STRIKE!! 第2話「初 陣!!」(改訂版)



「あ、あああ! も、もっと、モット突き上げてぇ!!」

粘り気のある水音をひびかせ、獣の生殖行動のように激しく腰を打ち付けあう男女。柔らかい女の部分を、彼女が望むように荒々しく、固い己の象徴で攻める。

「あ、あひぃぃぃぃぃぃ――――――!!!」

相当奥深くまで貫かれたのだろう。背中をそらせ、頤(おとがい)をそらせ、女はもだえる。


 ぐちゃ、ぐちゃ、ぐちゃ…


と、粘膜同士が分泌する互いの淫液が弾けあい、これまた淫靡な旋律を奏でていた。

「あう! あひっ、あひっ! ふ、ううぅぅぅ!!!」

男の股間にまたがる女は、突き上げられながらも自ら腰を振りたくり、より快楽の高みへと己を導く。その姿、普段の清楚な雰囲気を微塵も感じさせない。ボブカットの髪を振り乱し、汗を飛び散らせ、はしたなく乱れるその姿はまさに……雌。

「ひうぅ! う、うく! あ、あああああああ!!!!」

男がその柔腰をひっつかみ、さらに激しい腰使いで女を悦ばせる。おそらく、近づいた自分の限界を、押しとどめることなく開放しようというのだろう。そして、その波に女を浚い、ともに頂を極めようと獣になりきっているのだ。

「い、イク! イっちゃうの!! もう、イク!!!」

男が望んでいた言葉を女が漏らしたとき、彼は耐え忍んでいた欲望を全てその胎内へと注ぎ込んだ。

「あ、ああああああ――――――――――――――!!!!!!」

その熱量の高さに、女もまた、生殖を忘れた行為の最終到達点へ、三段抜きでたどり着いた。





「木戸が?」

激しい行為の後、濃密な残り香の中で、二人はまどろんでいた。そんな折、玲子が発した言葉に、直樹は夢想の世界から現実へと引き戻された。

玲子は、先日、新入部員を連れてきた木戸の様子を、この年下の恋人に話して聞かせる。熱い情交を終えたふたりは今、同じチームの監督とキャプテンという関係に戻っていた。

「可愛い、女の子だったけど」

「なぬ?」

あの朴念仁が、ナンパを? 直樹は、朴訥とした木戸が軽口をたたいて女子を口説こうとしている姿を空想しようとする。

…しかし、無理だった。どう考えても、ナンパするより先にその女の子とキャッチボールを始めてしまっている、自チームのキャッチャーを思い浮かべてしまう。

 玲子が困惑しきりの直樹を助けるために、話を続けた。

「知ってる? 『甲子園の風』」

「ああ、藤堂智子。俺も読んだことあるよ」

「あれのモデルさん」

「えぇ!?」

野球に関わっているものならば、3年前の甲子園で起こった出来事について、何かしら覚えがあるというものだ。そして、その出来事をモチーフに、若手小説家・藤堂智子が、『甲子園の風』という短編小説として、甲子園関連の雑誌に掲載したことで、ある種の伝説にまで昇華した趣もある。

「一回生の米倉ゼミに、近藤って子がいたけど、その子」

「近藤……近藤晶か!」

 名前を聞いて、直樹は間違いないと思った。なにしろその現場を、球場のバックネット裏の席で見ていたのだから。

さらに、そのときの大会の注目を一身に浴びていたその左腕投手に、直樹は県予選で敗れていたのだから、縁の深さは果てしない。もっとも直樹はそのとき、怪我のためにベンチに入れなかったから、直接対戦したことは無かった。

「野球からは、もう離れてたって……」

同じ県内にいながら、以降はその名を聞くこともなかった。だから、そう思っていた。

「木戸君が口説き落としたみたい」

「あの、朴念仁が?」

「野球で語らせたら、木戸君は立派なプレイボーイだもの」

「な、なるほど」

確かにそうかもしれない。

「でも、これで来週の試合はなんとかなりそうね」

何の相談もなく、突然消えた主力の松平の穴が、これでポジション的には埋まったことになる。野球において投手の存在は、かなり大きい。

「今日の練習から、参加するって。あともうひとり、一回生が入ってくるわ」

「そいつも、何かいわくつき?」

「ううん。モデルさんの追っかけみたいなものかしら」

くすくすと無邪気に笑う仕草は、年上とはいえ可愛い仕草だと、直樹は思った。





「近藤晶です、よろしくお願いします!」

真新しい城二大のユニフォームを着た、元気いっぱいの晶。

「あー、長見栄輔です……」

ユニフォームが合わず、草野球のときの格好をしている長見。

部員8人という、試合さえできない壊滅的な状況だったチームに、これでベンチ入り選手までの登録が可能になった。そのためか、チームメイトたちは非常に好意的にふたりを迎え入れた。

もっとも、その新入部員が女の子で、しかも、野球通には名の知れた『甲子園の風』のモデルだということもあるだろう。

「とりあえず、入れ替え戦には臨むことができる。試合まで、時間はないが、みんな、がんばろう!」

キャプテンである直樹の掛け声に、おおー、と声を返す部員たち。危機的な状況にもかかわらず、野球部に残ったある意味精鋭たちだ。松平を失って以降、部を見限って抜けていったレギュラークラスの選手たちより当然上手くはないが、野球に対する真摯な姿勢が、直樹は頼もしいと思う。

「ほんとは、紅白戦でもして……」

投手である晶の力量を見定めたいし、試合勘も養いたいところだが、部員10人では、いかんともしがたい。

「キャプテン」

そんな直樹に、いまやチームの主力である亮が提案する。

「とりあえず今は、来年を見据えて個々のレベルを高めるのが一番だと思います」

「悠長だな」

「でも、近藤の球を見れば、安心できるし、期待もできますよ」

「ふむ……じゃ、試してみるか。近藤、ひと勝負と行こう!」

「はい!」

 直樹の提案に、やはり元気な声で晶は応えた。彼女は、賭け野球とは全く違う形でできる久しぶりの野球に、心底ワクワクしていたのだ。

 フリーバッティングの形を取って、練習は開始された。

マウンドには当然、晶がいて、それを受けるのは亮。初めて組んだバッテリーの相手は、チームのキャプテン・高杉直樹。バットコントロールの上手い、巧打者である。

その直樹が、左打席に入った。

「実戦形式だ。遠慮はいらない」

そして、バットを構える。そのコンパクトな構えは、何処からでも早いヘッドスイングで球を捉えることができる。

「それじゃ、いきますよ!」

晶が大きく振りかぶった。そして、しなやかに右足が高々と上がる。細身の身体からは想像もつかないダイナミックな投球フォームから、直球が繰り出された。

「!」


 スパンッ!


一本の光線を描いたような軌跡を残し、ボールは小気味のいい音を残して亮のミットに収まった。

心地のよい痺れが、亮の手に走る。

(これが、近藤の球か……)

かつて憧れた投手の球を、こうやって直に受けられたことが亮には嬉しく思えた。打者として対戦し、それを打ち放った時とは違う昂揚感が胸に溢れてくる。

「速いな」

初めて打席でその球を見た直樹のつぶやきは、かつて亮も口にした言葉だった。

「今ので、レベル1ぐらいだそうです」

「? なんだそれは?」

「速さのバロメーターですよ」

ボールを晶に返しながら、亮は言った。

合点の行かない表情をしながら、直樹は2球目を待つ。最初は目慣らしのため、もとより振る気はなかったが、今度はコースしだいでは打つ気でいた。

そして、2球目が投じられた。コースは、真ん中。球種はやはりストレート。

(甘いな!)

