区での研究を進めていく中から、
ハッとさせられる言葉が指導者と子ども達から
いくつも生まれました。一端を紹介しましょう。

taikaisi

大会誌「研究実践」領域毎の表紙に
載せられていました…

(歌唱)
「音が高くなると気持ちの温度も高くなる」
「自分の声ってステキ、自分ってステキ」
「歌声でも友だちとなかよし」

(器楽)
「表現を工夫することに喜びを感じ」
「仲間とともに音楽をつくりあげる」
「楽器の音を重ねよう、子どもたちの思いを
重ねよう」

(鑑賞)
「見えないものを見えるようにする」
「音符がおしゃべりしているみたいだね」
「よくわかった時に やる気が出る」
「もっと分かりたいことがあるときに
やる気になる」

(音楽づくり)
「思考が音につながる、仲間とつながる」
「音のぼうけんを想像して創造しよう」
「友だちと息を合わせることの心地よさ」

どの言葉も、じっくりと研究を進める中で
熟成されてきたものばかりです。
言葉の中には、頭で理解しているものも
ありますが、活動をすることから、自分の
中で生き生きととらえることができたのです。

そうです、何もないところから何も生まれ
ないのですね。


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講座6
ユニバーサルデザイン授業C

〜2015(平成27)年6月19日(金)兵庫県小学校音楽
教育研究大会「但馬大会」での公開授業〜


◆「指導案」についての提言T
「指導案」は授業を進めていくための指針となるものです。
今回の大会の研究テーマにも掲げている、誰にも
「わかる」「できる」授業づくり…。
そこで、指導案全体の流れを「導入」「わかる」「できる」
「楽しむ」「まとめ」の5段階に分けることにしました。

●「導入」:初発の発問の重要性
授業を始めるに当たって、何よりも大切なことは、子ども
を授業に惹きこむことです。
授業への参加意欲をかきたてなければ、始まりません。
そこで、子どもの興味をひき、関心をよせることのできる
「初発の発問」をどうするか…この発問を指導案に書き
込むことにしました。
本時の授業の「ねらい」に沿って、子どもに受けたいと
思わせる発問です。参加意欲を高める手立てとして、
誰もが手を挙げて答えられる発問を考えてみるのも
一案でしょう。
「興味・関心・意欲」…ひとまとまりの言葉として考える
ことが多いかもしれませんが、むしろ一連のものとして
とらえます。
活動に対して、まず子どもの「興味」をかきたてることで、
身を乗り出すような「関心」につながり、積極的な活動を
支える「意欲」がわいてくるのですから。

ところが、これまで授業をした回数だけ「初発の発問」を
投げかけてきたはずなのですが、いざ考えるとなると、
結構難しいものです。

この「初発の発問」を指導案に載せることによって、
後から指導案を見たときでも、具体的な「ねらい」や
「活動」が見えてくるようになります。
どんな授業にも「始まり」があります。
ぜひ、この難しい課題に取り組まれることをお勧め
します。

●「わかる」
授業では、基礎・基本の学力を定着させることが
絶対的に必要です。
「指導案」を5段階に分けることにより、「わかる」
ところでは、その後の「できる」活動に向かって
より一層、指導内容の充実、焦点化が図れること
でしょう。

(大会の授業を例に挙げて説明します)

(例1:「パートの役割を生かした演奏にしよう」6年)
kenkyuu6

グループに分かれ「ねらい」を達成するために、
それぞれが正確に演奏できる力をつけること、また
「目標とする演奏」とはどんな演奏なのかを判断できる
視点をもたせることを「わかる」活動としておこなって
いました。
その後、「できる」活動では、グループで演奏しながら
気付いたことや改善点を出し合い、演奏を仕上げて
いきました。

(例2:「気持ちを込めて歌おう」3年)
kenkyuu3

「わかる」活動として、「歌詞を読んで、一番言いたい
部分はどこか」を探したり、旋律の動きから「曲の山」を
確認したり、気持ちを込めた「歌声」について考えさせる
などを取り上げていました。
こうして、「わかる」活動で学んだあと、ペアで歌い合い
「気持ちのこもった演奏ができたかどうかをお互いに
判断しあう…すなわち「できる」活動へと進みました。

●「できる」
授業の醍醐味を味わえるところです。
本時の目標を達成する活動になりますが、そのため
には、「わかる」ところで、目標に沿った力を十分に
つけておかなければ一人ひとりが目標に向かう活動が
できません。
また、「わかる」「できる」活動には、身に付けた力を
「共有」するというねらいが含まれています。
《鑑賞》の領域においても、楽曲を分析したり、聴く
ポイントを身に付けておく「わかる」活動が「できる」に
つながります。

(例3:「日本の音楽の雰囲気を味わって聴く」4年)
「こと」の音楽に親しむことを「ねらい」にした《鑑賞》
授業では、「わかる」活動で、@主旋律のみの演奏、
Aかざりの入った演奏をゲストティーチャーによる生
演奏により聴き比べました。
kenkyuu4

どんなかざりが入っていたのか、子どもたちが
書き込んだワークシートを発表し、検証するために
ゲストティーチャーの方が演奏する…という活動
です。
次に、「できる」活動に移り、かざりの入った楽曲
「さくらさくら」を聴き、演奏の仕方、音色の変化から
どんな情景が目に浮かんだのかを発表しあい
共有しました。


●「楽しむ」
授業の後半では、本時で行った活動を振り返る意味
でも、また子どもたちの充足感を満たすためにも
全員でできるようになった喜びを味わうようにしたい
ですね。
上記の《鑑賞》授業では、「わかる」「できる」活動を
振り返り、情景を思い浮かべながら「こと」に合わせ
て歌いました。
「感想」を発表する場面では、「こと」に合わせて歌った
ことで、中には感激した様子で「言葉」にならない
子どもがいたのが印象的でした。

こうした一連の活動をするためには、「ねらい」をしぼり、
シンプルな形で子どもたちに提示しなければなりま
せんし、授業全体の流れの中で常に「ねらい」を確認し
ブレないようにする必要があります。

音楽の授業では、「今の課題は何か」「自分はどこまで
できているのか」を常に考えさせるような言葉がけを
忘れないようにしたいものです。

授業の流れをこのような5段階に分けて説明しましたが
意図をお分かりいただけましたでしょうか。


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講座6
ユニバーサルデザイン授業D

〜2015(平成27)年6月19日(金)兵庫県小学校音楽
教育研究大会「但馬大会」での公開授業〜


◆「指導案」についての提言U

「指導案」の中に、次の項目を書き入れるようにしました。

(a)「学力差」を見えなくする工夫
(b)「見える化」の手立て
(c)「つまづき」の支援
(d)「活動継続」の手がかり
(e)学習「共有化」の手立て
(f)全員の活動の場の設定…です。

どの子も参加できるインクルーシブ(inclusive)教育を
目指した授業を行うための工夫です。
インクルーシブ(包み込む)教育とは支援を必要とする
子どももその他の子どもも共に学べる教育です。
「ユニバーサルデザイン授業」を目指すため?
いえいえ、目指す授業は、あくまでも「いい授業」、どの
子にとっても「優しい授業」なのです。

では、ここでは(a)について説明しましょう。

(a)「学力差」を見えなくする工夫
子ども達には、それぞれ多種多様な違いがあります。
「母子家庭」「父子家庭」「両親は居るが母親が朝早く
から、また夜遅くまで帰ってこない」など家庭環境の「差」
です。
また、友達関係をうまく築けない子…コミュニケーション
の「差」もあるでしょう。
授業をするにあたって取り除きたい「差」は「学力差」です。
そこで、できる限り、「学力差」を感じさせない工夫、
「学力差」を見えなくする工夫をおこなわなければ「いい
授業」は生まれません。そのための手立てとして…

・「課題」をしぼり明確にする。いわゆる「シンプル化」です。
授業の中で「課題」が多すぎたり、明確でないと、子ども
達は何を学んだのか、よくわからなくなるでしょう。
「課題」がすっきりしていることで、何を学んだかが分かり
やすくなるのです。
指導者は「何を教えたか」と考えがちですが、子ども達が
「何を学んだのか」と考えると「課題」をシンプルにする、
授業の流れや構成をシンプル化する意図がお分かり
いただけるでしょう。

・「スモールステップ」での学習
文字通り、「小さな歩み」とでも言いましょうか…
「小さなことからコツコツと!」って有名な方がギャグに
してましたが、課題を乗り越えるために、細かなステップ
の課題を用意することです。
一気に高い課題を乗り越えられる子どもも居るでしょうが、
そうでない子どもにとって「スモールステップ」での学びは
自尊感情を養い、集中を切らさずに学習を継続させていく
上でも有効です。

リコーダー導入時期での「スモールステップ」学習
新しい運指が「シ」「ラ」「ソ」…と進んでくると、カリキュラム
上では、「シ」「ラ」を習得したものとして、新出音の「ソ」を
これまでの3音で演奏する練習曲が登場します。

renshukyoku

(練習曲の1例)

ところで、理解の遅い子や、楽器の演奏を苦手とする
子どもは、「ソ」が出てくる前に立ち止まったり諦めたり
することが多いものです。
新しく出てくる音は子ども達、誰もが自分の指で、自分の
楽器で、自分の息で自分の音を出したいのです。
そこで、新出音「ソ」と「シ」、または「ソ」と「ラ」の2音で
演奏できる曲を準備…課題を「スモールステップ化」する
ことで、全員が吹けるようになり、やればできるという
自信につながります。

・以前「学んだこと」を応用する学習
音楽科では低中高2学年毎に目標が決められています。
また、『共通事項』からも分かる通り、学年が上がっても、
「拍」や「リズム」などの学習が徐々に深まりながら取り
上げられています。
このように、以前学習し培った学力を応用しながら新しい
課題に挑むことが大切です。そのためには、子ども達が
これまでにどのような学習をしてきたのか、今回の学習
につなげられる既習の知識は…などを知っておく必要が
あります。
例えば、「拍」について教科書(教育芸術社版)をみて
みると…
1年生では「拍を感じて遊ぼう」、2年生では「拍のまとまり
を感じ取ろう」、3・4年生「拍の流れにのってリズムを感じ
とろう」…と目標が変化していますが、基本となる「拍」は
変わっていません。
但馬大会での6年生の授業でも、これまでに学習した
「拍」に着目する子どもがいました。
3年生では、やはり以前「ふじ山」で学習した「曲の山」
を想起させて、課題に取り組む場面が見られました。

また、歌声では、1年生「歌でなかよしになろう」、2年生
「歌で友達の輪を広げよう」、3.4年生「明るい歌声を
ひびかせよう」、5・6年生「豊かな歌声をひびかせよう」。
このように、2学年をひとまとまりにしながら、低から中、
中から高学年へと、目標が繰り返されながら高まって
いくのです。すなわち、易しいことから高度なことへ渦巻
のように進んでいくので「スパイラル化」とも言います。


LIVE

講座6
ユニバーサルデザイン授業E

〜2015(平成27)年6月19日(金)兵庫県小学校音楽
教育研究大会「但馬大会」での公開授業〜


◆「指導案」についての提言V

「指導案」の中に設けた「工夫」2番目、(b)「見える化」の
手立てです。

(b)「見える化」の手立て
音楽科の場合、課題の対象が「音」「歌声」など、目に
見えない場合がほとんどです。また、演奏した「音」は
すぐに消えてしまいます。その点を考慮する上での工夫が
「見えないものを見える化」することなのです。
例えば、歌を歌っている時、音程の上がり下がりをとらえ
にくい子どもには、腕を使って上下を示すことで、自信を
もって歌いやすくなります。

また地声で歌う子どもには、音を出す身体のスピーカーは
「額(ひたい)」についているんですよ」だとか、「空に向かっ
て声を届けよう」など、と声を出す場所や出す方向、声を
届ける先を目に見える形でイメージさせることで自然で
無理のない歌声に変わります。

