■FFRの特徴(機能(生理学)的狭窄度指標の所以)
灌流領域とFFR
FFRは、圧較差の要因でも説明した通り、血流量に大きく影響を受けます。解剖学的狭窄度が同じ病変であっても血流量が多い血管と少ない血管では血流量の多い血管の方が圧較差が大きくなり、FFRが低下します。
灌流量が広さは、冠血流量を規定するため、灌流域の狭い血管や心筋梗塞によって心筋が壊死し生存心筋が減少している場合、灌流域が狭くなりその分冠血流は低下するため圧較差は生じにくくなるためFFR値は高値となります。
このようにFFRは、解剖学的狭窄度が同じ病変であっても灌流域(心筋の血液需要)の大きさに合わせて心筋虚血の重症度(FFR)に差が生まれるため生理学的狭窄度の指標として有用といえます。
側副血行路とFFR
解剖学的狭窄度が同じ病変であっても側副血行路が弱い場合と側副血行路が発達している場合でFFRの値は異なってくる。側副血行路が弱い場合、その血流は乏しくそれに影響される狭窄遠位部の冠内圧の上昇は小さく、FFRは低値となる。一方、側副血行路が発達している場合、その血流は良好であり側副血行路の影響を大きく受け狭窄遠位部の冠内圧の上昇することとなり、FFRは高値となる。
逆に、側副血行路を供給している側の血管が狭窄した場合、側副血行路を供給している分灌流領域は広く血流量も増加しているため、解剖学的狭窄度が同じであっても副側血行路を供給していない血管に比べFFRは低下する。
このようにFFRは、側副血行路の血流を加味した心筋虚血の重症度を示し生理学的狭窄度の指標といえる。
■最大充血薬
最大充血惹起薬の投与経路と投与量
薬剤 | 投与経路 | LCA投与量 | RCA投与量 |
塩酸パパべリン | 冠動脈内投与 | 12mg | 8mg |
ニコランジル | 冠動脈内投与 | 2mg | 2mg |
ATP/アデノシン | 冠動脈内投与 | 30〜50μg | 20〜30μg |
経静脈投与 | 140〜180μg/kg/分 |
塩酸パパべリン
用量 | 左冠動脈:12mg 右冠動脈:8mg 15秒かけて投与 |
最大充血 | 投与後15秒で最大充血、その後30〜60秒持続 |
特徴 | 冠注投与で最大充血がすぐに得られ、持続時間も比較的長いためプルバック記録も可能 |
副作用 | QT延長、まれにTorsade de Pointesをきたす(0.3〜0.5%) |
注意点 | サイドホールのカテーテルは使用しない 冠注後のガイディングカテーテルのウェッジ又はセミウェッジ 心室性期外収縮(PVC)からTorsade de Pointes誘発される為投与中のPVCは気を付ける |
ニコランジル
用量 | 左・右冠動脈 2mgを10秒程度かけて投与 |
最大充血 | 投与後約20秒までに最大充血、その後少なくとも20秒間持続 |
特徴 | 冠注投与で最大充血がすぐに得られ、房室ブロックや重症心室性不整脈を起こさない |
副作用 | 急速投与による血圧低下 |
注意点 | サイドホールのカテーテルは使用しない 冠注後のガイディングカテーテルのウェッジ又はセミウェッジ |
ATP/アデノシン(冠動脈投与)
用量 | 左冠動脈:30〜50μg 右冠動脈:20〜30μg 最大充血と考えられるまで投与量を増量 |
最大充血 | 投与後約5〜10秒後の短時間で最大充血、その後10秒程度で効果消失 |
副作用 | まれに房室ブロックが生じる(特にRCA冠注の場合) |
注意点 | サイドホールのカテーテルは使用しない 冠注後のガイディングカテーテルのウェッジ又はセミウェッジ 効果持続時間が短いため、プルバック記録は不可能 最大充血が十分得られずFFRの過小評価につながることがある カフェインの摂取により効果が薄れる可能性があるため、8時間前まで制限する |
ATP/アデノシン(経静脈投与)
投与部位 | 肘静脈、大腿静脈、中心静脈 |
用量 | 140μg/kg/分〜180μg/kg/分 FFRが0.75〜0.80の場合、180μg/kg/分まで増量 |
最大充血 | 投与後、1〜2分で最大充血状態となる(投与中止後も1〜2分程度効果が持続) |
特徴 | プルバックの記録に最も適している |
副作用 | 10〜15%の血圧低下 ほてり、胸痛を自覚することがある 気管支喘息の患者や重度の閉塞性肺疾患(気管支痙攣)の患者は症状が増悪する恐れがある まれに房室ブロックが生じる |
注意点 | 末梢静脈より投与する場合、効果が安定しない(圧較差がゆらぐ)場合がある 腕の末梢静脈より投与する場合、腕/肘をねじらない 体血圧の低下によるFFRの偽高値注意(前処置として十分に補液を行う) カフェインの摂取により効果が薄れる可能性があるため、8時間前まで制限する |