直樹は、バットを振る。最初の球筋から計算するに、タイミングは合っている。コースを散らされなければ、バットコントロールに自信のある直樹の打てない球ではない。

そのはずだった。


 ブン……


一閃したバットは空を切り、思い描いた打撃音は、ミットを貫く音に変わっていた。

「…………」

手元で、球が伸びた。明らかな振り遅れである。

「これで1.5とかいう話です」

亮は、マスクを被り直す。

「次は、MAXでいきます」

そう言って、気合の入った構えをして見せた。つまり、そうしなければ取れない球だということだ。

(今以上の、ストレート………)

この時点で、直樹は負けていた。思わず、肩に力が入ってしまう。力みのなさが信条の、直樹の構えに乱れが出てしまっていた。

「木戸、ちゃんと捕りなよ!!」

笑顔でそう叫び、大きく振りかぶって投球を始める晶。今までよりも、大きくしなやかな投球フォームから、さらに鋭いストレートが繰り出された。

「!!」


 ズバンッッ!!


それは、息の呑む間もなく、亮のミットへ吸い込まれた。比較にならない爽快な音を残して。

「は、はえ〜……」

内野に陣取る野手たちの呟きだ。かつてのエース・松平のそれとは明らかに質の違う球に、すっかり魅了されていた。

「あ〜あ」

違う意味での嘆息は、長見だ。とりあえず空きポジションであるセンターの浅い守備位置から、どうにも面白くなさそうな視線をマウンドに寄った亮と楽しげに話す晶に向けている。

(ちっ)

別段、晶に対して特別な感情を抱いているわけではなかったが、賭け試合に興じていた頃は盟友に似た思いがあったわけで、それが嫉妬の情を起こしている。

(それにしても……)

晶の全力ストレートである通称“レベル2”の直球を、こともなげに捕球してしまった亮の実力は認めないわけにはいかない。

(モノが違うってか……)

今度は諦めのため息をついた。自分で亮に勝てるとしたら、逃げ足の速さくらいかもしれないな、と微かな矜持をそこに見るしかない長見であった。




その日の練習は、とても充実していた。

最下位を独走し、すっかり意気を無くしてしまっていた前後期の雰囲気からは、想像もつかないほどに、みな声が出ていた。あまりに張り切りすぎて、打ち身・擦り傷を身体に作るチームメイトが続出し、若干の医療の心得もある顧問兼監督・佐倉玲子までが忙しく立ち回っていた。

「おつかれー」

「よろしくな、近藤」

「何とか、足ひっぱらんようにするから」

全員そろってのクールダウンを終了させ、めいめい散っていくチームメイトたちが、新しいエースにそれぞれ声をかけて家路についていた。みな、晶のストレートにそれぞれ対戦してみたのだが、バットにまともに当てられたのはひとりもいなかった。その時点で、晶は完全にチームの柱…エースピッチャーとして認知されたことになった。

「あ、いい……いいよぉ……」

「妙な声を出すんじゃないって……」

 晶のクールダウンの相手を務めているのは、当然ながら亮だ。これだけ集中的に練習したのは久しぶりというだけあって、晶の四肢はかなり張っていた。

「ね。遠慮しないで、もっと、内側のほうも…」

太ももの屈伸をしているときに、晶がそんなことをいうものだから、亮は動きが止まってしまった。

「冗談よ」

晶が、くすりと笑う。

「ホント、野球のときとは別人」

サインの打ち合わせ練習をしているときは、どんなに顔が寄っても表情を変えない亮なのに、マッサージをしている今はその触り方がなんとなくぎこちない。そのギャップが、なんとも愛らしく思えてしまう。

「お邪魔して、悪いんだけど……」

遠慮がちに、そんな二人に話し掛けてきたのは玲子だ。その傍には、直樹もいた。

「木戸」

玲子の言葉を、直樹が継ぐ。

「今度の入れ替え戦のスタメンなんだが……」

「あ、いいっすよ。俺、時間ありますから」

さすがに大学ともなると、メンバーのうちではバイトなどで時間を取られる者もいる。亮は長期休暇のときに短期でバイトを入れる主義なので、大学があるうちは平日の自由が多くあった。そして、その分を趣味の野球に廻しているわけだ。従って、一回生でありながら、今ではほとんど副キャプテンのような存在になっている。

もっとも、レギュラークラスのメンバーがいなくなってしまったいま、そのことについて玲子や直樹が相談できるのは、野球についてかなり詳しい亮しかいないのだから、それも当然のことである。

「あたしも、いいですか?」

晶は、まだ亮とは離れたくなかったので、そう頼んでいた。

「ああ、いいとも」

そして、その申し出を断る理由などはない。

「俺も、いいですかね」

すっかり影の薄くなっていた長見も、四人に頼む。もちろん、それも受け入れられた。

場所は玲子の研究室に移された。ここにある玲子の端末には、今の部員の各種情報が収められている。それは、レギュラークラスが抜けて以来、現状の戦力を把握しようとした亮が作成したものだ。

(ほんと、野球が好きなのね……)

(ほんと、野球オタクだよな……)

綿密なデータを見たときに抱いた、晶と長見の亮に対する感想である。

「とりあえず、完全に埋まっているポジションは……」

投手・近藤。捕手・木戸。三塁手・高杉。………3つしかない。

「栄輔、センターいけるでしょ。あんた、足速いし」

「そうなのか?」

亮は、いつも彼が捕手をしていたので、てっきりそれがポジションと思っていた。

「俺の本職は、代走だよ」

「足が速いなら、外野は充分任せられるよ」

というわけで、暫定的に中堅手の空欄も埋められた。

(まあ、いいか…)

自分の意志とは関係のないところでいろいろ決められるのはなんとなく面白くないが、自分の力が必要とされるのも、まあ悪くないと長見は思う。

「後は、経験していたポジションとかを考えて……」

「新村さんは、セカンドのほうが合うと思うんですよ。ポジショニングは、すごく光るものがありますから」

「原田の打撃は生かしたいな。背も高いからファーストで…」

「斉木は、完全にショートですよ。器用ですからね」

「それと……」

「それで……」

それぞれの空欄を埋めていく直樹と亮。野球のことになると饒舌になる亮のそんな横顔を、晶は眩しく見つめていた。

「あ〜あ、完全に二人の世界になっちゃった」

苦笑しながら、端末と恋人を取られた玲子がため息をつく。

「ね、ふたりとも。コーヒーでもどうかしら?」

玲子は、晶と長見を端末とは別にあるデスクの椅子に誘った。

「インスタントだけど」

 カンベンね、と断りを入れてから3つのカップを用意する。晶も長見も、ひとつ礼を言ってからそのカップを受け取り口に運んだ。

「とりあえず、ありがとうね」

 しばらく沈黙の時を過ごしていたが、玲子がそれを破る。

「正直、もう危ないと思ってたのよ……」

玲子はそう言って、気まずそうな顔をした。

「顧問で監督といっても、私、あの二人に比べたら野球のことなんて全然だしね」

というより、あのふたりのほうが異常といえるかも。これは、長見の声なき呟きだ。

「そりゃあ、監督をやろうってんだから懸命に勉強はしたけれど……ね」

 コーヒーを優雅に啜りながら玲子は呟く。彼女の書棚には、ある一角にビッシリと野球関係の書籍が並んでいる。その量に全て目を通したというのなら、彼女も相当に野球通であると言えるのだが。

