名曲座・メジャー篇

VOL.6  「HEAVEN AND HELL」/BLACK SABBATH  (from “HEAVEN AND HELL”/1980)

ヘヴン&ヘル
 1980年4月、BLACK SABBATHが ロニー・ジェイムズ・ディオ(ex.RAINBOW)を迎えて製作発表した9thスタジオ・アルバムのタイトル・トラック、と言うより、HR/HM史上に燦然と輝く永遠不滅の名盤におさめられた、最高の名曲と言った方が良いだろう。実際、「へヴィ・メタルとは何か?」と訊かれたら、私は「これを聴けば解る。」と言ってこの曲を勧めるだろう。というより、このアルバムを勧める。なぜならこのアルバムでBLACK SABBATHは「真のへヴィ・メタルバンド」になったのだから。

 1979年、アルコールとドラッグの問題で蝕まれていたオジー・オズボーン(Vo)を解雇したBLACK SABBATHは後任として、RAINBOWを脱退してソロ・プロジェクトを進めていたロニー・ジェイムズ・ディオに声を掛ける。当時、ロニーはソロ・プロジェクト以外にも、アル・クーパーとジェフ・バクスター(ex.DOOBIE BROTHERS)にも誘われていたのだが、(他にもマイケル・シェンカー・グループ、URIAH HEEP、SWEETからも誘われていたらしい)トニー・アイオミのアイディアに共鳴したロニーは、これこそ自分のやるべき音楽だと決意し、アル・クーパーにはグレン・ヒューズを紹介して、BLACK SABBATHに加入するのである。
 
 この“HEAVEN AND HELL”アルバムはBLACK SABBATH独特のへヴィネスやダークネスにロニーの唯一無二の天才的な歌唱力+ロニーならではのロマンティックでドラマティックなメロディ・センス、さらにロニーがRAINBOWで培った幻想的な歌詞世界を融合させた名盤中の名盤で、まさに理想のへヴィ・メタル・アルバムに仕上がっている。スピーディーな‘NEON KNIGHTS’、へヴィながらもムーディーでメロウな‘CHILDREN OF THE SEA’、ポップながらもギーザー・バトラーのへヴィなベースが心地よく走る‘LADY EVIL’、トニーのアコースティック・ギターが隠し味となっているハード・ドライヴィング・チューン‘WISHING WELL’、典型的爆走メタルチューンである‘DIE YOUNG’、キャッチーな‘WALK AWAY’、そして、ロマンティックで哀愁感漂う‘LONELY IS THE WORD’と、どれをとっても素晴らしい。捨て曲無しと言うよりは、全曲名曲と言い切っても過言ではない、途轍もない名盤である。

 その中でも史上最高の名曲と言うのが今回取り上げる‘HEAVEN AND HELL’である。7分近くあるが全くダレない。それどころか最初から最後まで緊張感溢れるのである。最初はゆっくり展開して、4分16秒辺りからビル・ワード(ds)のドラミングがアップ・テンポになって、ガンガンに盛り上がる、まさに名曲の黄金パターンを踏襲しているのだが、トニーの美しくも破壊力溢れるギター、ロニーの煽情力の高いメロディアスなヴォーカル、トニーのギターとともにBLACK SABBATHのへヴィネスを生み出す重要な要素であるギーザーのベースの重厚感、ビルのへヴィかつタイトなドラム・・・。まさにどれをとっても素晴らしいとはこのことである。これを聴いて拳を突き上げられない者、ヘッド・バンキングできない者はメタルに縁が無いとしか言いようがない。(笑)美と破壊の同居、と言うか・・・、美しさゆえの破壊力と言おうか、はたまた破壊性ゆえの美しさと言おうか・・・?いずれにしろ、“THIS IS HEAVEY METAL”である。

 この“HEAVEN AND HELL”により、一度は終わりかけたBLACK SABBATHは復活した。折りしも時は、NWOBHM(ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・へヴィ・メタル)ムーヴメントの真っ只中。IRON MAIDENやDEF LEPPARD,SAXONら新勢力と競いながらも共闘するという、理想的な形でHR/HMが全世界的に復興。BLACK SABBATHはその中心になり、圧倒的な人気を得ることになったのである。
 
 なお、現在、HR/HMのコンサートに行くと必ずファンが、人差し指と小指を天に向けて突き上げる、‘メロイック・サイン’を掲げるが、最初に始めたのがBLACK SABBATH時代のロニーだった。イタリア系であるロニーは祖母から邪眼に対する保護として教えてもらったそうだが、それをBLACK SABBATHのコンサートで行うようになったのである。つまり、ロニーがBLACK SABBATHに加入しなければ、誰もメロイックサインを掲げなかったわけである。それだけを見ても、ロニーの影響力のすごさがわかるのである。
 改めて言う。「“HEAVEN AND HELL”を聴かずしてメタルを語るなかれ!」(ヴァレーリエ)


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