HirashimaTsutomuWorks

   音楽教育Partner
   
戎 博志  

   授業力Up 講座


講座0  講座を始める前に


まずは、私自身の今を、お話ししましょう。


◆授業は制限時間45分の真剣勝負

2014年3月(2013年度)を以て、退職をしたのですが、「どうしても短期の音楽専科が
いなくて困っている…」という依頼があり、4月から、その学校の音楽専科を引き受ける
ことにしました。

全く予備知識のない子どもたち(当然、子どもたちも、私についての予備知識を持って
いません)との授業に臨むことで、あらためて教育、授業の原点を考えるいい機会に
なりました。

◇子どものつまづきをつかめ!
教育、授業は指導者と児童とのコミュニケーションがうまくとれていなければ始まりません。
だからといって、お互いに時間をかけ自己紹介し合っても、特に高学年になると授業が
気に入られなければ、ついてはきてくれないものです。

そこで、まずは、授業を受ける子どもたち全員が参加できる授業内容を準備することに
しました。
子どもたちが参加しなければ、授業は始まりません。
全員が参加できる授業を展開していく中で、お互いの人となりが見えてくるものです。

また、お互いのコミュニケーションは、授業を展開していく中で「つまづいている子」
「困り感を抱いている子」を素早く見つけ、それを個人的に、また授業の流れの中で
取り除けるように工夫していく中から生まれてきます。
爪が伸びすぎていてサミングがうまくできない子どもには、サミングをするのに欠かせない
左手親指の爪を適当な長さまで切りそろえました。高学年にもなると、親も子どもの爪を
切ることはないのでしょうか、私が切っているときに「なんか気持ちいいわ」とつぶやいて
いました。
また音符を読むのに時間がかかり、スムーズにリコーダーが吹けない子どもには、
傍にいき、教科書にマーカーで印を書き込みました。
youkinasentyou

このような触れ合いを通じ、お互いの信頼関係が築けるのです。
45分という制限時間内に、どれだけ多くの子どもたちと接することができるのか…
授業の指導内容を絞り、子どもの立場に立ち、的確な対応をすることが豊かな
人間関係を築くことになるのです。

さあ、これから、どんな授業と出会えるのか…
ワクワクしながら待っているところです。
いろんな先生方の、キラキラ輝く授業実践もその都度お知らせしましょう。


講座1   人間関係を築こう

「授業力」とは、子どもたちに確かな学力を保障する授業のことです。

では、学力とは…。

「学習指導要領」の内容全てであることは言うまでもありませんが、もう一方、
子ども達の生きる力を支える上での知識を育んでいくことも、大切な学力の
保障です。

そのためには、どの子にとっても「わかる授業」をすることが欠かせません。

なあんだ…やっぱり、教材研究をしっかりやることじゃないのって?
ちょっと、待ってください。
授業をする指導者が、教材研究をして授業に臨むのは当たり前のこと!
その前に、授業について考えてみましょう。

授業は、指導者の教えたい内容が、子どもが学びたい事柄となること…。
このことは、よく言われていますが、もう一歩踏み込んで考えてみると、
授業は、指導者と子どもとの人間関係、コミュニケーションの上に成り立つ
ということです。

指導者、子どもの両者がいい関係にないのにいい授業ができるはずは
ありません。
そのためには、学校生活の中で起こる、様々な出来事にしっかり向き合い
人間関係を築いていきましょう。

講座2   豊かな子ども理解

◆「わかる授業」をするためには

「授業力Up」するためには、「わかる授業」をすることでした。
そのためには、何よりも『豊かな子ども理解』です。
理解する項目ですか。
少し考えただけでも…
@学力差
A子ども一人ひとりの困り感やつまづき
B子どもの背景にある家庭環境
C子どもの多岐にわたる個性
D仲間同士のつながり…
などが、挙げられます。

これらの中で、授業に直接係ってくるのが「学力差」。

授業を行うときには、その差が少しでも解消できるよう、「指導上の留意点」
「支援項目」「ヒント」等を設けているのです。
また、机間巡視を行い、子どもの困り感やつまづいている箇所をチェックし、
個々に対応したり、授業の流れの中で説明を加えたりしています。

例えば、遠足で山登りをするとしましょう。
事前に下見を行うことでしょう。
遠足に連れていく子どもたちをイメージしながら下見をするはずです。
トイレが近い子、怖がりで丸木の橋が渡れそうにない子がいる場合には、
その対処法を考えることでしょう。

「学力差」とは、直接関係ありませんが、遠足当日持っていくお弁当を用意
できない家庭を最近見かけるようになってきました。
このような、遠足一つをとってみても、様々な場合を想定し対処するように、
授業に於いても一コマの流れを想定し、様々な場合を思い浮かべるように
したいものです。
教材研究を行う場合、授業の中で想定される「差」をどうすれば解消することが
できるのかしっかりとプランを立てておかないといけません。

このことは音楽科の授業においても同じことが言えます。

講座3   「学力差」を感じさせない工夫を

授業において、学力差を子どもたちに感じさせないためには、だれもが
わかる授業の展開が必要です。

◆一コマの授業で、教える内容を絞る工夫を

音楽の教科書には、「題材」が載っています。
その題材に迫る学習活動が、各教材に載せられています。
その目標に向かい、毎時間の授業を展開していくようにします。
といっても、一つの教材から多面的な活動を行う場合もあるでしょう。
その場合にも、授業での活動を一度に持ち込まないで、一つずつ絞るように
気を配りましょう。

◆スモールステップで

「スモールステップ」とは、学習内容を学んでいく段階でのハードルを低くする、
歩幅を小さくする、といった意味があります。
私のリコーダー指導での「スモールステップ」とは、…
『子ども自身の指と、息と、やわらかな心で、自分だけにしか出せない音を出す』
ことができる指導法なのです。
たとえ、どんなに不器用な子どもであっても、支援を必要とする子どもでも。

新しい音(運指)が増えてくると、音の数が増えた教材を演奏することになり、
新しい音に行き着く前に演奏するのをあきらめてしまう子どもが出てくることでしょう。
新しく出てきた音を、自分のリコーダーで出したいのは、どの子も同じです。
そこで、新しい音が必ず吹ける教材の開発が必要になってきます。

新しいウィルスに対して、新しい治療薬の開発が望まれるように、子どもの
思いがけないつまづきに対しても、新しい教材や指導法が必要なのです。

新しい音を出せる喜びをバネに子どもの意欲が増し、演奏できる音の数を
増やしていくようにすると、苦手な子どもも、最初からあきらめることなく、
活動に参加できます。
授業を受ける、全ての子どもの願いに応える姿勢が子どもたちにも伝わり、
みんなが同じ目標に向かい、授業が活性化されるのです。
このような指導者自身の姿勢は、支援を必要とする子どもに限らず、だれにも
やさしく分かりやすい指導へとつながるのです。

◆指導は、スパイラル

音楽科の学習指導要領をみると、低・中・高…というように、2学年単位になっています。
また、音楽科での指導内容は、深さこそ違え、目標となる項目は、どの学年にも共通です。
ですから、音楽の授業は、指導者の配慮次第で以前に学んだ学習内容に触れながら
進めることができる教科だと言えます。
そうすることで内容が確実に定着させることができるようになります。

まず、なによりも、全ての子どもを授業に参加させること!
そこから、授業が始まるのですね。

講座4   「学力差」を感じさせない工夫をA

「学力差」というより、その場ですぐに出来る子どもと、不器用さも手伝い、すぐに出来ない
子どもがいるのが普通です。
その、子どもたちの違いをしっかり把握しているかどうかでも、授業の仕方を工夫する
ことができるのです。
例えば、「ミ→ファ♯→ソ」という流れの運指を習得させるとしましょう。

◆触れて…

「ファ♯」の運指は順に指孔をふさぐのではなく指番号では、<0123・567>となります。
子どもたちには「全部の孔をふさいで、右手の人差し指を離すんですよ」と説明をします。
「ファ♯」だけでは、できるのですが「ミ」から「ファ♯」そして「ソ」となると、なかなか
思い通りに指が動かない子どもがいるのです。

そんな時、「ファ♯」の運指をさせておいて、「今からファ♯ができる魔法をかけてあげよう!」と
言いながら、右手の中・薬・小指(指番号:567)を少し強めに押さえてあげるのです。
押さえるのが強すぎると痛さだけが残るので気をつけましょう。
こうしておいて、ミ→ファ♯→ソ…とやらせてみてください。
不思議なほど、うまくできるようになります。

先生に触れてもらった感触が残っている間だけの魔法ですが、押さえてもらった感触が
なくなり、魔法が解けても、もう大丈夫。

教育は文字通り「触れ合い」ですね。


LIVE 2014.6/16

講座5   すばらしい教材との出会い


教材:第3学年「帰り道」(若松歓/詞・曲)

bansho1 
「歌詞内容は身近な生活の一コマを歌っている。
普段何気なく一緒に過ごしている友達との出会い
は実はものすごい奇跡にも値するような
出来事…」(指導案より)









学校の帰り道、友達と二人で眺めた夕日[前半]

@この星、Aこの国に生まれBこの町で育ち
Cそして出会えた(友達)[後半]

この後半部分の@ABCのフレーズの「歌い方」を強弱をもとに
工夫させる授業であった。


歌い方を工夫する手立てとして、大きさの異なる円形のカードを用い視覚的にとらえやすく
していたのは、子ども達にとってとてもわかりやすい配慮だった。《強弱の見える化》
4パターンの組み合わせが、子ども達から発表された後、順に歌い、どれが自分の気持ちに
合うか、考えさせた。

結果、@⇒Cに向かって、順に大きくしていくパターンになり、全員で歌った。

この授業の中で感心させられたのは、@ABCで「Cを一番大きく歌いたい」と答えた
女子の理由が、「@ABと並んでいて『そして』があるから・・・」との答えだった。
3年生で、このように言葉(歌詞)を読み込め、自分の考えとして発表できるというのは
素晴らしいことであろう。
この女子の答えを、その時点で全員が共有することで、『そして』の言葉の歌い方を
変化させることができるのです。

4パターンの組み合わせを発表させる場合、3年生であれば、最初の考えが発表された
時に円形のカードの大きさに合わせて歌うことで、活動のねらいがよりよく理解され、
次の発表でより深い考えを得られるのです。
授業というのは、「流れ」を変えると、違った結果になる、というのを忘れないことです。

今回の「題材のねらい」が「旋律の特徴を感じ取りながら…」「旋律の特徴を生かして…」と
設定したのであれば、歌い方を工夫する場合にも、この点を中心に据えて活動を進める
ことが大切です。

授業は「題材」「題材のねらい」〜「本時」まで徹底した整合性がなければならないことを、
しっかり心にとめておきましょう。

今回の授業は、キラキラした瞳で表現する子ども達の表情に心温まる45分間であった。

後半部分についての歌い方の工夫であったが、前半部分について、同様に工夫させるので
あれば、二人組になり、歌詞に照らし、帰り道の様子を劇化させて歌わせることで、
表現に深みが生まれます。《UDの視点》
このように、いくつもの活動が生まれる楽曲(教材)は、指導者と子ども達とで共有できる
宝物ですね。

著作権の関係上、歌詞全文を載せることは控えました。


LIVE
2014.6/20 兵庫県音淡路大会

講座6   授業の一コマから


曲想や和音の移り変わりから、表現の工夫を考える…というねらいの授業で、子ども達が
工夫し終え、全体を通して演奏をした時に指導者が「今の演奏、すごくよかった!」
「工夫する前と全然違ってたよ!」と感極まったように子ども達に感想を述べられました。
子ども達の頑張りで、大きな大会をやり遂げたという思い…本当にうれしそうな指導者の
表情に、子どもたちは、満足感、達成感を抱いたことでしょう。
子ども達の成長の伸びを、指導者自身の喜びとして味わい、両者の間に一体感が
生まれたことと思います。

でも…
指導者は、何がよくて、工夫する前とどう違っていたのか、本時の授業を振り返り、次時に
どうつなげていくのかを確認する場面だったのですが…私自身の、若かりし頃をふと
思い出させてくれた、ほほえましい一コマでした。


LIVE 2014.6/25

講座7
 題材の「ねらい」を見極めて


6年生の教科書(教育芸術社)に「ラバース コンチェルト」という教材があります。
@〜C声部のアンサンブルなので、子どもたちの希望の楽器を選ばせて合奏する…
という授業を見かけます。

この教材に限らず、題材・ねらい・活動をしっかり見極め、この教材で何を学ぶのか、
ということにこだわりを持って授業に臨んでほしいですね。
単に、好きな楽器を選ばせて小アンサンブルをするだけで終わるのは、教材のねらい
から外れているのです。

楽器を選ぶ前に、教科書に書かれているねらいと活動を吟味しなければ、何を
学ばせるのかが不明瞭になってしまいます。

確かに、この教材の題材は…
「楽器の重なり合うひびきを味わいながら合奏しましょう」とありますが、合奏する
ことのみが目的ではないのです。
活動には「それぞれのパートにふさわしい楽器を選び、全体のひびきを確かめながら
合奏しましょう」と書かれています。
「それぞれのパートにふさわしい楽器」とは何でしょうか。それは、4つのパートに大切な
役割があり、それを踏まえた上での楽器選択が行われなければならないのです。

すなわち、この教材で「各パートの役割」を学ぶのです。
これまでの学年では、同じく4パートの合奏教材(4年:「茶色の小びん」、
5年:「キリマンジャロ」等)をよく見てください。
各パートの役割についての説明はありませんが、やはり「ラバース コンチェルト」と同じ
編成になっているのがわかりますね。
4・5年では楽器が指定されていますが、その学年で、合奏の豊かなひびきを味わっていれば
6年生で楽器を選択する場合の大いなる参考になるのです。
ここでの活動が、後に掲出されている合奏教材(「風を切って」「愛のテーマ」「コンドルは飛んで
行く」等)の合奏にも生かされてくるのです。

「ねらい」を見極め、合奏をすれば、グループ間での発表の場でも、聴き合うポイントが
ぶれないで、話し合いが深まることでしょう。
逆に、「ねらい」があいまいであれば、合奏をした時の子どもたちの評価が単に「バランス」に
終始してしまい、せっかくの「題材」が生かされないまま終わってしまうことになります。

授業をする前には、選んだ教材で何を学ばせるのか…ということにこだわりを持つように
したいものです。

LIVE

講座8
 本時の「目標」「ねらい」が決め手


前回の「講座6」に引き続き、今回も、本時の「目標」「ねらい(めあて)」についてです。

ここ数日の間に、五本の授業を見せていただく機会を得ました。
それらの授業で共通する本時の「ねらい」からお話しします。

@本時の「目標」「ねらい」が長文…
本時の「目標」は、どのような学力を身につけるのか…という内容になりますが、
やたら長い文章だと、黒板に掲示すれば非常に見にくくなってしまいます。
本時の目標を達成するための学習課題である「めあて」も、同様に簡潔にすることが
大切です。

bansho2
(文章が長いため、児童席からでは見にくく、また
「めあて」が一つに絞られていないために、活動に
混乱を招くおそれがある)

A本時の「ねらい」と活動内容不一致
4年生「日本の音楽に親しもう」の授業での「ねらい」は『「こと」の音色を味わおう』
というものでした。
すてきなゲストティーチャーを招いて、生の演奏を聴かせていただいたのですが、
まずは「さくらさくら」の旋律のみを弾いていただきました。

koto
                 (画像処理をしています)

次に、前奏・後奏のついた本格的な「さくらさくら」を聴かせていただき、
子ども達に2つの演奏を比べて気付いたことや、感じたことをワークシートに
書き込むという活動です。
子ども達は、どちらの演奏にも真剣に興味を持って聴き入っていましたが、
感想は「後の方が迫力があった」「前奏などが付いていた」などでした。
授業本時の「ねらい」では、「こと」の音色を味わうことになっていたのが、
最終的には「楽曲の構造」を問うような内容に変わってしまっていたのです。
「ねらい」を達成するためには、何を鑑賞させるのが効果的なのか…
私自身、2種類の「さくらさくら」を生で聴かせていただけたことは、貴重な
体験になりましたが。


B本時の「ねらい」の設定と活動

6年生「和音の美しさを味わいながら3部合唱を楽しもう」という題材があり、
本時の「ねらい」は旋律を正しい音程で歌うことができ…溶け合うような
発声を工夫できる」という授業でした。
デジタル録音機器や音楽ソフトを用意したり、歌声がよく響く場所での
合唱など、細かい配慮がなされた授業でした。

jugyou1
(個人が特定できないよう画像処理をしています。)

ところが、結論から述べると、授業での子ども達の活動は不活発なものでした。
なぜ、そうなったのでしょうか。
それは、本時の目標「ねらい」が、授業前にすでに達成されていたのです。
ですから、本時で何をすればいいのか…子ども達は、この授業まで十分に
発声について工夫を重ね正しい音程で歌えていたのです。
あきらかに、「ねらい」が甘かったといえるでしょう。
ここは、子ども達だけでは考えつかない事柄を指導者が教えなければ
ならないところです。
音楽は教えるものではなく、子ども達から引き出すものだというのは、
音楽科における誤解でしょう。
しっかり教えるべきことは教える姿勢が大切です。
この6年生の子ども達…授業の始まりから、とても素敵な合唱を聴かせて
くれてありがとう!