「ところで……ね、近藤さん。木戸くんに、どうやって口説かれたの」

 うぐ、と喉を鳴らした晶。いきなり野球の話から逸れたではないか。

「女の身としては、すっごく気になるのよねぇ」

「あ、あのですね………」

この人、本当に博士号の取得者なのだろうか? なんというか、そこらにいるゴシップ好きな現役女子大生となんら変わらない気がする。

「今日のあなた、すごく嬉しそうだったわ。木戸くんに投げることが、嬉しくて楽しくてたまらない感じで……恋する乙女そのものだったわね」

「あ、あの……」

爛々と目を輝かせる玲子に、戸惑う晶。そして、面白くなさそうな長見。

(そんなに、わかりやすかったかなぁ)

確かに、亮の構えたミットにめがけてストレートをほうるのは、とても気持ちよかった。球に注いだ思いを、彼が受け止めてくれているように感じた。あの時…甲子園を目指して戦っていたときと同じような昂揚感に、包まれていたのは間違いないことだ。

同じ女である玲子は、そんな晶の乙女心を見抜いていたのだろう。

「で、二人は何処までいったの?」

「う……」

まだ、キスだけです。でも、次の試合に勝ったらもっと凄いことをします―――などと、言える筈もない。長見もいることだ。

「あ、あの監督………」

ナインの選出を懸命になって考えている二人を思えば、あまり野球に関係のないところで盛り上がると、悪い気がする。それを、玲子に告げると、

「ん〜、晶ちゃん可愛いわ……木戸くんも、幸せ者よね」

逆に、からかいの材料にされた。

(も、もう……)

見た目の清楚さとは思いもよらないノリの軽さに、わずかに辟易とする晶。

「まあ、冗談はこれぐらいで」

ところが急に、その軽いノリは影を潜め、玲子は真面目な顔つきになった。

「同じ女として、あなたを応援するわ。あの時みたいに、あなたの懸命さを邪魔するものは、何もないから」

「!」

「存分に野球を楽しんで。信頼する木戸くんと、目いっぱい、ね」

そして、ウィンクをひとつ。それが様になっていて、格好いい。

「あ、ありがとうございます」

「監督、俺もコーヒーもらっていいですか?」

女の話が終わったとき、男の話も終わっていたようで、直樹の声が玲子を呼んだ。

「はいはい」

すっかり覚えてしまった、想い人の味の好みにあわせたコーヒーを淹れる。

「あ……」

俺もいいですか? と言いかけた亮には、すぐさま晶の声が飛んだ。

「木戸も淹れてあげる。……お砂糖は何個? クリームはどうする?」

「お、おう……」

そのかいがいしさに戸惑いながら、亮は手にしていた新しいメンバー表に、今一度目を通した。

「はい、どうぞ」

「うん、ありがとう」

晶がいれてくれたコーヒーを受け取り、それを口に含む。インスタントだというのに、とても美味しい気がしたのは、彼も男であるということだ。

「どう、決まったの?」

「ああ、とりあえずバランスのとれたスタメンになってるよ」

 玲子と直樹の、少し大人の空気を纏った会話。

「見せてもらって、いい?」

「ん? あ、ああ……」

 亮と晶の、なんだか初々しくも微笑ましいやり取り。

(………)

そして不憫にもひとり、長見だけが蚊帳の外にいたのだった。





記念すべき、晶の初陣の日がやってきた。

隣接する市営の球場では、先に相手のチームがグラウンドに散って練習を始めていた。

2部リーグとはいえ、ぶっちぎりの強さで優勝したチームだ。1部リーグの上位チームに比べれば、確かに洗練された動きではないが、全体的にまとまりがある。そして何より、このゲームに勝てば晴れて1部の仲間入りとなるのだから、覇気もある。

だが、気合という意味では今の城二大の面々も負けてはいない。レギュラークラスのメンバーが抜けて初めての試合であり、敗れれば2部降格という危機的な状況にありながら、実は不安よりも先にこの試合に対する期待感が大きかった。
ひとつは、ようやく試合に出られるということ。野球好きとはいえ、実力が伴わなかった面々だけに、タナボタとはいえ試合に出られるようになったということは、それだけでまず嬉しいことなのだ。

 もうひとつは、近藤晶の存在。あの、痺れるようなストレートに、相手がどんな反応をするのか楽しみで仕方がない。

「それじゃ、お願いします」

直樹が相手のキャプテンにオーダー表を渡した。



1番:斉 木(遊撃手)
2番:長谷川(右翼手)
3番:木 戸(捕 手)
4番:高 杉(三塁手)
5番:原 田(一塁手)
6番:新 村(二塁手)
7番:長 見(中堅手)
8番:上 島(左翼手)
9番:近 藤(投 手)



「よっしゃ、いってこいや!」

後攻めということで、フィールドに散ったナインを、ベンチにいる赤木が大声で送り出した。野球の実力は、折り紙つきで下手ではあるが、ムードメーカーとしては申し分ない男である。


 河川敷以外の球場で誰にも荒らされていないマウンドに立つのは、あの甲子園以来のことだ。
晶はその頂点に立つと、空を見上げて大きく息を吸い込む。快晴とはいかず、むしろ灰色の空模様でも、なぜか心が弾んでいる。

「近藤」

そんな晶の様子に、亮は躊躇ったが話し掛けた。

「久しぶりだよ」

「ん?」

「こんなに、野球の試合でドキドキするのは」

そういって、左手を胸に当てる。

「市営の球場、入れ替え戦……でもね、甲子園のときと同じぐらいすっごい緊張してるよ」

触ってみる? と、冗談のつもりで言ったが、思いがけず亮の手が胸に添えられた。

「!!」

「おお、ホントにドキドキしてるな………おわ!」

グラブをはめた右手で、顔を押さえつけられた。その隙間から真っ赤になった晶の顔がにらんでいる。

「な、なんだよ。触ってみろっていったの、近藤じゃないか」

「………」

真に受けないでください。

(野球のことになると、人が変わるんだから………)

その積極性で、普段の自分もかまって欲しいものである。完全に恋人同士になったわけではないが、それに近いものはあるのだから、晶としても亮の無意識なつれなさにはそれなりの不満を感じてすまうのだ。

「近藤。遠慮なく放っていいからな」

 おそらくこの朴念仁は、晶のことを同僚あるいは盟友として見ているのだろう。とにかく野球から離れない彼のことを、それでも強く心惹かれている自分がいることを晶は自覚しているのだが、それは惚れた弱みというやつだ。

「アンタに遠慮なんかしないわ。最初から全力で行くわよ」

「よし」

ぽん、とキャッチャーミットで頭を撫でられた。また、胸が高鳴る。

「まずは、楽しもうぜ!」

そう言って、亮は持ち場に戻った。

(いまのあいつ、私がオンナのコだって意識あるのかな……)

いまだに動悸が収まらない胸を、何とか深呼吸で整え、晶は再び空を見た。

(さあ行くよ、晶)