また、大会3年生の授業では、気持ちを込めて歌う
フレーズのところにハートマークを貼って全員が共有できる
ように工夫していました。

4年生の《鑑賞》授業での「生の筝(こと)」を使うのも「見える
化」の工夫の一端ですね。

3年生では「ふじ山」が出てきます。
この曲を通して「曲の山」をつかむのですが、教科書の
楽譜は1段4小節で載せられていて、3段目から曲の
山に向かい、4段目の最初の二分音符が、いわゆる
頂上(曲の山)になり、富士山のすそ野の形に合わせた
ように下降するのです。
ところが、楽譜が4段に分かれていることで、富士山の
形をイメージしにくく、また曲の山も分かりづらいのです。
そこで、楽譜を前半後半それぞれ1段ずつに書き換える
ことで、富士山の形がはっきりと見て取れるようになり、
「曲の山」がよくわかります。

kyokunoyama

「見える化」は、板書や掲示物以外にも、
「完成形が見える(見せる)」ということもできます。

例えば「Believe」(杉本竜一作詞・作曲:5年)で合唱を
する場合、主旋律を歌った後「『♪いま〜みらいの〜』
からアルトパートを覚えよう」といって何度かアルトの
旋律を歌うと、主旋律の「3度」下なので、すぐに覚えて
歌える子どもが出てきます。
何人かアルトパートを歌えるようになったころ合いを
見計らって、「じゃあ、今からお試し合唱をしよう!
アルトが歌える人は、こちらに集まって歌うよ。まだ
しっかり覚えていない人はソプラノ(主旋律)を歌って
合唱してみるよ」
こうして合唱をしてみることで、完成形が見え、ハモる
実感を味わうことができます。

「見えないものを見せる工夫」が必要なことをお分かり
いただけましたでしょうか。


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講座6
ユニバーサルデザイン授業F

〜2015(平成27)年6月19日(金)兵庫県小学校音楽
教育研究大会「但馬大会」での公開授業〜


◆「指導案」についての提言W

「指導案」の中に設けた「工夫」3番目、(C)「つまづき」の
支援です。

「つまづき」の支援は、何よりも授業中での観察・把握が
大切です。
「困り感」を持っている子はいないか、「集中力が切れた
が要因は」など、リアルタイムで見つけだすことに尽きます。

授業をおこなう場合、具体的な活動を思い描いてみま
しょう。
子どもたちの座席配置は妥当か。集中力に欠ける子どもや
常に声かけが必要な子どもはどこに座らせるかなどです。

全体の子どもが「つまづきそうな箇所」はないか。
あるとすれば、それをどのような支援を施すのがいいか、
あらかじめ支援の方法を準備しておきます。
例えば、リコーダーで「シ♭」を指導するとしましょう。
「指番号」で伝えるのがいいのか、「見える化」で、掲示
するのがいいのか。しかし、単独で「シ♭」の運指が
わかっても、いざ曲の中に出てきたときには対応できる
か…。そう考えると、やはり曲を通して覚える方が、より
スムーズに定着するのではないか。
そこで、「シ♭」と指の形が似ている音「ファ」との2音を
使って演奏させることにしよう、ということで、(教育芸術社
:小学生の音楽4)に載っている「みかんの花さくおか」
(加藤省吾作詞/海沼実作曲)に合わせて「シ♭」と「ファ」
の2音で演奏できるように工夫した楽譜を用意しました。
(実際に楽譜をお見せできないのが残念です。)

リコーダー導入期での「ソ」を指導する場合、どうしても
うまく指孔がふさげない子がいます。
指導者が「しっかり押さえなさい!」といってもなかなか
効果が上がりません。
そんな時、「指孔をふさぐ指でさぐりながら探してごらん」
というと、案外うまくいくものです。
教える側の指導者の立場から、学ぶ側の子どもの立場
に立ち返ることで、子どもにすんなりと理解できるのは
当たり前のことかもしれません。

長くなりましたが、「つまづき」を想定する場合、上記の
ように「学級全員」に対する支援があります。
次に、「個人に対する支援」です。
よく見かけるのが「ヒントカード」を用意しておき、活動中に
支援を必要とする子どもに配る方法です。
大会の6年生授業ではリコーダーの図に運指を載せた
カードを支援が必要な子に持たせていました。
個人に対する支援は、子どもが「どこで」「何に」つまづいて
いるのかを見極める力が指導者には必要になります。

「支援」には「全体」「個人」に対する授業内での「支援」が
ありますが、もう一つ、「授業外支援」があります。
皆さんもすでに行っておられるかと思いますが、例えば
「居残り勉強」です。「放課後、先生と一緒に勉強しよう」
という支援です。
また、「拡大楽譜」が必要な子、楽譜に書かれた歌詞では
目で追えない子がいます。
その場合には、授業が始まるまでに準備を必要とします。

「授業は、一人ひとりの子どもに成立する」ということを
いつも心に留めて授業に臨みたいものですね。


LIVE

講座70 ユニバーサルデザイン授業G

〜2015(平成27)年6月19日(金)兵庫県小学校音楽
教育研究大会「但馬大会」での公開授業〜


◆「指導案」についての提言X

「指導案」には【講座69】の続きとして
(d)活動継続の手がかりの提示があります。
子どもたちが自主的自発的に活動を継続して行うため
には、やはり留意したいことがあります。
一つ目は「課題への道筋」をしっかり確認しておくことです。
二つ目は、活動の進行具合を見計らい、適切な説明や
声かけを適宜入れることです。
また「メモを取らせる」「ワークシートの活用」なども効果的
でしょう。子ども達の活動を「目標」に導く効果的な
「ワークシート」は宝物になります。

(e)学習の「共有化」の手立て
学習したことを子どもどうしで「共有」することは大切なこと
です。
「板書」の活用、相互のアドヴァイス、拡大楽譜による交流
などを利用するといいでしょう。

リコーダー導入期での学習の「共有」について
導入期のリコーダー指導で、よく目にする光景は、全員が
前を向き、指導者の伴奏や合図に合わせて一斉に
リコーダーを吹いている場面です。
これでは、ついていけない子が頼る友だちもなく、焦り、
不安になり、やがてリコーダーを放り出しかねません。

子どもたちがよく間違えるのが、「シ」から「ラ」に1音増えた
ときです。
「ラ」の運指を【指番号02】「ド」と吹いてしまう子どもが結構
いるのです。
「どうして、あなたは『ラ』を教えているのに、先に『ド』を吹く
んですか!何度説明しても、呑み込みが悪いね」などと
だんだんイライラしてきて、挙句の果てには「人指し指を
離してしまわないように、セロテープを貼ってあげようか!」

そこまでひどい指導者はいないでしょうが、つい声を大きく
してしまいかねません。
【講座67】でお話ししましたが、以前「学んだこと」を応用
する学習
子どもは、3年生になるまでに学んだことを
生かそうと一生懸命なのです。
えっ?どういうことでしょうかって?
リコーダーを水平にして、左手で「シ」?「ラ」と指を動かして
みてください。リコーダーじゃなくて、これまでに学習してきた
鍵盤ハーモニカだとしたら・・・中指をふさぐ瞬間、人差し指
を離したはずです。
鍵盤ハーモニカの指導では、「次の音に移るときは、前に
ふさいでいた指を離さないと音が濁るでしょ」と学習して
きたのです。
つまり、リコーダーの学習において、子どもはこれまでに
学んだことを生かしながら吹いていたのです。
そう思いなおすと、どうですか。
「シ」から「ラ」に移るのに「ド」を吹いてしまう子どもに
「あなたは、鍵盤ハーモニカの吹き方をよく覚えていたね」
と可愛く思えてしまうことでしょう。
指導者は、子どもが学んできたことを理解していないと
いけないのは、こういうことなのです。

本題に戻りましょう。
リコーダー導入学習で「共有」するにはどうすればいい
のでしょうか。

kyouyuuka
(「指の歌」平島 勉/曲)

リコーダーを演奏する子どもと、それを見守りながら歌う
子どもに分かれて演奏するようにしました。
こうすることで、歌う子どもも、しっかりと運指の動きを
理解することができますし、耳元で「♪シの指したまま…」
と歌われるので、暗示にかかった様に安心して吹ける
ようになります。
子ども同士のコミュニケーションを図ることにもつながり
学んだことを「共有」できます。

「指導案」の流れの中の「できる」「楽しむ」活動の
中で「共有化」が図れるようにしたいところですね。

(f)「全員活躍の場」の設定
少人数に分かれて活動することで、より多くの
子どもが活躍できる場面が増えることでしょう。
その際、気をつけておきたいことは、「できる」
「楽しむ」以前の「わかる」活動のところで、しっかり
「ねらい」に到達できるまで「わかる」力をつけたい
ものです。
「指導案」を授業の流れの中で5段階に分けるメリット
はここにあるのです。
指導者が、子ども達が授業の中で「できる」「楽しむ」
活動が行えるようにしなければ…という思いに立ち
「わかる」活動をどう進めていくかに力点を置くように
心掛けてほしいところです。
それが、基礎基本の定着、学力保障になるのです。

(a)〜(f)以外にも授業を行う上で留意したいポイントが
いくつもあります。
・教材教具の効果的な使用
・学習ルールの徹底
・授業開始と終了が明確に守られている
・常に、本時のねらいを示しているか
・話す速度、トーンや言葉の抑揚を意識する
・授業の「鮮度」と「スピード(テンポのいい流れ)」

一人ひとりの子どもの立場に立った授業が
どの子にも優しく、誰もが参加できる「いい授業」に
なるのです。

(この項 おわり)


LIVE

講座71
「授業」から学ぼう

もともと、『LIVE』の講座は全て最近の授業研究会で
学んだことなので、今さら「授業から学ぼう」というのも
当たり前のことなのですが…という前置きで紹介しま
しょう。

◆「共有」できない授業
kyousitu

(授業後の教室前面)

6年生《器楽》、題材名「パートの役割を大切に
アンサンブルをしよう」という授業でした。
一通り、グループでの工夫をこなした後、それぞれ
が発表し、「縦のラインがそろっているか」「それぞ
れのパートが役割を果たせているか」をメモを取り
ながら聴き、メモを演奏したグループに渡す…という
活動でした。

グループ毎の演奏では、子どもたちは自分の楽譜
を見ながら演奏していました。
kyousitu2

(個人を特定できないよう画像処理をしています)

これでは、細かな部分で、グループでの工夫を
「共有」することは難しいのです。
それに、聴く側が指摘をしたことを記入するもの
がないために聴きっぱなしになってしまいかねま
せん。

せめて、教室前面にはみんなが演奏している
楽譜を拡大したものを掲示しておくようにしたい
ものです。

また、各グループで工夫をするに当たって、どの
ような点に気をつければいいのか、どのような
点に気をつけて聴かなければいけないか、子ども
同士のアドバイスも必要ですが、こういった点に
関する指導者からの指導…すなわち「できる」に
至る「わかる」活動を十分にしておきたいところです。

楽譜がない音楽の「授業」…こういう点からも、
全員の学びを共有できる「楽譜」を用意しておき
たいですね。


◆指導の整合性…「ねらい」をシンプルに!
2年生「音楽づくり」の授業です。
nerai

(黒板に掲示された、本時の「ねらい」)

中抜き・影付きの立体文字にするよりは…
nerai2

(文字に元と同色、また黒色を付けてみました)

同色、または背景色を考えて黒色にすることで
より一層、文字が分かりやすくなるのは明らか
ですね。

そこで、「指導案」の「めあて」には…
「◯◯◯(楽曲名)」の鍵盤ハーモニカで演奏する
部分
で、いろいろなリズムを組み合わせて、楽し
みながらリズムフレーズづくりをする」と書かれて
いました。
よく読み直すと、@鍵盤ハーモニカで演奏する
Aリズムの組み合わせを考える Bリズム
フレーズづくりをする
…の3つの活動が入って
います。
これでは、指導者自身が本時で子どもたちに
「何を学ばせるのか」を把握しにくいでしょう。

◆「リズム」は「リズム」で感じ取る
「リズム」を言葉に置き換えることは、導入として
必要なことだと思います。
ただ、慣れてくれば、言葉から離れてリズムを
打てる方向で進めたいところです。
この授業では、リズムを組み合わせるのに、
リズムに言葉(チョコレート、サクランボ、シュー
アイス)を当てはめ、リズム本来の組み合わせと
いうより、言葉を優先させた組み合わせ活動を
おこなっていました。

昨年度までの教育芸術社の教科書(2年用)では
「みこしだ」「ワッショイ」となっていた表記が
rizum1

(前年度までの教科書)

本年度の教科書では…具体的な言葉から
リズムとしての言葉に代わっています。

rizum2

(今年度からの教科書)


同様に、1年生用(教育芸術社)の教科書でも、
前回では「なまえあそびを しながら ●(はく) を
かんじましょう」
という学習目標が、今回は
「●(はく)を かんじながら なまえあそびを しま
しょう」
と変わりました。

