兵庫県地労委平成12年(不)第15

                      命 令 書

  申立人                          全日本港湾労働組合関西地方神戸支部
                                      代表者 支部執行委員長  馬越 輝光


  被申立人                        本四海峡バス株式会社
                                      代表者 代表取締役社長  川真田 常男

                                全日本海員組合
                                      代表者 組合長  井出本 榮



 上記当事者間の兵庫県地労委平成12年〈不)第15号本四海峡バス不当労働行為救済申立事件について、当委員会は、公益委員会議における合議の結果、次のとおり命令する。                   
              主      文            
1 被申立人本四海峡バス株式会社は、申立人が平成12731日付けで申し入れた団体交渉事項(ただし、兵庫県地労委平成11年(不)第5号本四海峡バス不当労働行為救済申立事件にかかる平成12620日付け命令の受入れに関する団体交渉事項を除く。)についての団体交渉に誠意をもって応じなければならない。
2 申立人の被申立人本四海峡バス株式会社に対する団体交渉応諾の申立てのうち、兵庫県地労委平成11年(不)第5号本四海峡バス不当労働行為救済申立事件にかかる平成12620日付け命令の受入れに関する団体交渉応諾の申立てを却下する。
3 申立人の被申立人本四海峡バス株式会社に対するその余の申立てを棄却する。
4 申立人の被申立人全日本海員組合に対する申立てを却下する。

理       由

1 認定した事実

  1 当事者

(1) 申立人全日本港湾労働組合関西地方神戸支部(以下「全港湾」という。)は、港湾関係労働者及びトラック運送関係労働者を中心に組織する労働組合で、審問路結時における組合員数は、320名である。
2) 被申立人本四海峡バス株式会社(以下「会社」という。)は、登記簿上、肩書地に本社を置き、一般乗合旅客自動車運送事業を主たる業務としており、審商終結時の従業員数は、運転士及び整備士(以下「運転士等」という。)を含め1O4名である。なお、会社は、明石海峡大橋の供用に伴う影響により事業規模の縮小等を余儀なくされる一般旅客定期航路事業者(以下「関係船会社」という。)が共同出資し、新規事業の開拓及び船員等の離職者の雇用確保を目的として、平成7年に設立されたものであり会社の運転士等の大部分は、関係船会社に勤務していた船員であった者を会社が雇用したものである。
3) 被申立人全日本海員組合(以下「、海員組合」という。)は、肩書地に本部を置き、海上労働者を中心とする全国組織の労働組合であり、審問終結時における組合員数は、会社の組合員を含め約35000名である。
 2 全港湾本四海峡バス分会の結成と当時の労使関係
1) 会社においては、平成11730日までは、運転士等58名全員が、海員組合に所属しており、会社と海員組合は、海員組合と関係船会社が会社設立に力を合わせて取り組んだ経緯から、ユニオン・ショップ協定を締結している。
2) 平成11730日、海員組合の運営の在り方に不満を持った運転士等58名が、海員組合に連名で脱退届を提出し、同日、全港湾に加入した。
3) 同年89日、全港湾に加入した運転士等が、本四海峡バス分会(以下「分会」という0)を結成し、分会長中田良治、副分会長日野隆文及び分会書記長板谷節雄(以下「中田ら3名」という。)外、分会役員を選出した。なお、海員組合が、同月6日、前記海員組合脱退の中心的な役割を担っていたとして、中田ら3名を規約第113A4号による除名処分とし、同日、会社に対して、ユニオン・ショップ協定に基づき解雇するように要請したところ、会社は、これを受けて、同月8日、中田ら3名に対する解雇通知書を発送した。
4) 翌日午後1時ころ、全港湾は、組合活動についての協定事項、労働条件についての緊急要求事項及び中田ら3名に対する解雇の撤回を議題とする団体交・渉の申入れをするため会社の本社を訪れたが、本社は閉鎖されており、電話による連絡を取ることもできなかった。
 そこで、翌
10日、全港湾は、分会員全員の、名前を記威した同年89日付けの分会結成通告書及び同日付けの上記議題の団体交渉申入れ書を配達証明付書留郵便で会社に送付したところ、会社は、これを受領したが、何ら返答をしなかった。