 審判の声がかかり、亮が真ん中にミットを構えたとき、晶はプレートを力強く踏みしめて、大きく振りかぶった。



 回は進む。いつもにはないペースで進む。

はっきりいって、ベンチで座っている時間の方が長い。と、いうより守っている時間が極端に短い。

そう言ってる間にも、また、心地のよい音が響いた。

「おお!」

相手の外野を深々と破る二塁打。ベース上で、晶が高々と手を上げる。塁に出ていた新村がホームに還り、これで1点を加えて5−0。

(いい感じだ)

得点の重ね方が効果的だ。既に7回を回っているが、先制・中押しと、理想的な点の取り方ができている。実はヒットは5本ぐらいしかないのだが、相手のエラーや四球などでもらったチャンスを、余さず上手い具合に生かしている。

それもこれも、自分たちの試合に対するリズムが、いい回転をしているからだ。そして、その躍動するリズムは、晶から生み出されている。

「いくよ、木戸!」

跳ねるような投球フォームで、ストレートを矢継ぎ早に投げ込む晶。そうやって、三振の山を重ねていく。

実は、相手チームは、ヒットはおろかランナーさえ出していない。いわゆる、パーフェクトピッチングが続いていた。しかも、アウトの9割を三振で。

擦ったようなキャッチャーフライと、ピッチャーフライがあるだけで、内外野ともに守備機会ゼロという快投を、晶は演じているのだ。

「想像以上ね……」

玲子の呟きは、皆の畏怖でもある。

「うりゃあ!!」

そして、相手の攻撃はまたも三振で幕を閉じた。完全に、相手を呑んでいる。

 ベンチに戻りながら、亮は晶に、

「ナイスだ」

 と、労った。試合の初めは緊張しているとか言っていたので少し心配したが、どうやら杞憂も杞憂。晶は、心底この試合を楽しんでいる。

汗も光る、まばゆいばかりの笑顔が、何よりの証拠だ。

「……と」

晶の視線に気づいて、自分が長いこと彼女を見ていたことに気づいた。

(いかん、いかん)

まだ試合は終わっていないのだ。それまでは、気を抜いてはいけない。亮は、かつて甲子園で大逆転負けを食らった記憶を呼び覚まし、自分に気合を入れる。

(10−0だって、試合が終わるまでは勝ちじゃないんだから……)

だが、甲子園の記憶は、もうひとつの記憶をも彼に掘り起こさせた。

「!!」

 ふわりと舞う、長い黒髪。見れば、晶がキャップを取って、髪を空気に泳がせていたところだった。

「………」

今度はそれに見惚れてしまう。あの、甲子園の風を思い出す。

「こら、色男」

 後頭部をバットのグリップで小突かれた。見ると、赤木が亮のバットを差し出していた。

「次はお前やろ?」

「わ、す、すみません赤木さん」

慌ててプロテクターに手をかける。赤木は苦笑しながら、レガースの着脱を手伝った。

「まだ試合は、終わってないで」

「そうですね、はい」

亮は、さっき自分に言い聞かせたことを改めて指摘され、苦笑いを浮かべた。

「気合一発、ホームランでも打ってこいや!!」

そうして、赤木には背中をはたかれて打席に送られた。ウェイティングサークルで既に待っていた直樹にも、

「油断は禁物だからな」

と、釘をさされてしまった。

(こりゃ、塁に出ないと冷やかされるな……)

別の意味で、緊張した打席になってしまったが、バットを構え相手に対峙した瞬間、亮の体からは強烈な殺気が漂い始めた。



マウンドには、呆然とした投手。そして、塁上をゆっくり回る亮。

彼が捕らえた初球は、ピンポン玉のように球場の外へ弾かれていた。

「いや、確かに打てとは言うたが………」

まさか、本当にホームランとは。それも場外弾。赤木は、野球センスに溢れた後輩を目で追いかける。

「すごいわ、木戸! 場外なんて!!」

晶は、喜色満面で出迎えてくれた。この顔に、打たせてもらったホームランかも知れないと、殊勝なことを思ってみる。

「ヒットはあたしのほうが多いけど……インパクトあるよね、あんたの打球って」

晶はこの試合、2本の二塁打を放っている。亮は慎重に選んだ四球が2つあるばかりで、実はこの試合初めてのヒットだった。しかし、おそらく、この球場にいる誰しもが、晶のヒットよりも、亮の打球をまざまざと網膜に焼き付けただろう。

(でも、ホントにすごいね)

なにしろ、前の試合ではこの男に4打席連続で本塁打を打たれたのだから。その実力を、直に体験しているから、尚更にそう思うのだ。

(どうして、硬式じゃないんだろう)

硬式野球で活躍すれば、プロの話だって夢じゃないほどの実力を、彼は持っている。それなのに……。

「よし、ラスト2イニングだ! 行こうか、晶!」

(あ)

今、亮が名前で呼んだ。それは、試合に集中している彼の中で、無意識に出てきたことだったのかもしれない。

「うん!」

しかし、それがとても嬉しかった。




「ストライク! バッターアウト!! ゲームセット!!!」

わっ、と城二大のナインがマウンドの晶に駆け寄る。大記録が生まれたとはいえ、露骨に抱きついたりしないのは、相手が女の子だからだ。

ヒットを一本も打たれず、ひとりのランナーも許さない。

 そう。入れ替え戦とはいえ、記録に残る公式試合で、晶は完全試合を達成したのだ。奪三振23という、これまた強烈な数字も加えて。

「初陣としては、随分派手ね」

玲子は拍手を送りながら、スコアボードを見る。8−0の快勝。2週間前の野球部の状態から、こんなに痛快な結果を誰が予想できるだろう。

「絵になるバッテリーよねぇ」

 晶の頭を仕切りにポンポンやっている亮を見て、そう思う。ふたりの笑顔は無邪気さそのもので、ここにカメラを持っていないのが惜しいくらいだ。

とにかく、これで城二大は来季も一部リーグに残留できることになった。考えてみれば、ここからが本当のスタートライン。しかし、前途は揚々たるものに見えた。

「楽しかった!!」

挨拶を終え、ベンチに戻った晶の嬉々たる声に、メンバーたちも笑い合う。試合中、終始仏頂面だった長見も、少しだけ頬が緩んでいる。

「野球って、こんなに楽しかったんだね!」

賭け野球のときの勝利とは、比べようもない、とういうか、比べる基準が天地以上の差もある昂揚感に、晶は酔いしれていた。

「よっしゃ、祝勝会や! 場はもう抑えてあるで!!」

「また、蓬莱亭か?」

「そうや! 店の売上に、貢献してもらうで!!」

「まあ、旨いからいいけど……」

 赤木のバイト先である蓬莱亭は、中華料理店だ。もっとも大衆食堂に近いものがあるので、値段はそんなに高くないし、なにより料理の味がいいので、なにかあるとは蓬莱亭によるのが城二大軟式野球部の慣習になっていた。

じつは、そのおかげで、赤木のバイト料が跳ね上がっているというのは、部員たちの暗黙の了解である。

「店長がな、今日はフルコースで奮発してくれるらしいで!!」

おおー、と歓声が上がる。いつもは、手ごろにお一人3000円コース飲み放題が定番だったが、同じ値段で5000円コースを振舞ってくれるという。これで、盛り上がるなというのが無理だ。一応は、体育会系ではあるのだから、やはりみなそれ相応に大食漢なのである。