講座9   「音楽する楽しさ」@


よく、「音楽は音を楽しむ教科」だと言われています。
字面(じづら)から引用しているのでしょうが、この言葉、なかなか真理を
表しているとも言えます。

生き物の中には、「生餌(いきえ)」しか食べないものも多くいます。
また、我々人間でも、○○の踊り食いなど、珍味として味わうことも
あります。

子どもたちと音楽の関係もこれと同じなのです。
授業で、合唱をしたり、リコーダーを吹いたりすることがありますが、
ただ歌って終わる、リコーダーの技術を習得するため…といった
「学習」は、餌に例えると「生餌」ではないのです。
ですから、時には音楽をすることが負担になったり、面白くない、といった
感想につながるのです。

歌を歌っていて、歌詞や旋律の動きを読み解き、表情や音に動きを
つけて演奏させることで、その度に生まれる演奏が変化する、
また上手く自分の感情をのせることができる…と実感した時、無意識の
うちに音楽する喜びを味わっているのです。
ですから音楽の「共通事項」(音色・リズム速度・旋律・強弱・拍の流れ・
フレーズ…等)にも着目し、自分たちの気持ちに沿うような表現の工夫を
していくことが欠かせません。
音楽は生き物なのです。
子ども達に与える「音楽」は「生餌」じゃないと本当に楽しんではくれない
ものなのです。

講座10  「目標」をもって授業に臨もう


授業をする場合、「教材」を決めるのは当たり前のことでしょうが、
その「教材」で何を教えようとしているのかを、しっかり確認することが
大切です。
教科書の「もくじ」を開くと、一目で年間の題材を確かめることができます。
また、「題材」に合わせて教材が配列され、それぞれの教材には「題材」に
呼応した「学習目標」が掲げられているでしょう。
その「学習目標」を達成するために、どう授業を展開していくのか…
配当時間に合わせ毎時間ごとの「目標」を、子どもたちの様子を
思い浮かべながら、しっかり立てて授業に臨みましょう。

前時までを振り返り、全員が参加できるように「目標」への過程を組むのが
楽しいのですね。

jugyou2
(時間割に合わせて学年ごとに色分けした枠に
本時の目標や教材のメモを書き込んで授業に
臨み、実際の授業での修正を加えて記録)



講座11  「音楽する楽しさ」A


「講座5」で、「音楽は生き物」であると話しました。

音楽する楽しさを子ども達と指導者が味わってこそ音楽する喜びを共有
することができます。
例えば、歌声づくりの指導でよく見かけるのが子どもたちの前面に
○で的を描き、「ここにみんなの声を集めようね」という場面。
集合体としての歌声づくり、また歌声を届かせるという二つの目的を
持ち行っているのです。

それだったら…

jugyou3○の的の代わりに、指導者が写真左のように、
手を頭の上に掲げて「ここにみんなの声を
届けてね」という方が子どもたちとのコミュニ
ケーションをはかる上でも効果的です。

実際にやってみてください。本当に子ども達の
声が手のひらに届くのがわかるんです!
「おっ!来てる来てる…」なんて言うと、ます
ます張り切って、手のひらの的に向けて歌って
くれますから。

合唱の場合に、例えば「ソプラノ」より「アルト」が弱いとしましょう。
その場合…
jugyou4「アルトパート」側の手のひらを子ども達に
近づけ、「まだまだ、ここまでしか届いて
こないよ」と励ますことで、張りのある歌声を
届けてくれることでしょう。
歌声をつくる活動でも、それぞれの指導者の
工夫によって、音楽する楽しさが大きく変わります。
生きている音楽、新鮮な活動をつくるよう心掛けたいものです。


講座12  指導者のスキルUPを!

45分の授業で子どもたちに学力をつけることは何としても欠かせません。
そこで、どう「授業力UP」を図るのか…。
いくつかの要素がありますが、その一つは指導者のスキルUPが重要だ
ということです。

合唱で「美しい響きで…」という「ねらい」に迫るとき、2声・3声の重なり
から生まれる響きだけに着目してしまいがちですが、合唱にふさわしい
響き(歌声)をつくることができなければ、ねらいは十分に達成できません。

表現の工夫をする場合でも、旋律と歌詞との関わりに着目させることが
多いのですが、その場合でも、まずは、合唱にふさわしい歌声の出させ方、
またその歌声の生かし方のスキルを会得していなければうまくいかない
ものです。

リコーダーでも同じです。
「表現の工夫」をねらいにしても、指導者自身がリコーダーという楽器の
特長を把握できていなかったり、技術に対する知識量が少なく、曖昧で
あったりすれば、子ども達に表現の工夫に取り組ませたところで、一向に
効果が上がらず、途中であきらめてしまうことになりかねません。

最近、教育現場では若手の指導者が多くみられるようになってきましたが、
指導者のスキルが不足したまま、子どもの前に立ち、授業を進めても、
一つの活動だけに終始してしまったり、工夫した成果が上がらず十分な
満足感達成感を得られないまま授業を終えることになることでしょう。

一人ひとりの研修が「授業力UP」に直結していることを忘れないでください。      

講座13  「教科書教材」が難しい?!

音楽科の授業で、教科書「教材」が目の前の子どもにとって難しい…と
感じたことはありませんか。
「こんな合唱できるわけないよね」だとか、「○年生では、リコーダーで
吹けそうな曲じゃないよ」なんて、憤りさえ覚えた経験がおありな先生。
教材が難しいと嘆いたり、あきらめてスルーする前に、子ども達の1年生
からの音楽授業が、きちんと行われてきたのかを振り返ってみてください。

嫌われるのを覚悟で申し上げますと、教材が難しいのではなく、
ほとんどの場合、子どもの経験や技術不足だと断言できます。
ですから、これまでの自分の授業がどうだったのかをしっかり振り返り、
子どもたちの不足している部分を学年にこだわらず、もう一度
学習しなおすことをお勧めします。
また「題材のねらい」に迫るために、スモールステップの課題を設けて
学習するようにしてください。

      

講座14
 UD)一斉指導に惑わされないで!

 ※UD:ユニバーサルデザイン授業の視点から
「授業は個に成立する」(大木光夫)という言葉に出会えました。
私たちは、一斉授業を行う中で、どの子も活動できる機会を…と考え一人タイム、
二人タイム、グループタイムなど、少数で活動する学習を随時取り入れています。
授業が終わり、子どもたちは「面白かったよ」「よく分かったよ」…と充足感に
高揚しながら感想を伝えにきてくれることがありますね。
一方、私たちは、もちろん全員の子どもたちが理解してくれることを前提に
授業を進めるのですが、授業後に「●●君は、どうだっただろうか…」と心に
引っ掛かることもあります。
授業内容がうまく理解されなかったのでは、落ち着いて活動できなかった…
といった場面が思い起こされます。
このような場合、全ての子ども達に授業が成立したとは言えません。
授業が全員の子どもたちに成立させるためには、どうすればいいのでしょうか。
2014年夏前半…西日本各地から沖縄…まで10数か所の先生方と研修する
機会を与えられ、「ユニバーサルデザイン授業」という言葉について尋ねてみました。
学校や市町村でUD(ユニバーサルデザイン)授業について研究を進めているところ、
また、学習環境を整える上での参考にしているなどの状況がある一方で、
言葉では知っていても授業実践にまでは至っていないというところが多くありました。
「UDは、いろんな要件やきまりがあるのでしょう?」など、UD授業を進める上で、
ハードルを設けてしまい、それが研究を邪魔しているように感じました。

長くなりましたが、UD授業というのは、なにも特別なものではありません。
確かに授業に「しかけ」を設けて全員を授業に惹きつける…といったことはありますが、
それも、指導者の授業初めの巧みな「誘い」の発問によって置き換えることが
できるでしょう。
先ほどの●●君がうまく活動できなかった理由は何だったのか。
あの場面で、どんな「支援」をすればよかったのか…授業内の机間指導での
個別「支援」で間に合ったのか、授業前にしておかなければならない「支援」があった
のか…。●●君と同じような「つまずき」「困り感」をもった子どもも多くいたのであれば、
全体に対する「支援」は…などが考えられます。
全員の子どもたちが授業に参加し、活動ができ、授業後に充足感をもてる授業を
目指そうとする姿勢、「支援」の方法を考えること、それがUD授業だといえるのです。


      

講座15
 UD)子どもから学ぶ

 ※UD:ユニバーサルデザイン授業の視点から
「子どもから学ぶ」…とは、よく言われる言葉ですね。
「講座14」で3つの「支援」について話しました。
すなわち、授業以前の「支援」、例えば拡大教科書の準備や、文章の行が分かりやすい
ようなマーカーでの色分けなどがあることでしょう。
第2の「支援」は、授業中の机間指導での「支援」です。子どものつまづきや困り感を
見つけ、それを取り除くための声掛け「支援」です。第3の「支援」は、授業内容で、
多くの子どもが陥りやすい間違いを想定した「支援」です。授業を行う前に、授業の
流れを追いながら、必要な「支援」、例えば「ヒントカード」や陥りやすいところでの
指導の工夫をすること。
どの「支援」も、子どもの姿に即して編み出す指導法になりますね。
ですから、授業中には子どもの活動の様子をしっかりと把握し、それを指導に生かすことで
新しい指導法が生まれます。
特に音楽教科の場合には、関心の薄さやつまづきが表面上に現れてこないことも
多いものです。
「高学年になると、歌わない子が増えてくるのですが…」というご質問には、「歌わない
のですか?それとも歌えないのですか?」と尋ねるようにしています。
「歌わない子ども」といえば、聞こえとしては子どもに責任があるように聞こえませんか。
「歌えない子ども…高学年になると歌えない子どもがいるのですが?」というのとでは
責任の所在が「子ども」から「指導者」に移ったように感じることでしょう。
まず、指導者は「歌わない子」などと決めつけないで、実は「歌えない子」だから歌わない
のかもしれない、と考えてみてください。
そうでないと、子どもに沿った指導が思い浮かばないものですよ。


講座16  「なんでやねん!」考

講座のタイトルをご覧になって、「これは、ブログにアップする内容なのかな?」と思われ
るかもしれません。この「なんでやねん」という言葉…関西地方以外では妙にインパクトが
あるようですね。
私の学校に遠くから参観に来られた先生が、授業の合間に、子ども同士のおしゃべりの
中で、「なんでやねん!」を偶然、生でご覧になられて非常に感激しておられたことがあり
ました。
この、「なんでやねん」という言葉…話し相手に言わせるように仕掛け、相手がその
仕掛けを理解した上で「なんでやねん!」と言う構造(?)になっているのです。

授業で大切なのは、というより話す上で大切なのは『間』ですが、『間』をうまく使える
指導者は、授業の中で子どもたちを緊張させることができたり、ホッとさせることができ、
常に子ども達を活動に引き込むことができるのです。

「なんでやねん!」という言葉には、これで一話完結…となり、その後に心地よい「間」が
生じているのです。
大阪の大人も子どもも、「なんでやねん」を含めた「オチ」を考えながら会話を楽しむ
習性(?)があるようです。
この習性により、叱るときや発問をする直前に、相手の立場を読み、相手が答え易い
ような言葉を選んで発問をしたり、指導に当たっているといってもいいでしょう。
私たちは、授業中の発問の後、「この発問は全員に伝わっただろうか」「もう一つ分かり
易い解説を加える方がいいだろう」などと瞬時に判断し、次の言葉を組み立てるように
意識をすることで、授業から離れさせない子どもたちにすることができることでしょう。
授業や指導には、必ず「話す」ことにより行っているのですから…。


講座17  あなたのキャラクターは?

団塊の世代が教職を去り、毎年、多くの新任教師が採用されています。
それに合わせて、書店には教職関係の本が所狭しと並ぶようになりました。
「プロ教師に学ぶ○○○」「明日からの授業に生かせる指導法」「子どもを惹きつける
魔法の言葉」などなど…。
飛びつくようにそれらの書籍を求め、さっそく真似をする経験少ない指導者。
でも、早々うまくいくものではないどころか、日頃、苦心しながら自ら考えた発問の方が
まだ子ども達が聞いてくれる…なんてことに。
「プロ教師」の言葉を、経験のない初任者が遣っても説得力のないことは明らかです。
それは、なぜでしょう。
子どもの前で失敗をしても、前にもまして親近感を抱いてくれる子どもたちもいれば、
模範を示しても、「シラ〜」としている子どもたちもいます。
これは、指導者の「キャラクター」を子どもたちがしっかりつかんでいるからなのですね。
ですから、いくら魔法の言葉だからといって、自分の「キャラ」に合わないのではかえって
逆効果でしょう。
自分が真剣に組み立てた言葉でもって、子どもたちの指導に当たり、反応を見極めて
ちょっぴり自信をもったり、反省していくことの繰り返しが大切なのです。
もちろん、指導する単元(音楽科では題材)目標を達成するんだという強い信念が必要
ですが。


講座18
 子どもの姿に学ぶ

新学期の授業。
「音楽セット(教科書・楽譜ファイル・リコーダー)」を忘れてくる子はいませんか?
お恥ずかしい話ですが、6年生にもなっても、最初の授業に“音楽セット”を忘れて来た
子どもが10名ほどいました。
「どうして忘れてきたの?!」…なんて叱りとばすこともできるでしょう。
「こんな状態では、授業をすることなんてできません。今日のところは帰りなさい。」と
いって、反省を促す対処法もあるかもしれません。

私は、まず音楽室に入れる前に、教室の外で全員をしゃがませました。
子どもの中には、叱られていると勘違いしたのか、正座をする姿もちらほら見えます。
「忘れたことは今さらしかたないとして、やる気のある人は立ちましょう。」と声をかけ
ました。
全員がスッと立ちました。
「よっしゃ!みんなの気持ちはよくわかった。
忘れ物をしなくても、やる気のない人と、
忘れ物をしても、やる気のある人と、どちらがいいかな?」
子どもたちは、「忘れ物をしても、やる気のある人!」と答えます。
「みんなに、やる気があるのなら、次の授業では忘れ物しないよね。」というと、
子どもたちは笑顔でうなずいています。
10年も前の子どもたちなら、叱りとばして強く反省を求めたかもしれませんが、
今を生きる子どもたちにとっては、どうでしょうか。

こんなところにも、私たち指導者が、子どもの姿から学んでいかなければ、いい関係、
いい授業は生まれないのです。


講座19
 夏の課題、がんばったね!