5) 同年920日、全港湾は、会社を被申立人として、当委員会に対し、同年89日付けで申し入れた団体交渉の応諾及び誓文の掲示を求める救済申立て〔平成11年(不)第5号事件〕を行った。なお、この時までに、14名の組合員が、全港湾を脱退し、海員組合に復帰していた。

6) 平成12620日、当委員会は、会社に対して、平成1189日付けで申入れがあった下記3項目を議題とする団体交渉の応諾を命じる一部救済命令を発した(以下「地労委命令」という。)。
 ア 組合活動につい′ての協定事項に関して
 イ 労働条件についての緊急要求事項に関して
 ウ 中田ら3名に対する解雇の撤回について
 しかし、会社は、これを不服として、同年74日、中央労働委員会に再審査の申立て〔中労委平成12年(不再)第40号事件〕を行い、審問終結時現在、同委員会に係属中である。
 3 本件申立てに至るまでの経緯
1) 分会が結成されて以降、海員組合は、分会員に対して、同組合に復帰するよう様々な働きかけを行ってきたが、平成12414日昼、副分会長古川雅昇.(以下「古川」という。)は、組合所属問題について、「全港湾でいきます」と最終的態度を海員組合に伝えた。
2) その古川に対し、会社は、同日午後730分ころ、社内規律の維持等について事実確認を行うとともに、併せて個別面談も実施する必要があるとして、本社への出頭を命じた。さらに、全従業員に対して、同年59日から個別面談を始め、翌6月下旬まで実施した。
3) 同年512日、会社は、分会員近藤則明(以下「近藤」という。)に対して、シートベルトを着用せず運転業務に従事したことが安全注意義務違反に該当するとして4日間の出勤停止処分を、古川に対して、同年414日に本社への出頭を命じた時の行動が職務上規律違反に該当するとして7日間の出勤停止処分をそれぞれ行うことを決定し、通知した。
4) これに対して、全港湾は、同年515日、会社への抗議活動を行ったが、会社は、同月22日、近藤及び古川のこの抗議活動への参加が就業規則第21条(会社施設内等における集会)及び同第22条(勤務時間中等の組合活動)に違反するとして、両名に対してそれぞれ3日間の出勤停止処分を行うことを決定し、通知した。
5) 同月29日、全港湾は、会社の古川に対する前記本社出頭命令や前記個別面談、近藤及び古川に対する懲戒処分が支配介入及び不利益取扱いに該当するとして、全港湾の運営に対する支配介入の禁止、近藤及び古川に対する懲戒処分の撤回などを求めて、当委員会に不当労働行為救済申立て〔平成12年(不)第6号事件〕を行った。
6) 同年62日、会社は古川に対し、同月5日付けで徳島営業所から洲本営業所への転勤を命ずる辞令を交付した。これに対して、全港湾は、同月5日、平成12軒(不)第6号事件の請求する救済内容に、当該転勤の命令の撤回と原状回復措置を追加した。
7) 同月・30日、会社は、地労委命令を踏まえ、全港湾の要求書を受け取り、団体交渉開催に向けての折衝を行ったが、全港湾は全港湾との間に労使関係を認めて団体交渉を行うことはできないとの会社の従前の姿勢に変化がみられなかったので、同日、会社の全港湾に対する支配介入問題や近藤及び古川に対する懲戒処分問題の解決、地労委命令の履行などを求め、同年7月・15日午前0時以降問題解決に至るまでの間、争議行為を行うことを決定した。
8) その後、上記問題の解決に向けて、全港湾と会社との折衝が数回行われ、会社は、同月18日、非公開を条件にメモを提出したが、そのメモは全港湾の名誉ある撤退に向けて折衝を行う旨の内容であったことから、当該折衝は決裂し、同月20日、全港湾はストライキを実施した。
9) 同月31日、全港湾は、会社及び海員組合に対して、下記6項目(以下「本件団体交渉申入れ事項」という。)を議題とする団体交渉の開催を申し入れた。
 ア 同年414日の古川に対する不当労働行為(支配介入)の謝罪について
 イ 同年512日付け近藤及び古川に対する懲戒処分・の撤回について
 ウ 同月22日付け近藤及び古川に対する懲戒処分の撤回について
 エ 個別面談における不当労働行為(支配介入)の謝罪について