「晶ちゃんのデビュー戦快勝と、ワイらの明るい前途を祝って、今日は豪快に行くでー!!」

 赤木は、試合が終わってからの方がテンションが高かった。





「あんまり、食わなかったな」

ほとんど大食い大会と化した祝勝会も、そのために料理の減りが早すぎて早々と終わってしまい、いま、亮と晶はふたりで帰路についている。

「木戸こそ」

3000円では、相当な赤字が出るくらいに、二人はあまり飲食をしなかった。その理由は訊かなくても、お互いわかっているのだが。

「…………」

沈黙が続く。何か…何か、言ってあげたいのに、亮は言葉を見つけられない。

「あの、な……」

 それでも、無理に亮は口を開いた。晶が、何かを期待するようなまなざしを彼にむける。

「今日は、ナイスピッチだった。結構いけるとは思ってたけど、まさかパーフェクトとはな……すごいよ、うん。やっぱ、さすが、近藤だ」

「は、はは……ありがと」

 もうちょっと違う言葉を期待していた晶は、やっぱり、野球のことしかでない亮にちょっとだけやきもきした。

二人の足は、公園の傍にきていた。何気なく、その中に踏み入り、人気のない場所を歩く。

時間は、もうすぐ日をまたごうとしていた。

(………)

ひとつ、ため息をつくと、晶は覚悟を決めたようにきっ、と亮を見る。

「約束……ってわけじゃないけど、あたしの言葉、覚えてる?」

「………」

ぼ、と亮の顔に灯がともる。それが、答である。

晶は、そっと、亮の手を自分の手に重ねた。

「あたしね…」

晶は、豆だらけのごつごつとしたその手に、亮は、繊細で柔らかいその手に、互いに胸の高鳴りが増していく。

「今日、凄く楽しかった。本当に、楽しかった。あんなに楽しかったの、久しぶり」

「近藤……」

「野球がね、やっぱり好きだなーって、わかった。でもね、もうひとつ理由はあるんだよ」

ぎゅ、とつないだ手に力がこもる。

「アンタの構えたところにね、思い切り投げるのが一番楽しかった。気づいてないかも知れなけど、いい球放ると、凄く嬉しそうな顔してボール返してくれるんだよ。だからあたし、その顔が見たくて、懸命に投げたんだ」

「………」

「それでね、一度だけ、アンタ、あたしのこと名前で呼んでくれた」

「?」

「気づいてないよね。でもね、それ、すっごく嬉しかったんだから…」

とん、と亮の胸板へ額を預ける晶。自然、亮は開いた手でその肩を優しく支える。

「好き」

 小さな、しかし確かな晶の告白。

「あたし、木戸が好き。いつもどこでも野球ばっかりだけど、でも、そんな木戸だから…好き」

「こ、近藤……」

亮自身、女の子にそういわれるのは初めてだった。でも、悪くはない。いや、とても嬉しい。

この前は、状況が状況だっただけに場に流された感情もあったろう。しかし、改めて思えば、やはり自分は……。

「近藤」

そっと、その肩を抱いて、晶の顔が見える距離に身体を離す。少しだけ、潤んでいる晶の瞳に、高揚する気持ちを抑えられない。

それでも、なんとか冷静さを保ち、亮は言った。

「お、おれも……好き、だからな」

 途切れ途切れに、その胸に宿した想いを。

初めて目にした、ビデオのなかで躍動する姿。甲子園の風に舞った黒髪。賭け野球の中で、寂しそうに俯く仕草。そして、今日、マウンドで弾けた眩いばかりのその笑顔。

そうだ。亮はもう、かなり以前から晶に惹かれ続けていたのだ。

「近藤」

「……亮。そんなの、もうイヤだ」

「……あ、あ、晶」

「ん」

晶は、満足そうに微笑むと、つま先だって目を閉じた。

ぐ、と息を呑んでから、油のさしていない機械音でも聞こえそうな動きで、亮は、少しだけ開いているその小さな唇に、自分のものを重ね合わせた。

唇だけが、触れるキス。それは、あの日のように。しかし、想いの繋がり方は、その比ではなかった。

お互いに触れた部分が、とてつもない温度を放ち、それを相手に伝えているようだ。身体の中に燃え上がってくる炎は、いま、どんな形をしているだろう?

「ん……んん……」

 ……亮は、息苦しくなってきた。なにしろ、大きな通風孔は塞がっているのだ。

「………は、はあ」

たまらず、唇を離して息を吐く。

「むぅ……」

期待していたよりも、心持ち短い接触時間に、晶はちょっと膨れた。

「息、止めてたの?」

「え?」

「息、止めないでいいんだよ」

「………」

「息できるの、口だけじゃないでしょ」

「そ、そうか」

「…………っ、ふふっ………あははははは!」

堪らず、晶が吹き出した。

「こ、この。失礼な、ヤツだな」

笑われる理由がわかっているから、亮は決まりが悪くて恥ずかしくて、あんまり強くいえない。

「ごめーん」

「ええい、リベンジだ!」

そう言って、やや荒めに晶の肩を支えると、今度は滑らかな動きでその唇を塞いだ。あまりに急なその所作に、今度は晶が戸惑う。

「………」

思わず見開いていた瞳だったが、しかしそれが、亮の真っ赤な顔を網膜に捉えたとき、穏やかさを取り戻して静かにゆっくりと閉じていった。

閉じられた暗闇の中で感じられるのは、唇の柔らかさと熱さ。そして、今度はしっかり聞こえる亮の息づかい。それが、体内にある自家発電をフル回転させ、熱エネルギーを全身に振りまく。

さっきよりも長く繋がっていた唇が離れたとき、二人は何も言わずに、互いに求めているものを伝えるように見つめ合っていた。



「や、やっぱ……恥ずかしいかな………」

亮の部屋。電気を落とした中にも、満月に近い月の明かりがカーテン越しに部屋を染め、晶の裸体を浮かび上がらせた。

そんな幻想的な光景に、亮は、いまから二人がやろうとしていることが非現実的な行為に思えて、躊躇してしまう。

しかし、今度は欲望をとどめる理由はない。むしろ、想いが繋がった今こそ、晶をより深く感じたいと思った。

だから亮は、ベッドの上で胸を覆う晶の肩を背中から抱き、ついばむようにキスをした。

「ん……」

 その積極的な愛情を、晶もすすんで受け入れる。

まるで、小鳥のように唇を優しくかみ合う二人。だが、それだけで済まない若さが、ふたりにはある。

「あ、ンム………」

何か、柔らかいものが口内に入ってきた。亮の舌だ。キスをするのに、息を止めていた亮の行為としてはかなり上級なその動きに、晶は戸惑いを覚えた。

「………ン………ンん………ん………」

しかし、気がつけばその行為に酔っていた。自らも舌を差し出して、恋しい相手のその動きを封じ、貪りあう。口の端からこぼれる、光沢を放つ唾液が糸を引き、顎を伝った。

「ン、……ンッ!」

 晶の肩がびくりと震え、その口から甘い響きが漏れた。亮の手が、晶の小ぶりな胸を柔らかく添えられたからだ。たったそれだけなのに、体中を走った電気の威力に、晶は身悶えた。

「や、やらかい……」

亮は亮で、想像したこともなかった女性の乳房の、あまりの感触の良さに引き込まれていた。まるで、ミットの綿みたいだ―――と考えているあたり、いかにも彼らしい。だが、ミットの綿帽子にはない弾力と瑞々しさがここには詰まっている。