春の新学期や夏休みが明けると、必ず新しいシールを購入される先生がいます。
「子どもたちの夏休みの頑張りに対する励みになるんですよ」と言われると確かに
そうかもしれません。でも、同じシールが続いたり、忙しくなってシールを貼ることを
怠ったりする期間が長くなると、本来の活動も下火になってしまったり…。
シールがなくなるととたんに興味が失せることはよくあることです。
あれだけ輝いて見えたシールなのに時が経つと色褪せて見えることさえあるものです。
シールが好きな子どもたちは、もしかしてシール自体よりも、それを貼ってくれる時の
先生の満足そうな表情や「よく頑張ったね」などのほめ言葉が好きなんだと思います。
たとえシールは色褪せても、自分のがんばりに対する先生のコメントや表情は
子ども達にとって色褪せることはありません。
そうですね、新学期にはシールを買うことよりも、鏡の前ですてきな笑顔の再点検!

ここで問題です!先生方は自分の仕事上の書類を作成し、誰かに渡しました。
返されるとき、『検印』や『見ました!』のハンコがいいですか?
それとも今流行のシールですか?それとも受け取ってくれた人からの優し
い笑顔と
コメントでしょうか。どれがなが〜く心の中に残るのでしょうね。


講座20
 目的と効果

授業を行うにあたり、「本時の目標」を掲げることでしょう。
そして、その目標を達成するために、幾つかの活動を組み合わせ、それぞれに目的
を持って臨むことでしょう。
その際の「指示の仕方」「児童の状態」によって、効果を発揮するかどうかが決まり
ます。予想以上にいい効果を生む場合もありますが、予定通りの効果が得られない
場合も多いものです。
以前と同じような指示をしたのでは、「またか」と子どもたちに思わせ、かえって逆効
果になりかねません。
また課題が難しすぎるとやる気を引き出せませんし、易しすぎると、これもまたやる
気が起こらないものです。
指導者が繰り出す「指示」が「いい効果」を生んでいるかどうか、授業をしながらも、
常に客観的な目で判断することが大切です。


LIVE

講座21
 見せ方、魅せ方に一工夫を

音楽会や学習発表会で合唱や、合奏、音楽物語等を取り上げる学校も多いことで
しょうか。
連合音楽会を間近に控えた学校に寄せていただく機会がありました。
本番まであと一週間…体育館で練習をする子どもたちに迎えていただきました。
小規模校なので、各学年1学級の3年、4年、5年生の子どもたちです。

10数曲もの歌とトーンチャイムの演奏、それに物語を進行する「台詞」を子ども達
はしっかり覚えています。3年生も4、5年生に負けずに一緒に頑張っています。
その子ども達の頑張りを、どう見せるといいのでしょうか。

聴衆が居る場合、我々指導者が観てほしいところは何か…まず、第1は子ども達
の輝く姿でしょう。
それには、子どもの長所を前に出す工夫、弱点があれば、それをカバーすること
でしょう。
すなわち、子どもの姿をどう見せるのか、子どもたちをどう魅せるのかが発表会
でのキーワードでしょう。

先ほどの、寄せていただいた学校の指導者へ、次のようなアドバイスをしました。

@物語「じろはったん」(森はな作/坂牛八州曲)第1曲目では、主人公を紹介す
る歌になっているのですが、聴衆(私も含め)に「じろはったんってどんな人」って
子ども達全員で声をそろえて歌うより、ソロにして語り掛けるように歌うことで、
聴く者が自然と耳を傾け、スッと物語に溶け込んでいくことができるでしょう。

A歌声がそろっていて、自然な歌声なのですが、単に大きな声で歌うより、
「やさしさ教えてくれた人」の部分では、微笑みをもって歌い、「かなしさ…」では
控えめに歌うようにすると陰翳が生じて聴く者に伝わりやすくなるでしょう。

B「問いと答え」のような歌の場合には、ほんの少し歌うときに問いかける相手
に体の向きをかえましょう。

C「れんげ畑は花盛り」では歌い終わった後に満開の花があたかも目に映る
ように言葉一つずつを盛り上げていきましょう。

Dワラ人形を竹ヤリでついて遊ぶ場面(物語の時代が戦時中)で、歌の最後の
フレーズが「かわいそうに」なのですが、ここは全員で歌うよりも、一人の子ども
が歌う方が、より言葉の説得力を増すことができますよ。

E「ラララ」から始まる歌では、言葉に移ったときにインパクトが弱いので、「ラ」
を「ル」に替えるとどうでしょう。
また、曲の終わりも「ラ」のフレーズが続き、盛り上がって終わるのですが、
ここでは、盛り上がりのラスト以外を「ル」にすることで、より、フィナーレの盛り
上がりを印象付けることになりますね。

以上のようなアドバイスをさせていただいたのですが、ソロを設けることで、
子ども達は、一人で歌える歌唱力をもっていることを知っていただくことにも
なります。
上記のアドバイス以外にも、歌の中でのちょっとした間を入れることで、さらに
心情や情景に深みを持たせることができます。

長々と書きましたが、要は、いかに子どもたちを主人公にし、その輝く姿を観て
もらえるか…本番を数日後に控えたときだからこそ、できることがあるのです。

音楽物語に限ったことではありません。合唱や合奏でも、いくらでも工夫できる
ところがあります。そこが指導者の腕の見せどころ、いや魅せどころです!


LIVE

講座22
 音楽的技能の必要性

最近の音楽教育研究大会では、「思考力」「判断力」「表現力」、それに「子ども
の思いや意図」、「つながり」、「グループによる活動」「言語活動の充実」など
の語句が並んだ研究テーマが多く見受けられるように感じます。
確かに、これらの要素は重要ではありますが、その支えには「音楽的技能」が
欠かせません。
例えば、子ども達に素晴らしい合唱を鑑賞をさせたとしましょう。
子どもたちは、「あんな声で歌いたい」「ハーモニーの素晴らしさを表現したい」
などと感じる(知覚・感受)ことでしょう。
子どもたちが感受したことを活動に生かすためには、音楽的技能が必要なの
です。
合奏でも同じです。
子ども達がよく耳にする合奏を鑑賞させると、「私たちもあんなふうに演奏した
い」「かっこいい!」「できるかも」など、技能面に惹かれ、心を動かされるはず
です。
感受したことを表現するためには、どうしても「音楽的技能」をSKIPすることは
できないのです。
「音楽は楽しむものである」とも言われていますが、楽しむためにも、やはり
「音楽的技能」を避けて通ることはできません。
また、「つながり」を活動に取り入れようと「グループ活動」を行っている授業を
よく見かけます。
「つながり」を子ども同士と限らずに、日頃の授業では指導者と子どもとの
「つながり」も欠かせないと思うのですが、「グループ活動」を取り入れた活動
を観ていると、子どもの思いや意図を大切にするあまり、指導者と子どもとの
つながりが見受けられない場合が多いように思います。
すなわち、グループ活動において、授業の「目標」を達成するためには、指導
者の「ねらい」に沿った指導が必要なのです。

ある授業研究会で、グループ活動を行う中で、子ども同士のアドバイスを伝え
合うことで、さらに演奏をより高いものにする…という場面がありました。
その中で、指導者が「せっかくの機会なので、ここに参観に来られた先生方
にも意見を聞いてみましょうね。どなたか感想や意見をお願いします…」と。
授業研究を十分に練った上での「本時の目標」に向かう大切な45分授業
のはずです。
グループ活動では、指導者が進行役のような立場の授業に出会うことが
多いのですが、子ども同士の「つながり」、さらに、指導者の適切な指導に
よる、指導者と子どもとの「つながり」も大切にしてほしいところです。

余談になりますが、先日??映画「THE TENOR 真実の物語」を観ました。
オペラ歌手、ベー・チェチョルと日本人の音楽プロデューサーの実話を
もとにした感動的なストーリーの?映画です。
           tenor
その中で、次のような会話がありました。

「音楽の深い心を伝えるためには、
音楽的な技能は欠かせない」











子どもの思いや意図を伝えるために、「音楽的技能」の育成を常に念頭
に置いて授業を組み立てたいものです。


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講座23
 合奏の指導「ラデツキー行進曲」

学習発表会を数日後に控えた、5年生の合奏指導をする機会があり
ました。
指導を始める前に、まずは、
楽器の状態チェックです。
各楽器の配置に始まり、木琴や鉄琴の音棒(鍵盤)を支える紐が緩ん
でいないか。
楽器とマレットは合っているか。演奏する曲にふさわしい音色が出せる
か。
小太鼓や大太鼓の皮の緩みは大丈夫か。
トライアングルは曲が求める大きさ、太さ、またビーター(打つ棒)との
相性はいいか。
台数があるなら、シンバルも音の響きや音色によって選びたいところ
です。
ティンパニイのチューニングは正しくなされているか。

やがて、子ども達の登場です。
見るからに素直で純朴そうな子どもたちに思わず笑顔がこぼれます。
まずは、日頃指導をしておられる先生が指揮をされ聴かせていただき
ました。二日後に本番を控えた5年生150名近くの子どもたちの演奏
は、よくまとまったものでした。
ここで指導をバトンタッチされ、キラキラ輝く瞳の子ども達の前に…。

sakuraidanihigasi

演奏中、気になったことは下を向いている子が多かったこともあり、
まずは、指揮をする前に、子ども達に私の指揮を読んでもらう訓練を
行います。腕を下したところで手拍子をしてもらいました。
次に、私がイメージした手拍子の振り方に合わせて、子ども達に音を
出してもらうことに。数回繰り返すことで、息はピッタリ!

私「みんな、カレーは好きですか?」
子「大好き!」

「でも毎日だと飽きてくるでしょ。今、聴かせてもらったみなさんの
演奏は、カレーでいうととっても美味しかったんだけど、最後まで同じ
味付けなんですよ。この曲(「ラデツキー行進曲」)は途中で色んな味
付けをするようになってるんです。さあ、やってみましょう。」

特に強弱の指示は確実に守り、中間部に入る直前から、ガラッと
味付けを変えるように振ると、子ども達の演奏も見事なまでに変化
したのです。

「曲の出だしの部分や、最初に戻った出だしはピシッと合わせること
でアイロンを当てた洗濯物みたいになるよね!」
「空を飛んでる気分で…」と言って鳥が羽ばたくように振ると、これ
また演奏に変化が!

まとまってきたところで…
「実はこの曲はよくアンコールに使われて、演奏に合わせてお客さん
に手拍子をしてもらうんですよ。後ろで聴いてくれている先生方に
手拍子をしてもらうことにしましょう。じゃあ、もう一度」

素直な子どもたちの演奏は回を重ねるごとにノリノリになってくる
のがこちらにビンビン伝わってくるのです。

授業の終わりは、私のピアノに合わせて、子どもたちが「走れシベ
リア鉄道」を熱演してくれました。
sakuraidanipiano

指導者と子どもたちの思いを重ね合わせて表現した45分授業は
本当に幸せな時間でした。子ども達、ありがとう!
本番、頑張ろうね!



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講座24
 合奏の指導「情熱大陸」

前回の「ラデツキー行進曲」に続き、大阪南部にある小学校にお邪魔しました。
連合音楽会の発表を数日後に控えた5年生の子どもが待っていてくれました。
前回同様、真面目な性格の専科教諭に似て、整然とした演奏だったのですが、言い換えれば面白さに欠けるともいえるものでした。
アウフタクト(弱起:小節の一拍目から始まるのではなく、「情熱大陸」の場合は4拍目から始まる)の出だしを、指揮をされる先生が、
1拍目から予備拍としてきっちりと振り出し、4拍目からソロの子どもが演奏を始めたのです。
安定感をもった出だしになりましたが、動きを感じにくい演奏になりました。
gakuhu

(ミュージックエイト「情熱大陸」楽譜より)

この上昇音階の場合、出だしの4拍目の直前から指示を出して振り出すようにすることで、勢いを持った動きが生み出されるのです。
アコーディオンや鍵盤ハーモニカでの演奏なら、蛇腹をいっぱいに広げて圧力をかけて待つのではなく、演奏を始めると同時に蛇腹を
開いていくようにする方が、この場合にはふさわしいでしょう。鍵盤ハーモニカなら、管に息圧をかけておいて音を出すのではなく、
始める前に鍵盤を押さえておいて、息を入れながら演奏を始めたいところです。
どちらにしても、指導者と子どもでイメージした音をつくっていくことが、合奏の楽しみ方の一つでしょう。

mokkin
(プライバシー保護のため画像処理をしています)

「情熱大陸」は打楽器をたくさん使用しますが、リズムを正確にとらえること、動きや深みを出すためにリズムのもつアクセントを
しっかり強調することが大切です。
また曲想をピシッとその都度変化させること、そのためには、まず、全員で休符をしっかり守ることです。
強弱、クレシェンド、デクレシェンド等の抑揚を意識することも忘れてはいけません。
この曲の出だしのソロを支えているのが木琴です。
全体を通して、木琴は大活躍するのですが、表現するためには、クレッシェンド、デクレッシェンド、強弱をつけなければいけない
のですが、マレットを短く持ちすぎると、強弱等の変化を付けにくいものです。
上の写真の手前児童に、もう少し長めに持つように指示しました。
また、フレーズの終わりのトレモロが短くなり、滑らかな演奏にならないので、しっかり音符の長さを保つように意識を向けるように
することで解消されました。
きれいにトレモロができない原因としては@左右のマレットが同じ高さまで上がっていないことA手首を使わないで、ひじから
動かしているので細かく打てない等が挙げられます。

zentai

前回に引き続き、今回も「合奏」を取り上げましたが合奏の楽しさは、曲想を練り上げ表現する過程の楽しさなのです。

そのためには、指導者は楽譜の隅々までしっかり読み取り、細かく解釈をしなければいけません。
その上で、「魅せる演奏」とは…工夫をこらすのも楽しい時間になることでしょう。

日頃の授業から、音楽的技能を身に付け、表現力を育んでおくことが合奏への第一歩ですね。



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講座25
見せ方、魅せ方に一工夫をA

「音楽会」や「発表の場」が間近に迫ってくると、焦りが出てくることでしょう。
でも、公開までの数回の練習でできることはあるものです。
その一つが「見せ方・魅せ方」なのです。
「見せ方」に限っては…
jazz1
(プライバシー保護のため画像処理をしています)
真面目に(?)演奏していてよくまとまった演奏なのですが、折角のJAZZなのに動きが伴っていません。
そこで、前列の鍵盤楽器を演奏途中のソロの箇所では立奏にしました。
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(プライバシー保護のため画像処理をしています)

