人工呼吸器と高気圧酸素療法と酸素濃縮器

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  未熟な左手が作った第2種MEの治療機器に関するノートです。
誤りがございましたら、ご連絡下さい。



人工呼吸器

構成

人工呼吸器の構成
  気道に陽圧をかける人工呼吸器は、ガス駆動源(電源又は高圧ガス)から送気装置を通して送り出された吸気ガスが吸気回路を通って患者の肺へ吸気され、呼気時には呼気回路から呼気弁を通して大気中に排出されます。

≪駆動源≫

  電源や高圧ガスなどによるガスの流れをつくるエネルギー源をいいます。

   

≪酸素濃度調節器(酸素ブレンダ)≫

  吸気中の酸素濃度を設定します。酸素濃度21〜100%の間で設定します。

   

≪送気装置≫

  ガス流量、圧、換気回数、送気時間など細かい調節を行う人工呼吸器のいわば心臓部です。

   

≪患者回路≫

  患者に向かう吸気回路、呼気と吸気を分岐させるYピース(患者接続口)、大気に放出される呼気回路、吸気弁、呼気弁などをいいます。
吸気時には、吸気弁を開け呼気弁を閉じ人工呼吸器よりガスが送られ、呼気時には吸気弁は閉じ呼気弁を開いて大気中に呼気ガスを放出することで呼気ガスを再び吸わない非再呼吸方式を可能とします。

 

≪加温加湿器≫

  ガス源から供給される乾いたガスにに湿度をもたせることを目的とします。そのため、配置は吸気回路に存在します。


≪ウォータトラップ≫

  呼吸回路内に発生した水分(結露)を溜めることを目的とします。加温加湿器で温められた空気(水蒸気)が室温で冷やされ結露が発生します。
通常、呼吸回路内で一番低い位置に配置します。


≪ネブライザ回路≫

  水分又は薬液の細かい粒子の浮遊物を作り、これを吸気ガスと一緒に吸入させることにより気道粘膜を正常に保ちます。超音波式とジェット式があります。


換気方式

 気道内にガスを圧入し肺を内部から押広げ吸気ガスを送気する機械的陽圧が主流です。
以前は、鉄の肺と呼ばれる体の外から陰圧をかけて肺胸郭を広げ、肺内にガスを吸い込ませる方式がありましたが、現在はほとんど使われていません。
換気方式

≪吸気相≫

  人工呼吸器から肺へガスを送り出す時期をいいます。どの基準までガスを送り込むかによってに2つに分類されます。

@圧規定
  決められた気道内圧までガスを送り出します。
A量規定
  決められた換気量までガスを送り出します。

≪吸気から呼気への転換相≫

  ガスの送り込みをやめる又は維持した後、吸気から呼気に切り換える方法は3つに分類されます。

@圧サイクル方式(従圧式)
  気道内圧があらかじめ設定された圧に達すると、吸気から呼気へと切り換わります。
気道内圧が一定に保たれますが、1回換気量が気道抵抗によって変化します。
Ex) 従来の圧規定換気
A容量サイクル方式(従量式)
  あらかじめ設定された換気量のガスが肺に送り込まれると、吸気から呼気へと切り換わります。
1回換気量は一定に保てますが、気道抵抗が高くなる場合があります。
Ex) 量規定換気(VCV)
B時間サイクル方式
  あらかじめ設定された吸気時間を過ぎると、吸気から呼気へと切り換わります。
Ex) 圧規定換気(PCV)

≪呼気相≫

  患者自らの肺と胸郭の弾性収縮力によって、肺をしぼませガスを呼出させる時期をいいます。
圧をかけず大気圧に開放する方法(Ex 間欠的陽圧換気(IPPPV))と、呼気相の終りに一定の陽圧をかける呼気終末陽圧(PEEP)という方法(Ex 持続的陽圧換気(CPPPV))があります。
PEEPは、一定の圧をかけ続けることで気道や肺胞の閉塞を防ぎ、機能的残気量を増加させ、低酸素血症を防止する目的があります。


≪呼気から吸気への転換相≫

  呼気から吸気への切換える方法によって3つに分類されます。

@時間
  あらかじめ設定された呼気時間を過ぎると、ガスの送気を開始します。
Ex) 間欠的強制換気(IMV)
Aトリガー方式
  吸気相の開始が、患者によって決められます。
患者の努力呼吸によって生じた気道内圧(又は流量)の変化によってガスの送気が開始されます。
B@とAをあわせた方式
  あらかじめ設定された呼気時間より前に努力呼吸を感知するとトリガー方式、設定された呼気時間を過ぎるとガスの送気を開始します。
Ex) 同期式間欠的強制換気(SIMV)