「あ、んんっ!!」

 その神秘をもっと堪能したくて、亮はたふたふと乳房を弾ませた。手のひらにすっぽり収まるサイズではあるが、それでも見ため以上の質量をしっかりと感じる。


 ふにゅ、ふにゅ、ふにゅ………。


「んく! ……あ、ああう!………あふぅ………あふ………」

亮の、固い手のひらに押され、形を変える乳。そのたびに沸き起こる甘い痺れに、声の漏出を抑えられない。この四方を囲む白い壁の、防音効果は大丈夫だろうか? 僅かに残る冷静な思考が、晶の不安を煽る。

「あ、ああ―――ッ!!」

不意に、今まで以上の電撃が身体をめぐった。その発信先をみると、亮の指が胸先を摘み上げていた。かすかに固さを帯びていたその部分に興味を示した彼が、その好奇心を抑え切れずに行動にでたらしい。

虚をつかれ、あまりに感じて、思わず激しく喘いでしまったが……。壁は大丈夫なのか?

「り、亮………くっ、あっ、だ、だめっ、あああああああ!!!」

 くに、くに、くに、と刺激を止めない亮の指に、晶の快楽指数は跳ね上がってゆく。おかげで、聞こうとしていた壁のことなど、微塵の影も残さず頭から消え去った。

「す、すごいな………」

はあ、はあと酸素を求める晶の姿に、いま彼女の身体に起こっている現象を解明したく思った。

「胸、いいの?」

「バカ、聞くことじゃ……ないでしょ……」

 ふむ、聞いたらまずいのか、なら…。

「あ、あああう!!!」

実践で試すより他はない。亮は再び、硬度を高めていく部分を指先で弄んだ。

「ん、んっ……あくっ、あくっ!………」

漏れる歌声と、快楽に反る背中。そして、汗で光る肌。その全てが、亮の行為に対する晶の回答と思えば、自分のしていることの正統性が自覚できる。

「ふ、ふぅ…………ん………ん……」

乳首だけではなく、乳房も同様に愛する。確か、事前に呼んでおいた本では、乳首は下手をすると痛みを伴うから、ほどほどにしたほうがいいと書いてあった。実はそこらへんは、予習済みの亮である。ただ、そのネタ本が“安納郷市”とかいう小説家の官能小説だというところが、わからない点ではあるが……。

(なんで、こんなに………んっ、んっ………うまいの……?)

とにかく、思いがけない亮の巧者ぶりに、高まってゆく性感を受け流しきれず、ひたすら喘ぐ晶。予測では、しどろもどろになった亮を自分がリードして、めでたく少女卒業というセオリーだったのに。そのためにたっぷりと知識を得てきたというのに…。

「あ、あああああああ―――――――!!!」

三度乳首を攻められ、腰から跳ねるような電気を受けたとき、白濁とした意識の波に自我を浚われてしまった。それは、軽い、エクスタシー。自慰の時にも、胸だけで達したことのない領域に、晶はあっさりと足を踏み入れていた。

「はあ……はあ……はあ………」

思い通りにならない刺激の波を、深呼吸で何とかやり過ごす。

「亮……」

そして、自分を高めてくれた相手の名を、いとおしげに呼んだ。

「ちょっと……イッちゃった……」

熱に浮かされたようなその顔に、どくん、とひとつ激しい動悸が亮の中に起こる。それは全身を伝い、腰を伝い、下半身のある一点に集中する。

「わ……」

急に背中を突いた熱いものに、晶の腰が浮いた。

「わ、わるい……」

屹立する、自分の欲望を伝える広告塔は、今までの比にならないほどの硬直具合をたたえている。

「す、すごいのね、これ……」

 晶は、想像を越える大きさと太さを目の当たりにし、目を点にしてた。そんな晶の様子に、亮は途端に恥ずかしくなってきた。

「触ってもいい?」

「あ、ああ………」

 というか、触って欲しい。はちきれんばかりに怒張するその部分は、とにかくなんらかの刺激を欲していた。

す、と晶のしなやかな指が竿の部分に触れる。小波のような泡立ちが、全身に流れた。

「あついね………」

 それは、果たして人間の温度なのだろうか。いきり立つ剛棒に帯びた熱は、晶に嘆息の呟きをささやかせた。

(これが、入るの……?)

 信じられない。あきらかに、自分の持っている溝にはまりそうもないそれを、しかし、好奇心満々で晶は撫でさする。

「く……」

亮の口から声が漏れた。

「あ、気持ちいい?」

「き、聞くことじゃないだろ………」

聞いちゃだめなのね、それなら……。

「う、うわ………!」

実際に触ってみるしかない。晶はもう一度、竿を触る手に少し力を込めた。

「お、おおお………」

すり、すり、すり……。上下に優しく竿を擦る。柔らかい彼女のスナップが、一層の快楽を亮にもたらしていた。

その先から、なにか透明なものが溢れ出す。ガウパー氏の命名した体液の一部が、亮の興奮の度合いを晶に届けていた。

その液体を指に絡め、こんどは頭の部分も含めて優しく愛撫する。一瞬、びくりと躍動した竿を、今度はスピードを早めてしごきたてる。さっき、胸でイカされたことに対する、意地の張り合いみたいなところもあるにはあった。あと、間近でオトコノコが射精するところも、見てみたいという好奇心もあった。

「ちょ、やば……も……」

亮が腰を引く。びくりびくりとしきりに跳ねる竿と亀頭に、彼の限界を知る。

「イキたい? いいよ、ね、イッて………」

晶は、親指で透明な液体を吐き出している穴の部分を撫で上げた。

「あ」

嘆息とも、言葉とも取れないうめきを上げた瞬間、亮の亀頭が一瞬膨張し、

「きゃっ」


 ど、びゅ、びゅ、びゅ……


と、晶の顔に濃厚なエキスを振りまいていた。

「あ、わ、悪い……」

 自分の出した粘液で、晶の顔を汚してしまった。あわてて、タオルで彼女の顔を拭う。そんな優しい亮の所作を、晶は笑みを浮かべて受け入れていた。

「すっごく、あつくて……ネバネバしてるよ……」

 指にこぼれた白いものを、になにな弄ぶ。

「………頼むから、やめてくれ」

 それが自分の出したものだけに、亮の恥ずかしさは最高潮だ。

「うふふ。……もういっかい、シャワー浴びてくるね」

「あ、ああ」

さすがにタオルで拭うだけでは限界があるらしい。晶は、ベッドから立つとユニットバスの中へ消えた。

「う」

 一瞬かいま見えた彼女の股間に光るものを見たとき、節操もなく亮の分身はまた反りあがっていた。しっかりと自分にも、男の業があるのだと自覚した亮は、開き直ったように腕を組んで晶のことを待つことにした。



「ん……ちゅ……んむ………んちゅ………」

月明かりの沈むベッドで、再度睦みあうふたり。シャワーを浴びたばかりだというのに、もう晶の身体には汗が光り、その艶やかなすべり具合が、亮の手になじむように、彼女の肌の感触を彼に伝える。