そうするだけで、JAZZを楽しみながら演奏しているのが伝わってきますね。でもまだ、子どもらしさは影を潜めています。

そこで…
jazz3
(プライバシー保護のため画像処理をしています)

同じやるなら、音楽に乗って楽器を左右に振りながら…それも、ひな壇に居るリコーダーを吹く子どもたちも一緒になって!
子どもたちの生き生きと輝く様子が少しの工夫で見え、演奏までが違って聴こえることでしょう。

一方、「魅せ方」には『聴かせる演奏』をする…これも含まれるはずです。

例えば、「ハンガリア舞曲第5番」を例にとると、何度か曲想が変化するのに合わせて、「間をはさむ」「速度変化」「強弱」「クレシェンド」等
《共通事項》にヒントを得ながら表情をつけると、全体に深みのある演奏に聴こえます。

『聴かせる合唱』では、歌詞を子ども達自身の「メッセージ」として、聴く人達に伝えるように歌うことが大切です。
歌詞内容を隅々まで理解した上で歌うことです。「帰り道」(教芸3年教科書)を例にとると…
「まっかなゆうひ」を子どもたちは「まっかなゆう・ひ〜」と「ひ」を強調して歌ってしまうでしょう。
「真っ赤な/夕日」と言葉をとらえて歌うようにしないと意味があやふやになってしまいます。
「きみとみていた」でも、「きみ」より「みていた」が強くなってしまうものです。誰と夕日を見たのかが大切なことに気付かせるために、
「きみとみていた」のフレーズの直前に『誰と?』と声をかけてやると、「きみ」にフレーズの重心が移動させることができます。
著作権の関係上、ほんの一例を挙げるのに止めますが、まだまだ「聴かせる合唱」にしていくための支援はたくさんあります。

「見せ方」によって、子どもたちの輝く面を出すことができ、「魅せ方」へとつながります。
うまく「魅せる」ことにより、「聴かせる演奏」に近づいていきます。
本番を控えたときだからこそできる活動…貴重な時間を最大限有効に使う工夫をしましょうね。




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講座26
中四国音研 松山大会報告@
「自分の環境を利用した活動を」

大会の流れは、午前中《小学校部会》で、午後から場所を「松山市民会館」に移動しての《全体会》でした。

小学校会場校で、公開授業の前の「朝の音楽活動」から参観しました。
学校の校舎は複雑な構造で、その学校の方にうかがっても赴任からしばらくは、どこがどこだか分かるまで苦労しましたと言われていました。
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ところが、この学校の取り組みは、複雑な構造を逆手に取り複雑極まりない構造だからこそできる活動をされていました。

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(正面玄関近くで)
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(子どもの広場で)
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(オープンスペースを利用して)

複雑な構造なので、縦割り学年で集まった場所での活動がお互いに邪魔されることなくスムーズに流れていきます。

最終的には、どの縦割りグループも、体育館に集まるのですが、途中、校内放送で…「では、今月の歌」を歌いながら体育館に移動しましょう」と
いうアナウンスが流れ、子ども達は全校合唱曲を歌いながら整然と移動を始めます。
複雑な構造なので、階段も多いのですが、子どもたちが通った階段をふと見ると…
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階名が付けられた階段です。

各グループの歌声が校舎内に反響して、気持ちのいい響きを感じながら、子どもたちは体育館へ。

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学校それぞれが抱える環境…校舎の構造、児童の家庭環境、校風、職員構成などおありでしょうが、欠点と思われることを
嘆くのではなく、逆手に取った活動を工夫し、目標に向かった活動を展開することを考えようではありませんか。
この機会に、もう一度、ご自分の周囲を建設的な視点で見直してみませんか。


LIVE

講座27
中四国音研 松山大会報告A
「さぐろう せんりつのひみつ」

公開授業を行った小学校は2校だったのですが、私が作曲した音楽物語『麦畑』を使って、「せんりつのひみつをさぐろう」という
授業だったので、応援したい気持ちも込めて、この学校を選んだというわけです。
4年生の子どもたちは、第1次、2次までに、曲の特徴や曲想の違いを感じ取る学習を教科書等で行っていました。
そこで第3次として、『麦畑』の5曲それぞれにイメージを広げ、歌詞、リズム、旋律の流れとの関係性、調の変化…などから
曲想の違いをとらえ、日本語の語感を活かした表現に近づけるといった学習でした。
イメージを持たせ、広げるために、授業会場(ランチルーム)では様々な工夫がなされていて、参観者の目を惹きつけていました。
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(物語に登場する動物たち)
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(麦の穂で飾った建物の柱)
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(主人公のはりねずみの大型ペープサート)
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(用意された「拡大」を通り越した「特大」楽譜)

「曲の山」を見つけたり、「あいあいタイム」の小グループ毎で工夫するのが本時の主な授業での活動でした。
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(子ども一人ひとりが描いた絵が背中に…)

歌『生きる』に出会った子どもたちは、旋律について様々な感想や思いを述べるのですが、私が感心したのは
言葉の後の「休符」に着目した子どもがいたことです。
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その「発見」によって、言葉の語感がより一層際立ち、より感情を込めて歌えるようになるのです。

音符の動きに気をとられ、なかなか休符には目が届かないのが普通だと思っていたのですが、さすがに、この時点までに
相当、旋律の特徴を会得してきた証なのでしょう。

周到な準備、授業のねらい・目標を明確に把握して臨む指導者、授業ごとに力をつけてきた子どもたちを前に、
今回の松山大会は意義深いものとなりました。
入念に読み込まれた作品解釈から生み出される子どもたちの歌声はすばらしいものでした。



講座28
見せ方、魅せ方に一工夫をB

当たり前のことなので、話すのを控えていたのですが、数多くの発表の機会を観ていると、
まだ気づかれておられない指導者が目につくので、話すことにしました。
本番で合唱(歌)する場合、たいていの場合は普段の指導者が指揮をされることでしょう。
その時に、ほんの少し早くに子どもたちが歌う歌詞を声に出さずに口形で示してあげるように
気を付けておられるでしょうか。
緊張気味の子どもたちは、息継ぎも浅くなり、口の開け方もいつもよりちいさくなっている場合が
多いものです。
また、フレーズの出だしの言葉がはっきりしないことがあります。覚えているはずなのに、聴衆を前にすると
不安な気持ちにかられ、歌いづらくなってしまうからでしょう。
そんなとき、ほんの少し早くに子どもたちが歌う歌詞を声に出さずに口形で示してあげるようにすることで、
自信をもって声を出すことができるものです。

また、歌詞の中には「ワクワク」だとか「えがお」「かがやく」「小さな…」などの言葉が登場しますね。
きっと授業中には、それらの言葉をこんな風に歌いましょう…と指示されているはずです。
そんな「取り決め」を謳っているときに思い出せるよう、キーワードのゼスチャーを交えて指揮することで
子どもたちは安心して、普段通り歌ってくれることでしょう。
高く離れた音程への跳躍のときも、指揮の身振りで示してあげれば、下がることなく、気持ちよく
子どもたちは歌うことでしょう。

前に立つ指揮者の口形で歌詞を確認でき、また、歌う時のヒントを示してくれるなら、
子どもたちは指揮者の口や手ををしっかり見つめるに違いありません。
この瞬間、指揮者と子どもたちは、お互いに一体感を味わいながら幸せな気持ちで発表できるでしょう。
子ども達全員の目が指導者に集中している様子は、想像以上に聴衆の心に響くものなのです。



講座29
あやふやな言葉や説明厳禁!

最近、ビザを取ることが必要になり、ある旅行会社に行きました。
申請に必要な書類と写真を応対してくださった方に出して、万事うまく運んだと思われたのですが…。


「○○国のビザ申請時の写真の背景は白色じゃないといけないのです」と言われました。
こちらが用意して持参した写真はパスポートに使用した残りのもので、もちろん期限内のものだったのですが、
背景が青色だったのです。
「パスポート写真がOKなのに、どうしていけないのでしょうか」
「要項の提出書類に、写真はカラー・背景は白色厳守となっていますので…」
その後、どこかに電話で問い合わせられ、「やはり白色厳守です」としか言われないのです。
あまりにも腑に落ちない答えだったので、自分で調べてみると、大使館からの指定だったのです。
それであれば、「大使館からの通達なので、お守りください」と答えてもらっていたら、気分の悪い思いを
しないで済んだのです。

ふと、授業をしているときのことを思い出し、「ちゃんとしなさい!」「頑張ればできるよ」などの
曖昧な指示を、子ども達にしていなかっただろうか。
「ちゃんとしなさい」といっても、何をすればいいのか戸惑う子どもがいるものです。
「頑張れば…」って、何をどう頑張ればいいのか見当がつかない子どももいるはずです。
また、クレッシェンドやデクレッシェンドなどは言葉での説明では理解しがたいものですが、
表現の工夫をする中で、実際に音を出して行ってみることで、わかってくれるでしょう。
子どもが「ストン」と分かるような明瞭な指示を出すことを常に心がけたいものですね。
どんなときでも、子どもの様子をうかがいながら、子どもの目線に立って授業に臨みましょう。


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講座30
飛び入り授業報告(3年生)

兵庫県音楽教育研究大会を来年度に控えた小学校に寄せていただき、飛び入りで3年生の授業を行いました。

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 既習曲の「春の小川」を歌いましょうか…と言うと、あまりにも時期外れだったのか、きょとんとする子どもも居ましたが、
とりあえず歌ってもらいました。

徐々に思い出してくれた時、「先生(私)の弾いたピアノ伴奏で何か気付いた人はいませんでしたか?」と尋ねると、
「『♪春の小川はさらさら行くよ』の初めのところは小さくて、真ん中のところは大きくなっていました。」
「『♪すがたやさしく色美しく』の『♪色美しく』が少しゆっくりになっていました。」など、よく聴いていたのに感心しました。
「ゆっくりすると、どんな気持ちで歌えたかな」という問いかけには「気持ちをのせて歌うことができる」というような
発表をしてくれました。

「A君は、そんなに得意じゃないんだけど、先生が弾かれるピアノをしっかり聴いていたので驚きました」と担当の先生が
教えてくれたのですが、手先の器用さと音楽を聴く耳とは、相関関係にないのです。
授業では「先入観」をもたないことが大切なのですね。

歌うたびに、音程を上げていったのですが(C→D→E♭)歌い込んでいくことで、張りのある声に変わっていきます。

本時の目標は、リコーダー指導だったので、次に「茶つみ」を歌い、「シ」と「ラ」のみのリコーダーで合わせることに
しました。
ホワイトボードに楽譜を書き、「『ラ』の音に印をつけられる人はいませんか?」の問いかけに、たくさんの子どもが
応えてくれました。
yamaguchi2

もちろん、「シ」「ラ」は読めるだろうと考えて、印をつける活動をスキップしてもいいのですが、全員の子どもが
確実に読めるかどうかわからないので、どの子も諦めないで参加できることを考えてこの活動を加えたのです。
全員でリコーダーを吹いた後、「歌」「リコーダー」二つのグループに分かれて、合わせました。
的確にリズムがつかめない箇所(写真中央の赤マグネットの小節)があるので、「この小節のリズムと同じ
小節を他に見つけられるかな?」という問いかけで、そのリズムに着目させることで理解を深めたようでした。

「今から『ソ』を吹くんだけど、音を出さないで指を準備してください。それで、きれいな『ソ』の音が出ると思う人は
立ってみましょう」
音楽科の授業では、指導者のペースで進めることも多いのですが、学習をしているのは子ども自身です。
今何が課題で、自分(子ども)は、その課題が解決できたかどうかを常に判断させることが必要なのです。

立つ子どもが徐々に増えてきたので、順に吹いてもらうことにしました。
yamaguchi3
(個人を特定できないよう画像処理をしています)
中には「あっ、指あながあるのわかったよ!」という声が聞こえてきたり…。
「しっかり押さえないと出ないんですよ!」なんて指示するのは子どもの視点に立った指導とは言えません。
なにしろ音を出すのは子ども自身なのですから、子ども一人ひとりの感覚を目覚めさせ、
生かすことが大切なのです。

『ソ』を吹く準備をしたところで、『シ』『ソ』の二音のみを使って、ジャズの『Sing Sing Sing』に合わせて
演奏しました。ジャズに合わせることで、同時に鑑賞活動が組み込まれるので、
それがリコーダーの演奏表現に現れてくるのです。
ジャズに合わせると、歯切れのいい演奏になるから不思議です。
楽しい気分で演奏し終えたときに、終礼のチャイムが鳴りました。
別れ際に子どもたち一人ひとりと握手を交わすと、一人ひとりの授業に対する思いが
こちらに伝わってきます。
いつもそうなのですが、子どもに感心させられる場面に出会えた幸せを味わうことができました。

どの子も参加でき、充実した活動をすることができる授業を目指していこうではありませんか。


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講座31
「曲の山」とは…(2年生)

2年生の授業を参観させていただいたときのことです。
本時の教材は「夕やけこやけ」で、目標は「情景を想像して、歌い方を工夫することができる」と
いうものでした。
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展開の流れで、まずは「歌って、曲の山を意識させる」という活動でした。
前時の授業で学習したのでしょうか、
子どもたちは、9〜12小節目(おててつないで みなかえろ)ですと答えました。

「曲の山」の説明はG教科書では3年生の「一人の手」で取り上げられています。
授業をされる先生方の多くは、「曲の山」は旋律が一番高いところで、強く歌う箇所…
と解釈されているように感じるのです。
確かに、教科書には「・・・旋律の音が高くなっていくと、ふつう気持ちが高まって、
だんだん強く歌いたくなりますね(後略)」、「曲の中で気持ちが一番もり上がるところを
曲の山といいます。音の高さに注目しながら…」と書かれていると、どうしても「山」は
旋律線の頂上を指し、そこは強く歌うところ、と解釈してしまいがちです。

「夕やけこやけ」の授業で、「曲の山」を9〜12小節目だと説明した先生は、
2番の歌詞(ことりがゆめをみるころは)で、強く歌わさないといけないのでは…
でも、この部分は歌詞から考えると、ていねいに、ささやくように歌う方がいいのでは…
と迷われてしまい、結局、導入時での「曲の山」については、この授業の中で
いっさい触れられずに終わりました。

教科書では、「曲の山」という切り口で旋律をとらえさせることがあるのですが、
「曲の山」という言葉に迷わされないで、「一番強く歌いたいところは?」
「一番気持ちを込めて歌いたいところは?」などととらえさせる方が
誤解が生じにくいのかもしれませんね。
「夕やけこやけ」の2番での「曲の山」では、想像の翼をひろげ、より情感豊かに
歌うようにすることで、大きく歌わなくても、気持ちのもり上がりを
十分に満たすことができると思うのですが。

この授業では、曲中に聞こえてくる音を取り上げ、夕方5時には音楽室でも聞こえてくる
お寺の鐘の音や、指導者の自宅裏山で聞こえるカラスの鳴き声を機器を使い聞かせる
といったていねいな扱いをされているのには感心するとともに、「夕やけこやけ」の歌の
世界を共有できる指導者と子どもたちは幸せだろうな…と思いました。