間欠的陽圧換気

≪調節換気と補助換気≫

@調節換気(Controlled Ventilation)
  調節呼吸とは、調節換気とは、自発呼吸のない患者に用いる換気方式です。
呼吸回数、1回換気量、吸気・呼気のタイミング、吸入気酸素濃度など全て人工呼吸器に依存します。
A補助換気(Assisted Ventilation)
  補助換気とは、自発呼吸と調節呼吸の中間に位置し、患者の努力呼吸に合わせて気道に陽圧を作り出す方式をいいます。
患者の呼吸努力がなければ、人工呼吸器は作動しません。
B@とAをあわせた方式(Assist/Control)
  補助換気だけでは、患者の自発呼吸がなければ、換気できないため、補助換気と調節換気を組み合わせた方法を一般的に用います。
間欠的陽圧換気モード
調節換気IPPV(間欠的陽圧換気)、CPPV(持続的陽圧換気)、PCV(圧規定換気)
VCV(量規定換気)、IRV(吸呼気逆転換気)、HFV(高頻度呼気)
調節換気と補助換気IMV(間欠的強制換気)、SIMV(同期式間欠的強制換気)
MMV(強制分時換気)
補助換気PSV(圧支持換気)、CPAP(持続的気道陽圧)、APRV、BIPAP

モード

≪間欠的陽圧換気 (Intermittent Positive Pressure Ventilation : IPPV)≫

  呼気時には、陽圧をかけず大気に開放し、肺と胸郭の弾性収縮力によって肺内のガスを排出させる方式です。


≪持続的陽圧換気 (Continuous Positive Pressure Ventilation : CPPV)≫

  呼気時にも陽圧(PEEP)をかけ、肺が完全にしぼむ(虚脱)のを防ぎ、機能的残気量を増やし肺の酸素化に役立てることを目的とする方式です。


≪量規定換気 (Volumu Control Ventilation : VCV)≫

  量サイクル方式の換気方式であらかじめ設定した換気量に達すると送気を終了する換気方式です。
1回換気量は一定に保てますが、気道抵抗が高くなる場合があります。


≪従来の圧規定換気≫

  圧サイクル方式の換気方式であらかじめ設定した気道内圧に達すると送気を終了する換気方式です。
気道内圧が一定に保たれますが、1回換気量が気道抵抗によって変化します。


≪圧規定換気 (Pressure Control Ventilation : PCV)≫

  吸気から呼気への切換えは吸気時間によって設定し、ガスを送り出す限度を気道内圧によって規定する換気方式です。
この換気方式は、気道内圧の高い患者に対しても一定量の換気量を保つことができます。


≪吸呼気比逆転換気 (Inversed Ratio Ventilation : IRV)≫

  通常の人工呼吸では、吸気時間が呼気時間よりも長く設定されますが、IRVでは、吸気時間よりも呼気時間を長くして換気します。
気道内圧が上がりやすい硬い肺の患者に対して有用です。


≪高頻度換気 (High Frequency Ventilation : HFV)≫

  15Hz程度の高頻度の振動(換気)を行うことで気道内圧を上昇させることなく換気を行い、圧損傷に肺損傷を軽減させます。
換気不全(気管断裂など)等に用います。


≪間欠的強制換気 (Intermaittent Mandatory Ventilation : IMV)≫

  人工呼吸器の回路を通して自発呼吸をさせながら、一定時間ごとに患者の自発呼吸とは無関係に強制的に陽圧換気行う方法です。
人工呼吸器離脱(ウィーニング)時に用いられます。患者の自発呼吸と人工呼吸の強制換気がぶつかる(ファイティング)が起こる可能性があります。


≪同期式間欠的強制換気 (Synchronized Intermittent Mandatory Ventilation : SIMV)≫

  IMVは患者の自発呼吸に関係なく一定時間ごとに強制換気が行われるためファイティングを起こる可能性がありますが、SIMVは患者の自発呼吸の吸気努力に同期させて、人工呼吸器による強制換気が行われます。
人工呼吸器離脱(ウィーニング)時に用いられます。
IMVは、吸気の開始が時間で規定、SIMVは、吸気の開始がトリガー方式と時間を合わせた方式で行っているのが大きな違いです。