これらのことからも、教科書編集のねらいや意図
はわかりませんが、リズムに言葉をあてはめる
というよりは、リズム自体をとらえ、言葉を「拍」
でとらえさせようというように推測できそうです。


LIVE

講座72
「リコーダー」教材研究のPOINT

子どもたちの様子や楽曲によって、指導する
ポイントの順序など変わる場合がありますが、
二声のアンサンブルについて、リコーダー指導
のポイントを考えます。

◆「楽曲のタイトル」
合唱曲の場合も同じですが、リコーダー曲の場合
歌詞がない分、余計に「タイトル」が表現の重要な
要素になります。
自前の作品ですが『風の譜』という楽曲(S&A)が
あります。リコーダー曲のタイトルに「風」が多いの
は、楽器の特性からでしょうね。
それで、「風」の様々な様子をあらわしたくて、また
演奏してくださる対象が小学校高学年から中学・
高校生ということで、「譜」という言葉を用いました。
「風」を感じながら演奏してくださるように…。

そんなわけで、まずは「タイトル」からどのような
曲なのかを考えるようにします。
もちろん、演奏を始めてからでも構いません。
スケールの大きさ、旋律の軽重、フレーズの
表現、またピアノパートを理解する一助にも
なるといいですね。

◆「息の強さ」「サミング」
リコーダーでは、どの音も同じ呼気の強さで
吹いてはいけません。
例えば…
yakusoku

(小学生の音楽5「小さな約束」教育芸術社)

という旋律があります。
演奏の始まりに出す高い「ミ」の音は、結構
緊張して強くなりがちでしょうか。
そこで、
「今から高いミを一人ずつ吹いてもらいますよ。
音を出さないで、指の準備をして、息の強さ、タン
ギングを考えて、確実に出せると思う人は立ちま
しょう。」と指示するのです。
子どもたちは、自分の「裏あな」をふさぐ親指の
位置を確かめて、立ち始めます。

この指示は、全員が立てると予想しての発問です。
授業を行う場合、まずは全員を参加させることが
欠かせません。
一人ずつ吹いていくと、息の強い子や弱い子など
いることでしょう。
でも、ここでの指導のポイントは左手親指の裏あな
のふさぎ方です。
親指をあなからずらして隙間を空ける子、爪をあな
の中に入れてふさぐ子、あなから指を離してしまう
子などいることでしょう。
教科書には、@親指を少し曲げる、A親指を下へ
ずらす…と2つの説明がありますが、それを子ども
たちが選択するのではなく、指導者がどちらかの
方法を選んで指導したいところです。
私は、@の方法…すなわち、親指で裏あなの上に
付いたセロテープをはがすように爪をあなに入れ
るように指示しています。Aの方法では、あなに
どれくらいのすき間を開けているのかが実感しに
くいからです。

こうしておいて、最初の2小節の演奏を始めます。
すると、高いミからの下降の場合、同じ呼気で吹く
と、「レ」の音程、音色が悪くなり、求める演奏には
なりません。
ですから、「高いミ」と「レ」では呼気を変えなけれ
ばならないのです。
ということは、リコーダー導入の時期、左手5音の
指導時において、特に「レ」の音程、呼気に気を
つけておく必要があります。
「レ」の音は少しの息の強さで音程や音色が変わっ
てしまうことを日頃から体得させておくといいですね。

◆「運指」のつまづき
リコーダーの運指の動きで、特につまづくところは
上述の「高いミ」から「レ」に移る場合です。
指示をしなければ、サミングをしたまま、「レ」を
吹く子どもがいるものです(サミング+123456)。
この場合、子どもたちの背後から、正しい「レ」と
サミングしたまま右手の薬指であなをふさいだ「レ」
を吹いて聴かせるようにします。
この違いが分かれば、正しい「レ」の習得が確実に
できるようになります。

また、「シ」?「ド」?「レ」?「ド」?「シ」の動きが
なかなかスムーズにいかない子どもがいます。
このつまづきを解消するためにも、導入時期に
しっかりと習熟させておきたいですね。

◆「指」と「タンギング」
何となく、演奏がバラバラしている…という感想を
もたれることがあるでしょう。
原因の一つは、子どもたちの「タンギング」の速さ
と「指運び」の速さにズレが生じている場合です。
自分が思っているより、「タンギング」の速度が
速く、「指運び」が遅れている場合が多いのです。
ですから、「指の動きを気持ち速めに動かそう」
と指示することで、演奏がスッキリします。
特に、上述の「運指」が思うように進まないフレーズ
で起こりやすい現象ですね。

また、旋律が上行するフレーズの場合にも、気持ち
指運びを速めにする方が表現に幅が生まれます。

◆「クロスフィンガリング」の注意点
リコーダーで厄介なのが、「クロスフィンガリング」。
普段は、指あなを上から順にもらさずふさいでいく
のですが、「シ♭」「ソ♯」「ファ♯」などの運指は、途中
のあなをふさぎません。
「シ♭」:0134(はふさがない)
「ソ♯」:01245はふさがない・は半分ふさぐ)
「ファ♯」:0123567(はふさがない)
[ジャーマン式(G)リコーダーの場合]

というような運指を「クロスフィンガリング」といいます。
これらの音は、他と音と同様に吹くと、音色がくすん
だり、詰まったようになってしまいます。
ですから、十分に気をつけて「そっと」吹くように…
といっても、単に「弱くしましょう」ではなく、吹き込み
方を意識させるようにします。
(なかなか文字での説明は難しいですね。気持ちを
上向きに…音を出す方向を上方に意識を向ける、
とでも言えばいいでしょうか)

yakusoku2
(小学生の音楽5「小さな約束」教育芸術社)

下降する旋律に合わせて「ラ」と「ラ」の間の「ソ♯」を
そっとはさむように演奏するようにしたいですね。
(他にも、子どもたちに合った指示がおありでしょう)

◆「ピアノパート」の動きをつかむ
合唱でもリコーダー演奏でも、ピアノパートのついて
いる曲では、ピアノの演奏に耳を傾けさせたいもの
です。
八分音符で細かく動いたり、二分音符でゆったりと
旋律を支えたりしているのを感じ取って、自分の
演奏に生かすように心がけます。

特に、下の楽譜は主旋律の「曲の山」のフレーズ
です。
yakusoku3
(小学生の音楽5「小さな約束」教育芸術社)

「曲の山」については3年生の「ふじ山」で学習済み
ですね。
このフレーズを支えているピアノパートは、曲の
中でも八分音符で、しかも高い音が用いられて
いることから、やはり、ここが「曲の山」であることが
分かります。
また、上述の「ソ♯」が出てくる最後のところでは
二分音符を用いたピアノパートになっていて、
旋律の速度にピアノが合わせることができるような
楽譜になっています。

この曲「小さな約束」の前奏部分ですが、ピアノの
左手は「ミ」の音が連続して続いているのです。
私の個人的な解釈ですが、「本当に小さな約束
なんですよ」というメッセージが込められている
ように感じます。

自分の話で恐縮ですが、音楽物語「くじらぐも」
の最終曲「いつまでもともだち」でも、左手の
音の動きを止めて、同じ音を連続して使って
いるのですが、これは「時間が流れても、環境
が変化しても、いつまでもともだちという思いは
変わらないんだよ…」というメッセージを込めた
からなのです。

合唱曲では歌詞に作詞者のメッセージが込め
られ、作曲者がその思いをさらに発展させる
ように、リコーダーの曲の場合も同じなのです。

時には、演奏の手を止めて、旋律を思い浮か
べながらピアノパートを聴く活動を取り入れま
しょう。

◆「全体」を聴く
「小さな約束」の学習のねらいには「リコーダー
の音が重なり合うひびきを感じながら演奏しま
しょう」と書かれています。
ですから、単に「演奏できるようになりました!」
で終わってしまわないようにしたいものです。
前半はユニゾンなのですが、後半部分を演奏
させるときに、「気持ちよく2つの音が響きあって
いるな…と感じたところを覚えておいてね」と
指示して、演奏全体に耳を傾けるようにします。
また、逆に、後半部分で2つのパートが同じ音
を吹いているところはどこかな、印をつけて
みよう」というのもいいですね。

リコーダーの演奏技術を上げることも大切です
が、活動を通して、音楽の構造を理解し、
楽曲を味わい、作品のもつメッセージを表現
できるようにしたいところです。
まだまだ、書きつくせませんが、指導者の
感性にゆだねたいところです。
(この項:淡路市での授業内容です)


LIVE

講座73
授業の「山場」

授業には「山場」があるのをご存知でしょうか。
また、「山場」を作り出せる指導案が必要です。

「山場」=クライマックス?
外来語一言で片付けてしまうと、話し手も聞き手も
分かったようになるだけで、正しく真意が伝わらない
かもしれませんね。
授業における「山場」とは、子ども達が目を輝かせて
取り組もうとする場面、活気が漲り、子どもたちが
エネルギーを注ぎ込み、子どもたちはもちろん、
指導者も参観している側も「さあ、どうなるかな」
「どうするんだろう」とワクワクさせられる場面の
ことです。

授業の「ねらい」に迫るために、授業の流れとして
「わかる」力を備え、子ども達自身での「できる」活動
に挑むところであるとか、全体やグループで工夫した
ことを、楽しもうとする場面がこの「山場」に当たると
考えます。

教科書には、「ア」と「イ」の特徴の異なる二つの
旋律を歌い、最後に2つの旋律を重ねて歌うように
仕組まれた教材がいくつか載せられています。
例:「子どもの世界」「パレード ホッホー」(作詞/高木
あきこ・作曲/平吉毅州)教育芸術社4年…など。


「わかる」活動で、二つの旋律の特徴を感じ取り、
歌い方を工夫した後、「できる」活動に移り、二つの
旋律を重ねて歌わせるとしましょう。
この時点で、@全曲を通して歌い、最後の部分で
合わせる A旋律が重なる部分のみ歌って合わせる

@、Aの方法のどちらかを選ぶとすると…

@の場合…
「さあ、Aグループは「ア」?「イ」?「ア」、Bグループは
「ア」?「イ」?「イ」と歌って最初から合わせてみよう」

Aの場合…
「まずは、合わせるところから…Aグループは「ア」を
歌い、Bグループは「イ」を歌って合わせてみるよ」
(@Aとも、それぞれ逆のパターンでも歌います)

皆さんなら、@Aどちらのパターンを選びますか?
@を選んだ場合、この時点で「ねらい」が完結して
しまいかねません。これでは、最後の「楽しむ」
までの時間が長くなり、おまけに、「楽しむ」ところ
でも、同じ活動に陥るために「山場」が際立ちません。

一方Aの場合、2つの旋律を合わせる活動に絞っ
ているので、合わせる箇所が「できる」ようになった
あと、「楽しむ」活動で、最初から通して演奏し、
完成させる喜びがより味わえます。

授業の流れのどの部分に「山場」をつくるのか、
指導案を創る中で、見極めておきたいものです。


LIVE

講座74
「パートナーソング」教材の扱い

前述の【講座73】で紹介しました「パレード ホッホー」
は「ア」「イ」のそれぞれ違った旋律を組み合わせて歌う
ように作られている「パートナーソング」というものです。

「合唱曲」と「パートナーソング」。
どちらも、二つの異なる旋律を重ねて歌うのですが、
その「ねらい」は大きく異なります。
結論から言えば、「合唱曲」は「ハーモニー」を感じ取っ
て歌い、一方の「パートナーソング」は二つの旋律が
重なる面白さを感じ取る…と言えるでしょう。

合唱曲「もみじ」(文部省唱歌)では「声が重なり合う
美しさを感じて歌いましょう」(教育芸術社4年)という
「学習内容」が掲げられています。
この場合、前半の「輪唱風」、後半は「3度の重なり」
なので、相手パートの旋律を聴きながら合わせる
ことが欠かせません。

一方、「パートナーソング」といわれている「パレード
ホッホー」の学習内容は「旋律が重なり合う面白さを
感じ取りましょう」となっています。
「パートナーソング」で気を付けたいのは、それぞれが
個性的な旋律なので、どうしても主張するように歌って
しまいかねません。また、「聴き合いながら歌う」ことが
難しいのが実態でしょうか。

ですから「パレード ホッホー」の場合、「ア」「イ」
それぞれの特徴を十分に生かした歌い方をすること
はもちろんですが、「ア」は目の前で繰り広げられる
イベント、「イ」はイベントが行われている周囲の風景…
と考えることで、それぞれの旋律を歌いながら、
聴こえてくる相手の旋律から、さらなる広がりを感じ取る
ことができるのですね。
「パートナーソング」を扱う場合、「異なる旋律どうし
なのに合うところが面白いね!」という子ども達の驚きを
大切にしたいものです。
この経験が、積極的に二つの旋律を聴き合いながら
歌う、合唱への興味・関心・意欲へとつながって
いくのです。


LIVE

講座75
「リコーダー」の構え方

教室など、椅子に座り机に置いた楽譜を見ながら
リコーダーを吹いている場面を目にするのですが、
その場合、リコーダーを構える「角度」に気をつけて
いますか。
sisei1

写真のような姿勢でリコーダーを吹いている姿を
目にすることがあるのです。
どうですか…吹き手と楽器との間の角度が狭く
これでは、いい音色が生まれにくいのです。

そういえば、この教室には…
sisei2

こんな姿勢でリコーダーを吹く掲示が貼られて
いました。

椅子に座り、机が前にある場合には、まず
立たせましょう。すると、椅子が後ろに下がり
机と椅子の間の距離が広がるでしょう。
その状態を保ち、椅子に座らせるようにすると、
リコーダーと吹き手の角度が大きくなります。

3年生の教科書(教育芸術社)の写真でも…
sisei3

どうですか!
この角度を常に意識することをお忘れなく!