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講座32
歌い方を工夫しよう(2年生)

【講座31】の授業の続きになるのですが、
本時の目標「情景を想像して、歌い方を工夫する」場面では、
「どんな気持ちで歌いたいですか?」という指導者の発問に
子どもたちから、「明日、やりたいことを話しながら…」「さっきの遊びの話を
しながら」「今夜の晩ご飯は何かな」「楽しい」「にっこり」「夕やけきれいだな」
「あたたかい気持ちで」…など書ききれないくらい発表していました。

授業の結末から言えば、授業開始時の歌い方と、歌い方を工夫したあとの
授業終了直前の歌い方に、さほど変化が見られなかったのです。
それは、どうしてでしょうか。
先ほどの、子どもたちが発表した気持ちで歌いましょう、というだけでは
歌い方に変化が表れないのです。
「♪おててつないでみなかえろ」では、隣りの子とてをつないで歌わせたのですが、
子どもたちは楽しそうに歌っているのですが、同じく、歌い方が変わらないのです。
2nen

では、どうすれば、子どもの発表が表現に表れるのでしょうか。
手をつないで歌う楽しさを、音楽と結び付ける必要があるのです。
そこで活用できるのが、『共通事項』ですね。
なにも『共通事項』を教えるための授業では、もちろんありませんが、
十分に活用することは大切です。
旋律をよく見ると、ただ一か所(9小節目)だけ「付点音符」になっています。
このリズムをしっかりつかませることで、子どもたちの心の中の思いを
外に出す(表現)ことができるでしょう。
同様に、「♪まるい大きなお月さま」では、大きく円を描くように両腕を
動かしていたのですが、円の描き方と歌詞とをうまく組み合わせるように
指示することで、クレッシェンド、デクレッシェンドのついたフレーズを
生み出すことができるのです。
他にも、「きらきら」「星は空高くで…」などを、音色等に注目させることで
歌声をかえることができるでしょう。

授業における目標を達成するためには、毎時間後、「この45分で、
どんなことを学ばせることができたのか」「どんな力がついたのか」、
また、活動や支援、指導が適切であったのか等反省しながら、じっくり
練り上げて次時の授業に臨みたいところです。


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講座33
おはやしリズム(2年生)

◆指導の緻密さが子どもの感激度合を低くする!

12月中旬、兵庫県での研究会に寄せていただきました。
題材名「はくにのってリズムをうとう」でした。
題材に沿って、「いるかは ざんぶらこ」「山のポルカ」など
ていねいに指導を進めてこられ、さらに2拍子のリズムを
組み合わせて「おはやし」をつくり、拍の流れにのって、お互いの
おはやしのリズムを合わせる…というのが、この日の授業までに
おこなってきたそうです。

今回の授業のねらいは「グループでつくったおはやしリズムを
みんなでつなげよう」というものでした。
ところで、事前に他のクラスで行ったところ、「子どもたちが、
できた喜びをあまり表情に出さないのですが…」と指導者の方が
言われていました。
A4用紙6ページにわたる指導案からは、細かい指導計画がびっしり。
ふと感じたのは、緻密な指導は、ステップが低くなるので、もちろん
いいことではあるのですが、前時からのステップが低いために、
高みに上っているはずの子どもたちが、そのことを実感できていない
のではないか…ということです。
ステップを高くすると、活動についてこられない子どもがいるという
話はよく耳にしますが、低いステップの中にも、一つくらいは、子ども
たちが、戸惑い躊躇しながら考える内容を盛り込むことも大切なのでは
ないかと考えさせられた授業でした。

◆「たいこの音」(拍打ち)と「村祭り」(楽曲)の相違点

3人グループで活動させるために、特製の手作り太鼓を用意されて
いました。
taiko

漬物樽にガムテープを張ったものですが、手作りとはいえ
なかなかいい音色の太鼓です。
子ども達がつくったリズムを、指導者があらかじめ録音した
太鼓の拍に合わせて、グループごとに順に打つのです。
各グループの最後には、終わりのリズムとして
「? ? ? ヤ〜!」を挿入していきます。

ここで、話題になったのは、太鼓の拍に合わせるのと、
「村祭り」(文部省唱歌)の音楽に合わせるのとどちらの方が
いいのだろうか…ということでした。

この二つの活動には、あきらかな違いがあります。
太鼓の拍に合わせて打つのであれば、子どもたちは
拍を感じることなく、合わせることができるでしょう。
しかし、音楽に合わせるとなると、その音楽(例えば「村祭り」)
から拍を感じて打つ必要があるのです。

視点をかえれば、低学年の鑑賞活動について、指導要領では
(1)(イ)音楽を形づくっている要素のかかわり合いを感じ取ってきくこと。
(2)教材(ア)身体反応の快さを感じ取りやすい音楽…
      (イ)音楽を形づくっている要素の働きを感じ取りやすく
        親しみやすい楽曲
      (ウ)楽器の音色や(人の声の)特徴を感じ取りやすく親しみやすい…

となっています。

低学年で、「太鼓」使う活動の意義の大きさを味わうことができた
授業でした。
taiko2
(個人を特定できないよう画像処理をしています)


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講座34
指導者のやる気みなぎる指導案

授業に欠かせないのが「学習指導案」でしょう。

やる気みなぎる指導者のA先生が授業をされる指導案を
みて驚きました。

「指導にあたって」の項目なのですが、
まずは、これまでにおこなってきたことの成果と課題。

次に、題材の中の教材について、「○○ができる教材である」
「リズムを楽しむことができる」「合奏をすることができる」
「リズムの創作を楽しむことができる」「楽しくリズム学習を進めることが
できる」「○○を経験することができる」「表現の工夫をすることができる」…
など読んでいて息をもつかせないような内容なのです。

また、指導に当たっては、「○○する」というのが、20近く書かれているのです。
そして、これらの学習を通して、「○○する力を身に付けるようにしたい」
「身につけさせたい」…と締めくくっておられるのです。

もちろん、指導計画も、第1次、2次のねらいに沿って「指導に当たって」に掲げた
内容がびっしり。

学習指導案を作るときに、「どのような力を身に付けてきたのか」
「どのような力を身に付けさせようとしているのか」
「本題材でのねらいを身に付けさせるために、どのような学習活動を
どのような流れで行うのか」「次へどう発展させていくのかという指導の見通し」などを
もたなければ…とあらためて肝に銘じる指導案でした。


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講座35
歌い方の工夫について

最近、授業研究会でよく見かけるのが、「旋律の特徴を感じ取って
表現の工夫をしよう」というねらいの授業でしょうか。

4年生の授業で、「ゆかいに歩けば」を教材にした活動の授業が
ありました。
授業までの準備はていねいで、ワークシートを用意しておられました。

歌詞の1番から3番までが2段ごとのフレーズに分けて書かれてあり
●歌詞の内容を思い浮かべて考えよう
 どんな景色が思い浮かぶかな
 どんな気持ちかな             
と補足が書かれているものです。

これまでにも、話してきましたが、気持ちやイメージだけで表現を変えることは
非常にあいまいであるということです。

このワークシートを利用するなら、もう一言…
「どんな『調味料』をふりかければいいかな」「どの魔法を使うかな」など
「共通事項」をヒントにできるようにすることが必要だと思います。

「共通事項」を使うことによって、それが文字通り、子どもたちの共通の
ものになり、次回からの授業でも生きて働くはずでしょう。

また、中学年の段階では、楽譜から読み取る活動に重点を置いた指導が
まだまだ必要だと思います。
「前半の部分で、スタッカートがついたのと、ついていないのではどう違うかな?」
「どうして、スタッカートがついているんだろうね」
など、グループで考えながら楽譜をしっかり読み込めることが大切だと考えます。

「共通事項」を教えることが授業の目的ではありませんが、それを活用して
音楽の組み立てや表現を工夫することです。

授業が終わった時点で、「何がわかったのか」ということを指導者が自ら
問い直す心がけが大切ですね。

講座36
「キラリと光る言葉」の紹介

今年の6月に、兵庫県音楽教育研究大会「但馬大会」があります。
今現在、但馬の先生方は大会に向けて研究を進めておられるのですが
実践資料の中に、いくつもの「キラリと光る言葉」を見つけました。
座右の銘になりそうな、凝縮されたキラリと光る言葉を紹介します。

◆『音が高くなると気持ちの温度も高くなる』
 「旋律の特徴を感じ取ろう」の題材には必ず登場する「曲の山」を
 指し示していると思われますが、「曲の山」は大きな声で歌ったり
 演奏したりする…と子どもたちに勘違いさせないためにも、この
 ような言い回しが必要かと思います。
 教科書では、気持ちのもり上がりと説明しているでしょう。
 それを「気持ちの温度」ということで、より子どもに合った表現に
 近いように思うのですが。

◆『歌声でも友だちと仲良し』
 合唱をするときに、2つのパートの歌声が響き合うように…という
 指導者の願いから生まれた言葉なのでしょう。
 お互いの声をよく聴くことの大切さを、さりげない言葉に置き換えた
 のでしょうね。

◆『意欲を育てられるような学習指導』
 授業は何も技能を身に付けさせるだけではなく、活動を行う
 子どもたち自身が意欲をもって臨むところから学習が始まることを
 あらためて再認識しましょう。
 
◆『子どもたち自身が言いたいことを伝える言葉の元になるのは
 体験活動である』
◆『子どもの活動を「待つ」という姿勢は大切だ』

 音楽の授業では、子どもの感覚・感性を大切にしようと、子どもたち
 から言葉を引き出すことにこだわりすぎる場面をよく見かけます。
 でも、音楽を学ぶ過程にいる子どもたちには、知ってほしい事柄も
 たくさんあるのです。
 また、時間をかけてじっくりと取り組むことも欠かせません。
 出来る限り、豊かな体験をさせながら、子どもたち自身の言葉を引き
 出したいものです。

◆『子どもたちは「学習していることの中身がよく分かるとき、やる気が
 出る。もっと分かりたいことや身に付けたいことがあるとき、やる気に
 なる』

 解説の必要のない文章ですね。
 少々難しい課題であっても、子ども自身のやる気、上述の「意欲」があれば
 取り組もうとするものなんです。
 

いかがですか。
但馬地区の先生方が研究を深めるなかで、見出したこれらの言葉…清流の
中から砂金を探し当てるように、大会当日の研究誌の文章の中から見つけ
出してみてください!


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講座37
共通事項から表現の工夫を

藤原一秀先生(関西外国語大学教授)を講師に招き、4年生の子どもたちに
「花は咲く」(岩井俊二作詞/菅野よう子作編曲)合唱指導をしていただく
研修会がありました。

hujiwara1

「なぜ、この曲の題名を『花は咲く』にしたのでしょうね」
開口一番、藤原先生の投げかけです。
4年生の子どもたちから反応はありません。
「授業が終わったら、またきくことにします」

「みんなの楽譜の中から、強弱記号を探してみよう」
子どもたちは強弱記号のないことに気づきます。
「だったら、強弱はみんなで考えないといけませんね」

「この歌の出だしは『p』ですか?『mp』かな?それとも『mf』『f』…?」
子どもたちのほとんどは、『p』と確信をもって答えます。
「ほっ、そうですね!」喜びの表情を身体いっぱいに表す先生。

「『♪まっしろな (雪道に)』…どう歌ったら、言葉にピッタリくるかな。
私が歌ってみますよ。」といって、3通りの歌い方の中から、子ども
たちは自分の気持ちに沿ったものを選んで挙手をします。
「じゃあ、歌うのに合わせて手振りをつけてみるよ」

hujiwara2

写真からもわかる通り、子どもたちに熱く語り授業を進める指導者に
子どもたちは、どんどん引き込まれていくのが伝わってきます。
「雪道ってどんな様子かな。みんなが歌っているのはベチャベチャに
雪が融けたような道になってるよ。サラサラの雪道にするためのヒントは
『まっしろな』の「な」にあるんです。」
語尾の大切さをさりげなく伝えることで、子どもたちの歌が変わって
きます。

      *     *     *
「旋律の特徴から表現を工夫しよう」という場合、授業の前に
どれだけの情報を楽譜から読み取っているでしょうか。
歌が成立した経緯、歌詞、旋律や音の動き、和音、歌の前の前奏、
フレーズの中での緊張と緩和…出来うる限りの多くの情報を読み取り
それを子どもたちに合った目の高さでの発問や投げかけ、歌の表情を
身振りや手振りでより一層拡大して理解させるなど、指導者自身が
まず表現の工夫に向き合う姿勢の大切さを教えていただく機会に
なりました。

一方的に子どもたちに表現の工夫を求める指導者をよく見かけるの
ですが、藤原先生は子どもから引き出すと同時に、子どもたちに
表現する力をつけていくのです。
ですから、教材が変わっても、子ども達は、この授業で付けた力を
発揮できるのです。

「なぜ、この曲の題名を『花は咲く』にしたのでしょうね」という
授業前の投げかけに、多くの子どもたちの手が上がりました。

「共通事項」をうまく取り入れながら、それを今後に生かしていく力を
子どもたちに付けようとする授業。
指導者とともにつくる授業で、自分たちの工夫で表現が変わる面白さ
を味わった子どもたち。

45分という授業時間の重みも合わせて感じる研修会でした。
藤原先生、ありがとうございました。


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講座38
子どものワークシートを活かした授業

「リズムやふしをつくって表現しよう」という授業研究会がありました。
本時のねらいは「自分の旋律を生かし、友だちとつなぎ方の工夫を
しながら、グループのおはやしをつくる」というものでした。
tesima1

4人一組のグループ内で、それぞれがつくった旋律をつないで
グループのおはやしをつくるという内容です。

そこで、指導者は、最後の音が「ラ」か「レ」になると終わった感じが
すること、また終わりの音符は「四分音符」がふさわしいことに気付か
せたいという思いをもって授業に臨みました。

「まず、みんなに吹いてもらおうかな。先生が指名するね。
では、「ソ」で終わっていた●●君、お願いします。」
次には、「ラ」の音で終わっている別の児童を指名し、二人の旋律で
どちらが、より終わる感じがしたかを全員に尋ねるのです。

「次は、●●さん、お願いします」…指導者は、その児童が「ド」の音で
終わっていることを授業前に調べていたのです。

「もう一人…●●君、どうぞ」
その児童は「レ」で終わっているのです。
「どちらが、終わりの感じがしたかな?」

指導者は、旋律づくりをさせている間に、それぞれの児童の旋律の動き、
終わる音など、指導すべきポイントをきちんと確認し把握されていたのです。

もう一つ、授業後半でのグループ発表の時です。
授業時間内で発表できるグループは限られています。
指導者が指名したグループが旋律をつなげて演奏しました。
「何か、この班の演奏で気付いたことはありませんでしたか?」と指導者が
みんなに尋ねました。
tesima2
(児童が演奏した楽譜:音符は小さく音符の横に書かれています)

(児童)「1段目と3段目のリズムが同じでした」
指導者は、そうですね…と言いながら、黒板横に並べてあったカードの
中から「くり返し」「反復」を選び、その説明を加えました。

そのグループの児童が、「お話ししているように並べました」と発表を
つけ加えます。
1段目の旋律と2段目、3段目と4段目がそれぞれ対になっていて、
お話しをしているようにしたというのです。
その発表を聞き、指導者が「問いと答え」のカードを添えました。
「くり返し」「反復」「問いと答え」…そのどれもが「共通事項」です。