 オ 同年65日付け古川に対する洲本営業所転勤に関して
 カ 地労委命令の受入れについて
10) これに対し、海員組合は、同年84日、「団体交渉の主権者ではありません」と回答して団体交渉の申入れを拒否した。一方、会社は、同月10日、全港湾と折衝を行い、地労委命令を履行する旨回答した。ところが、、同月29日、会社は、全港湾に対して、海員組合との間でユニオン・ショップ協定を締結しており、会社従業員の中に全港湾の組合員がいると認識していないしたがって、全港湾との間に労使関係がないので、折衝は行うが、協定書の作成は拒否する旨の回答を書面で行った。
11) さらに、会社は、上記書面の追記の中で、本件団体交渉申入れ事項についての考え方を下記のとおり表明した。
ア 古川に対する懲戒処分及び転勤問題は、地労委命令の対象交渉事項ではなく、また現在係争中でもある。
イ 古川に対する転勤の問題は、転勤にかかる費用負担や社宅提供などを社内規程に設けたことにより解決している。
ウ 近藤に対する懲戒処分は、シートベルトを着用せず運転業務に従事した法令違反として監督官庁から指摘を受け処分をせざるを得なかった。
12) その後、同年98日にも地労委命令の履行について折衝が行われたが、全港湾との間に労使関係を認めて団体交渉を行うことはできないとの会社の従前の姿勢に変化はなく、当該折衝は決裂した。
13) 同月25日、中央労働委員会が、前記平成12年(不再)第40号事件の審査にあたり、会社に対し地労委命令の履行勧告を行ったところ、同年102日、会社は中央労働委員会で最終決定が出るまでは全港湾が団体交渉を求め得る仮の地位にあることを認め、同月6日、「従業員に全港湾組合員はいない」との従前の認識を「全港湾組合員らしき者がいる」に改めこ全港湾と地労委命令の履行及び36協定締結に関する折衝を行った。
 しかし、同月
12日、会社は、全港湾との間に労使関係を認め、地労委命令の履行及び36協定締結について協定書を交すことは、海員組合との協議の結果やはりできないとの結論である旨回答した。
14) 翌13日、全港湾は、同年731日付けで申し入れた団体交渉の応諾、誓約文の手交及び掲示を求めて本件申立て〔平成12年(不)第15号〕を行った。
 4 本件申立て後の経過
 平成12112日、会社と全港湾とは、関西国際空港における運転士の食事問題などについて折衝を行い、その後も本件審問終結時に至るまで5回程度の折衝を行っているが、これらの議題は、36協定締結、運行路の再編成、事務兼務運転士の手当支給、安全対策及び春闘要求に関する問題等であり、本件団体交渉申入れ事項は、折衝の対象とはなっておらず、会社は、全港湾と協定書を交わすことを拒否している。
 5 会社と海員組合の関係
1) 海員組合は、平成11年秋、会社の発行済株式総数の約10パーセントを取得し、第3位の株主となっていたが、平成12331日には、さらに関係船会社から株式の譲渡を受け、5493パーセントを保有する筆頭株主となった。
2) 同年49日、会社は、本社機能を神戸市中央区・・・・・・・・・・・・・に所在する海員ビルに移したが、同建物は、海員組合が所有し、海員組合関西地方支部を置いている。なお、登記簿上の本社の所在地は、肩書地のままである。
3) 海員組合が会社の筆頭株主になったことに伴い、同月27日、臨時株主総会が開催され、海員組合関西地方支部支部長代行であつたTNが、海員組合役員を辞任のうえ代表取締役専務に就任した。なお、同人は、会社の要請を受けて海員組合が会社に派遣した者である。
4) また、会社及び海員組合からの要請を受け、海員組合中央執行委員から会社の支配人に就いていたID及び副支配人に就いていたIUも、前記株主総会において、総務担当の常務取締役、労務担当の常務取締役にそれぞれ昇海した。なお、これに伴い、副社長以下の役員は、全て交代した。
5) 同月28日、会社は、上記役員交代を報告する文書に、「海員組合の発言は代表取蹄役である社長の発言と同様と肝に銘じ対応をお願いします」と記載し、代表取締役社長名で全従業員に配布した。
第2 判断           

