1983年に公開された、角川アニメーション映画、『幻魔大戦』のメインテーマ・ソング。これだけならこの部屋で取り扱う事はないのだが、作曲とキーボードがあのキース・エマーソンとなると、話は別だ。この頃のキース・エマーソンはEMERSON LAKE&PALMER(EL&P)を解散させて、ソロ活動をしていたが、まさかこんなところで小遣い稼ぎをしていようとは・・・。(爆)
曲を聴いて最初に感じたのは、キースらしい面とキースらしくない面が同居する楽曲だと言うことである。キーボードのメロディや楽曲の壮大さと言う点では、EL&P以前のNICEの頃からのキースらしさを漂わせてはいるものの、ヴォーカル・オリエンテッド、つまり、ローズマリー・バトラーの歌に比重が掛かっているところが、らしく無さを感じさせるのだ。このキースらしくないところは、映画のメイン・テーマであると言うことと関係があるのではないかと思うのだが・・・。
また、楽曲全体の雰囲気が、イギリスでもアメリカでもない、北欧のバンドの音造りを想起させる。具体的な例を挙げると、ノルウェーのTNT、スウェーデンのTREAT、そして、北欧へヴィ・メタルの元祖、EUROPEの“OUT OF THIS WORLD”を発表した頃(1988年)と言ったところである。つまり、80年代後期の北欧の哀愁感溢れて透明感のあるポップな楽曲に近いと思った。
が、これは’83であることを考えると、少し、先を行っていることになるのだが。でも、その83年に発表された、ASIAの2ndアルバム“ALPHA”もこんな感じだったから、先を進んでいたわけでもないだろう。(ちなみに、このときのASIAのドラマーが、元EL&Pのカール・パーマー)
もう一つ、最初は思ったほどドラマティックじゃないなと感じたりもしたが、何度も聴くうちに、ローズマリーの力強く伸びるハイトーン・ヴォーカルが心に沁みるようになった。それを思うと、これはヴォーカルを前面に出して当然と言えるだろう。
じっくりと聴き込みたい曲ではある。名曲だと言いきれるかと問われると、首を縦には振れない。でも、メロディを第一に思うのなら、一度で良いから聴いてみてはいかがだろうか、と、ここに紹介するに至った次第である。
なかなか手に入りにくいとは思うが、店頭在庫でまだ残っている店舗があると思いますので、興味を持たれた方はぜひ聴いて戴きたく思います。(ヴァレーリエ) |