LIVE

講座76
「鍵盤ハーモニカ」について

皆さんは「鍵盤ハーモニカ」の指導で迷って
いませんか。

◆「鍵盤楽器」?「管楽器」?
鍵盤ハーモニカって、名前の通り、鍵盤がついて
いるのでオルガンのように思いますが、一方で
音の出る構造や音色、タンギングなど…どちらかと
言えば管楽器に近いところもありますよね。

つい最近、小学校2年生の子どもたちに、音楽の
楽しさを教えてください…と頼まれ、鍵盤ハーモニカ
を使って授業をしました。

kenha1

(格好良く立って吹きたいという子どもも…)

教材にはジャズで有名な『シング・シング・シング』
(作曲/ルイ・プリマ)に、鍵盤ハーモニカの「シ」「ソ」
2音だけでコラボレーションできる楽譜を用意しま
した。
この曲で有名なプレーヤーといえば「ベニー・
グッドマン」です。そこで彼の演奏するCDをかけて
「シ」「シ」「シ」「シ」「シ」…と吹かせたのです。
2年生の子どもたちは大喜びです。
その時、「シ」の鍵盤を押さえたまま「息遣い(タン
ギング)だけで吹く本来の(?)面白さを味わい
ました。
やっぱり、鍵盤ハーモニカは「管楽器」のように
吹きたくなるのでしょうね。

ところで、「かっこう」(ドイツ民謡)や、「かえるの
がっしょう」(ドイツ民謡)では、同じ音が続くところ
で、鍵盤を使い、押さえなおして演奏する方が
自然なのです。この場合には、鍵盤ハーモニカは
「鍵盤楽器」なのかな…と感じます。

ここで、「鍵盤ハーモニカ」の歴史をたどって
みることにしましょう。
楽器メーカー各社から発売され、製品名も様々
なのですが、大まかには昭和36(1961)年に
第1号が発売されました。
「鍵盤ハーモニカ」という呼称は、昭和44(1969)
年の文部省指導要領改訂をきっかけに教科書に
掲載されたということです。
詳しいことは省きますが、「足踏みオルガン」、
「アコーディオン」等から「ハーモニカ」が生まれ、
それが「鍵盤ハーモニカ」になったということで
あれば、「指」で音を切るのか、「指で押さえた
まま、息遣い」で音を切るのか…楽器の誕生から
考えれば、どちらもありうるとするのが妥当かも
しれませんね。

◆「鍵盤ハーモニカ」の指遣い
教科書(教育芸術社「しょうがくせいのおんがく1」
「小学生の音楽2」での鍵盤ハーモニカの扱いは
ていねいなのですが、前述の「指」と「息」のどちら
で切るのかという確固たる説明はないようです。
ところで、「鍵盤ハーモニカ」の演奏で大切にしたい
のは「指遣い」、すなわち「指の番号」です。

「スモールステップ」で学ばせる場合には、2つの
音を使って楽器に親しませたいものです。
「ボクにもできたよ!」という達成感を持たせる
ためにも、ぜひとも少ない音を使い演奏する
機会を増やし、楽器とともだちになってほしい
ところです。
前述の『シング・シング・シング』(作曲/ルイ・プリマ)
では、「シ」「ソ」の2つの音を、「中指と親指」で演奏
した後、「薬指」と「人差し指」、「小指」と「中指」など、
特に「4(薬指)」「5(小指)」の動きを取り入れました
が、普段からどの指も使えるようにしておくように
しましょう。

子ども達が大好きな『ザ・エンターテイナー』(スコット・
ジョプリン作曲)に、「ド」と「シ」の2音でコラボレーション
した時には、「中指」と「人差し指」に慣れた時点で、
次は「小指」と「薬指」で吹いてみようと指示すると、
歓声と不安の叫びが上がりましたが、子どもたちは
楽しくラグタイムの流れに乗って演奏していました。

kenha2

楽器に親しみ、楽器の奏法、指遣いに慣れる、
自信をもって演奏にあたる…日頃から意識を
働かせておきたいですね。


LIVE

講座77
「歌詞」と「リズム」

3年生の授業です。
教科書(「小学生の音楽3」教育芸術社)には
『新しくおぼえること』として「付点4分音符」が
出てきます。

kasirizumu

(教育芸術社3年)

そこで、「楽曲」中の【付点4分音符+8分音符】に
着目させ、教科書準拠の範唱CDを聴かせながら
その部分を見つけるようにしたのです。

ところが…楽譜を見ないで、耳から聴いて、この
リズムの組み合わせを見つけるのは、参観者の
私たちでも迷うことしきり…。

というのも【付点4分音符+8分音符】の形が、
スッキリと感じる箇所と、そうでない箇所がある
のです。
【付点4分音符+8分音符】をスッキリと感じる箇所
kasirizumu1

スッキリと感じない箇所
kasirizumu2

kasirizumu3

(「とどけよう このゆめを」安西薫/長谷部匡俊)

スッキリと感じる箇所は、「歌詞」の「空」が、
「リズム」に収まっているのですが、そうでない
箇所では「リズム」が「歌詞」によって分断されて
いるのです。
『夢を えがくよ』 『たかく(高く)』

ですから、この活動で【付点4分音符+8分音符】
のリズムに着目させたことはどうだったのか、
また、見つけさせるのであれば楽譜から行えば
よかったのか…など意見の出るところでしょう。
授業のねらいは「【付点4分音符+8分音符】の
リズムを感じて歌う」でした。

リズムの良さを感じさせるために、何よりも必要
なことは、歌詞の解釈を十分に行い、作品を
味わっておくことです。
「より遠くに向かって呼びかけよう」という気持ち
になったり、「弾みたくなるような気分に浸ったり」
の感情が湧き起ってくるのは、歌詞とそれに伴う
リズムがあるからなのです。

歌詞がより生きるために色々なリズムが駆使
されていると考えるのであれば、「リズム」のみ
に着目させた活動からは、学ぶものが少ないの
です。
作曲者は、作詞者のメッセージをさらに増幅
して伝えようとしています。
作詞者が書かれた歌詞を作詞者本人と同等の
レベル、またはそれ以上に作曲者が味わって
いるでしょうから…。


LIVE

講座78
「板書計画」もきっちりと!

授業で大切なのは、「指導案」…言うまでもあり
ません。
でも、授業を行う前には「指導案」の流れに沿っ
て、「板書」のリハーサルも行っておきたいもの
です。
例えば…
bansho1

ホワイトボードに掲示したところなのですが、
雑然としていて、これでは子どもたちが何に
着目すればいいのかが分かりにくいですね。
右にあるのが、「共通事項」なのですが、
肝心の文字が小さくよく分からないばかりか
絵からも判別がつかない状態です。
高学年であれば、「速度」「音色」などの文字だけ
で十分なはずでしょう。
絵を入れたことで、かえって「文字」も「絵」も
分かりにくくなり。おまけに貼るところがなくなり
肝心の楽譜も隠れてしまいます。

また…
bansho2

授業の流れの中で、楽譜を床に置いてしまうこと
になってしまいます。
これでは、見た目にも教育上もいいはずはありま
せんね。

「板書」を確認しながら、授業の流れを確かめる
ようにしましょう。

マグネットが張り紙に耐えるのかどうかも含めて
「板書計画」をしっかり立て、リハーサルを行い
万全を期して授業に臨みたいところです。

講座79
ごっこPLAYにも「ねらい」を

1年生の教材に『こいぬのマーチ』があります。
教科書の「ねらい」「指示」通りに学習したあと、
「こいぬ」を「ライオン」にかえて「ライオンのマーチ」
にしてみようか」というと子ども達は大喜び。
あまりに喜んでくれるので、ついつい調子に乗って
次は「かめのマーチ」「かえるのマーチ」「ねずみの
マーチ」などと興じることでしょう。
子どもたちは遊び感覚で楽しんでくれるのですが、
授業の活動には必ず「ねらい」があり「評価」が
伴うのです。
「評価」を考えるに当たっては、何をつかませるの
か、またどの状態までを目標にするのか、など
活動の目標にもかかわってくるので、視点に置いて
おきたいところです。

例えば、「ライオンのマーチ」にすれば、子どもたち
の歌声は大きくなるでしょう。堂々とした行進で、拍
が重くゆったりとするでしょう。
また、「かめのマーチ」になると、今度はスローにな
るだけではなく、レガートに歌うことでしょう。
「かえるのマーチ」でしたら、スタッカート気味に
短く切って演奏したり歌ったり。
「ねずみのマーチ」では歌声は小さく、速度は少し
速くなるでしょうね。

このような表現の違いはどこからくるかといえば、
1年生から6年生まで必修の「共通事項」なのです。
ですから、指導者はこの活動はどんな「ねらい」で
進めるのかをしっかり把握しておき、子ども達と
楽しみたいところです。

もちろん動物に合わせて歌詞も変わるでしょう。
よちよち「こいぬ」…この箇所に「ライオン」や
「かめ」などの名前を入れるのに子どもたちは
工夫することでしょうし、「ライオン」ではかわいい
な…は「こわ〜いな…」と変えるかもしれませんね。
どちらにしても、授業の活動には「ねらい」と「評価」
を忘れないことですね。


講座80
「研究演奏」

秋は、各地で研究大会が盛んに行われています。
大会で、よく見かけるのが「研究授業」と並んで
全体会場で披露される「研究演奏」です。

地元の特徴を生かし、学校教育活動というより、
郷土の音楽を地元有志の方々に協力を求めて
行われていたり、中学校では、授業範囲外での
吹奏楽クラブによる華々しい演奏など、よく
見かける光景です。

大会に向けて、「指導案」を何度も書き直し、地道に
授業研究に臨む「研究授業」が行われている一方
で、ゲストティーチャーを招くなどして、当日いい発表
をしないと…という思いが先行し、演奏に磨きをかけ
ようとする「研究演奏」も少なくないようです。

「研究演奏」とは、日頃、指導者を含め、多くの
指導者が抱える問題点や課題を洗い出し、突き
詰め、それをどのような手立てや工夫を駆使して、
一定の成果をあげることができるのか…それは
どのような「授業」の積み上げから生まれてくるのか
という取り組みを通した演奏でなければ、本来の
「研究演奏」のあるべき姿とは言えません。

もちろん、教科書等で親しみのある楽曲でも、どう
指導すれば、こんなにも豊かな表現が生まれるの
だろうか…という演奏を目にすることもあるでしょう。
だからといって、大会までの日数で、過剰に詰め込
むのではなく、日頃の授業での取り組みによる楽曲
解釈、子どもたちの創造性の積み重ねから生まれ
る素晴らしい表現力であれば、観る者はもちろん、
指導者にとって実感を伴う価値ある研究につながる
ものです。
「研究演奏」をされる先生方…今の課題は何なのか、
常に念頭におき、ブレないで、子どもたちと課題を
乗り越えて、大会当日、素晴らしい演奏になるよう
心がけてくださいね。


講座81 「ひびく」ということ

一口に「ひびく」といっても、「心にひびく」「自分の歌
声がひびく」「合唱での複数のパートの声がひびく」
など様々ですね。
「ひびく」をキーワードに、以前紹介しました藤原
一秀先生(関西外国語大学教授)の最近の飛び込み
授業の中からピックアップしました。

h1

(2年生の子どもたちと)