 1 海員組合の使用者性について
1) 全港湾の主張
 海員組合は、会社の筆頭株主となり、会社に役員を送り込むとともに、全港湾と協定書を交わすことは海員組合との協議の結果できない旨回答したりするなど、ことあるごとに会社が海員組合の意向下にあることを示威している。また、会社の本社が海員ビルに移転したのも、海員組合が会社の全港湾否認の方針を直接的・積極的に援助するための措置である。
 かかる行為によって、海員組合が、全港湾を会社から排除するため、会社従業員の労働関係上の諸利益に対し、実質的な影響力ないし支配力を及ぼしていることは明白であり、使用者性を有するものである。
2) 海員組合の主張
 海員組合は、会社の旧株主の一部から株式譲渡をもちかけられたので株式を取得したが、会社の経営に参画する意図はなく、会社とのユニオン・ショップ協定を遵守し、離職船員である海員組合の組合員が一人でも多く会社に就職できることを望むものである。また、会社との間で、資本参加と役員派遣の事実はあるものの、日常の業務運営上の指揮命令はもとより、労働時間や貸金等の労働条件を決定する権限を有しておらず、まして具体的施設面や資金面における影響力も全くない。
 したがって、全港湾の主張には根拠がない。
3) 当委員会の判断
 労働組合法第7条にいう使用者は、原則として労働契約上の雇主を意味するが、それ以外にも労働者の労働条件について現実的かつ具体的な支配力を有する者を含むと解される。これを本件についてみると、海員組合は会社の発行済株式総数の過半数を保有し〔第15(1〉〕、代表取締役専務及び常務取締役(労務担当)という労務対策に影響力の大きい役員ポストに元組合役員を派遣していること〔第153)(4)〕、海員組合が株式の過半数を取得したのを契機に、会社が本社機能を海員組合の所有する海員ビルに移したこと〔第1の52)〕、そのころ、会社が「海員組合の発言は代表取蹄役である社長の発言と同様と肝に銘じ対応をお願いします」との社長名文書を全従業員に配布したこと〔第155)〕、会社設立について、海員組合が関係船会社と力を合わせて取り組んだ経緯〔第121)〕などの事実を総合して判断すると、海員組合が単に会社の筆頭株主としてだけでなく、会社の経営面に対してかなりの影響力を有していることは否定できないところである。
 しかしながら、海員組合が会社従業員の労働時間や賃金等の労働条件を決定し、日常の業務運営上の指揮命令についても現実的かつ具体的に従業員を支配していると認めるに足りる疎明はない。なお、全港湾は、会社が全港湾と協定書を交わすことについて海員組合との協議の結果できない旨回答したこと〔第
1313)〕が、海員組合が使用者性を有する理由の一つであると主張する。
 しかし、これをもっても、海員組合が会社従業員の労働関係上の諸利益に対する影響力を示す事実とは認め難い。よって、海員組合の使用者性は認められず、全港湾の海員組合に対する申立てを却下する。
 2 団体交渉問題について
1) 全港湾の主張
 会社は、「従業員に全港湾組合員らしき者がいる」との認識に立って、折衝を求めればそれに応じている。しかし、全港湾と会社との間の労使関係を認めないという海員組合の意向が明確であることから、全港湾との協議の結果、合意ができたとしても、協定書は作成できないとの基本的立場を明らかにしている。
 そもそも団体交渉の目的は、労使が対等・平等の立場で労働条件等について交渉し、合意したことを協定書にすることにほかならず、協定書の締結を拒否するような交渉を団体交渉とは到底言えない。
(2) 会社の主張                 
 会社は、地労委命令が発せられて以降、全港湾からの書面をすべて受け取り、多数回にわたり全港湾と誠実に団体交渉を行っているのであるから、本件団体交渉申入れ事項のカについては、既に履行している。また、本件団体交渉申入れ事項のアからオまでについては、全港湾との交渉過程の中で、処分を撤回しないなど、会社の態度を何度も明確に回容している。したがって、全港湾に被救済利益はなく、棄却は免れない。
3) 当委員会の判断