亮は、少しずつ頭を下ろしていった。唇の愛撫に始まり、首筋、胸、腹と下ろした頭は、明らかにある地点を目指して降下していた。

「………」

晶も、それはわかっているから緊張に身体を強張らせる。

「く……」

亮の頭が、下腹のあたりまでたどりついたとき、思わずその頭を抑えてしまった。

「恥ずかしい……」

「………」

だが、亮は何も答えず、抵抗といっても力無い晶の手が添えられたまま、その頭を恥毛のあたりまで一気におろした。

「!」

 そして、軽く閉じられた太ももを顎で割り開き、その部分を真正面に捉えた。

「あ……っ」

 月明かりに浮かぶ、淫靡な秘裂がそこにはあった。シャワーを浴びて清められているはずのその溝が軽く口を空けて、なにか透明なものを染み出る湧き水のように溢れさせている。

「は、恥ずかしいよぉ……」

たまらず、晶が顔を覆った。覚悟の上とはいえ、自分でも良く見たことの無い穢れた場所を、好きな相手に凝視されているのだ。しかも、わかっているが、たぶん濡れているから、恥ずかしくて堪らない。

「あっ!」

晶は股間に、甘さを感じた。そして、その入り口にある襞の部分が、しきりにひらひらされている感覚に、腰が震えた。

「あっ、あっ、あっ……」

亮の指が、自分の性器を弄んでいる…。恋しい人が、自分の……。それだけで、晶の羞恥度数は跳ね上がり、それが快楽指数に変化して体中を駆け下りる。


 ぴちゃ、ぴちゃ、ぴちゃ……


と、快楽は液体に変化していった。

「すごいな………」

湯水のごとく、湧き出る蜜が指を濡らす。いくぶん、溝の口が開き気味になって、また、そこからぬるりとしたものが生まれてくるのだ。

 その様は、とてもグロテスクでありながら、神々しい。亮は、抑えきれずに、その泉に口をつけてみた。

「あ、あくっ!!」

 指以上にやわらかいものが股間に押し当てられ、晶は亮がその部分を舐めているのだと知る。確かに、シャワーを浴びている時になんども洗ったとはいえ、自分の穢れが生まれてくるところだ。それを、舐められている。

「あっ、いやっ……あんっ……だめ!」

溝に沿うように、柔らかいものが上下に動く。丹念に、丁寧に。聞こえてくる、何かを啜りこむような音と、その出口から何かを吸われる感覚に、羞恥と快楽で身悶える。

「きた……きたないよ………だめぇ……」

「そんなことないよ……」

「でも……やだもん………」

 少し、晶の声に震えが混じった。羞恥のあまり、胸が詰まったのだろう。

 さすがに泣かれそうになっては、亮としてもやめざるをえない。名残惜しそうに口をその部分から離し、体勢をもう一度整えてから、優しく晶の顔を覗き込んだ。

「晶……」

「うん…」

交錯した視線が示すものはただひとつ。二つの命を、いま、ひとつに繋げて、その思いを確かめあうこと。

「あなたが、欲しい……」

「ああ………俺もだ……」

亮は、さっき色々と確認しておいた秘裂のなかから、おそらくはそれだろうと辺りをつけておいた凹みに、指針を示す自分の舳先を軽く押し付けた。

「あっ……」

息を呑むような晶の声。亮は、動きを止める。

「ち、ちがった?」

「ううん、だいじょうぶ……ちょっと、びっくりしただけ……」

ほ、と胸をなでおろし、改めて舳先を当てる。そして、ゆっくりと力を込めて、その先を生命の海へ向けて、出港させた。

「はっ! あっ、ぐ、ぐぅぅぅぅぅぅ!!!」

その舳先を折ってしまおうかというぐらいの凄まじい抵抗。そして、ゆがむ晶の顔。それが、彼女にどれほどの痛みを与えているか、察するに余りある。

「くっ」

とにかく、腰を進めてみようとする。頭の部分は既に埋没しかけていたが、さらに収縮が強まって、弾け飛びそうになる。

 それに抗うように、亮は腰を進めようとした。

「いっ! いたっ!」

晶の口から、明らかな痛みの声が漏れた。亮は、動きを止め、その様子をうかがう。

「はぁ……う、うぅ……」

とても、快楽の様をそこから見ることはできない。亮としては、その限界を悟らざるをえない。

「や、やめようか?」

「はあ、はあ………いや……」

 焦ることは無いのだから、とつなげようとしたが、しかし、晶の言葉が、それをとどめた。

「また、お預けなんて……あたし、ヤダよ………」

「し、しかしだな……」

「おねがい………きょうは……きょうは特別な日、なんだから!」

 晶はそういうと、亮の腰に手を廻して身体を支え、自ら腰を押し付けてきた。

「あ!」

 ぐう、と強烈な圧力がかかるものの、下からの行為には限界がある。

「い、いたっ!」

悪戯に、痛みを重ねてしまい、晶の身体はすぐにベッドに沈んだ。

「はぁ……はぁ……」

 荒い息づかいの晶に、亮は憐憫の情を抱いた。そして、彼女を宥めるように、濡れた瞼にそっとキスをする。

「亮………」

「わかった、わかったよ晶。俺に、任せてくれ」

「う、うん……」

「少しの我慢だぞ……」

 繋がろうと必死になる晶の姿に、亮は覚悟を決めた。

改めて、自分のものを晶にあてがう。そして、ゆっくりとその先をさっきまで埋まっていた部分に沈める。

「!」

息を呑む晶。不安げに寄るその眉に、一瞬亮はひるむ。しかし、決めた覚悟を揺るがせはしなかった。


 ずっ!


「あ、あっ!!」

より深く侵入してくる、熱く固い物体。それが狭い腔内を割り開きながら、着実に奥深くまで進んでくる。

「あ、あくっ、うぅぅぅぅ!!」

ぴりぴりと何かが裂けるような感覚と、それに伴う痛み。亮の背中に手を廻し、彼の身体を掴み締め、必死に耐える。力を抜いたほうがいいことは知識の中でわかっているが、初めておぼえる内側からの痛覚に、四肢が強張ってしまう。

「はあ、はあ、はあ、はぁ――――――――」

「もう、ちょっとだぞ………」

女の身体を知らない亮が、それが確かかどうかなどわかるはずもない。しかし、目の端に涙をため、いじらしくも痛みに耐える様を見ては、そうやって声をかけて、とにかく安心させてあげたかった。

ずず……と、半分以上が埋まった陰茎をさらに推し進める。そして――――。

「わ……」

「あ、あぅ!」

少し力を入れただけだったのに、思いがけず、全ての部分が晶の中に埋没した。まるで、その中に導かれているかのように、ほんとうに、すんなりと全てが収まったのだ。

「は、いった………」

 初めて入った女性の中は、とても熱い。そして、その部分から伝わる晶の生命の鼓動が、たぎる自分の分身にダイレクトに届いて刺激してくる。

(わ、うわ………)

それだけなのに、張り詰めた欲望が、漏れ出しそうだった。

「あ、あは………入った……ね……」

 晶も、亮の熱源を直に感じることができて、すごく満たされた思いがあった。

「熱いんだね……」

「ああ………」

「好き」

「俺もだ」

そして、手のひらを重ね、唇を合わせる。想いの全てを、身体の全てでつなげるように。

「ね、動いて……」

「いいのか?」

 こくり、と晶は頷いた。

 亮は、その痛みがすぐに取れるとは思っていないので、躊躇いを覚えたが、

(それが晶の望むことなら)

