平成14年7月30日判決言渡・同日判決原本受領裁判所書記官

平成13年(ネ)第3600号労働契約上の地位確認等、団体交渉を求める地位確認請求控訴事件

(原審・神戸地方裁判所平成12年(ワ)第505号〔以下「甲事件」という。〕、同年(ワ)第925号〔以下「乙事件」という。〕)

   
             判      決
  控訴人(甲乙両事件被告)                  本四海峡バス株式会社
                                        代表者 代表取締役 川真田 常男

  控訴人(甲事件被告)補助参加人             全日本海員組合
                                        代表者 井出本 榮



  被控訴人(甲事件原告)                   中田 良治、日野 隆文、板谷 節雄

  被控訴人(乙事件原告)                   全日本港湾労働組合関西地方本部
                                        代表者 地方執行委員長 佐野 祥和

                                    全日本港湾労働組合関西地方神戸支部
                                        代表者 支部執行委員長 馬越 輝光


         主      文
1 本件控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は、控訴人及び被控訴人らに生じた費用は控訴人の負担とし、控訴人補助参加人に生じた費用は同補助参加人の負担とする。

                事 実 及 び 理 由

第1 当事者の求める裁判

1 控訴の趣旨
(1)原判決中控訴人敗訴部分を取り消す
(2)同取消しに係る被控訴人らの請求を棄却する。
(3)控訴費用は、第1、2審とも被控訴人らの負担とする。
2 控訴の趣旨に対する答弁

第2 事案の概要

事案の概要は、次のとおり付加・補正するほか、原判決「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」記載のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決6頁6行目「未払賃金及び損害賠償」を「未払賃金(甲事件被控訴人らにつき、それぞれ平成11年8月9日からの賃金、夏季及び冬季一時金)及び不法行為に基づく損害賠償(被控訴人らにつきそれぞれ慰謝料)」に改める。
2 同7頁21行目「全員は、」の次に「補助参加人の活動方針に賛同できないとして、」を加える。
3 同8頁10行目から11行目にかけて「5の1ないし3」を「5ないし7」に改める。
4 同9頁16行「IDは、」の次に「控訴人本社事務所を訪れた」を加える。
5 同13頁25行目「ある。」の次に「クローズド・ショップ協定は労働組合との合意で採用者の範囲や資格を組合員に限定するものであり、使用者に採用の自由がある限り、相応の理由があればこのような限定は有効である。すなわち、」を加える。
6 同14頁1行目の次に行を改め、次のとおりくわえる。
 「個人又は少数の労働者の団結権の行使が多数の労働者の生存を侵害するか又はその危険がある場合、例えば使用者の企業としての存続が危ぶまれ、全従業員の職と生活とが危険にさらされている状態で、使用者と多数の組合員とがユニオン・ショップ協定を締結して会社存続を図ろうとするのに対し、被組合員等が反対している場合などには、個人又は少数の労働者の権利行使は自己決定の結果であるとはいえ、多数の組合員に対して深刻な影響を及ぼす特段の事情があるというべきであり、そのような場合には個人又は少数の労働者の自己決定が一定の制限を破ることがあってもやむを得ないのであって、上記のとおり本件ではこのような制限を破ってもやむを得ない特段の事情があるというべきである。」
7 同頁3行目の次に行を改め、次のとおり加える。
 「ウ 被控訴人中田、同日野、同板谷は、控訴人に対し、全港湾との間でユニオン・ショップ協定を締結するように要求し、控訴人がこれに応じないことを違法と主張しているのであるから、本訴において、控訴人と補助参加人との間のユニオン・ショップ協定が無効と主張することは、禁反言の原則に照らして許されない。」
8 同頁4行目「ウ」を「エ」に改める。
9 同頁10行目「ある。」の次に「そして、補助参加人は、控訴人設立の経緯から、その株式を取得して大株主となるとともに、控訴人の経営は破綻に立ち至る可能性がある。」を加える。

第3 当裁判所の判断

 当裁判所の判断は、次のとおり付加・補正するほか、原判決「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」記載のとおりであるから、これを引用する。

