以上のとおりであるから、中田ら3名の解雇問題について団体交渉を行う実益はない。  3 当委員会の判断
(1) 平成11年8月9日、申立人組合が、本件団体交渉の申入れに会社に赴いたところ、会社は事務所を閉鎖していたこと〔第1の3(1)〕、申立人組合が、本件団体交渉の実施を求めるあっせんを当委員会に申請したが、会社はこれに応じなかったこと〔第1の3(2)〕、会社が、平成11年10月まで事務所を閉鎖し、申立人組合の団体交渉申入れに対し何ら返答しなかったこと〔第1の3(1)、(4)及び4〕、及び会社が、その後の申立人組合との話合いにおいても、団体交渉には応じられないことを繰り返し述べ、申立人組合との団体交渉には応じなかったこと〔第1の4〕がそれぞれ認められる。
(2) ところで、労働組合は、労働者がその自由な意思の基づいて結成する団体であるから、組合員の脱退の自由はこのような団体の性質上当然に認められるべきであり、組合員が脱退するためには、当該労働組合に対して明確な脱退の意思表示をすれば足りるものと解される。
 本件についてみると、申立人組合員は、平成11年7月30日、海員組合に連名で脱退届を提出している〔第1の2(2)〕のであるから、海員組合に対し明確に脱退の意思を通知したものと認められ、同組合が申立人組合員の脱退を承認していないことをもって、その脱退を否定する理由とはならない。
 さらに、申立人組合は、分会員全員の名前を記載した分会結成通告書を会社に郵送し、会社はこれを受領している〔第1の3(1)〕のであるから、会社の従業員中に申立人組合員がいることの断定はできないとの会社の主張は失当である。
 よって、会社の第2の2(1)の主張には理由がない。
(3) ユニオン・ショップ協定に基づく解雇は、その効力をめぐって議論のあるところであり、中田ら3名の解雇問題については、当事者間において争われ、申立人組合から団体交渉が要求されている〔第1の3(1)ないし(4)〕のであるから、会社は、申立人組合からの団体交渉申入れに応じ、誠実に交渉すべきであって、会社が、解雇撤回の意思がないことのみを理由に、申立人組合との団体交渉を拒否したこと〔第1の4〕は、失当である。
 また、中田ら3名が解雇問題について民事訴訟を提起しているとしても、裁判等の司法手続と団体交渉とは、労使間の紛争の解決手段として、その目的や機能を異にするものであるから、中田ら3名が民事訴訟を提起することによって、団体交渉を行う実益が失われるものとは認められない。
 したがって、会社の第2の2(2)の主張もまた理由がない。
 4 救済方法
 申立人組合は、本件救済の方法として、誓約文の掲示をも求めているが、主文の程度をもって相当であると考える。
第3 法律上の根拠
 以上の認定した事実及び判断に基づき、当委員会は、労働組合法第27条及び労働委員会規則第43条の規定を適用して、主文のとおり命令する。
  平成12年6月20日
                                   兵庫県地方労働委員会
                                      会長   安 藤 猪 平 次
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