≪圧支持換気 (Pressure Support Ventilation : PSV)≫

  患者の自発呼吸を補助するモードで患者の自発呼吸に合わせて、吸気時に呼吸回路に陽圧をかけます。
患者の換気仕事量を軽減やウィーニングを目的として使用されます。


≪持続的気道陽圧 (Continuous Positive Airway Pressure : CPAP)≫

  自発呼吸患者の自発呼吸全般にわたって気道内に陽圧(PEEP)をかけます。
肺が完全にしぼむ(虚脱)のを防ぎ、機能的残気量を増やし肺の酸素化を向上させるのに有用です。


≪吸気終末休止 (End inspiratory pause : EIP)≫

  吸気相の終りにすぐに呼気相に移らずに、吸気気道内圧をかけたまま少し時間をおく方法をいいます。
これにより、肺内でのガス分布が均等にいきわたり、死腔の減少と炭酸ガスの排出の効率化がはかれます。


≪回路内ガス流制御方式≫

  呼気相の患者回路のガスの流れによって2つに分類されます。

@デマンドフロー方式
  呼気時にはバルブが閉まりガスが流れず、患者の吸気を感知するとバルブが開きガスが供給されます。
無駄な酸素供給がなく経済的ですが、バルブを開くための呼吸抵抗や吸気のタイムラグ、
小児などの過呼吸には追従できな欠点が存在します。
A定常流方式
  呼気時にも絶えず定常流が流れ、好きな時に好きなだけガスを吸うことができます。
小児などの過呼吸に十分対応できますが、吸わずに通過した酸素は排気されて非経済、
少流量では換気不足になる恐れがあるなどの欠点が存在します。

保守と点検

≪警報設定≫

  気道内圧、換気量(一回換気量、分時換気量、呼吸回数、換気圧)、吸気酸素濃度、送気ガスの温度・湿度、吸気・呼気時間比などに警報機能が備えられています。


≪高圧アラーム≫

  気道内分泌物の貯留、呼気側回路閉塞、呼気弁の故障、換気量過剰、PEEPのかけ過ぎ、ファイティング(患者呼出と人工呼吸器の送気がぶつかること)など


≪低圧アラーム≫

  呼吸回路の外れ、呼吸回路、加温加湿器のリーク、気管内チューブのカフリーク、呼気弁の閉鎖不全、無呼吸の発生など



高圧酸素療法装置

  ヘンリーの法則に基づき、高い気圧環境化で高濃度の酸素吸入によって血液中溶解型酸素の増量を目的とします。

種類

≪第1種装置≫

  患者1名を収容する小型装置をいいます。


≪第2種装置≫

  複数の患者や医療職員(多人数)を同時に収容できる大型装置をいいます。


適応

≪第1群≫

  動脈血からの拡散促進により酸素を供給を奏功機序とする適用群
例) 一酸化中毒、出血性ショック、溺水、窒息、脳血栓、脳梗塞


≪第2群≫

  拡散促進による酸素供給と上昇した環境気圧による物理的効果を奏功機序とする適用群
例) 脳空気梗塞、肺空気梗塞、イレウス、減圧症


≪第3群≫

  過剰酸素により毒性をなくす適用群
例) ガス壊疽や嫌気性菌感染症、悪性腫瘍


使用上の注意

長時間にわたっての酸素投与は肺酸素中毒を起こす可能性があるため、
純酸素投与は必要最小限に抑える必要があります。
急速な減圧は血中の窒素の気泡化による減圧症を生じさせ、気圧変化による鼓膜、内耳、副鼻腔、肺などに
気圧外傷を与えるため緩徐な減圧が必要です。
意識のある患者さんには耳抜きを教え、意識の無い患者さんには予め鼓膜穿刺を行う必要があります。
患者の着衣は、合成繊維を避けて木綿製品としできれば防炎・不燃性加工を施したものに変更する。
酸素は可燃物のため可燃物質(マッチ、ライター、カイロなど)は遠ざけ、火災に厳重な注意が必要です。
輸液療法を行う場合は、輸液瓶でなく輸液バックを用います(減圧時空気が体内に流入するため)


酸素濃縮器

  空気中の酸素を濃縮して、空気よりも高濃度の酸素ガスを作り出す機器で、膜分化型と吸着分離型があります。

種類

≪膜分化型≫

  窒素よりも酸素に対する透過性の良い高分子膜を用い、膜の片側を減圧することによって濃縮酸素ガスを減圧側に作り出します。
40%以上の酸素濃度を得ることはできません。

≪吸着分離型≫

  窒素を選択的に吸着する吸着剤(アルミノケイ酸塩など)を内蔵した、吸着筒内に圧縮空気を送ることにより濃縮酸素ガスを作り出します。
90%以上の酸素濃度を得ることが可能ですが、吸着剤は湿気を除去するため吸入時に加湿器が必要です。







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