全てを、かなえてあげたいと思った。それに、晶の胎内でいきりたつ自分の分身も、更なる刺激を渇望してやまないのは事実だ。

「く………」

ゆっくりと腰をひき、

「あ、あぅ!!」

ずに、と深く晶を突いた。

 滑らかな摩擦が、敏感になった先端と肉茎を覆い、それが極上の刺激を与える。その、例えようの無いぐらいの気持ちよさに、亮の動きは思わず早まってしまう。

「あ、ああ! うっ! あうぅぅっ!!」

痛みとも、快楽とも判別のつきにくい晶の嬌声。つないだ手のひらに、力がこもっている。

「くっ」


 ずっ、ずっ、ずっ、ずっ……


 亮は、動きを止められない。なにしろひとつ往復するだけで、今まで味わったことの無い快楽を得られるのだ。世の男性が、その虜になるのも無理からぬところである。人類がかくも繁殖し繁栄したのが、よくわかった。

「はあ……んっ、んっ、んっ………」

晶が手を離し、その二の腕を首に廻してきた。更なる密着度が、二人の間に生まれる。晶の荒い息づかいが、耳元で更なる欲望を掻き立てる。

腰を振り、晶を突く。その度に、水の跳ねる音が繋がったところから奏でられる。それが先端にぶつかり、陰茎を包み、亮を高めていく。

「はっ、はあっ………くっ……あうっ……んっ、んっ……んあ!」

晶もまた、痛みの中にもかすかに感じる官能に身体を震わせていた。

「すき、すき、亮……すきなの!」

白濁とした意識の中、想いを言葉に込めて愛しい人に届ける。それが合図のように、亮の動きは激しさを増す。

「あ、あっ、あっ、あっ、あっ…………くぁ!!!!」

亮が、中で大きくなった気がした。そして、びくびくとするその部分に、彼の限界を知る。

「亮、いいよ……このまま……」

「………」

「だいじょうぶ、だから………おねがい、おねがい…………」

「わかった」

晶の願いは、自分の望み。亮は、ラストスパートをかける。

「あ、ああっ! は、はげしっ! うぅぅぅぅっっ!」

 想像を越える振動に、晶の腰が跳ねる。繋がっている部分が、更なる水気を吐き出し、粘膜の潤滑を助ける。それが、また、大きな快楽を生んでくれる。

「晶、あきら………」

「亮、りょう………」

互いに名を呼び合うふたり。それさえも、甘く、体中をかけめぐる。

「う、く!」

不意に、亮の身体が強張った。

「!」

晶は、中で膨張した亮の先端から、熱い迸りを感じた。

「あ、あ……あ……ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――!!!!!!」

そして、その迸りが胎内を満たし、奥まで届いたとき、恍惚とした浮遊感の中に、意識の全てを浚われていた。





「でも、想像してたよりは、痛くなかったよ」

 コトが終わってから、三度目のシャワーを共に浴びて、再びベッドの中に戻ってから、晶がそんなことを言った。

「入れる瞬間は、身体がバラバラになりそうだったけど」

亮の厚い胸板に身体を預け、初めての情交を振り返ってみる。

「スキン、用意したのに使わなかったね」

「あー」

 しかも、中で出したんだよな……。亮はそのことを思い出す。随分大量に、それも濃度の高い樹液を中に注いだのだ。万が一ということもあるが……。

「おもいっきり、安全日だから」

 と、いってくれたので、とりあえず安堵する。でも、何があるかわからないので、これからは、きちんと避妊はしよう。

「ふふ……」

「ん? どうした?」

「今日はね、すっごい幸せ」

そう言って、小柄な頬を摺り寄せてくる。まるで、小動物のように甘えるその仕草に、亮の胸は熱くなる。

「このまま、眠っちゃうのが惜しいくらい」

「でも、明日、ゼミなんだよな……」

「あん、もう。そんな現実的なこと、今はナシにしてよぉ」

晶は少しむくれる。しかも、確か、一時限だったから、亮のアパートから大学までの時間を考えると、今から5時間も寝られない。

 時間を意識したからではないが、不意に、眠気が襲ってきた。試合をして、身体を重ねて、と……随分と身体を酷使したものだ。おもわず、あくびを漏らしてしまう亮。その後で、さすがに晶に悪いと思ったか、口元を慌てて抑えた。

「ふふ」

そんな亮に、晶は微笑を返す。そして、そっと手を重ねてきた。

「でも、いま眠ったら、いい夢が見られるかもしれないね」

俺は起きられるか不安だが……といいかけて、口をつぐむ。こんなことをいえば、晶の幸せ気分を台無しにしてしまう。

答えの代りに、晶が重ねてきた手を、かるく握り返した。

「あ……」

「おやすみ、晶」

「うん」

軽く唇を合わせてから、二人は目を閉じる。互いのぬくもりを、互いの肌に感じながら。

ふたつの初陣を終えた二人は、ともに、その意識をゆっくりと夢の中へ誘われていった…。



―続―







解 説



まきわり:「みなさま、こんにちは! 『STRIKE!!』第2話でございます!! お読みいただきありがとうございます!!」

玲 子:「難しいわねえ……」

まきわり:「な、なんです?」

玲 子:「野球の描写、前より少なくない?」

まきわり:「う………」

玲 子:「晶ちゃんの初陣の割には、彼女の見せ場が少ないというか……」

まきわり:「あう……」

玲 子:「まあ、エッチに力を入れようとしたらこうもなるか」

まきわり:「あ、あの冷静に分析しないで……」

玲 子:「直樹君の活躍もほとんど無いし」

まきわり:「さりげなく、のろけないでください」

玲 子:「んふふー、やっかみ? やっかみ?」

まきわり:「いや、あのね……」

玲 子:「それじゃあ、第3話も頑張ってね〜♪ あんまり間、空けると、忘れられちゃうよ」

まきわり:「は、はは………頑張ります………(汗)」





解 説(改訂版編)


まきわり:「と、いうわけでこちらも第2話です」

玲 子:「大変ねえ」

まきわり:「いや、これぐらいしないと。申し訳ない気がして……」

玲 子:「確かに、“解説”って、破戒僧ちゃんのところに掲載してもらってるものにしか、載せてないものね」

まきわり:「それが、まあ、筋ですから……」

玲 子:「でも、こういう“座談会”みたいなのって、賛否両論なのよね確か。“萎える”って、言ってる人もいるみたいだし……昨夜の直樹君みたい」

まきわり:「な、“萎える”の意味が違ってますがな」

玲 子:「彼ったら、4回目の途中で力尽きて、寝ちゃったのよ」

まきわり:「よ、4回って、あんた……」

玲 子:「最近、危ない日なのよね。こういうときって、私、凄いから」

まきわり:「くれぐれも、彼に腹上死をさせないでください」

玲 子:「アッティラみたいに?」

まきわり:「なんとマニアックなネタを……古代ヨーロッパを席巻した征服者ですか?」

玲 子:「そのアッティラさん、その頃には結構お歳だったらしいんだけど、若い女の子と閨を共にしたら興奮しすぎて鼻血がとまらなくなって、それで窒息しちゃったらしいのね」

まきわり:「そうなんですか。……って、なんか話が摩り替わってしまいましたな」

玲 子:「あら、そうね」

まきわり:「それでは、みなさま、第3話でお逢いしましょう!」

玲 子:「それじゃあね♪」




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