「旋律づくり」は、その過程で、即興性や音楽を構成する力を身に付ける
ことが目的なのです。
一方、指導者は子どもたちがつくった旋律だけを注視しないで、今どの
ような旋律をつくっているのかというのをしっかり把握しておかなければ
なりません。
また、その活動を通じて、どんな力を育てたいか、授業の組み立てを
考えて授業に臨んでほしいものです。

今日の指導者は、「旋律づくり」のねらいをもち、一人ひとりの子どもの
活動の様子やつくったワークシートに目を通していたのですね。


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講座39
授業の本質に迫った研究会

[講座37]に続き、再度、藤原一秀先生(関西外国語大学教授)の
合唱指導を参観させていただきました。
4年生児童に「友だちだから」(桑原永江/詞・若松歓/曲:教育芸術社)
指導です。

hujiwara0123
(教育芸術社:新しい教材集「すてきな一歩」)

このような指導から、参観者は多くのものを学ばせて
いただきました。

「わかる・できる・たのしむ」をテーマにした授業研究を
進める上で、欠かせないのがユニバーサルデザイン授業
でしょうか。

藤原先生の指導に、授業の本質を見せていただくことが
できました。

「音や歌声、フレーズを見せる」:リズムやフレーズを
腕の振りや指導者の顔、表情から読み取らせておられるのです。
hujiwara0124

「私の顔や指揮を見ながら一緒に歌ってね!」

「学ぶことを絞り込む」
この曲は、どのフレーズも1拍目から歌いだす箇所がないところに
着目させました。
全体の楽譜を俯瞰させた上で、出だしの部分の四分音符の歌い方
を工夫させました。音が出る前に休符がある、なしの違いを感じさせる
ためにベートーベン「運命」の出だしを使うことで、休符の重さを
実感させます。
また、その休符を手拍子させることで、歌い出しを変えて
いくのです。
手首を回しながら歌わせたり、両手に力をこめて振らせたり。
また鼻濁音「が」を濁音で歌うことで、歌がどう変化するかと
いうことを具体的に説明します。この指導は、見えないものを
具体化させてくれるのです。

「みんなが同じ思いで理解できる」
藤原先生の一言一言が、子どもたちの心にストンと落ちるのと同様、
参観者全員、すんなりと納得できるのです。
このことは言い換えれば、「共有化」といえるでしょう。

「何を教えたのか」ということよりも「(子どもたちは)何を学んだのか」、
また、授業を進めていく中で、常にそのことを念頭におきながら、指導
を工夫し、言葉をかけていく姿勢こそ大切なのだということを、授業を
参観するなかで実感しました。

「音楽を見せる!」

hujiwara0125

指揮の仕方により、子どもたちと共に作品を味わうことができる…という
ことを教えていただいた授業研究になりました。
藤原先生、ありがとうございました!


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講座40
すばらしい授業から学ぼう!

合唱指導で著名な、大西裕子先生の飛び込み授業を参観させていただく
機会に恵まれました。
そこで、学んだことを紹介しましょう。

「ありのままの姿からの出発!」
授業の始まりに子どもたちの歌声を聴いた後…
「みんな、とってもいい歌声をしているんだけれど、
いつもどうしているの?」と子ども達に尋ねました。
「息を吸って、大きな口を開けて歌っているよ」
「きれいな声で歌う!」
「うら声を使う!」…ポンポンと子どもたちから返ってきます。

「笑顔で歌うと?」
「きれいな声になるよ」
「ほっぺに、たこやき作って歌う!」といって
みんなで、ほっぺにたこやきを作ってみせてくれました。

授業の始まりに、子どもたちの普段様子を尋ねた指導者…
今のありのままの子どもを受け入れて、授業を始めようという
姿勢こそ「だれもが参加できる授業」のスタートです。

「みんなを引き込みながら」

「あっ!また一人、すてきなお友達を見つけました!」と言って
一人の子どもを指名した大西先生。
このようにして、子どものつぶやきや、しぐさを取り上げ、全員に
紹介しながら授業を進めていくのです。
この姿勢は、何もできる子だけを取り上げて紹介するものでは
ありません。
手を挙げて発表できない子、どうしていいか困っている子などを
すばやく見つけることにもつながっているのですね。
活動を進める中で、タイミングよくほめる言葉もポンポン飛び
出すので。子ども達は笑顔を絶やさず、自信にあふれた表情で
活動していました。
すべての子どもが取り組める活動を積み上げていく授業に
時間の経つのも忘れます。

「常に、ねらいから逸れない、そらさない」

飛び込み授業開始から30分が経過した頃、
先生が、「一度ここで今やっていることを確かめるよ。
今は、歌い方の工夫をしているんだよね」
授業は、開始から終了まで、一貫して本時のねらいから逸れる
ことなく、ねらいに向かっていくつかの課題を解決していくのです。
この姿勢が大切なのです。
また、一つの課題が解決できそうなとき、「これができたら次のこと
言うね」という言葉をかけられました。
指導者は、「ねらい」までの道のりをしっかり見通して授業をデザイン
することも欠かせません。

「子どもを惹きつける有効な言葉がけ」
授業が始まった時…
「お話を聞くときはリラックスしてていいよ。でも、それが弛んでくると
ダラックスになるんだよ。それで、歌う姿勢は背筋を伸ばして、
いい姿勢…デラックスにするんです」
2年生の子どもたちにも、この言葉がけがストンと入ったのです。
この時間中、途中で「はい、デラックス!」という一声で、子ども
たちはそろって歌う姿勢に。
このような、子どもの目の高さで共有できる言葉を持っていると、
切り替えもはやくなるんですね。

授業を終えた子どもたちは、大西先生とハイタッチをして音楽室を
後にしました。


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講座41
「ねらい」をどこに定めるか!

先日、6年生の研究授業を参観させていただきました。
来年度の大会に向けた授業研究だったので、教材は
「ラバースコンチェルト」(「小学生の音楽6」教育芸術社)でした。
きっと6年生をお持ちの先生方は、もう昨年のうちに済まされているか
と思います。
題材名は「いろいろな音のひびきを味わおう」…というものです。
そこで、指導者はまず、4パートの旋律のもつ役割を再確認されました。

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とてもわかりやすい説明です。

本時のねらいは、「自分たちのイメージに合う演奏の仕方やひびきを
みつけよう」で、それぞれ3グループが練習した後に、より自分たちの
イメージに近づけるための話し合いを持たせました。
子どもたちのイメージというのは、演奏のどんなところを聴いて
ほしいのかというものでした。
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(あるグループのイメージカード)
指導者の最初の説明では、パートの役割、楽器のもつ特徴を生かして
合奏することだったのですが、子どもたちは自分たちのもつイメージを
優先させて話し合いを進めているのです。

この教材の場合、最初にパートの役割を理解し、それにふさわしい
楽器を選ぶときに、パートの役割を果たせる楽器をいくつか見つけ出し、
その中から、自分たちが話し合って決めたイメージにふさわしいものを
組み合わせるという、二つの「ねらい」を指導者がきちんと把握して
おかなければなりません。
そうすることで、「それぞれの旋律の役割に合う楽器の中から、全体の
ひびきがやわらかい音色になるように工夫して楽器を組み合わせました。
聴いてください」というように指導者のねらいに沿った授業になるのです。
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電子オルガンを使用する場合には、どんな音色を選択するのか、また
強弱を足のペダルで表情をつけることにも気を配る必要がありますし、
木琴、鉄琴などを使用する場合には、数種類の硬さの違うマレットを
準備することも忘れないようにしたいものですね。
この題材で、子どもたちが何をどう学ぶのか…しっかりと計画を立てて
授業に臨まないといけません。


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講座42
「本時の目標」と「題材名」

土曜日に公開授業があるというので、寄せていただきました。
この市では、どの学校も年に一度は保護者・地域等に呼びかけた
公開授業研究会をすることになっているとか。
なかなかユニークな取り組みです。
出向いた小学校の研究主題は『「仲間と共にいきいきと学び続ける子」を
育む教育の創造』でした。
参観させていただいたのは、4年生の音楽の授業で、題材名は
「音の重なりを感じ取ろう」、そして本時の目標が「バランスに気をつけて、
演奏の仕方を工夫することができる」というものです。
合奏教材「茶色の小びん」でバランスを考えさせるのに、指導者は
「音量」「音色」の視点を確認させ、2グループに分かれて聴き合い、
お互いに発表しました。
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子どもたちからは、音量や音色を工夫するのに、「木琴や鉄琴のバチ
(マレット)を変えるといい」という発言がいくつも続きます。
それぞれのグループが2度ずつ発表したのですが、授業の終わりまで
「演奏のバランス」から逸れることなく集中して取り組んでいました。
静かな中で、じっくりと考え、活動をする子どもたちの様子に感心しました。

合唱も4年生とは思えないくらいの歌唱力だったのですが、既習曲の
「パレードホッホー」(教育芸術社4年)での音の重なりを感じ取らせる
ためには、指導者の指示速度が速く、子どもたちが歌いながら味わう
ことができにくい状態でした。
このことは、合奏「茶色の小びん」でも同じことでしょう。
本時の目標が「バランス」であっても、題材の目標を見定めて、合奏
でのゆたかなひびきを味わわせるために、ある程度余裕をもった
速度をも視野に入れながら授業を行わなければなりません。
授業後、残っていた子ども(鉄琴を受け持っていた)の一人が、自分の
パートをゆったりと演奏しているのです。
もしも、授業内にその速度で演奏させていれば、その子は十分に自分が
受け持った楽器の旋律を合奏の中で楽しめたのだろう…と思いました。

本時の目標は、題材の目標に沿って進めることを、あらためて感じた
授業でした。


LIVE

講座43
教えることの大切さ!

【講座42】での授業中、すきな楽器を組み合わせてリズム伴奏をつくる
活動もおこなっていました。
その中で、「クラベス」を打っていた子どもは、拍子木を打つようにして
いるので、いい音が出せないのです。
他の子どもからも「あの楽器(クラベス)、いい音が出てないから、聴こえ
にくいです」と言われていました。

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あまりにも困っている様子だったので、グループ練習の時間に、そっと
打ち方を教えてあげました。「左手で持った方は少し浮かせるように
しないと響かないよ。右手の方は軽く持って…」
その子は言われたとおりに打ち始めました。
とたんに、その子の表情が明るくなるのがわかりました。
きっと、今までと違う音色が出せたことによる表情の変化でしょう。

演奏が終わり、感想を述べ合うときに、その子が「軽く持って打つと、
響きやすくなりました」とみんなの前で発表しているではありませんか。
自分が悩んでいた時間があり、その後で身につけたことを全員に
知ってほしかったのでしょうね。
知ったこと、できたことをみんなで共有しようとする姿に感激しました。

子どもたちが選ぶ楽器についても、教えなければわからないことは
しっかりと指導したいところですね。


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講座44
少しの配慮で…

兵庫県内の小学校での校内研修会で、3年生音楽の授業が
ありました。
活動を進める中で、歌うときに指導者が子ども達に「言葉を
ていねいに大切にして歌おうね」と言いながら、手に持った小ぶりの
ホワイトボードに「ことばを大切に ていねいに」と書いたのを
見せました。
何気ないことかもしれませんが、そのホワイトボードがあることで、
より一層指示が明快に子どもたちに伝わります。

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こうした少しの配慮の積み重ねが、よりわかりやすい授業へと
つながっていくのを実感させていただいた一コマでした。


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講座45
予測に反した子ども達!

授業を行う場合、事前に見通しを立て、子ども達の活動や意見、
感想、つまづき等を予測して授業に臨むことでしょう。
子ども達の活動を予測する場合、どちらかというと、展望が開ける
ような反応を考えがちなのですが…。

以前、歌とリコーダーを組み合わせた教材を経験していたことも
あり、初めて歌声を重ね合わせる活動を行ったのです。

sanda2
(教育芸術社3年「歌おう声高く」部分)
指導者の予測は、CDによる範唱を聴かせれば、子ども達は
「(斉唱よりも)ますます楽しい感じ」「元気にはずむような感じ」
「響いているような感じ」「にぎやかでもり上がる感じ」…などの
感想を発表してくれるだろうと考えたのです。
ところが、実際に範唱を聴いた子どもたちの反応は…
「きれいな感じ」というのもありましたが、「主な旋律がぐちゃぐちゃ
になって気持ち悪い」「どっちを聴けばいいのかわからない」…と
言うものでした。
私たち指導者は、授業を組み立てるときの子ども達の反応を、
プラス指向で考えがちなのかもしれません。
しかし、2つの旋律が重なり合う響き、それもそれぞれの旋律の
言葉が違うのを聴いたのは初めてなのです。

子ども達がこれまでに学んできたことを振り返りながら授業の
組み立てを考えないといけないことにあらためて気づかされました。
子どもたちの本音をしっかりと受け止め、次回の授業に生かすように
したいところですね。
予想に反した授業の流れになった時、どう対応されますか?
子どもたちの反応予測のむつかしさをひしひしと感じました。
あわせて、【講座46】をご覧ください。

講座46
題材と教材の「めあて」をしっかり把握

題材名「音の重なりをかんじとろう」(教育芸術社3年)の教材群には
それぞれ「めあて」が示されています。
「歌おう声高く」(花岡恵 作詞/長谷部匡俊 作曲)では「せんりつが
重なり合うおもしろさをかんじとりましょう」ですし、「あの雲のように」
(芙龍明子 作詞/作曲者不明)では「重なり合う音のひびきを楽しみ
ましょう」です。また、「パフ」(芙龍明子 日本語詞/ピーターヤーロウ・
レナードリプトン 作曲)では「合奏のゆたかなひびきを味わいましょう」
になっています。
これらの教材群を学習する中で、題材の目標を達成するのです。
もう少しポイントをしぼると、「重なり合うおもしろさ」「音のひびき」
「ゆたかなひびき」…と段階を追った指導によって「音の重なりを
感じ取る」活動を営んでいくのです。

ですから、「歌おう声高く」で、2つの旋律の重なりを、ひびき合うように
歌おうという「めあて」にすると、子ども達にはむつかしくなるのです。
教材の「めあて」は、常に題材と照らし合わせながら捉えていくように
したいものです。


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講座47
歌は自分の気持ちだよ!

1年生が「6年生を送る会」で歌を披露するというので、学年合同授業に
お邪魔しました。
プレゼントする曲は「Believe」(杉本竜一/詞・曲)と「いつまでもともだち」
(ふるやともこ/詞・平島勉/曲)です。

何度か歌っているのでしょう、みんなプリントを見ないで熱唱していました。
「歌っていうのはね、作った人が他に居ても、歌う人は自分の本当の気持ち
として歌うんですよ。」と言ったあとで、もう一度歌ってもらいました。
♪「たとえばきみが傷ついて…支えてあげるよ その肩を」まで歌った時に
「ホントかなぁ。大丈夫?」と問いかけると、1年生の子ども達はニコニコ
しながら、うなずいています。

「よし。だったら1番は男子が立って、そばに居る女子に自分の気持ちを
こめて歌おうよ。それで、間奏の間に入れ替わって、2番は女子が男子に
話しかけるように歌いましょう」

するとどうでしょう…これまで誰にともなく歌っていたのが、本当に話しかける
ように気持ちのこもった歌声になっているではありませんか!