「私の真似をして、こうしながら歌ってみようか!」
地声で歌っていた子どもたちに、手の動きを利用
して歌うようにさせると、とたんに透明感のある歌
声に変わりました。

フォルテは高音部を使って育て、低音部では
やわらかく、ていねいに歌うようにすると、2つの
声の重なりが「ひびき」合うのです。

また、この身体が鳴るような感覚を子どもたち
自身が身に付けることが大切なのです。

例えば、スィングする教材だったので、両手を
左右にスイスイ動かしたり、スラーする箇所では
手で音をつなげるように動かしたり…。
♪「かけあし 帰った公園で…」(織田ゆり子作詞)
ここまで歌ったあと、「ほら、今まで遊んでいた公
園で、楽しいことがあったんだよ!」と立ち止まって
声かけをすると、さらに軽く弾んだスィングで歌える
ようになりました。
指導での「立ち止まり」が大切だということです。
歌詞を追いかけて歌いっぱなしにするのではなく
指導者が、立ち止まって歌詞を子どもたちと吟味
することで、歌に表情が生まれてくるのです。

「歌声の『ひびき』は、ピアノやオルガンを使う
よりも、鉄琴の方が、子どもたちにつかませ
やすいのです」と言われ、実際にやってみると
確かに実感できました。

h2

(藤原先生の鉄琴の「ひびき」を感じ取って歌うと…)


また、「歌声を前に出すと硬くなるので、上や
後ろへ出すような意識で…」と説明を加えながら
鉄琴のひびきを聴いて歌わせます。
このことは、鍵盤ハーモニカでも同じで、強く
息を入れすぎるよりも、適度な息で吹くことで
音を出す「リード」がうまく振動するそうで、時には
2音で「ひびき」を聴き合わせるといいそうです。

合唱の指導では、指導者の前にオルガンを置
いて歌わせている場面をよく見かけるのですが
「ひびき」を味わわせたい場合には、鉄琴を
前にア・カペラで指導することも必要なのです。
ぜひ、お試しください。


講座82 歌は「かしこい」?!

h3

黒板に、このような掲示を見つけました。
どうやら、歌を歌わせるときのキーワードのよう
です。
ところで、最近どこの学校でも『ほうれんそう』
という言葉を使っていませんか?
ほうこく」「れんらく」「だん」の3語を取り
まとめた言葉ですよね。
そこで、先ほどの掲示に…
子どもたちに、さらによく分かり、覚えてもらう
ための方策として、もう一行、付け加えてみま
した。
うたのいみ」(歌の意味:歌詞内容)です。
3行にさらに付け加えるとますます覚えにくく
なると思いがちでしょう。
そこで、次のように並べ替えるのです。

 h4
 h5
 h6
 う た の い み

もう、お分かりでしょうか。
授業中に「みんな、歌うときに大切なことは?」
という指導者の問いかけに、子どもたちは
「か・し・こ・い!」
「そうですね、よく覚えてるね。本当にみなさんは
かしこいですね。」
(※意味が理解できない方のために…うたの
後のお・せい・え・み を縦に読みます)
どうですか。これだけでも授業が活気づくこと
請け合いです。
このようなキーワードをいくつか子ども達と共有
しておくと、習慣づけにもなりますね。
(この項目…ブログ「Happy Talk」の方が
似合ってましたか)


講座83 鍵盤ハーモニカと指の動き

鍵盤ハーモニカの指導で難しいのは、ブレス、
タンギング、それに指の移動でしょう。

【講座76】で、鍵盤ハーモニカの指遣いについて、
指を置きなおしてリズムをつくるのか、タンギング
でリズムを刻むのか…悩ましさが生じる要因に
ついてお話ししました。
もう一つ、指導で難しいのは指の移動でしょう。

polka1

(「小学生の音楽2」教育芸術社2年教科書)

この教材の場合、1段目()は『ソ』をB指(中指)
から始め、2段目()は『シ』を同じくB指(中指)
から始めるようになっています。
ですから、子どもたちに分かりやすくするためには、
B指(中指)を中心に説明するといいでしょう。

練習の過程では、1段目(3段目も同じ)と2段目を
2つのグループに分けて分担奏すればいいのですが、
全曲を通して演奏するとなると、『ソ』『シ』へ、
指の全体移動が必要になってきます。
これが子どもたちにとって理解しがたく難しい
のです。
また、1段目では、演奏中もB指は『ソ』の鍵盤の
上から動くことはありませんし、2段目でのB指は、
『シ』鍵盤の上でやはり止まっています。
こういう説明をしても、なかなか理解してもらえない
子どもがいるでしょう。

指導者が、大きな模型の鍵盤を使って説明されても
いいでしょうが、それより、本当の動きを友だちから
間近で学ぶことで、よりやる気が起きるものです。
そこで…

polka2

(『ソ』の鍵盤の上にB指を置いて…)

理解しにくい子どもからよく見えるように、鍵盤
ハーモニカを持ち上げて吹いてもらうようにします。
こうすると、指の移動の仕方も具体的に把握する
ことができるでしょう。

また、模範演奏する子どものB指に印をしておく
ことで、各段の演奏中にB指が動かず、その場に
止まっていること、それに段から段へ移るときの
B指の移動もよく分かるでしょう。

polka3

(B指の移動、また動きが分かりやすくするために
 印をつけています)


子どもたちにとっての、授業での「見える化」は
指導者が、子どもたちにどう「見せる化」にかかって
いるといえるのです。


講座84 「あいまいさも一つの正確さ」

こんな記事が載っていました…
oriorinouta1
(2015.9/29「朝日新聞・折々のことば」(鷲田清一)

正しいことは一つと決めすぎているきらいがあるが、
そういう思考ははやく捨てたほうがいい。
たえず移動する均衡点を、そのつど状況に応じて
外すことなく確定できるのが、まさに正確である…と。

我々、学校現場における授業に当てはめてみると
どうでしょう。
「指導案はこれでいこう!」と時間をかけて作った
指導案の流れからはみ出さないようにという思い
から、「正しい」と決めた解答が出るまで、次々と
子どもを指名したり、子どもの考えを誘導したり、
また逆に易しすぎたのか、時間が余ってしまったり
といった授業にお目にかかることもしばしばです。

「授業は生きものだ」とは、よく言われていますが、
他の学級を使った事前授業では上手くいっても、
本番の学級では同じ流れになるとは限りません。
ですから、本時のねらい、学習内容をしっかりと
把握しておき、この授業で何を学ばせるのかと
いうことを常に心に留めておきたいものです。
記事には、加減、案配、潮時などという職人や
現場の判断がそう…と書かれていますが、
私たちも、まさにその職人と同じなのです。
一人一人の子どもの学ぶ様子を見落とさず、
その時々で職人の加減、案配、潮時を見計ら
えるようなあいまいさを備えていたいものです。

関連する語句を思いつきました…Flexibleです。
「柔軟性」「適応性」、それに「しなやかな」「曲がり
やすい」などを意味する英単語です。
ただ、この単語…「おおざっぱ」だと解釈するのは
大間違いで、Flexibleにできるのは、その裏に用意
周到な緻密さ、豊富な経験量があればこそできる
技だといえるでしょう。
日々の授業の振り返りが大切なのです。


講座85 「何のために」と「何となく」

【講座84】に続いて、記事からの引用ですが…
ラグビーの日本代表エディー・ジョーンズ・ヘッド
コーチが
『「何のために」スポーツをするのかが
重要で、「何となく」やっていては成果は出ない』

とインタビューに応えていました。


『「おまつり」の気分を感じ取って、いきいきと歌う』
という授業がありました。「日本の祭り」の導入と
して、子ども達にとって身近な祭りに触れ、意見
交換をしたのですが、秋祭りだけではなく夏祭りに
までも広げたために、本題に入るまでに、すでに
20分近く経過していました。

「日本の祭り」の様子や雰囲気を共有させるために
あらかじめ用意したDVDを鑑賞。

DVDfesta

(画面に集中させるためにも、テレビ画面の周囲を
スッキリとしておきたいところです)


指導者の意図は、この鑑賞活動で、
「お囃子」に耳を傾けてほしかったのです。
それも、太鼓などが何度も同じリズムを繰り返す
ところに気づかせたかったのです。
ところが、子ども達は、鑑賞後、「みこし」「花笠」
「うちわ」など、ほとんどの子どもは画面に漲る
祭りのようすについての発表でした。

それであれば、映像を鑑賞する前に、流れている
「お囃子」をしっかり聴きとらせる指示が必要だっ
たのです。もしくは、映像を消して「音」に着目させる
ことで、本時の活動のねらいに迫れたと考えられ
ます。

授業の流れを「導入」?(本時の目標提示)?
「わかる」?「できる」?「楽しむ」?「まとめ」とした
場合、目標に向かって活動が「できる」ためには、
「わかる」活動を徹底しておかなければなりません。

映像を鑑賞させ、「お祭り気分」に浸ったところで
『村祭』(詞/葛原しげる・曲/南能衛)を歌わせよう
とするのですが、「気分」だけでは、目標通りに
歌えないものです。
どうすれば、自分たちの気分を歌に表すことが
できるのか…リズムやアクセント、強弱といった
[共通事項]等を参考に工夫をこらすことが大切
なのです。

「何のために」鑑賞を行うのか、「何となく」その気
にさせるだけの鑑賞では成果はでないのですね。



LIVE

講座86
「イメージ」on Parade

学習指導案を書く時、よく使われる言葉が
あります。それは「イメージ」という言葉です。
熟考した結果、これしかない…と思って使われる
のならまだしも、使い勝手がいいのか、結構
思いつくままに使われているように感じます。
特に、よく見かけるのが「音楽科」ではないで
しょうか。

本時1時間の中に「イメージ」が多用されていた
指導案を例に出してみると…
学習の「ねらい」から『曲の特徴からイメージ
広げ、表現を工夫しよう』
と、学習の「ねらい」に
イメージという言葉を用いることで、授業全体に
おいて、どのよう活動を行い、子ども達に何を
学ばせるのかが絞り込めず、朦朧(もうろう)
として分かりづらい授業になります。

本時の学習内容・活動では…「曲を聴きながら
イメージする」「イメージを短い文や絵で表す」
「班で表現する
イメージをつくる」「それぞれが
考えた
イメージを持ち寄り相談する」「班ごとの
イメージを発表する」「表現したいイメージ
近づける工夫をする」

また教師の働きかけではイメージしやす
いようにCDを流す」「どのような
イメージ
したらよいか分かるように具体例を挙げる」
「旋律の重なり方や和音の響きから
イメージ
を膨らませることができる」
…となっていまし
た。
「曲を聴きながらイメージする」という活動を
一つとっても、曲を聴きながら長調と短調の
響きの違いを感じ取らせたり、和音の移り
変わりを感じ取らせるのか、カノンのような
旋律の重なりや和声的な重なりの響きや
感じ方の違いを読み取らせるのか…といった
目標が「イメージ」という言葉によって、思考
が停止し、活動の「ねらい」がかき消されて
しまっているのです。
また、指導者がイメージの具体例を挙げて
しまえば、子どもたちは、その例に縛られて
それこそイメージが浮かびません。

曲の題名や鑑賞活動から「どんな場面か、
イメージしましょう」といった指示は、かえって
子どもと音楽との距離を離してしまう結果に
なるのです。

「イメージ」に限らず、「外来語」を使用する
場合には、人それぞれの先入観があるという
ことを忘れないようにしないといけません。

指導案を書かれる機会に、「イメージ」と
いう言葉を使いたくなったら、それを日本語
や、具体的な活動に置き換えてみることで、
思考がさらに深まります。


講座87
「イメージ」on Parade?