1 原判決27頁7行目「あるというのであり」から同頁10行目「理由がない。」までを「あるから、補助参加人の組合員だけの再就職のために設立されたといえないばかりでなく、たとえ、補助参加人がその組合員だけが控訴人に採用されることを企図しており、控訴人が当初採用した被控訴人中田、同日野、同板谷を含む従業員の殆どが補助参加人の組合員であったとしても、これら事情は、控訴人と補助参加人がユニオン・ショップ協定を締結した動機あるいは目的にすぎず、しかも、その趣旨は補助参加人の組合員の利益を図るということに帰するから、そのために控訴人に採用された時に補助参加人の組合員であったとの理由で、その者のその後の組合選択の自由を侵害し、あるいは他の労同組合の団結権を侵害することが許されると解することはできない。」に改める。
2 同頁16行目「本件協定は、」から同頁18行目「ではない。」までを「本件協定がクローズド・ショップ協定や職場確保契約ではなく、ユニオン・ショップ協定であることはその文言上明らかであり、上記のように補助参加人にはその組合員の職場を確保する目的があったとしても、これはユニオン・ショップ協定を締結する動機や目的にすぎないのであって、控訴人と被控訴人中田、同日野、同板谷との間に締結された個別・具体的な雇用契約が解除条件であったと認めるに足りる証拠はない。ちなみに、」に改める。
3 同28頁9行目「ものではない。」の次に行を改めて以下のとおり加える。
 「なお、控訴人は、個人又は少数の労働者の団結権の行使がユニオン・ショップ協定を締結している多数の労働者の生存を侵害するか又はその危険あるときは、個人又は少数の労働者の団結権の行使を制限することができる特段の事情があると主張するところ、補助参加人の組合員の中には、明石海峡大橋の開通に伴う離職者があるとしても、本件証拠上これら離職者で求職している者の人数や控訴人への就職の必要性は明らかでないから、被控訴人中田、同日野、同板谷の控訴人との雇用契約に基づく権利及び組合選択の自由を否定しなければ、ユニオン・ショップ協定の組合員らの生存が侵害されあるいは侵害される危険があるとまで認めることはできない。したがって、控訴人の上記主張は、採用できない。

(オ)次に、控訴人は、被控訴人中田、同日野、同板谷は、控訴人に対し全港湾との間でユニオン・ショップ協定を締結するようの要請しているから、控訴人と補助参加人との間のユニオン・ショップ協定が無効であると主張することは、禁反言の原理に照らして許されないと主張するけれども、仮に控訴人と全港湾との間でユニオン・ショップ協定が締結された場合、そのユニオン・ショップ協定も、上記(1)のような制限に服するのであるから、上記被控訴人らが全港湾との間でユニオン・ショップ協定の締結を要求し、本訴において、控訴人と補助参加人との間のユニオン・ショップ協定につき上記(1)のような制限を主張しても、何ら禁反言の原則に反するものではない。」
4 同28頁10行目「(オ)」を「(カ)」に改める。
5 同頁11行目「被告は」から同頁13行目「できない。」までを「控訴人が主張する本件解雇の合理的理由は、要するに補助参加人の支援がなくなれば、控訴人の経営が破綻するおそれがあり、補助参加人との信頼関係の維持が重要であるというものであって、これら事情は法的に保障された被控訴人中田、同日野、同板谷の組合選択の自由を否定しうるものと解することはできないから、控訴人が主張する上記理由によっては、本件解雇に合理的理由があると認めることはできない。」に改める。
6 同35頁24行目「そして、」の次に「控訴人は、いわゆる団体交渉請求権の権利性について疑問があると主張するところ、」を加える。
7 同37頁12行目「甲43、92」を「甲43,83、」に改める.
8 同40頁23行目「乙1」を「甲81、乙1、5,8」に改める。
9 同頁25行目「限り、」の次に「該当交渉事項について」を加える。
10 同頁26行目「拠()の次に「乙8、」を加える。
11 同41頁14行目「甲」を削り、「86」を「81,82,85」に改める。
12 同頁15行目「1」の次に「ないし3、」を加える。
13 同43頁11行目「ク 」の次に「前記のとおり、同月25日、中央労働委員会は、控訴人に対し、初審命令の履行を勧告し、これを受けて、」を加える。
14 同46頁7行目「証人IU」の次に「並びに甲81及び乙8中の各証人IU供述部分」を加える。
15 同頁10行目「すぎない」の次に「し、甲81中の証人TN供述部分及び乙6も同趣旨である」を加える。

16 同頁14行目「証人IU」の次に「及び甲81中の証人IU供述部分」を加える。

17 同頁24行目「証人IUの証言」の次に「、甲81中の証人IU供述部分及び乙8」を加える。

第4 結論

よって、被控訴人らの本件請求は原判決主文1ないし4及び7ないし9項の限度で理由があるから認容すべきであり、その余のうち被控訴人中田、同日野、同板谷の訴え中本事件判決確定の日の翌日以降の賃金の支払いを求める部分は訴えの利益がないから却下すべきであり、さらにその余の部分は失当であるから棄却すべきであって、結局原判決は相当であるから、本件控訴をいずれも棄却することとし、控訴費用の負担について民法67条、66条、61条を適用して、主文のとおり判決する.

大阪高等裁判所第13民事部

裁判長裁判官   大喜多 啓 光

裁判官   安 達 嗣 雄

裁判官   橋 本 良 成



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