次は、「いつまでもともだち」です。
♪「きみといれば…」
「きみっていうのは、誰のことかな?」
なんとなく、分からないような顔つきです。
「みんなは、この歌をだれにプレゼントするの?」
「6年生のお兄ちゃん、お姉ちゃんに!」
「そうだよね。だから、きみっていうのは6年生!」
6年生の上級生に「きみ」というのがピンとこなかったのでしょうね。

この日の授業は、歌うことは自分の気持ちを表現すること…というのを
学んだ1年生でした。

雪の舞う寒い日でしたが、子どもたちはホカホカの気持ちをいっぱい
心につめて、教室を後にしました。

    toyominamiyuki


LIVE

講座48
才能と魅力を発揮することに努めよう

【講座40】で登場していただいた、大西先生の指導を今回も
参観する機会がありました。

oonisi1

ご挨拶がわりに、「校歌」を歌ってくれた5年生の子ども達。
なかなかいい歌声です。
それを聴き、大西先生は今日の「教材のねらい」を定め、
導入に「きらきら星」を歌うことに決められました。
歌声を聴き、納得できるもの、欠けているものを瞬時に
判断し、「強弱」「息」「言葉」「発音」…と、どんどん課題を
提示し、子ども達は知らず知らずのうちに歌声が変わって
いくのを実感しました。
「先生の顔見て…」
顔を見つめて歌う子ども達の表情が指導者に同化して
いくのがはっきりとわかります。

「理想的な歌声とは…」、「音楽の深さ」を知り尽くした
指導者の的確な言葉がけが子どもをかえていくのです。

授業の終わりに、大西先生のハイトーンな挨拶に
続いて、子どもたちもハイトーンの声で応えているのには
周囲から、「大西マジックやね」という声が。

oonisi2

次の時間には、2年生の子ども達の指導です。
「あの青い空のように」(丹羽謙治 詞・曲)で輪唱をする
ことが目標です。
「音楽を前に進めようね」「追っかけて歌う人も、全音符を
しっかり守るとね、もう少し大きくなったときにHappyなことが
起こるんだよ」「のばした後の音は食べるように」など、
子どもに沿った課題が次々に飛び出します。

授業中、少し落ち着きなく動く子どもには「すてきな動き!
音楽的だわ」とニッコリする場面も。

「みんなが、しっかり歌を歌うと、曇り空も晴れるよ」という
投げかけに、子どもたちはますますやる気に。
すると…授業が終わった時には、晴れ間が見えているでは
ありませんか。
まるで、お天気までが、大西マジックにかかった?!

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子どもたちを惹きつけ、それに応える才能をもった指導者
になること…当たり前のようですが、自分の教育力を磨き、
少しずつでも研さんを積むことで余裕をもって子ども達の
前に立てる…とても大切なことに気付かせていただきました。


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講座49
「授業展開」について

卒業を間近に控え、6年生を送る会の練習などが行われて
いることでしょう。
一方、学年末最後の保護者向け授業参観では、4年生が
「2分の1成人式」を行う学校も多いかもしれませんね。
先日、大阪府内の小学校での授業研究に呼ばれました。
題材名は「心をこめて表現しよう」で、やはり4年生が保護者
参観で「2分の1成人式」を行うというものでした。
seike1

教室前面には、このような掲示があったのですが、「前奏を
大切に」と書かれている例をあまり目にしないので、思わず
パチリ。

本授業の導入として、歌詞以外何も書かれていないものを
用意しておられました。(「ここにいる幸せ」嶽里永子/詞
松井孝夫/曲)
seike2

前時に学習した時に子ども達から出た意見や想いを記入した
ものを用意する場面を多く見かけるのですが、ここでは、白紙
から、前時までの様子を思い出させながら始められました。
このような方法も、子ども達を授業に惹きつける「しかけ」になる
のですね。
「心をこめて表現しよう」というねらいに沿って、曲想を生かした
歌い方の工夫ができるよう、意図をもって歌わせるきっかけとして
授業最後に歌う前に、指導者が用意したDVDを子ども達に
見せました。

seike3

「おめでとう 大切なあなたへ」という自主制作のものです。
子ども達が生まれ出るまでの両親の思いや、生まれて
くれたことによる幸せを描いたものを、指導者の朗読を
交えながら読み進めます。
それにじっと目を凝らし、耳を傾ける子ども達…。

鑑賞後、もう一度全員で歌います。
授業では、作曲者の言葉や強弱記号から読み取らせて
表現の工夫にあたっておられたのですが、
もし…
最後に鑑賞させたDVDを授業の初めに見せていれば
どうだっただろうか、「心をこめて表現しよう」などと言わ
なくても、子どもたちは、表現する相手の思いに応えようと
表現の工夫に取り組めたのではないでしょうか…。
真剣に画面を見つめる子ども達の瞳の輝きが、今も
残っています。


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講座50
「授業の構造」について


1時間の授業の流れを構造化して考えてみると…

「参加」→「わかる(理解)」→「できる(身に付ける)→「楽しむ」と
いう大まかな流れがあります。
【参加】
授業の始まりは、全員が参加すること!
ここで大切なのが「初発の発問です」
この発問によって、子ども全員の興味を惹きつけるのです。
また、「本時のねらい」に迫るための「しかけ」が必要な場合も
あるでしょう。
このときに、指導者は「なぜ○○を学ぶのか」という明確な答えを
持っていなければなりません。
言い換えれば、「1時間の授業で何を学ばせるのか」を絞り込む
ことで、授業の内容をよりシンプルにすることができます。
最初の発問やしかけによって、子ども達が、「やってみたい!」と
心を動かしてくれれば、授業がとてもやりやすくなるのです。

【わかる】
子ども達を取り巻く環境は一人ひとり違いがあります。
家庭環境や、友人関係など、細かく挙げるときりがないくらい
でしょう。
中でも、授業をする時に大きくかかわってくるのが「学力差」です。
この「差」を見えなくする工夫が必要です。
学習内容のスモールステップ化、内容の「質・量」が適切であるか、
特に音楽の場合、目では見えない音を扱う教科なので、板書や
掲示物、身体・五感の活用、鑑賞等を適宜取り入れながら、全体
でのイメージの共有をはかりたいところです。
一方、事前に「つまづき」の予測を立て、授業中での発問等の
工夫も必要です。
今、何が行われているのか、何をわかろうとしているのか…常に
確認することも大切です。
何よりも、本時の「ねらい」がわかっているか…まずはその確認を!

【できる】
活動を行うためには、「既習事項の使用」「スパイラル化」「ワーク
シート」の活用、「教材・教具の効果的選択、有効な活用」「ねらいに
応じた学習形態の工夫」などに気を配ります。
活動に対する支援として、授業を見通した子ども全体に関わる
つまづきに対する事前支援、机間指導による個別支援、また授業
時間外等に配慮します。
子ども達ができるまでの活動を支えるためには、的確で簡潔な指示
掲示、順序立てた課題配列、タイムリーな言葉がけやヒントの提示…
何よりも、指導者の豊かな専門知識や指導技術も欠かせません。

【楽しむ】
楽しむことは、言い換えれば「わかったこと、できるようになったこと」
を全員が「共有」し「使える」ことです。
こうした楽しさや達成感のの共有、本時に学習した内容が、次時
以降にも生きて働くものでなければなりません。

【まとめ】
本時の授業で何を学んだのか…子ども達全員で振り返り、「共有化」
させましょう。

  *        *       *        *

授業力UP講座では、実際の授業の中から、ともに考えたい内容を
取り上げて具体的にお話ししてきました。
今後も、お互いの授業力をUPできることを目指して、共に考えること
ができる内容について紹介させていただきます。



講座51 子どもの声から学ぶ

以前、合奏の指導に寄せていただいた学校の5年生の子ども達から、
お礼状が届きました。
oreijou

その時の授業で学んだことが、たくさん書かれてありましたので、
紹介しましょう。今後の指導のヒントが見つかることでしょう。

感想@
「強弱の付け方がわかりました。先生の指揮での演奏は、ノリノリに
なってしまうほど、なめらかな時やはっきりした時があり、一つの合奏
とは思えないほどでした。」

感想A
「指揮を見たとき、先生は自分たちに口で言わずに体で表現していて
自分も同じ気持ちになっていました。」

感想B
「指揮をしている先生の言いたいこと(意味)やリズムがよくわかりま
した。
たとえば、手を下に向けているとき、教えてもらう前は、ただカッコ
つけてるだけかな…と思っていたけど、先生が意味を教えてくれたの
で、よくわかりました。」

感想C
「指揮をしてくださってありがとう。おかげで、なんで指揮を見るのか
意味がわかりました。」

感想D
「指揮の仕方を少し変えるだけで、演奏が変わったのがすごかった
です。ピアノを弾きながら指揮を見ていると、弾くタイミングや、楽しく
なったり…すごく分かりやすかったです。」

感想E
「動き一つで、こんなにも音色や響きが変わるのかと、ただただ
驚きでした。」(担任)

感想F
「指揮はただ振るだけじゃないことが分かりました。速いところ、
ゆっくりなところ、やさしいところ、強いところが分かりやすくて
演奏しやすかったです。」

感想G
「ずっと同じテンポだったら聴いている人達は飽きるでしょ…と
言っていた言葉が一番印象に残りました。テンポを変えて合奏
すると、すごく気持ちよくなりました。その時、すごく楽しかったです。

感想H
「合奏しているとき、ちがう世界にいるようで、とっても楽しかった
です。」

感想I
「先生の指揮を見ながら音の強さを考えて演奏していると、今まで
あまり聞こえていなかったピアノや鉄琴の音がよく聞こえて、全ての
楽器のよい所が音になった…とものすごく感じました。」

感想J
「鉄琴をしていて、あまり前が見えていなかったけど、先生の、前を
向いて演奏しようという言葉で前を向いて演奏したら、大小の音が
よく分かりました。

感想K
「10日間連続でカレーは飽きるでしょ…という一言がなかったら
上手くいきませんでした。」
※合奏に取り掛かる前に子どもたちにかけた言葉です。
 授業の始まりでは、「初発の発問」にあたるかと思います。
 また、全員がこの「投げかけ」に食いついてきてくれたことで、
 全員が合奏に参加しようという気持ちが生まれたのでしょう。
                           (戎コメント)

感想L
「先生にアドバイスや合奏の指揮をしてもらって、とてもよい機会
だったなぁ…と先生が帰ってから感じました。」
※そんなものかもしれませんね、子どもらしい感想です。

感想M
「先生のおかげで、音楽をすることがもっと好きになりました。」
※以前、お話ししましたが、演奏の工夫を心掛けることで、その
瞬間、音楽が変化する体験こそが音楽の醍醐味なんでしょうね。


感想N
「最後に弾いてもらった『走れ、シベリア鉄道』は今でも、あの音は
忘れられません…。」

※たくさんの感想、全部じっくりと読ませていただきました。
 うれしかったのは、楽器に関係なく、どのパートの子ども達にも
 音楽する楽しさを感じてもらえたことです。
 6年生になっても、いえ、大人になっても、音楽する楽しさ、
 仲間と共につくりあげた体験を大切にしてもらいたいですね。


講座52 「プレゼン」に学ぶ

授業の構造を考えるときのヒントになる一つに「プレゼン」の提示
があります。
企画の提案や、お勧め商品の紹介などを行うための「プレゼン」
について考えてみましょう。

@自分の考えた言葉で話すこと。
 授業でもそうですが、誰か著名な先生の指導案を真似をしても、
 うまくいかないものです。それより、目の前の子どもが理解でき
 るように自分自身で工夫を凝らして臨むことですね。

A相手が理解できないような言葉や内容を用いない。
 いつも対象の子どもたちに分かりやすい言葉、内容で授業を
 進めたいものです。
 音楽科の場合、音楽的な用語や記号などたくさんありますが、
 子どもが理解できないような言葉は、きちんと理解をさせてから
 使うようにしたいものです。

B聞き手に分かりやすいイメージを用いること。
 授業の場合には、本時のねらいに沿ったイメージを用いること。
 例えば、授業の導入に写真などの映像を流すなら、その画面から
 「ねらい」が読み取れるものにしたいところです。
 「キリマンジャロ」の合奏をするので、「キリマンジャロ山」の遠景
 写真を見せたり、地図で位置を確認しても、楽曲にはつながり
 ません。楽曲を演奏するのにふさわしいような写真やエピソード
 等を準備したいものです。

Cイントロには、聞き手を惹きつけるものを用意する。
 プレゼンは、最初の導入のところで決まる!

 まさに、授業開始で、全ての子どもの心をつかまえ、活動に参加
 したくなる言葉がけや、しかけが必要です。
 「面白そう」「やってみたい」「ボクにもできそう」などと思わせる
 ことで、授業がスムーズに進みます。

Dプレゼン全体の概要を最初にはっきりさせること。
 授業では、本時の活動の流れ、ねらい、などを授業開始あたりに
 知らせることになります。

E聞き手からの質問や意見は、プレゼンで有効に活用できる。
 授業でもそうですが、子どもから質問が出るのは、その活動に
 参加しているからです。また、言葉でなくても、困った顔をした
 子どもやつまづいている、と見受けられる子どもが居る場合には
 自分の進め方のまずさや説明の悪さを振り返る機会になります。
 もちろん、子どもからの質問によっては、より深い説明を加える
 ことができるかもしれません。

F聞き手にとって「わからない」かもしれないと思い当たることは、
 解決しておくように事前に準備をすること。

 授業での「支援」の仕方ですが、(1)大半の子どもがつまづき
 そうな点については、授業前に、より分かりやすい方法で活動
 できる方法を考える、(2)授業内での机間指導などによる個人
 支援、(3)授業外支援があります。
 この中での(1)に当たる事柄ですね。

Gプレゼン全体の筋が通っていること。
 授業に置き換えると、授業終わりのまとめまで、「ねらい」がブレ
 ないことになるでしょう。
 
H相手の感情を動かすこと。
 授業でも、これができるように初発の発問から工夫を重ねたい
 ですね。
I要望を把握できれば、プレゼンの方向性が見えてくる。
 ねらいを子どもが望む活動とどう結びつけるか…指導者の腕の
 見せ所です。

プレゼンでは企業や個人のビジネスチャンスを大きく左右します。
授業では、子どもたちの将来を大きく左右します。

講座53 求める歌声や音色が描けていますか?

活動を進めるとき、各学年の目標となる「歌声」や楽器の「音色」、
リズム、ハーモニーなど、自分が求めるものが、しっかり頭(心)の
中に描けていますか?