もう少し「イメージ」について考えてみましょう。
イメージという言葉をどんな意味合いで使用
しているのかという点において、個々それぞれ
受け取り方の開きが大きいのではないで
しょうか。
イメージという言葉の意味する幅は広く、
今まで見ていた景色の「残像」…これもイメージ
の一つなのです。
もし、授業において「想像させる」…というのを
イメージという言葉に置き換えたのであれば
最初から「想像」という言葉を使う方が、
より伝わりやすいでしょう。

話は少し変わりますが、『風を切って』という
教材があります。

kazewokitte

(教育芸術社「小学生の音楽6年」
       作詞/土肥武・作曲/橋本祥路)


学習目標は「曲想を生かして合奏しましょう」
です。
この合奏には歌詞(カッコ付歌詞)が付いて
います。
合奏曲が先に出来て、歌詞が後付けなのか
歌詞が先にあり、それに沿って合奏曲が
生まれたのかは分かりません。

この教材を2つの異なる手順で指導したことが
あります。(それぞれをA・Bとしておきます)
Aでは、先に歌詞を教え、歌ってから合奏に入り、
Bでは、歌詞を教えずに、すぐに合奏に入り
ました。

「風を切って」の情景を絵に描かせてみると、
Aの子どもたちは、歌詞に合わせるように
白い風景の中に小さくソリを描いたものや、
冒険者のソリの軌跡をかき消すかのように
風が舞う様子を描いたものがほとんどだった
のです。
ところが、Bの子どもたちは冒険者自身に
焦点を当てたものが多く見られたのです。
文章に書かせてみると、Aの子どもたちは
歌詞をもとにした内容がほとんどだったのに
比べて、Bでは「吹雪のために目が開けられ
ない。前が見えないぞ」「お腹が空いた…
息苦しい」「あきらめない、助かると信じて
前に進もう」など、自分が冒険者になりきった
感想がほとんどでした。
歌詞があると、一定の情報はまんべんなく
どの子にも情景が共有できたとも言えますし、
歌詞を与えないと、個々の子どもの独自性
がうかがえます。

言い換えれば、Aの場合には、歌詞(言葉)
から表現の仕方を考える傾向にあり、
Bの場合には、音楽を形作っている要素に
目を向けて自分達の表現に結び付けている
と言えるでしょう。
A・B…曲想にふさわしい表現を工夫させ
るには、どちらがいいのでしょうか…。

講座88
教材の学習目標と系統性

視点を《合奏》にしぼって考えてみましょう。
6年生の教科書に載っている合奏主体の教材
です。

教材@『ラバーズ コンチェルト』
lovers
(「小学生の音楽6」教育芸術社)

教材A『雨のうた』
gassou1
(「小学生の音楽6」教育芸術社)

教材B『風を切って』
gassou2
(「小学生の音楽6」教育芸術社)

授業では、活動を通して「何を学ばせるのか」
ということが何よりも重要です。
上記の[教材]を掲載順に並べてみると…
[教材@]では、各パートに楽器の指定が見られ
ません。
何故なら、各パートの役割(主旋律、飾りの
旋律、響きを豊かにする旋律、響きを支える
旋律)の役割を果たせる楽器を子どもたちが
選ぶからです。

[教材A]では、楽器が指定されています。
ここでは、和音のひびきの違いを感じたり、
旋律の重なり方の違いを見つけて演奏の
工夫をするねらいがあるので、目標に合わせ
て楽器があらかじめ指定されているのです。

[教材B]では、楽器が指定されていません。
ここでの学習のねらいは、「曲想を生かして
合奏しましょう」なので、各パートの特徴や
曲想に合う楽器を選択する活動があるため
です。

例えば…[教材A]において、「旋律を演奏
する楽器は何にすればいいですか?」という
ような[教材@][教材B]と同様の活動をする
のではなく、旋律の重なりの特徴から、カノン
の部分は出だしや、お互いのフレーズを
意識して演奏したり、和声的な後半において
はバランスに気を付けるように工夫して演奏
する活動に時間を割きたいものです。

このように、学習活動には目標に合わせた
学習内容があり、系統だった流れの中で
学習を組み立てたいところです。


LIVE

講座89
友だちから学ぶ

『山のポルカ』(チェコ民謡/2年生)を鍵盤
ハーモニカで演奏していた時のことです。
2拍子のリズムに乗って演奏した後、次は
3拍子で演奏してみよう…ということになり
ました。(正確に言うと8分の6拍子です)

その時に演奏に合わせて自然な動きを
しながら演奏している子どもが目に留まり
ました。

otehon

「全員で、◯◯さんの演奏を見てみましょう」
と言って、一人で演奏をしてもらいました。

演奏後の感想を聞いてみると…
「指をまあるくして弾いていました」
「タンギングがきつくなかったです」
「リズムに乗っていました」
「出だしがスッと出てました」など、どの子も
細かいところまで目と耳でよく観察している
のに感心しました。

「そうだよね、リズムに上手く乗っていたし、
出だしがスッと出てたよね」

〇〇さんをお手本にしたのは、身体の
わずかな揺れを伴って演奏をしていたから
なのです。
それと、1拍目の音を吹きだす直前から
身体が揺れ始めるため(指揮の予備拍の
よう)に、出だしがスッと出ているのです。

「ほら…音が出る前から音を出す準備を
しているのが分かったでしょ」というと、
子どもたちは納得し、早速真似をして…。
子ども同士で学び合わせるために、指導
者は、授業のねらいに沿って子ども達の
様子をきめ細かく観察しておかなければ
なりませんね。

講座90
  大阪府音楽教育研究大会 記念講演
 「授業デザインの提案」?

【講座90】からは、2015年11月5日に行われた
「大阪府音楽教育研究大会」(豊能大会)での
記念講演で提案をした内容をお話しします。
     
kinenkouen1

〜つながる楽しさ広げよう〜

大会テーマ「つながる楽しさ広げよう」の「つながる」とは
子ども同士、指導者と子どもが音楽活動を進めていく
過程を通してつながり、その楽しさを共有する輪を広げ
ていくというものです。
もう一方で、「つながる楽しさ」とは、授業に参加する
ところから始まり、わかる楽しさ、できる楽しさ、そして
友だちとつながる楽しさという、一連の「つながる楽しさ」

でもあるのです。

つながりの第一歩は「コミュニケーション」です。
大人と違い、子どもたちとつながるのに、時間を要しま
せん。

一緒に歌を歌い、握手をし、目と目を合わせることだけ
でも親しくなれるから不思議です。

kinenkouen2

(『あしたははれる』(坂田修/詞・曲)を紹介しながら
 歌に合わせて会場の方々と握手を)

有名な都々逸(どどいつ)に、こんなのがあります。
「嫌いなお方の親切よりも 好きなあなたの無理が
いい」

子どもたちは、嫌いな先生から親切にされても、
「余計なお世話じゃ!」と言いかねません。
でも、好きな先生なら、少々難しい課題を出されても
頑張るものです。
好きな先生は、日頃から、どの子どもにも見合う
課題を出していて、「この先生の問題ならやれば
できるよ」という信頼関係が育まれているのでしょう。

授業に参加しないと活動は始まりません。

どの子も、興味や意欲を抱いて授業に参加したくなる
「初発の発問」がまずは授業「ねらい」のキーワード
ですね。

「授業をデザインする」話しをする前に、他のデザイン
化とともに紹介します。

◇学校デザイン
全校で気持ちよくあいさつを交わすためのデザイン、
また清掃活動を円滑に行うためのものや、職員室へ
の出入りについてのデザイン化など、学校全体で取り
組むものです。
最近は、どこの学校でも、昇降口やトイレ、職員室の
入り口などに掲示されているのを見かけるようになり
ました。視覚化に配慮した掲示が増えてきました。
「掃除道具入れの中はきちんと整頓しましょう」という
文字よりも、整頓された写真を一枚掲示する方が、
子どもにとって分かりやすくなるデザインなので、
普及しています。

◇教室デザイン
授業時に、子どもたちが目移りをして集中できない
ような掲示物をできる限り少なくし、また逆に、定着化
を図りたい事柄(音楽科での「共通事項」など)は、
いつでも見える場所に掲示するなど。
また、当たり前のことですが、子どもの視力や聴力、
集中度を考慮した座席配置など、さまざまなデザイン
を必要とします。

◇友だちデザイン

子ども同士の人間関係や理解の度合いによる配慮
から生まれるデザインです。

そして、4つめのデザインが、今回のテーマである
「授業デザイン」です。

◇授業デザイン
どの子にとっても、授業に参加でき、活動できる授業
のデザイン化です。
子ども一人一人の環境などの違いは、子どもの数
だけあるといえます。友だち付き合いの下手な子、
家庭に帰れば、母親は勤めで夜遅くにしか帰って
こない、祖父母と暮らしている子、父子家庭、金銭面
で困っている子など本当に様々です。

授業を行う上で、配慮しなければならない第一の違い
は、学力差でしょう。
どの子も楽しく活動するためには、この学力差を見え
なくすること
が求められます。
言い換えれば、楽しい授業は学力差が見えない授業
とも言えるでしょう。
その上で、「楽しさ」を求める授業デザインを行うよう
にするのです。

「楽しさ」について…
?「わかる」楽しさ ?「できる」楽しさ ?「共有する」
楽しさ ?「表現する」楽しさ
に分けて、デザイン化の
提案をすることにしましょう。

講座91
  大阪府音楽教育研究大会 記念講演
 「授業デザインの提案」?

【講座90】から、2015年11月5日に行われた
「大阪府音楽教育研究大会」(豊能大会)記念講演で
提案をした内容をお話ししています。
     
kinenkouen1

    〜授業の楽しさ・「わかる」〜

音楽科での、授業の楽しさについて、4つ提案します。

@「わかる」楽しさ

わかることは、誰にとっても楽しく、また次への原動力に
なります。
授業では、まず今から始まる授業の「ねらい」がわかる
こと。「授業の流れ」がわかる、活動において「歌声」や
「リコーダー」がわかる
などが挙げられるでしょう。
ここ数年、授業の中で「ねらい」を見やすく掲示したり、
授業の始まりに、授業の流れを説明する場面が増えて
きました。

ここでは、「わかる」楽しさの一つ、「階名」がわかる
楽しさ
についてお話しします。

子どもたちに、階名がわかるとリコーダーが吹ける…
という楽しさを体感してもらうために、「シーソーららら!」
(作曲/平島 勉)という教材を用意しました。
『シーソー シーソー シーソー らーらら…』と歌えば、
それがそのまま階名の「シ」と「ソ」に当てはまるという
教材です。(ここでは、「ら」は吹きません)
歌を覚えたら、「じゃあ今歌ったのをリコーダーで吹いて
みよう!」と指示すると、子どもたちは難なく吹けました。
「階名がわかるとリコーダーが吹けるね」と大喜びの
子どもたち。
歌詞がそのまま階名になっていることと、もう一つ、
使用する運指が「シ」と「ソ」の2音だけなのです。
全員がわかり、楽しむためには「学力差」を見えなくする
ことが欠かせません。
2音だけなので、どの子どもも余裕をもって取り組める
のです。
リコーダー指導の進度は一般的に「シ」?「ラ」?「ソ」と
進み、新出音「ソ」の学習では、上記の3音が出てくる
教材が多いのです。
それでは、スムーズに吹けない子どもが出てきかねま
せんが、2音であれば、とてもやさしくなるのです。
新しく出てきた音を、自分の指と、自分の息遣い、
そして自分の楽器で自分だけの音を出したいという
思いは、どの子も同じです。
新出音を含め、2音にすること、すなわち、学力差を
見えなくすることで、どの子も活動を楽しめるのです。

もう一つの事例を紹介しましょう。
「曲の山」がわかる楽しさです。

「曲の山」という言葉が出てくるのが3年生での楽曲、
『ふじ山』です。

まずは、【講座68】を読み返してください。

曲の山に気づかせたい「ねらい」であれば、しっかりと
「曲の山」が子ども達に見えるようにデザインしなければ
いけません。
言い換えれば、「見える化(視覚化)」の裏には、どう
「見せる化」
という指導者の工夫が必要なのです。

「曲の山」だけではありません。

「どうして音楽の授業があるの〜」との子どもからの
問いかけにこたえるためには「教科」をどう見せる化、
授業での「課題」をどう見せる化、「指導者」を、「仲間」
を、それぞれどのように見せる化など、デザインできる
ところはたくさんあります。
「見える化」の工夫には「見せる化」という指導者の
手腕が問われるところです。
そのためにも、提示する課題やねらいをスリム化し、
的確に把握して授業に臨みたいところですね。

           kinenkouen3 



講座92
  大阪府音楽教育研究大会 記念講演
 「授業デザインの提案」?

