名曲座・メジャー篇

VOL.7 「OUT IN THE FIELDS」/GARY MOORE feat.PHIL LYNOTT  (from “RUN FOR COVER”/1985)

アウト・イン・ザ・フィール...
 1985年、ゲイリー・ムーアとフィル・ライノットとの共演(これが最後となる)によって製作されたソロ・シングル。のちにアルバム、“RUN FOR COVER”に収録されることになる。
 ゲイリー・ムーアの名曲は数多くあるし、どれを最初に紹介しようか迷ったのだが、絶対これを聴かなければいけない、と言うことでこれを選んだ。

 よくゲイリー・ムーアと言うと、「泣きのメロディ」に注目されるが、ここではいきなりそれが炸裂する。イントロの部分のまさに最初のギターの一音からである。たった一音で聞くものの涙腺を緩ませて、涙を流させるのである。この曲を聴くと、なんとも表現しがたい情念が心の底から沸きあがる。そしてそれが激情となって、全身を刺激する。激情は奔流となって全身を駆け巡ると、聴く者の全身全霊を挙げた絶叫と化す。この曲はそんな思いが込み上げて来る。だいたいのゲイリーの曲と言うと、こんな感じの曲ばかりなのだが、この曲は特に顕著である。なぜこんなに泣きたくなるのか?そして同時に叫びたくなるのか?この曲を初めて聴いた時、気が狂いそうになった。人目はばからず泣き叫びたくなった。
  
 ただ美しいだけじゃない。ただ破壊力が優れているだけじゃない。自分ではどうにも制御できない情念をこの曲は思う存分、いや、自分の思う以上に迸らせるのである。それは、魂を鷲掴みにされ、信じられないくらい激しく揺さぶられる感覚を想わせる。
 ゲイリー・ムーアとフィル・ライノットとの共演と書いたが、実際、ゲイリーの魂と、リッチーブラックモアをして、「炎を持った男」と言わしめたフィルの魂のぶつかり合いは素晴らしいと言うだけでは言い足りない。この2人がこれほどまでに魂の中から激情を迸らせる人間とは思いもしなかった。

 この曲は人類すべてが聴く曲だと思う。曲の素晴らしさだけではなく、歌詞が良い。特に、今、戦争や紛争を繰り広げては悦んでいる人間に聴かせてやりたい。
 その歌詞を、日本語訳で以下に記す。一部ではあるが。

 間違っていても 正しくても
 そんなことは関係ない
 黒だろうと 白だろうと
 ぜんぜん違わない
 勝利を勝ち取るまでは万人が平等
 人種や宗教が
 銃から出る弾丸を止めたためしはない

 戦場では 戦闘が始まった
 路上では 一人また一人と倒れていく
 空の彼方から 毎日 何千人が死んでいく
 生と死は紙一重
  
            (訳:山崎 智之)

 この曲は当時全世界でヒットし、日本に至っては、1985年度BURRN!誌読者人気投票・ベスト・チューン部門において、見事チャンピオンに輝いたのである。

 この曲はスタジオ・ヴァージョンも素晴らしいが、ライヴ・ヴァージョンを聴くこともお勧めする。1998年に発売された『アウト・イン・ザ・フィールズ−ザ・ヴェリー・ベスト・オブ・ゲイリー・ムーア』(2枚組)では、DISC2に1985年9月23日、イギリスはマンチェスターにあるマンチェスター・アポロでのライヴが収録されており、フィルがゲスト参加しているので、ゲイリーとフィルの『熱き魂のぶつかり合い』をぜひ体感してもらいたく思う。(ヴァレーリエ)


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