この時期(3月)には、「6年生を送る会」や来年度の新一年生を
迎えるための準備を進めている頃でしょうか。
新しい1年生を迎えるのに、学校行事の紹介や歌で新2年生が
迎えることも多いでしょう。
「ドキドキドン!一年生」もレパートリーの一つですが、この歌に
限らず、歌や合奏を指導するときには、指導者が「目標」となる
ものをしっかり持っていなければなりません。
弟、妹となる新しい一年生を迎えるというので、張り切って歌って
くれるのはいいのですが、その声を爽やかな歌声にしていかなけ
ればなりません。
「♪サクラさいたら一年生〜」
「あら、もう桜が満開を過ぎて散りそうですよ。
両手で桜のつぼみを作ってみようか。それで、『咲いたら』の
ところで花びらが開くようにしながら歌ってみよう」
こう指示することで、一年生の子どもたちの歌声はガラッと
変わります。
「♪チョウチョ」のように軽く、「♪ヒバリ」っていい声で歌うんだよ、
「♪しんぞうおさえて」…「そんなに強く押さえたら息がつまって
苦しくなるよ」などなど、歌声を変えるヒントが歌詞の中に詰まっ
ています。
また中間部では「短調」になり、伴奏も変化しているのに気付か
せることで、少しゆっくりトーンを抑えて歌いたくなることでしょうし
「♪ドキドキするけど ドンと行け」では、クレッシェンドが自然に
ついてくるでしょう。

このような指示は、指導者がどんな歌声や演奏を求めているか、
それをしっかり持っていなければうまくいきません。
普段から、自分が求める「歌声」「音色」を描いておくようにしたい
ところですね。


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講座54
子どもの発表が「Keyword」

学年末を控えた時期に授業研究会がありました。
あと10日もすれば、4年生になる子どもたちは
題材名「せんりつのとくちょうを感じ取ろう」で、本時(第2時)の
ねらいは「リズムのとくちょうを感じて歌う」…
教材は「こころパレット」(春畑セロリ 詞・曲)です。
前時では、CDを聴いて気付いたことを発表したり、音程やリズムを
確かめながら通して歌っていたとか。
そこで、本時は「付点」に着目させるために、付点を外したものとの
比較をしました。
wb1

二つのリズムで前半を歌い比べ、子どもたちは感じたことを発表して
いきます。

(子どもたちの感想は、二つのリズム[上下]について発表…)

wb2 「元気」    「はねている」 「波のよう」 「歌になる」
wb3 「ぼう読み」 「ふつう」     「地面」    「歌にならない」

【子ども@】付点で歌った方は「波のよう」といいながら腕を上下に
ゆらゆら。もう一方は、「地面みたいに動かない感じ」

【子どもA】「付点の方は、歌になっていて、もう一方は歌になって
いないです」

この二人の子どもの発表を指導者は、「動きがある・ない」「飽きない・
飽きる」
…と発表の言葉を変えてホワイトボードに書き込んだのです。
より一般的な言葉に変える方が全員に伝わりやすいと思ったので
しょうか。
しかし…「こころパレット」の前半もそうですが、歌声が重くなりやすい
のです。
そこで、子どもの発表「波のよう…」という言葉を借りることで、気持ち
も浮かせることができますでしょうし、また「付点」といっても、この曲の
指示は「スィング」なのです。「スィング」の意味は、「揺れる」なので、
意味から考えても、動きがあるというよりは、「波」という方がはるかに
子どもたちはイメージしやすいことでしょう。

また、「歌にならない…」なんて、とっても子どもらしくてステキな表現
じゃありませんか!
授業で、子どもたちが導き出した発表は大切な授業のキーワードを
含んでいるのです。


LIVE

講座55
授業「リハーサル」の大切さ

日頃は、自分一人で指導案を組み立て授業に臨むことが普通でしょう。
でも、時間に余裕があれば、子ども達の顔や様子を思い浮かべながら
授業の「リハーサル」を行うことをお勧めします。
もちろん、学年で、また地区での授業研究などでは、参加されている
先生方を子どもに見立てて授業のリハーサルができるのがいいので
しょうが…。

実際に授業を行うことで、グループ毎の練習時間が長すぎたり、また
反対に短すぎたりということに気付くはずです。
合奏の場合、楽器配置の不味さが見えてきたり、子ども達の動線の
確保が甘かったり…。思ったよりもお互いのグループの距離が近くて
活動しにくかったりというあたりもすっきり解決できることでしょう。
また、紙面の上では「ねらい」通りに進んでいても、実際の流れの途中
や、授業終了後には「ねらい」が曖昧だったことにも気づくかもしれません。
掲示物も、座席によっては見え辛かったり、掲示するのに手間取ったり
ということもわかるでしょうね。

最近、授業リハーサルに立ち会う機会がありました。
指導案では、本時の「ねらい」も明確で、最初から順を追って45分の
授業がしっかり組み立てられています。
ところが、いざリハーサルをおこなっていくと、予定の流れでは浅く、
面白みに欠けていて、これでは子どもたちの緊張感が続かないどころ
か、音楽教科に対して失望さえしかねないのです。
紙面で見ると完全な授業のように思える指導案であっても、実際に
行ってみると、様々な点に気付かされることが多いものです。


講座56
「旋律」とは…

教科書の題材に「せんりつのとくちょうをかんじとろう」というのがあります。
では「旋律」とは具体的に何を指しているのでしょうか。
教科書では、「せんりつの音の上がり下がりに気をつけて…」だとか、
「音の上がり下がりを感じ取って…」「せんりつの音の上がり下がりから
曲の山を感じ取って…」などと書かれているところをみると、「せんりつ」
には「歌詞」の要素が含まれていないように思ってしまいませんか。
確かに、器楽曲などには「歌詞」がないので、リズムを含めた音の動きに
着目するのですが、歌の場合はどうでしょう。

umikazekitte
(小学生の音楽3年/教育芸術社)

「海風きって」(高木あきこ作詞/石桁冬樹作曲)の出だし部分です。
歌の場合、「詩」をもとに作曲をするのが普通でしょう。
とすれば、「波を分けいるか 高くとぶよ」の詩がより生きるようにと
「高くとぶよ」では旋律が上向するはずです。
この旋律は2番の歌詞「しぶきあげて」ともうまく呼応できています。
また、詩を旋律に当てはめる場合、言葉のイントネーションを無視する
ことはできません。出だしの「あさ」(1番)、「そら」(2番)は[高]→[低]に
なるはずです。
ですから、旋律の動きのみから、「曲の山」を簡単に決めてしまうこと
は、時には無理が生じる場合が出てくるのです。
「曲の山」といえば、旋律の上下と歌詞と、おまけに歌う対象の山の
形がぴったりと収まる…ということで「ふじ山」を例に説明されることが
多いのですが、全ての楽曲に当てはまるかどうかは、熟考する必要が
あるといえるでしょう。
「せんりつ」は「歌詞」や「背景」から生まれてきているということを考慮
に入れることを忘れないでください。

講座57
新年度の授業開始までにできること

4月、学年や教科が決まったこの時期、児童名簿の作成や校務分掌
の引継ぎなど多忙を極めていることでしょう。
なかなか教材研究する時間まで確保できないかもしれませんが、短
時間でできることから始めませんか。
授業開始までの間、お互いの教科書の貸し借りができる余裕がある
ことでしょう。そこで…
どの教科でも言えることですが、まずは全学年の教科書の目次を
コピーしておくと、あとあと役に立ちます。
kyokasho

(教育芸術社「小学生の音楽」1〜6年目次)

目次には、年間を見通した「題材」が載せられていますね。
1年と2年、3年と4年、そして5年と6年同士で比べてみてください。
というのは、「学習指導要領」では「各学年の目標及び内容」として
低・中・高でくくっているからです。
そこで、中学年を例に挙げて説明すると…
「せんりつのとくちょうを感じ取ろう」という共通の「題材」ですが、
よく読むと、3年「せんりつの音の上がり下がりをかんじとって…」、
4年「せんりつのとくちょうを感じ取って…」、さらに「せんりつの
重なりを感じ取ろう」(4年)、と内容が深化しているのがわかります。
また、「明るい歌声をひびかせよう」では、3年「楽譜の読み方を
おぼえて…」、4年「歌声に気をつけて、楽譜を見ながら…」と
内容が変化しています。
ちなみに、高学年まで広げてみると、「ゆたかな歌声をひびかせ
よう」に変化し、5年「曲の感じや、歌詞にこめられた気持ちを感じ
取って…」、6年「曲想や、歌詞にこめられた気持ちを感じ取って」
となっているのがわかります。

ですから、3年生で学習することが、次の学年にどうつながるのか、
また逆に、昨年の3年生では、どんな学習をしてきたのかが分かる
ことで、より「ねらい」をしぼった指導の工夫をすることができる
でしょうね。



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講座58
リコーダー指導@まとまりある音で!

6年生「つばさをください」のリコーダー指導を飛び込み授業で
行いました。
教材は「つばさをください」(山上路夫/作詞・村井邦彦/作曲)。
合唱では、【♭♭】なのですが、リコーダー合奏では、この授業でも
そうですが、「ハ長調」に移調された楽譜を使用することが多い
ことでしょう。
飛び込み授業の内容をポイントをしぼってお話しします。

tsubasa

■指導のポイント
@「まとまりのある音にすること」
学級全員が同じ旋律を演奏する場合、まず気になるのが、一人
ひとりの音がまとまっているかどうか。
全員の出す音が「一本の音の束」にならないと、旋律が明確には
なりません。
かといって、「みんなの音が、一人で吹いているように聞こえないと
いけませんよ!」とおっしゃる指導者を見かけるのですが、「それ
だったら一人で吹けばいいじゃないですか」と子どもから反論が出
るでしょう。
一人で吹く音ではなく、それぞれの子どもの個性を失うことなく、
音を束にまとめることが大切なのです。
口ではうまく言えませんが、とりあえず「一人で吹く音」とは全く
別物であることを心に留めておいてください。
もうひとつ…
fusen図のようにリコーダーの吹き口に
膨らませた風船をかぶせると、音が
出ますね。
子どもの中にも、指導をしないと、
無造作に風船のように息を吹き込むこと
があるものです。
そうなると、音が明瞭にならない上、
意思をもった音色にはなりません。」







そこで…
windway「息をリコーダーの吹き口の真ん中
(オレンジ)めがけて吹き込むようにして
みよう」とアドバイスすることで、
風船とは違ったしまりのある音になるでしょう。

音は目に見えませんが、エッジの部分
から、まっすぐ前にスピードをもって出て
いるというイメージをもたせるといいかも
しれません。


A「タンギング」を合わせよう
日頃は、[tu](トゥ)を使っている方が多いようですが、タンギング
には、他にも[du][lu][ru]などがあります。

例えば、♪わたしの〜[3連符]の箇所を、よく耳を澄ませて聴くと、
[tu]や[ru](なかには[fu]も)が混じっていました。
そこで、みんなのタンギングを合わせよう…と、全員が[tu]では
連符のまとまりを欠くので、みんなで聴き合い[ru]に決定。
細かい音符のフレーズを滑らかにつなげる場合には、有効だと
確認しました。

演奏する子ども達自身が、身をもって選択し決定する、
この過程を大切にしたリコーダー指導が望まれます。


LIVE

講座59
リコーダー指導A派生音、要注意!

6年生「つばさをください」のリコーダー指導についてです。
まとまりのある音づくり同様、大切なことは音程、音色です。

B「派生音、要注意」
「派生音」というのは、半音階すなわち「♯」や「♭」の付いた
音で、鍵盤での黒鍵にあたる音です。
この、派生音…リコーダーの指導ではなかなか厄介なのです。
その一つが「運指」。
上から順にふさいで…とはいかないからです。
運指のややこしさもあるのですが、例えば「シ♭」や「ファ♯」の
運指をしてみてください。
他の運指と大きく違うのは、ふさいだ孔(あな)どうしの間に、
ふさがない孔がありますね。
「シ♭」であれば、左手人差し指と薬指をふさぎますが、中指
が受け持つ孔はふさぎませんね。(派生音ではなくても、
バロック/イギリス式の運指では間に空いた孔が生じる音が
あります)

こういう、指が交差するふさぎ方を「クロスフィンガリング
cross-fingering」といいます。
指遣いもやっかいなのですが、クロスフィンガリングで出す
音は、他の音に比べて音程が不安定な上に、微妙な息の
強さ加減が求められるのです。
「シ」と「シ♭」、「ファ」と「ファ♯」の音質を聴き比べてみると
歴然でしょう。

ここで、「つばさをください」に話を戻しましょう。
♪わたしの〜[3連符]の「わた」が「ファ♯」、すなわち
派生音です。
まずは、運指を確認します。
この場合、その前後の音、「ソ」?「ファ♯」?「ソ」という
一連の動きで確認することです。
この「ファ♯」は、その前後の「ソ」と同じ息の強さで吹くと
かすれたような音色になるので、「ファ♯」の音色を聴きながら
息の強さを微妙に変えなければなりません。
「ソ」と「ソ」の間にそっと「ファ♯」をはさみこむように…と
言えばわかっていただけるでしょうか。

C「音に合った息の強さで」
もう一つ厄介なことは、音程です。
tyouyaku5小節目の「ファ♯」から高い「レ」
への跳躍です。
先ほどの3連符は音が短いので、
あまり気を遣わなくても済みそう
ですがここでは、十分一拍分
のばさなければなりません。
また跳躍先の「レ」も息遣いで
音程が変化しやすいために、
「ファ♯」?「レ」は運指の動きと共に
音程にも気を付けることが要求され
るのです。
このような、要注意な箇所があるからこそ、
ステキな演奏が完成した時には喜びもさらに大きく
なるのです。


LIVE

講座60
「日本のうたを楽しもう」

2年生で「わらべうた」を教材に歌唱の授業がありました。
題材は「日本のうたを楽しもう」、扱う教材は「わらべうた」
以外にも「まりととのさま」などいくつかありました。
ところで、教科書に出てくる「日本うた」の共通点について
考えてみましょう。
marituki
(個人を特定できないよう画像処理をしています)
(まりをつくしぐさで「まりつきうた」を歌い楽しむ子ども
達)

共通点のキーワードは「日本音階」でしょう。
このことは「日本の旋律」の特徴と置き換えることが
できます。
「音階」というのは、それぞれの民族固有の旋律に
決まって現れる音を高さの順に並べたものであると
いわれています。
この視点から眺めてみると、民謡やわらべうた、
子もりうた、雅楽をはじめ、沖縄の音楽、アジア、
世界の音楽の違いや共通点が見えてきます。
子どもたちには、日本のうたを歌ったり遊んだり
しながら、感覚的に日本の旋律の特徴を感じさせ、
その良さに浸らせたいですね。
ところで、音階ですが…
自然発生に近い形の「物売りの声」を組み合わ
せると「民謡音階」が生まれます。
「民謡」や「わらべうた」のほとんどがこの音階です。
他にも、「雅楽」や「子もりうた」の音階「律音階」
があります。
この「律音階」が17世紀末、江戸元禄期に都会の
雰囲気の中で変化したものが「都節音階」です。
4年生の共通教材「さくら」はこの音階の特徴を
もっています。
その他にも、ドから数えて4番目の「ファ」、7番目
の「シ」が抜けた音階「ヨナ抜き音階」、また
同様に「レ」と「ラ」が使われないのが「琉球音階」
です。
最近でこそ、「琉球音階」に違和感を感じる人は
いなくなったでしょうが、「民謡音階」の一つの音に
♯をつけると「琉球音階」になることを思えば、
案外身近な音階だともいえなくもないですね。
「音楽づくり」で指定されている音は、それぞれの
音階から抜き出されたものなのです。
子どもたちに、詳細を教える必要はもちろん必要
ありませんが、指導者は「音階」を頭の片隅に
置きながら指導に当たるようにしたいものです。
学年が上がるにしたがって、様々な音階に親しま
せるカリキュラムをおろそかにはできないですね。

 講座   61〜100

 講座  101〜150

    

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