【講座90】から、2015年11月5日に行われた
「大阪府音楽教育研究大会」(豊能大会)記念講演で
提案をした内容をお話ししています。
     


  〜授業の楽しさ・「できる」〜

音楽科での、授業の楽しさについて、第2の提案は
「できる楽しさ」です。

A「できる」楽しさ

1時間の授業の流れでは、興味・意欲を湧かせる
「導入」から、本時のねらい・学習内容が「わかる」へと
活動がつながります。
教育は、子どもから引き出すばかりではありません。
特に音楽科では、教えるべき内容もたくさんあります。

どの子も「わかった」ことを踏まえ、自分または自分達
で「できる」活動へとつなげていくのです。
ですから、いい授業になるかどうかという点からも、
この「わかる」活動がとても大切になってきます。
「わかったこと」を活用して次の「できる」活動へ…
ここが授業のクライマックスと言えるでしょう。

5年生の教科書教材にフォスター作曲の楽曲が
掲載されています。
ここでの学習の「めあて」は、『「和音の移り変わりを
感じながら演奏しましょう』だとか、『和音や低音の
はたらきを感じ取って演奏しよう』です。
授業の「めあて」に『感じながら』『感じ取って』
なっているのですが、はたして、どの子どもも感じ
られたのかどうか、指導者としては、微妙な感触
になることでしょう。
「みんな、感じ取れたかな?」という呼びかけに、
「う〜ん…はい!」と返事をする子どもの中には
感じたことを、単に和音が聴こえたことと捉えて
いる場合があるものです。
どう評価していいのか難しいところですよね。

そこで、出てくる和音の流れを3部合唱にして歌う
ことにしました。
『ぼくもわたしも ハモリ隊』という活動です。

hamoricard

(示された和音を展開して各声部を分けたカード)

@のソプラノからAメゾBアルト…という風に順に
横に歌っていきます。
5年生になると、それぞれの声部をわりと簡単に
歌えます。
次に、3グループに分かれて階名で歌い、3声部
のひびきの移り変わりを味わいます。

子ども達を、6〜9人グループに分け、階名を
自分達で考えた言葉に替えて歌うという活動です。

この授業に入る前に、『筑波山麓合唱団』
(歌/デューク・エイセス)の4声部でのコーラスを鑑賞
していたので、手始めに見本となる歌詞を提示
しました。(蛙の鳴き声を取り入れたもので、
カードを参照)
こうして、各グループが創作した言葉で合唱を
披露しあうという活動です。

例えば、『ぼくらの先生紹介し隊』『委員会活動
紹介隊』、中には『大阪名所案内隊』というのが
あり、前半部の終わりには「♪お腹がすいたら
くいだおれ」、また最後は「♪吉本観て帰ろ」と
いうのがありました。
言葉を当てはめる活動では、拍を意識しないと
言葉が入らないこともあわせて学んだようです。

この活動は、この後に出てくる3部合唱へと
つながっていきます。

2部合唱も危なっかしいのに、3部合唱なんて、
と思っておられるかもしれませんが、デザイン
の仕方によっては、できる楽しさを味わえる
ことになるものです。

          kinenkouen5



講座93
  大阪府音楽教育研究大会 記念講演
 「授業デザインの提案」?

【講座90】から、2015年11月5日に行われた
「大阪府音楽教育研究大会」(豊能大会)記念講演で
提案をした内容をお話ししています。
     


  〜授業の楽しさ・「共有する」〜

音楽科での、授業の楽しさについて、第3の提案は
「共有する楽しさ」です。

授業ではその時間に学んだことを仲間と共有することが
大切です。
特に、3年生でのリコーダー導入時期は、どの子も期待
と不安が入り混じった状態で授業に臨んでいること
でしょう。
この点については【講座70】を読み返してください。

一方、学校での「音楽」を、実社会とどう結びつけて
いくのか…ということも大切です。
学校音楽と社会とのつながりを実感できることで、
子どもたちはますます自分たちの演奏に価値を見出す
ことができるのです。
音楽科には「表現」と「鑑賞」の2領域がありますが、
鑑賞するという一方向の学習ではなく、自分達からも
楽器を手に鑑賞に参加していくこと…すなわち、コラボ
レーションすることで音楽を共有できるという能動的な
気持ちになるのです。

例えば、有名なジャズに『シング・シング・シング』という
曲があるのをご存知でしょう。
「音楽科の授業にジャズですか」って?
そうです!最近では、教科書でも取り上げられていて
幅広いジャンルの音楽との出会いが求められています。
それに、「表現」を身に付けるのであれば、「鑑賞」する
ことが欠かせません。
ジャズの歯切れよさを鑑賞することで感じ取ると同時に
自分たちの演奏に生かすことができるのです。

友だち同士での「共有」、また鑑賞曲とコラボレーション
することでの実社会との「共有」…どちらも子どもたちは
大いに盛り上がって楽しさを味わってくれることでしょう。


講座94
  大阪府音楽教育研究大会 記念講演
 「授業デザインの提案」?

【講座90】から、2015年11月5日に行われた
「大阪府音楽教育研究大会」(豊能大会)記念講演で
提案をした内容をお話ししています。
     


  〜授業の楽しさ・「表現する」〜

音楽科では、「表現」および「鑑賞」の活動を通して…
とあるように、「表現する楽しさ」を味わわせたいもの
です。

@「様子」を表現する
akaihusen
 (音楽物語『花いっぱいになあれ』音楽:平島勉)

このような様子を表しているような歌では、風船の
感触や飛んでいる様子を歌声で表現することで、
子どもたちの心の中に、豊かなイメージを広げる
ことができるでしょう。

最初、低学年の子どもたちが大声で怒鳴るように
歌っていたので、この作品の最初の部分の読み
聞かせをしました。
初めは、子ども達が歌ったように、大声で怒鳴る
ように読みました。すると、子どもたちは目を丸く
して大笑いをするではありませんか。
「そうだよね。今の読み方はおかしいよね。
歌う時も同じなんですよ。本を読む時のように、
どんな様子かがわかるように気持ちを込めて
歌うのですよ」
直後に歌った子どもたちの歌声は、聴いていて
とても気持ちのいいものでした。
「もっと、小さな声で、怒鳴らないで歌いなさい」
なんて言わなくても、「様子」や「気持ち」を考える
ことで歌う楽しさ、表現する面白さを味わいながら
歌声まで変えるのです。


A「気持ち」を表現する

otegami
(音楽物語『お手紙』より/音楽:平島勉)

かえるくんとがまくんが話しをしている場面での
歌なのですが、かえるくんの気持ちになって
がまくんに話しかけるように歌うところです。
旋律と言葉は決まっていますが、どのように
歌えば気持ちが伝わるのか、子どもたちは
歌いながら工夫をこらします。

山田耕筰氏が「日本語には旋律とリズムがある」
と言われ、代表的な歌曲に『からたちの花』が
あります。
「だいすきな がまくん」の旋律も、自然に歌える
ようにイントネーションに配慮してあり、子ども達
も「気持ち」を工夫することに専念できます。


B「キャラクターになりきる」楽しさ

kituneokami
(音楽物語『きつねのおきゃくさま』音楽:平島勉)

音楽物語は国語科文学教材を題材にしている
ので、主人公などの登場人物(動物)が出てきます。
上の楽譜は、上段がきつねお兄ちゃん、下段が
黒くも山のオオカミの歌です。
この二人が争う場面をパートナーソングによる
二重唱にしたのですが、子ども達は、どちらの
方を歌うか、それぞれの好みで決めるのです。
オオカミは物語の中で悪役なのですが、この方を
歌いたがる子どもが案外多いのです。
きつねとオオカミになりきって歌える面白さも、
音楽をする楽しさなのです。

Cやさしい合唱で「表現」する楽しさ

高学年になると、音楽物語のようなストーリーが
なくても、一つの歌に気持ちを込めて歌うことが
できるようになります。
といっても、学級全員での合唱は難しい面も
多々あることでしょう。
そこで、パートナーソングのような分かりやすい
旋律を組み合わせた合唱曲を取り入れることで、
どの子どももハモる楽しさ、ハモることができた
うれしさを味わうことができます。
「どの子も参加できる合唱曲」というキーワードで
選曲することをお勧めします。

「表現」と一口に言っても、しっかりとした「ねらい」を
もって取り組みたいところです。
表現する楽しさを実感できると、ますます「音楽」
に積極的に取り組んでくれることでしょう。

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【講座90】からの記念講演での提案を終わります。


LIVE

講座95
子どもの感想から学ぶこと


大分県竹田市立竹田小学校での合奏指導後の
6年生の子どもたちの感想です。

●授業は楽しさ

「この前は2時間、僕たちと付き合ってくれて
ありがとうございました。本当にあの2時間は楽し
かったです。」

●学んだという実感が伴っている授業

「先生が教えてくれてから歌も合奏もすごくかわり
ました。
授業はとっても楽しかったです。」

「先生来てくださった次の日に、またみんなで合わせ
ると、なんかかっこよくなったようでした。」

残念ながら、私が訪れた当日欠席されていた子ども
の感想は

「次の日に来たとき、みんながすごく上達していて、
「瀧祭」
(市内の音楽会)も成功しました。」

    

●分かりやすい指導

「すごい指揮で弾きやすかったです。」

「合奏は、どこで音を切るかなど、適切に言って
もらえて合奏が良くなりました。」

Comment:短い言葉でポイントを押さえた指導、子ども
       が困っているところを見つけ、言葉がけを
       すること。 

「私は音楽が苦手で、先生が来られた時もまだ完全
に弾けなかったんだけど、先生が来て、みんなの
雰囲気が変わってすごいなと思いました。」


Comment:下を向き、音棒を見ながら木琴を弾いて
       いた子どもに、「上を向いて指揮に合わせ
       られないかな?」と言うと、「間違えるから」
       という返事。
       「じゃあ、指揮を見ないで間違えずに弾いて
       みんなと合わないのと、少々間違えても
       みんなとぴったり合っているのとでは、
       どっちがいいと思う?」というと、納得して
       顔を上げて弾きだしました。  

合奏を楽しんだのは1時間だったのですが、子ども達の
感想の中に、「自分でも満足することができました」と
いうのがありました。どの子も、少しでも自分自身が
納得できる、満足のいく音楽をつくりたいという思いを
もっているので、短時間であっても変わることができた
のですね。

講座96
「音楽物語」の面白さ

【講座94】で、音楽の楽しさについてお話ししました。
何よりも、音楽する楽しさは「表現」にあるといえます。

「様子」を表現する、「気持ち」を表現する、「キャラクター
になりきる」、「合唱」を通して表現する…などが主要な
ものでしょう。

そのような楽しさを包含しているのが「音楽物語」です。

今回、音楽物語『アナトール工場へ行く』(イヴ・タイタス作)
を市の音楽祭や校内の集会で上演された佐賀県3年生
の子ども達の感想から音楽の楽しさについて考えて
みましょう。

アナトールが人間にお返しをするために、味見をして
カードに書き、チーズ工場の人達に喜ばれるように
頑張っているところが、私も頑張りたくなるからです。

アナトールがチーズ工場で「行ったり来たり、来たり行っ
たり…」という繰り返す姿に頑張っている様子を感じ、
同じ気持ちになったのでしょう。


nezumi

また、上のような、「ネズミ」やチーズ工場の社長さんに
なりきって歌った子どもが多かったのです。
物語に登場するキャラクターになりきり、気持ちを読み
取って表現する楽しさがここにあることが分かります。

私は、「手紙 アナトールへ」の曲が一番好きです。
アナトールへ手紙を書いたチーズ工場の社長さんが
アナトールが誰だか分からない…という登場人物の
気持ちが分かるからです。


また、曲想から「やさしさ」を読み取った子どもが
います。

社長さんが手紙を書いているところで、心の中で
やさしいって思っているところが心に残りました。

社長が歌うアリア「手紙 アナトールへ」では、歌詞の
中に「やさしい」という言葉は出てこないのですが、
曲想から、そのように受け止めたのですね。

短い感想の中に…
音楽物語の方が覚えやすいし、歌もいいですね
というのがありました。
何度も同じ歌を歌っても飽きがこないどころか
より感情が深まるのも音楽の力なのです。

低学年の間に、このような音楽物語に取り組む
ことによって、歌にはメッセージがあり、それは
すなわち歌う人達のメッセージになっていることを
自然に理解できるようになるのですね。


LIVE

講座97
教科書後半教材の扱いについて

教科書の後半には『みんなで楽しく』(教育芸術社)、
『音楽ランド』(教育出版社)が載っています。
このコーナーは、時間が余ったから…などの考えで
サラッと扱うかもしれませんが、それにしてはステキな
教材がずらりと並んでいます。
ですから、時間が余ったら…と言わずに、これらの
教材を活用できる題材に関連させ、計画的に扱うよう
にしたいものです。
そのためには、教材を見る目を養う必要がありそう
ですが…。