 会社は、平成12630日以降、全港湾からの要求書を受け取り、多数回にわたって全港湾との折衝を行ったことが認められる〔第13(7)ないし(13)、4〕。そこで、このような折衝を会社が主張するように本件団体交渉申入れ事項についての団体交渉を行ったということができるかどうかについて検討する。まず、折衝における会社の姿勢をみるに、「従業員に全港湾らしき者がいる」との曖昧な態度をとりつづけて全港湾を団体交渉の相手方として認めず.〔第1313)〕、折衝の結果、合意が成立したとしても協定書の作成については拒否するとの立場をとっている〔第1310)(13)、4〕のであるから、これらの折衝を団体交渉と認めることはできず、会社が誠実交渉義務を果たしていないことは明らかである。
 また、折衝の内容をみても、本件団体交渉申入れ事項のアからオまでについては、平成
12829日付け書面で会社の考え方が全港湾に対して示されているだけで〔第1311)〕、これまでの会社と全港湾との折衝において協議がなされたと認めるに足りる格別の疎明がない。
 よって、本件団体交渉申入れ事項のアからオまでについて、誠実に団体交渉を行っているとの会社の主張は採用できない。なお、本件団体交渉中入れ事項のカ(地労委命令の受入れについて)は、全港湾が平成
1189日付けで申し入れた組合活動についての協定事項、労働条件にづいての緊急要求事項及び中田ら3名に対する解雇の撤回を議題とする団体交渉の応諾を求めることと同一に帰するところ、当委員会は、平成11年(不)第5号事件にいて既に会社に対し、この団体交渉の応諾を命じており〔第126)〕、この点についての再度の申立ては認められない。
 3 会社の主張する本件申立ての違法性について
1) 会社の主張
 本件団体交渉申入れ事項のアからオまでについては、平成12年(不)第6号事件において審査が行われているのであるから、本件は同一事項に対する二重の申立てとして違法であり却下を免れない。また、本件は、会社の従業員が海員組合と全港湾のいずれの組合に帰属するかという問題から生じており、労使間ではなく全港湾と海員組合との間で協議し解決すべき事柄である。それにもかかわらず、全港湾は、この間題を労使間の紛争であるとして救済申立てを行った事件であるから、権利の濫用と言わざるを得ず、棄却されるべきである。
2) 全港湾の主張
 会社の懲戒処分や転勤命令等が不当労働行為に該当するとしてその救済を求め、その後、これらに関する団体交渉拒否が不当労働行為に該当するとしてその救済を求めることに何ら問題はなく、二重の申立てであるから申立ての要件を欠くなどという主張は失当である。
3) 当委員会の判断
 別件平成12年(不)第6号事件は、全港湾の運営に対する支配介入の禁止、近藤及び古川に対する懲戒処分の撤回などを求める申立てである〔第135)(6)〕のに対し、本件は団体交渉の応諾を求める申立てである〔第1314)〕から、事案を異にすることは明らかであり、二重の申立てではない。
 さらに、会社は、本件は従業員の組合帰属問題から生じているのであるから、全港湾と海員組合との間で協議し解決すべき事柄であると主張するが、従業員の労働条件について、使用者である会社が団体交渉に応じるのは当然である。
 4 結論
 以上のとおり、会社は本件団体交渉申入れ事項のアからオまでについての団体交渉を正当な理由なく拒否しているのであるから、これは労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると判断し、本件団体交渉申入れ事項のカについては、改めて会社に対して団体交渉の応諾を命じるまでもないから、この点についての申立ては却下する。また、海員組合が労働組合法上の使用者であると認めることはできないと判断するので、海員組合に対する申立ては却下する。
 5 救済方法
 全港湾は、本件救済の方法として、誓約文の手交及び掲示をも求めているが、主文の程度をもって相当であると考える。
3 法律上の根拠
 以上の認定した事実及び判断に基づき、当委員会は、労働組合法第27条並びに労働委員会規則第34条及び第43条の規定を適用して、主文のとおり命令する。
                 平成1321
                      兵庫県地方労働委員会

                             会長  安 藤 猪 平 次


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