教科書に載っている中の、どの題材で扱うのがふさわ
しいのかによって、指導が変わってきます。

『クラッピング ファンタジー第4番』(長谷部匡俊 作曲/
教育芸術社5年教科書)を扱った授業研究会があり
ました。

「いろいろな音のひびきを味わおう」の題材で扱っ
た授業でした。
まず初めに、6つのリズムパターン(2小節)の中から、
気に入ったものを3つ選び、ぞれを持ち寄り、「問いと
答え」や「反復」、「音の重なり」を考慮しながら組み合
わせて数人でアンサンブルするという活動が事前の
授業で行われていました。

本時の授業では、リズムアンサンブルが完成したのを
確かめてから、指導者が…
「みんなが作ったリズムアンサンブルを『クラッピング
ファンタジー第4番』と組み合わせてみよう」


まさか自分達のリズムアンサンブルを『クラッピング
ファンタジー』に合わせるなんて考えてもみなかった
ことなので、子ども達から歓声というよりも驚きの
叫び?!が起こりました。

本時では「音楽のしくみ」を生かして強弱をつけよう」
というねらいで活動が進められました。
『クラッピング ファンタジー』の曲を流しながらの活動
でしたが、子ども達は曲に合わせるというよりも、
「音楽のしくみ」…問いと答え、反復をもとにしながら
強弱を付けていったのです。

この場合、思いもしなかった他の曲に当てはめるの
ではなくて、リズムアンサンブルそのものに、強弱や
速度などを工夫させる活動の方が一貫していたと
思われます。

また、題材を「曲想を味わおう」にすれば、同時に
学習した「まっかな秋」の合唱、「アイネクライネ
ナハトムジーク」の鑑賞と相まった、まとまりある
流れの授業になったかもしれません。

教科書後半の教材の扱いに、指導者の個性が
みられるのですね。


LIVE

講座98
「音楽づくり」@ 何を学ばせるのか 

3学期に入り、2校の「音楽づくり」の授業研究
会に寄せていただきました。
【講座98】〜【講座100】では、2つの授業研
究会から見えてくるものについてお話しします。

◆「音楽づくり」は後回しになりやすい?

2校の授業者は、「音楽づくり」をしながら、
一体何を手がかりに、どう進めればいいのか、
またどうまとめるといいのか、がよく分からな
い。
いざ取り組んでみても活動が遊びのようになっ
てしまって…と口をそろえて言われました。
さらに、評価の仕方についても悩んでおられ
ました。

「音楽づくり」については、学習をする前に、
活動を通して『何を学ばせるのか』という「学習
のねらい」をしっかり踏まえておかなければなり
ません。
また、「音楽づくり」では「どのような力をつけ
ることができるのか、つけたいのか」、学ぶ
べき事柄を明確にして、授業に臨むことが
大切です。
後回しにしないで、しっかり準備をしておき、
取り組んでみると、新たな課題が見えてくるもの
です。

3年生での授業についてお話しします。

題材『いろいろな音の響きを感じ取ろう』
教材「おかしのすきな まほう使い」

音楽づくり活動を行う場面の授業でした。

魔法使いが魔法をかけるときの音楽をつくると
いう活動で、まず初めに「まほうの音」に合う
音を各自で見つけ、「魔法の音楽のもと」を
つくりました。

本時では、各自が持ち寄った音を、グループで
重ねたり、つなげたりしていくという内容です。

wb

(授業での板書:「練習しよう」というのが少々
気にかかりました)


子ども達それぞれが工夫して見つけた「音楽の
もと」を人数分の色分けしたカードに貼っていく
のです。
あるグループは、「問いと答え」を3回繰り返す
ような仕組みを考えていました。

gw1

(グループで「音楽のもと」を組み合わせて…)

また、あるグループは、「音のないところを表し
ました」という組み合わせを考えていました。

gw2

(カードを貼っていない列を設けています)

こうして、「音楽づくり」が完成です。

このような活動での評価については、「音楽の
もと」から生まれた音や、活動中のつぶやき等
を含めた行動観察が有効な手段となります。

ところで、中には、鉄琴で音色を工夫している
子どもを見かけましたが、できあがった音や、
演奏を観ていると、全体的に、音に向き合わせる
時間が少なかったのではないかと感じました。

gw3

(マレットを替えながら気に入った音色を探して
いました)


この学習では、「音楽のもと」をつくる活動が
キーワードの一つなのです。
活動の順序としては…

@自分が考える魔法の音楽のイメージに合った
 音色の楽器を探し出す。
A選んだ楽器から、よりふさわしい音色、強弱
 等を生み出す工夫をする。

その後、それぞれが持ち寄った「音楽のもと」を
どう組み合わせるのかをグループで修正を加え
ながら組み立てる。

組み合わせる中で、「何かへん…」とつぶやいた
子どもがいましたが、「何故、そう感じたのか」
を問いかける絶好の機会になるのです。

「音楽づくり」においては、どのような過程を経
て学んできたのかを大切にしたいところです。
また、この学習では、音楽づくりの手がかりと
して、魔法の音楽を効果音として捉える子どもが
いても不思議はありません。

音楽として完成させるのは4年生でも、同じ
「ねらい」すなわち「音の特徴を生かして音楽を
つくりましょう」が出てきます。
3年生の音楽づくりは4年生とひとくくりにして
考えればいいでしょう。


LIVE

講座99
「音楽づくり」A 全学年を俯瞰して

題材『日本の音楽に親しもう』で「音楽づくり」
(3年生)を行った授業での本時のねらいは、
「ラ・ド・レの3音で おはやしのせんりつを
つくろう」というものでした。

ohayasi1

(導入として地元の祭りのおはやしを聴かせる)

親しみのある(?)お囃子を鑑賞したあと、指導
者が、お囃子づくりについての説明をしました。

ohayasiwork

(ワークシートを使っての音楽づくり)

こうして、各自で旋律づくりを始めます。

saguribuki

(リコーダーを使って探り吹きをする子も)

各自でできた2小節の旋律を、次はペアになって
4小節の旋律に拡大していきます。

1校時の授業の流れを、「導入」「分かる」
「できる」「楽しむ」(共有する)の4段階に
分けて考えると、この授業では、「分かる」部分、
すなわち旋律をつくるところで、「こうすれば
できる」という説明に終始し、「音楽としての
まとまり」「続くふし」「終わるふし」の具体的
な説明がほしいところです。

この「分かる」活動を十分に行っておくと、
子どもたちだけで、十分「できる」活動が広がり
と深まりをもって発展するものです。
「できる」活動を『アクティブ・ラーニング』に置き
換えることにもつながっていくのです。

単に「ラドレ」の3音を指定されたリズムに
振り分けるだけの作業手順の説明に終わった
ために、一見、次々に旋律を作っていくので、
活動ははかどっていくように思えるのですが、
「何を手がかりにすればいいのか」がつかめて
いないのです。
それでも、西洋音階に慣れた(?)子どもたちは、
最後を「ド」で終わらせていないのがほとんど
だったのには救われました…。

ペアになり旋律をつなぐ時に気を付けることは
何か…これも大事な視点になります。

さらに4人グループになり8小節の旋律をつくる
のですが、グループの一つが次のような旋律を
つくりました。

gakuhu1

@「レーレー/レドラ・」
A「ドードー/レドラ・」
B「欠席者」C「ラーラー/ドラレ・」)


このグループが発表したのですが、「欠席者」の
ところを指導者が子どもから言われた通りの
旋律を演奏したのです。
それはそれでいいのですが、誰が聴いても、
それは違和感のある旋律でした。
指導者が、きちんと授業のねらいを把握していれ
ば、ここのところで、「せっかくだから先生が
作ったのも演奏させて!」と、ねらいに迫れる
箇所なのです。

「@とAの旋律をつなげて感じることや思った
ことはないかな?」と問いかけると、きっと
子ども達は「レドラ」が共通していることに
気づくでしょう。
さらに、2つの旋律のまとまりを感じ取ることが
できたに違いありません。
ですから、指導者はBの旋律として例えば、@を
もう一度繰り返したとすれば、Cの旋律で気持ち
よく終えることができたと考えられますし、
「繰り返すことによる全体のまとまり」について
も、つかませることができたことでしょう。

指導者は、この活動を通して、「何を学ばせるの
か」ということを常にブレずに把握しておかなけ
ればならないのは言うまでもありません。


◆「音楽づくり」でも全学年を俯瞰ふかんして!

合唱、器楽、鑑賞と同様に、「音楽づくり」に
おいても、1年から6年までを通して、この学年
のこの題材においては何を学ばせるのかを
考えて、授業に臨まなければなりません。

3年生での民謡音階を使った「おはやしづくり」
の前を見ると、『うさぎ』が出ています。(教育
芸術社)
ここでは、日本の伝統音楽の雰囲気を味わうと
ともに、「問いと答え」についても学んだことでしょう。
※『うさぎ』は民謡音階ではなく、都節音階なのですが。

さらに学年を遡ってみると、2年生では『なべな
べそこぬけ』などのわらべうたに親しんできま
した。
また、伴奏づくり活動を行ってきました。
1年生では、『ひらいた ひらいた』をはじめ、
『おおなみこなみ』『おちゃらかほい』なども
歌って遊びました。
このような活動の中で、「問いと答え」や「続く
ふし」「終わるふし」などに少しでも触れていれ
ば、3年生での「お囃子づくり」がさらに内容の
濃いものになったと考えられます。

逆に、1・2年の低学年の時期から、中高学年の
学習内容を見据えておくことが大切だといえます。

「音楽づくり」に限りませんが、全学年を俯瞰し
ておくことが欠かせません。



LIVE

講座100
音楽づくりB 「音階」について 


「音楽づくり」は、
『「ラドレ」の3音を使って』(3年)、
『「ミソラドレ」の5音で』(4年)、
『「ミファラシドミ」の音階で』(5年)、
というように構成されています。

「音楽づくり」を、日本の伝統音楽の視点から
俯瞰してみると…(教育芸術社「音楽」教科書)
1年生で扱う「わらべうた」の多くは「民謡音階」です。
2年生で「わらべうた」に伴奏をつけるのも
「民謡音階」を用いています。
3年生での「音楽づくり」も「民謡音階」でした。
この「民謡音階」…今の時代でも親しみを持たれ
ているのでしょうか、以前大ヒットしたピンク
レディーの『ペッパー警部』をご存知でしょう。
あの出だしの部分「♪ペッパー警部…」これこそ
「民謡音階」そのものなのです。
だから大ヒットしたのかも知れませんね。

ところが、3年生では「音楽づくり」をする前に
共通教材『うさぎ』を学習します。
これは、「都節音階」と呼ばれる音の配列です。
もう少し学年を先へ進めてみましょう。

鑑賞教材に『ソーラン節』『南部牛追い歌』が
登場しますが、それぞれ「民謡音階」、
「都節音階(変種)」と言われているものです。
※参考:児島美子氏
その学習の後の「音楽づくり」は『「ミソラド
レ」で旋律をつくろう』なのですが、この音階は
「都節音階」です。
この学習を経て、日本の旋律の感じを生かして
歌うのが『さくら さくら』…これも「都節音階」です。
ちなみに「こと」で平調子というのは、「都節
音階」に調弦することです。

5年生では、「こもり歌」が登場します。
教科書見開きで、2種類の旋律が載っています。
一つが「律音階」と呼ばれるもので、他方は
「都節音階」です。
教科書には「口から口へと伝えられていくうち
に、旋律や歌詞が少しづつ変わっていきまし
た」と説明されています。
そうなのです、元々あった「律音階」が17世紀
末、江戸元禄期に都会の人達が粋いきを求めて
ある音を変化させて生まれた音階が、その名の
通り、都で生まれたので「都節音階」となったのです。
ですから、教科書の2つのこもり歌は「律音階」
と「都節音階」なのです。

この「都節音階」を使った「音楽づくり」活動が
教科書に出ています。

6年生での「音楽づくり」は一変して西洋音楽に
立ち返っての旋律づくりになりますが、歌と鑑賞
を含めた教材として『雅楽』が扱われています。
「雅楽」の音階は5年生の「こもり歌」に出てき
た「律音階」です。

教科書を通して、全学年を俯瞰してみると、様々
なことがわかってきます。
音階名など教える必要はありませんが、指導者
は漠然と理解しておくと、余裕をもって学習に
臨めることでしょう。

【講座60】も読み返してください。


講座     1〜60

講座   101〜150

    


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